妹に突然告白されたんだが妹と付き合ってどうするんだ?

54-3 兄妹と姉妹

「アンちゃん……」

「あ、い、一応だからな、告白されて受けただけだから、今は別れていないだけで元彼女みたいな状態だから!」

「あんた……、それなのにあんな美女達をはべらせていたの……最低」

「はべらすって、してねえよ!」

「アンちゃんのハーレムには妹さん、栞ちゃんも入会していたのね」

「入会ってなんだよ!」

「うわ!、妹をハーレムに入れるって……最低の上に鬼畜ね」

「鬼畜ってそこまで言うか」
　あああああああ、言わなきゃ良かったあああああ、でも言わなけりゃ殺されてたし、うううううう、どっちに転んでも詰んでたって事かよおおお。

「と、とにかくだ、俺はお前達を脅すつもりは無い!　分かったか!」

「ふーーん、まあそうね、それは信用してあげても良いかな?」

「そ、そうか……」
　とりあえず殺されないで済みそう、かな?

「でも……雫は渡さない、これ以上雫に近寄らないで!」

「お、お姉ちゃん……」

「雫は、雫は……私の命よ!　雫が居なくなったら私……もう生きていけない、やっと、やっと雫が振り向いてくれた、諦めようとした、雫の為に……でも雫の方から来てくれたの、雫が勇気を出して告白してくれたの、前からずっと前から好きだった、愛していた、だから……もう離さない、雫は私の、私だけの物!」

「お、お姉ちゃん!」

「雫!　私も好きなの……愛してるの、お願い、別れるなんて言わないで……ね」

「お、おねいちゃん～～～～♡」

「雫～～～～～～～～♡♡♡」



「おーーーーーい」
　まさか俺と妹ってこんな感じじゃないよな……少なくとも俺はここまでじゃないはず……?　でもやっぱり兄妹姉妹で付き合うってお互いここまでならなきゃ駄目なのかな?
　俺にはここまで出来ない……妹だけじゃない、ここまで人を愛する事が……出来ない。

　イチャイチャし始める○○姉妹……とりあえず落ち着くまで俺はベンチに座ってそんな事を考えながら眺めていた……



「雫♡」
「お姉ちゃん♡」

「あのお、そろそろ良いかな」
　日が暮れる……

「何よ、まだ居たの?」

「居たのって……すまんね、一応雫じゃなく澪に用があるんだが」

「何先輩を呼び捨てにしてるの?」

「いや、まあ今さら澪さんって言うのも……」
　先輩だけど……ねえ?　アホらしい……

「は?　何?　雫はあげないわよ」

「いらん、いらん」

「はあ?　何!　私の可愛い雫が要らないって言うの!!」

「ああああ、めんどくせえ」

「じゃあ何よ!　あんたのハーレムに入るなんてごめんよ!」

「そんな事言わないし、そもそもハーレムなんて無いから」

「じゃあ何よ!」

「いや、あの、まあ会長選挙の事なんだけどね」

「会長?　ああ那珂川 葵ね、あの副会長が居なくなって焦っているのね、朝と今も校門の所で頑張ってるわね、ふん……去年私がやって、あの娘は一切何もしなかったけどね、はん、ざまあね」

「ざまあって」

「何よ、思うでしょう、一生懸命やってる私を嘲る様に、何もしないで、会長になって、今年は私と同じ立場みたいね」

「いや、まあ」

「それもあの副会長を使って私を陥れ、私の周りの票と……友達を奪った」

「いや、それは会長自らやった訳じゃなくて、副会長が」

「同じ事よ、止めなかったんだから」

「……」

「協力ならお断りよ、私はあんたの妹に入れるわ、友達にもそう言う」

「お姉ちゃん……」

「…………そうか」

「アンちゃん」

「さあ、行くわよ」

「お姉ちゃん待って」

「雫……私と、この男、どっちを取るの?」

「そ、それは……」

「いいんだよ雫、大丈夫、他の方法でなんとかするよ」
　そんなものは無い、３年の票が期待出来ない様では話しにならない、それでも俺は雫に強がって見せた。

「アンちゃん……ごめんなさい」

「じゃあね、もう私達に係わらないで頂戴」

　そう言って二人が俺の前から行こうとしたその時、スッと二人の前に人影が……丁度澪の死角になっていたので一瞬誰だか気が付かなかった。

　そしてその一瞬でその人影はスカートを翻し……平手で澪の頬を叩くのが見えた……えええええええええええええええええええええええええええ!

「バチッ」

　少し鈍い痛そうな音が鳴り響く

「きゃ!」

　短い悲鳴、頬を抑え澪が後退るとはっきりとその人物が俺から見えた。


「し、栞!」

「お兄ちゃんに手を出したら、誰だろうと容赦しない!!」
　更に追い討ちをかけようと栞がゆっくりと澪に近く。

「ちょ、し、栞」
　俺は頬を抑えている澪と、呆然としている雫の横を通りすぎ、妹の前に立ちはだかる。

「どいてお兄ちゃん!　そいつ殺せない!」
 またか……

「いや、し、栞、俺は何もされてないから、見てたんなら分かるよな、手を出すのは駄目だ!」
 どこから見てたのか分からないけど、この怒り方……恐らく俺を殺そうと澪が怒っていた所からだろう。

「何言ってるのお兄ちゃん、昨日叩かれたでしょ?!」

「え、あ、いや……」
　え?　あれ?　俺、美智瑠に叩かれたって、美智瑠にも口裏を合わせる様に頼んであるし……

「いや、あれは美智瑠だって」

「お兄ちゃん……嘘は駄目だよ」

「え?」

「嘘は駄目、ね?」
　妹が笑顔でそう言う……

「あ、うん……ごめん」

「ちょっと!　どういう事よ!」

「うるさい!　お兄ちゃんは優しい、優しすぎる位優しい、だからやられっぱなしになるの、いつもそう、だからお兄ちゃんの代わりに私がやる、お兄ちゃんに手を出したら、私が許さない!!」

「ちょ、栞、待て」

「離してお兄ちゃん、こういうのは３倍返しって相場が決まってるの!」

「いやいやいやいやいやいや、決まって無いから、とりあえず落ち着け!」

「どいてお兄ちゃん!」

「雫! 澪を連れて逃げてくれ、このままだとヤバい」

「うん!　アンちゃん」
　雫は澪の手を掴むと澪を無理やり引っ張って行く

「雫!　離して、やるならやってやるんだから、ちょっと雫」
　そう言うが栞に叩かれ効いているのか、雫が火事場の馬鹿力を発揮してるのか、グイグイ引っ張られて行く……


「ま、待ちなさい、お兄ちゃん離して!」

「良いから、栞もう良いから」

「お兄ちゃん……」
　俺は栞の頭をそっと抱き栞をなだめる……ヤバいかなここは学校、まあ誰も来ない様な場所だけど

　澪と雫が完全に見えなくなる迄妹をそっと抱き、落ち着く様になだめる。

　そして栞が落ち着いた所で俺は凄い疑問に思っていた事を聞いた。

「ごめんな栞、嘘をついて、でも……何で分かったんだ?　誰かに聞いたのか?」

「ううん、聞いてないよ」

「じゃあ、何で?　いつ分かった?」

「お兄ちゃんが美智瑠ちゃんに叩かれたって言った時に分かってたよ、お兄ちゃん私になんて言ったか覚えてる?」

「え?　俺なんて言ったっけ?」
 とっさの事だったんで、えっと何か美智瑠にエッチな事をして叩かれたって……

「ちょっと俺がつまずいて美智瑠の胸を掴んでって言ったの、つまずいたら何かに掴まろうとするだろうけど、お兄ちゃん……美智瑠ちゃんの胸は……絶対に掴めない」

「あ!」

「そこは麻紗美ちゃんか会長さんって言わないとね」
　妹は笑いながら俺にそう言った、でも恐らく麻紗美も会長も俺を叩かないだろう、だから一番可能性の高い美智瑠ってつい言ったんだけど、やっぱり妹には嘘は付けないか。

「ごめんな……でも」

「うん、わかってる今度はちゃんと話してね、ちゃんと言ってくれれば、私もここまではしないから」

「あ、うん」

「倍返し位で済ますからね」

「いやいやいやいやいやいや」

「お兄ちゃんに手を出したら、ううんお兄ちゃんを攻撃するあらゆる者には私……容赦しないから、お兄ちゃんは死なない、私が守るもの」

「いや、そのギャグも前にやったし」
　
　俺は笑いながらそっと妹の頭を撫でる、それにしても……澪も退けないだろう……今後どうなるんだ?
 (さあ?)