妹に突然告白されたんだが妹と付き合ってどうするんだ?

新名天生

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54-1 兄妹と姉妹

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「次期生徒会長は現会長の那珂川 葵、那珂川 葵をお願いしま~~す」
 翌朝から生徒会長選挙の活動を開始した、とりあえず美月の作戦の通り地味に浮動票の確保をすることに、まあ登下校時に挨拶とチラシを配る事くらいしか出来ないんだけど。
 とりあえず普通に制服で挨拶をするだけに留めた、学園祭で着たコスプレ衣装での挨拶も考えたけど、それは最後の最後にした方が効果があると美月が言ったのでとりあえず自重する。
 まあ制服姿だけど、学校内の美女トップ10の4人が勢揃いしての挨拶なだけにそれでも注目度は高い、あ、ちなみに静かだけどセシリーは普通に活動してるので。
 どうもセシリーってシリアスな場面だと黙ってしまう傾向にある、まあ、いつものあれはキャラで、中身は普通のお嬢様だ。
 それどころか、政界のパーティーに参加し各国のVIPとあいまみえる強者なのだ、恐らく空気を読む力は俺達以上なのかも知れない。

 そして俺はというと、その挨拶には加わらず、雫の登校を待っていた。

「とりあえず雫と話さないとな……」
 時間があまり無い、雫と話し更に澪と話す場を作らなければならない、雫とは同じ学年、クラスは違えどなんとかなりそうだが澪は違う、まず俺と二人では無理だろう、雫が間に入らなければ……

 登校時は下校と比べて皆静かに登校してくる、下校は友達同士で帰る者が多いので結構賑やかだが、登校は待ち合わせまでして通ってくる者は限られているからだろう、居てもせいぜい二人でとかだ、が……遠くから数人で固まって登校してくる集団がいた。

「栞はいつもあんな感じなんだろうな」
 今日はこの活動がある為俺はいつもよりもかなり早い登校だったので、妹を家に置いて先に出ようとしたが、妹はそれを許すはずもなく
「待ってお兄ちゃん私も一緒にいくよ」
 と、いつも通り一緒に登校し今は教室に居る。


「つまり……あの集団は……」
 ゾロゾロと取り巻きを連れて歩いている集団の中心に居たのは、3年の女王、初瀬川 澪、微笑を携え周りの女子の会話に頷きながら会長の前を通過していく、その時一瞬その集団に静寂が、そして会長達から少し離れた俺の前で皆がクスクスと笑いだす。

 集団の一人の女子が受け取ったチラシを澪に見せ、そのチラシを一瞥すると、一瞬微笑崩れ、怒気を孕んだ表情に変わったのを俺は見逃さなかった……

 そして澪は俺に気がついているのかいないのか、こちらをチラリとも見る事なく通り過ぎる、その集団の一番後ろには雫がうつ向きながら歩いていた。

「雫……」
 俺は集団の後ろの雫にだけ聞こえる位の声で名前を呼んだ、ピクリと身体が反応し、一瞬歩くスピードが落ちたが、止まりも振り向きもせずにそのまま校舎に消えていった。

「うーーん……」

 間違いなく雫は何か隠してる、澪と何かあるのか? 何か弱みでも握られているのか……

「登校時は駄目か……」
 後は休み時間か下校時間、恐らく暫くは登下校時は澪が一緒に居るだろうから、昼休みが一番狙い目か

 俺はトボトボと歩く雫を後ろから暫く眺め、会長の所に戻りとりあえず一緒にチラシを配った。



 ####


 昼休み雫の教室に行ったが既に雫の姿は無かった、避けられているのか、それとも昼も澪の監視があるのか、こうなるともう放課後しかないが。

 授業が終わるとダッシュで雫の教室に向かう、丁度教室から生徒がゾロゾロと出てきた所だ、俺はその中から雫の姿を捉えた。

「しずく!」
  俺が呼ぶと、うつ向いて出てきた雫が顔を上げる。

「あん……ちゃん?」

 俺を見ると雫は泣きそうな顔になり、そのままキョロキョロと辺りを見回す。
 恐らく澪が居ないか確認をしているんだろう……

「来い雫!」
  そんな様子の雫の手を掴み教室の前から雫を連れて行く、周囲から「キャ!」 っと言う女子の小さな悲鳴が聞こえるが、無視をして雫と共に駆け出す。

「あ、アンちゃん」

「ごめん雫」
 とりあえず雫を強引に連れ出すのは成功した、後はゆっくりと話しが出来る所だ、生徒会室は澪が一番に探す場所だ、屋上は閉まっているし上の階は3年の教室がある、校門から外に出るのは校舎から丸見えで雫と手を繋ぎながらでは目立つ。

「ボッチ……気味……がゆっくりとご飯を食べられる場所は限られているんだよ!」
 俺は時々昼ご飯を食べる時に使う中庭のベンチに向かった、学校で美智瑠と出会ったベンチ……あそこは渡り廊下の一部分からしか見えない一人で食べる時はあそこが一番だ。

 俺は校舎をぐるりと周り雫と中庭のベンチに向かった。


「あ、アン……ちゃん……」
 少し駆け足だったので雫の息が上がる、俺も緊張からか心臓の鼓動が早鐘の様に打っている。

 雫と二人で深呼吸をし身体と心を落ち着かせてからベンチに座った。


「とりあえず……ごめん、明日クラスで何か言われるよな」

「……大丈夫……多分……私……クラスで影薄いから」

「そ、そうか……」
 えっとそれは……大丈夫なのか?
  違う心配をしてしまうが今は時間が無い、雫が居なければ澪は学校中を探すだろう、取り巻きに頼めばここも次期にバレる、それまでに雫と話さなければ。


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