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53-11 生徒会長選挙
しおりを挟む「はせがわ……みお?」
なんかどこかで……親戚だっけ?
俺がそう思っていると、会長が立ち上がりホワイトボードに名前を書く
「初瀬川 澪?」
「初瀬川? あ! えええええええええええええええええ!」
「やっぱりにいには知ってたか、そう3年の女王は雫さんのお姉さまなの」
「いや……知ってはいるけど」
知ってるって程じゃ無いけど、俺が幼稚園の時、雫にバレンタインのチョコを貰った後、一度幼稚園に雫のお母さんと一緒に来たお姉さんに突然叩かれた記憶がある……後であれが雫のお姉さんって知ったんだけど、ほとんど忘れてたよ
「雫さんのお姉さまが現3年の女王よ、明るく聡明で、雫さんとはその……タイプも印象も違い過ぎて似た名字だったけど気付くのに時間がかかったわ」
「まあ、はせがわなんて名字一杯居るしな」
うっすらとしか記憶が無いけど、怖かったイメージしかない、雫の姉ちゃん。
「私じゃ無理だけど、雫さんが間に入ってくれれば味方になってくれるかもしれない……」
「ああ、そうだな、明日皆集まるから雫に聞いてみるか」
でも、なんか嫌な予感しかしないんだけど……あの時も結局なんで叩かれたかわからんかったし。
とりあえず、会長と皆はチラシやポスター作り、朝夕の顔見せの付き添い、知り合いにSNSや口頭での協力要請をして貰い、俺と雫で初瀬川 澪さんの協力を取り付ける事になった。
会長はまだやる事があると俺は一人で生徒会室を後にする。
恐らく1年の8割は妹に入れるだろう、2年は少なく見積もって4割、妹に勝つには3年の7割は取らないといけない
彼女を味方に付ければ5割は取れる、後は2割ならなんとかなるかも知れない。
とらぬ狸の皮算用なのは分かっているが、それでも勝てる見込みが僅かに見えた気がした。
####
そして翌日俺は生徒会室に来た雫にお姉さんの協力を取り付けてほしいと告げた。
「雫、澪さんに生徒会選挙に協力してもらえないかな?」
「え…………」
「澪さん、3年の初瀬川 澪って、雫のお姉さんだよな?」
「う、うん……」
「去年会長に負けて色々あるだろうけど、俺も一緒に頼むから雫からもお願いして貰えないかな」
俺がそう言うと雫は下を向き何か考えている様子だった、そして少し考え顔を上げ俺を見つめる。
「あ、あのね……アンちゃん」
雫がしゃべり始めたその時、生徒会室の扉がガラガラっと大きな音を立て突然開いた。
長い艶のある黒髪をなびかせ、細身で身長も高く一見モデルと思わせる体型、切れ長の目、筋の通った鼻、やや大きめの口、きつめの美人って感じの女子がそこに立っていた。
「「え? 誰?」」
皆が一斉に見るもその女子は全く動じない、俺達全員を一瞥すると一人の人物を睨み付け言った。
「雫……ここには二度と行かないようにお姉ちゃん言ったはずよね」
「…………」
「言ったはずよね?」
「……うん」
「お姉ちゃんの言う事が聞けないの?」
「ううん……ごめんなさい……」
雫が再びうつ向き震えながらフルフルと首をふる。
「おねえ……ちゃん?」
俺がそう言うと後ろから会長がその人物の名前を呼んだ。
「初瀬川……澪さん」
「お久しぶりね……会長」
その切れ長の目をさらに細め会長を見つめる。
「昨年の選挙以来ね」
「ふん……副会長が居なくなっても貴方は居るのね」
「え、ええ」
「今年も会長で2年連続……、この学校初の連続会長ですってね私も去年協力出来て嬉しいわ」
「…………」
「まあ、精々頑張って頂戴、さあ行くわよ雫」
そう言うと雫の手を引き連れて行こうとする、雫は少し嫌がる素振りを見せるが強く掴まれた手をほどけずにズルズルと外に。
その時雫が俺を見た、振り乱した髪の毛の中から物凄く悲しそうな目で俺を……
「ま、待ってくれ」
俺がそう言うと、澪は立ち止まり振り向く。
「雫が嫌がってる、その手を話してやってくれ」
「嫌がってる? 雫? 嫌がってるの?」
そう言うと雫はうつ向いて何も言わない、いや言えない様だった。
「雫は私の言う事は素直に聞く子なの、あんたがなんで嫌がってるなんて言えるの?」
「それは」
そんなの、あの目を見れば分かる、でも……
「あんたどこかで……」
「長谷川 裕です、雫とは幼稚園の時に一緒でした」
「ああ、あんた、雫……それで」
「取り敢えず雫……さんの手を離してくれませんか?」
「なんで、嫌がってもいない妹の手を離す理由なんてある?」
「雫……嫌なら嫌って言っていいんだぞ」
俺がそう言うと雫は震えながら顔を上げ姉の顔を見る。
「雫」
澪はそう言うと雫を見てニッコリと笑った、その笑顔を見た雫は再びうつ向く。
「じゃあ、そう言うことで、もう雫には構わないで頂戴」
そう言うと澪は再び外に雫を引っ張っていく。
「ま、待って」
俺がそう言うと澪は雫の手を強く引き扉の外に出す。
そして身体をクルリと反転させその遠心力を利用しつつ回転するように腕を水平に振り、澪の手は俺の頬にクリーンヒットした。
「「きゃ!」」
俺は突然の平手打ちに対処出来なくバランスを崩し机の上に倒れこむ、それを見て皆が小さな悲鳴を上げた。
「二度と雫には近づくな!」
そう言うと澪はそのまま外に出て扉をおもいっきり閉めた。
「いってえええええ」
俺は頬を押さえたまま半身を机から起こし、出ていった澪を追いかけようとするが、俺の肩を会長が掴み俺を見て首を降った。
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