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49-1 二人きりの家

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 放課後になると、セシリーと会長の身の上が学校全体にバレていった。

会長は金髪になって学校に来たので、当然理由を聞かれる。

セシリーは隠しもせずに話しかけて来る女子にニコニコしながら答えていた……いや、したなめずりしながら答えていた……

 ちなみに席は俺の斜め前……麻紗美の前の席、初め栞の横を主張していたが当然誰も退くわけがなく、仕方なく空いていた麻紗美の前に、ちなみに昼休みは手続き等で職員室に呼ばれていた。

「ぐへへへへ、このクラスは天国デスね~栞を筆頭に美味しそうな娘が一杯」

と、休み時間クラスの娘が話しかけて来る度に、何やら不穏な事を言っているが……


 そして放課後、セシリーが家に遊びに行かせろと言って来るが、栞が「今日から久しぶりにお兄ちゃんと家でまったりするんだから嫌」と一刀両断、尚も食い下がるセシリー、だがここは妹のクラス、当然女王様が困っていると必ず助けに入る。
「セシリーちゃん、帰り皆で歓迎会するからおいで~~」と女子数人の有志に声を掛けられ、そちらに行くことに

「とりあえず前菜も悪くないデスね、えへへへ」
とさらに不穏なセリフを吐きながら、皆と一緒に帰っていった。

 ちなみに麻紗美は空気の様にいつの間にか居なくなっていた、さすが元ボッチのスペシャリスト……



「生徒会どうなるんだろ?」
 場合によっては責任取って俺と妹が生徒会に入るかもしれないと思い、帰り道妹そう聞くと。

「あ、なんか会長凄い人気で生徒会に入りたいって殺到しているらしいよ」

「そうなの?」

「前は副会長と常に一緒、近寄りがたい印象だったのが、険が取れたと言うか、明るくなって、話しかけやすくなったって、皆凄く良いって言ってるよ、しかもイギリスの王女様だしね」

「へーーーーそうなんだ」
 俺は凄く良かったって思いつつも、ほんの少し残念っていう気持ちになった。

「あ、お兄ちゃん残念って顔してる」

「し、してないよ!」

「ふーーん、あの綺麗な会長を自分だけの物にしたいって思ったんでしょ、あーやだやだ、副会長と一緒じゃない」

「そんな事思わないって……」

「大丈夫、私は今日からお兄ちゃんだけの物だから~~」

「栞の友達から独占禁止法で訴えられそうだけどな……」

 夏休みが終わり、更に今回の会長の件でこの一週間妹は友達の事で奔走していた。

 夏休みに会えなかった友達や会長の件で色々頼った人、その他諸々の為に。

 こちらからの頼み毎ばかりだといつか聞いて貰えなくなる、日頃からの貯金が必要だと言っていた、やはり妹はすげえな……

「今日は久しぶりにお兄ちゃんとまったりイチャイチャ出来る~~」
 俺の横でウキウキしている妹、嬉しそうな妹を見ると俺も嬉しくなる。

「イチャイチャはしないけど……久しぶりの放課後ティータイムか」
 夏休み中も二人でお茶は飲んでいたが、学校から帰ってするお茶会は本当に久しぶり、ようやく日常が戻って来た気がする。

 家に着きお互い着替えに一度部屋に戻りリビングへ、妹はキッチンでコーヒーを入れお菓子と一緒に持って来る。

「お兄ちゃん、美味しいケーキ屋さんがあるの、明日は買ってから帰って来ようよ」

「明日は母さん居るんじゃないっけ?」
 俺には母さんのシフトは聞かされて居ない、ただ今日居ないって事は明日は居るはず。

「あ、そう言えばまだ今月のシフト聞いてないや、いつも月末に教えてくれるのに」

「俺には教えてくれない……」

 そんな話しをしていると、何やら物音がする……
俺と妹はお互いに顔を見合せ誰?と目配せしていた、すると……突然リビングの扉が開く…………えっと…………ああ母さんだ、入学式以来だから忘れそうに……

「あら二人でお茶、仲良いのね~~」
 そう言ってリビングに入ってくる母さん……なんだろう? こんな時間に……

「お母さんも飲む?」

「栞ありがとう、ブラックでお願い~~これからまた行かないと」

妹がコーヒーを入れ母さんに渡す、一口飲むとはあ~~~っ大きなため息をついた。

「なんかあったの? こんな時間に」
 そう妹が聞くと、母さんは少し真剣な顔で俺達に言った。

「お父さんが名古屋に転勤になったんだけどね」

「えーーーーーーー!」
「えーーーーーーー!」
 家ってやっぱり父さん居たんだ、いやそうじゃない……、随分急だな……

「それでね、そんな長い期間じゃないし今でも忙しくて帰って寝るだけだから単身赴任でいいよって、この家売るわけにはいかないしね、でね、まあその話しをうちの病院の院長に言ったのよ、そうしたら、ちょうどいい、名古屋にうちの関連病院があるからそこに暫く行ってみないかって」


「えーーーーーーーーーーー!」
「えーーーーーーーーーーー!」

「うちの病院評判良いのよ、特に看護師の評判がね、で、名古屋で少し指導してくれないかって、まあ半年位らしいけど」

「えっと……俺達は?」

「お父さんが向こうで落ち着くまで一緒に居て、母さんは半年で戻ると思うけど、どうする? 転校だと色々面倒じゃない?」

 俺と妹は顔を見合せる、ヤベえ妹の目が輝いてる……


「お母さん! 私達は大丈夫! お兄ちゃんのご飯は最近私が作ってるし、家の事もやってるし! 安心して行ってきて良いよ!!」
 妹が力説する……そんな元気良く言ってるとバレるぞ……

「最近栞に任せっぱなしで、また負担をかけちゃうんだけど、大丈夫?」

「大丈夫! 全然大丈夫!!」

「そう……なんかそんなに元気良く言われると……、なんか追い出されてるような気が……じゃあまあそういう事でお父さんと話しを進めるからね、まあ名古屋ならちょくちょく戻れるし……家の事お願い出来る?」

「うん! 任せて!」

「えっと……いつから?」

「お父さんは来週から、母さんも遅くても再来週からかな?」

「えーーーーーーー」
「えーーーーーーー」

ちなみに俺は戸惑いのえーーーで、妹は喜びのえーーーーという感じだった。


 再来週から……俺と妹はこの家に二人きり………………

 えーーーーーーーーーーー

 心の中で思ったこのえーーーは戸惑いの『えーーー』か喜びの『えーーーーか』……
 それとも……

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