妹に突然告白されたんだが妹と付き合ってどうするんだ?

新名天生

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43-3 夏休みラストスパート

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「離してお兄ちゃん、フロントまでいかせてええ」

「やめて、本当に、今チェックインの時間じゃないから」
  エレベーターの中で妹を羽交い締めにしてフロントの階で降りようとする妹を抑え、何とか出口まで行くと、妹はようやく諦めてくれた……

「もうううう、チャンスだったのにいいい」

「全然チャンスじゃないよ!」

「お兄ちゃんさっき疲れたって言ってたでしょ? 休ませてあげたいと思ったの!」

「嘘つけ……」

「それは……、嘘だけど~~」

「認めるのか……」

「でも、お兄ちゃん疲れる事もあるって……だから……」

「じゃあ家に帰るか?」

「やだ!!」

「ははは、大丈夫だよ、でも……」

  ホテルから出て、妹が俺の腕にしがみつく、最近すっかりなれてしまった、いつもの体勢、しかし特に目的はなく歩いている……

「どうする?もうちょっとレストランでゆっくりして、どこに行くか決めたかったんだけど」
 慌てて出てしまった……ちょっと勿体なかったかな?

  妹は俺を上目遣いで見て、にやりと笑いながら言った。
「うーーん、そうだ! じゃあ……東京タワーに行って写真を撮ろう!!」


「…………は?……美智瑠に聞いたの……?」
 え? 何? 俺そこまで詳しく話してないよ?

「ううん、お兄ちゃんのスマホに美智瑠ちゃんの写真が一杯入ってるよね? だからそれ以上に私の写真を撮って欲しいの!!」

「栞………また……わかった、百歩譲ってエッチな本は見てもいい、だけどスマホはやめて、本当に……」

「お兄ちゃん、やましいことがなければ大丈夫だよ!!」

「やましいことはないけど……本当に……勘弁してくれえ……」

「あとね……えっと…………私別に、エッチな本が見たい訳じゃないんだからね! お兄ちゃんの事が知りたいだけなんだからね!!」

「なに……それ?」

「ツンデレ~~~どう?」

「ツンがないんですけど……」
 ツンがなくて、デレデレ? ある意味新しい?

「あとね、……私別にお兄ちゃんのエッチな本とか、スマホとか見てないんですからね! お兄ちゃんの事なら何でもわかるという能力の持ち主なんですからね!!」

「それもツンデレじゃねえし」

「えーーー違うの? 練習したのにいいい」

「何故にツンデレの練習?」

「お兄ちゃんの周りにツンデレキャラがいないから、新鮮かな? って」


「あーーいないねーー、ツンしかないのはいるけど……」
 あいつのデレは想像がつかない……ちなみに会長ね……

「私の写真は後で、一杯一杯一杯~~~撮って貰うとして、どうしよっか?」

「後で一杯……」
 どこで撮るんだろう……

「え? 勿論家でヌード写真に決まってるじゃない」

「いやいやいやいや」

「お兄ちゃんだけの栞写真集、プライスレスで!」

「いやいやいやいや、て言うか心を読まないで、なんでわかるんだ、本当怖いよ!!」

「そうか、私がお兄ちゃんの心を読んで、お兄ちゃんの行きたい所に行けばいいんだ」

「マジでやめて、言う、言うから、今考えて言うから」

「えーーー」
 本当に当てそうで怖いよ……どうするんだよ……変なこと想像したら……

「え! そんな所に…………いいよ!! お兄ちゃん!!! この辺にあったかな?」

「してない、してないから!! まだ何も想像してないから!!! おい、栞! 何を探してる!! いや!言わなくいい!!」
 もうやだ、何も考えられない、何? 俺エスパーか何かと付き合ってるの?

「えーーー、またチャンスだったのにいいい」

「本当にチャンスじゃない……わかった、とりあえず、本屋に行こう、本屋に行きたい……これは本当に行きたいから……」

「うん、いいよ~~、でも~~お兄ちゃんの~~本当にい~~、行きたい~~、とーーこーーーろーーーはーーーー?」

「栞、それはうざいから止めような~~」

「はーーーい」


 とりあえず近くに大きな本屋があるので、そこへ行く

  ちょうど開店と同時に入って、とりあえず文芸コーナーで新刊を漁る、婆ちゃんの本は貰えるのでスルー(笑)して適当に見ていると妹が何冊かラノベを持ってくる……

「お兄ちゃん、ほらほら、これ読もう!」

「何故にそんなピンポイントなラノベを持ってくる……そしてなぜ知ってる……」
 まあ、俺もだけど……

「これは~~妹ちゃんが~~お兄様って呼んでるし、こっちは、兄さんって、これは、兄貴で~~これがお兄ちゃん、私これは読んだことないなー」

「他は読んでるのかよ……」

「じゃあ私はこれを買っちゃおっと、お兄ちゃん好き仲間~~~」

「ちょっと待って」
 そう言って手頃な本を手に取り、妹の手から本を取り上げレジに向かう

「いいのにい、自分で買うよ~~」

「たまには兄貴っぽい事をさせろ」
 ちょっと格好いい事言ったが、手には妹物のラノベ……妹と一緒に妹物ラノベを買うってなんのプレイだよ……

 レジで会計済ませ……レジのお姉さんが、一瞬俺と隣の妹をチラ見したのは見てない事にして、表に出る……

「さて、お兄ちゃんどこで読む?」

「え?」

「読む為に買ったんでしょ? 一緒に読もうよ、どこがいいかな?」

「栞……」

「喫茶店? 漫画喫茶?」
 俺に気を使ってくれているのが凄くわかる、でも、なんか嬉しい……そうしたら俺も……

「じゃあ今日は涼しいから公園に行こうか」

「え! 公園……お兄ちゃんと公園で、一緒に本を読む……なんか文芸小説のカップルみたい……良いねお兄ちゃん……行こう!!」


 ####



 電車で少し行った所に池のある大きな公園がある、そこのベンチに二人で腰をかけた、日本有数の暑さのこの県でも、もうすぐ9月になり秋を感じる季節、さすがに暑さもそろそろ陰り始め、本日は残暑なにそれ美味しいの? と思わせる位に気温も高くなく、木陰のベンチは程よい気温、池が近いので風も冷たく気持ちがいい、蝉がそろそろ壊れた鳴き声をあげている……


「じゃあ栞……えっと……、膝枕してくれる?」

「え? え、ええええええええええええ」

「嫌?」

 そう言うと妹は髪を振り乱し首が取れそうな勢いで、ブンブンと首を横に振った。

「嫌じゃない!! 嫌じゃないよ!! びっくりしただけ……お兄ちゃんが!! お兄ちゃんがついに、ついに……デレたあああああ!!!」
 ガッツポーズをする妹……そこまでか?

「はい! はい!! どうぞ!!! お兄ちゃん!!!」

 膝を揃えポンポンと叩く、俺は足を放り投げ、そっと横になり栞の太ももに頭を置く……


 家でやってもらったばかりなので平気と思ったが…………外だとめちゃくちゃ恥ずかしいいいいい


「ふおおおおおおおおおお」
 妹がすごい声で絶叫する……

「恥ずかしい……ごめん止めてもいいかな……」


「絶対に嫌です!!!」
 俺の頭を押さえつける妹………ちょっと痛い……

「わかった、わかったから……、じゃあ……本を読むか」

「うん!!」

 心地よい天気に心地よい風、そして心地よい枕、だんだん慣れてきて恥ずかしさも薄らぐ……本を読んでいると、時より妹が俺と視線を合わせその度にニコっと笑う……

 なんか最初に言っていた、普通のデートって、これかも……
 やろうと思って出来なくて、諦めると出来る……

「まあこんなもんか……、人生なんてままならないって事だな」

「何か言った? お兄ちゃん」

「いや、何でもないよ」

「そう……いい天気だねお兄ちゃん」

「そうだな~~」

「風が気持ちいいね、お兄ちゃん」

「そうだな~~」

「もうすぐ、秋だね~~」
 二人だけのゆったりとした時間が流れていく……夏休み最後のデートは特に何もなく、ゆっくり二人で読書をして終わった。

 そして、それは俺にとって凄く幸せで、この夏一番と言ってもいいくらい、最高に楽しい時が過ごせた……


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