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001-2 栞の初恋

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 扉を開けるとそこは宝の山……

「えへへへへへへへへへ、お兄ちゃんのお部屋……」
 犬の様にクンクンと匂いを嗅ぐたびに、ニヤリと口許が緩む、お兄ちゃんお部屋~~

 別に初めて入るわけじゃない、何かと用を作り、お兄ちゃん部屋に入っている、でも……お兄ちゃんが居なくて部屋に入るのは本当に久しぶり……小学生の頃そっと入ったきり……

 それより前、物心付いた頃は同じ部屋だった、小学3年の時だったかな? 違う部屋になった時、一瞬嬉しかったけど、お父さんとお母さんが仕事で居なかった日に凄く寂しくなってお兄ちゃんのベットに潜り込んだ……

 ずっと同じ部屋でよかったのに……

 いけない、いけない、私は気を取り直し再び部屋を見つめる…………

「た、宝の山……」

 ああ、違う、違うのおおおお、目的を忘れちゃ駄目!お兄ちゃんを嫌いになるんだから……

 とりあえず部屋に入る前に入り口でお兄ちゃんの部屋を記憶する、物が動いてたりするとお兄ちゃんに気づかれちゃう……

 カメラを撮るように記憶してから部屋の中に入る、いつからか出来るようになった瞬間記憶、でも克明に記憶できるのはお兄ちゃんの事だけ、目を瞑ればお兄ちゃんがいつも目の前にいる……ああ、お兄ちゃんが私に微笑んでる、きゃあああああああああ

 だーーかーーらーーー違う……今はそんな事を……、ううん大事なことだけど……、今は考えてる場合じゃない……さて……どこから探すか……


 ちなみにこれはあくまでもお兄ちゃんを嫌いになるための緊急避難的な行動なんだから大丈夫!罪にはならない!、分からない人は刑法第37条緊急避難をググってね

「机よねやっぱり……」
 まずは机…………お、お兄ちゃん……私の写真かざってるううううううううう
(小さい頃の家族の写真です)

「え、え、お兄ちゃん……ひょっとして……私の事を」

「ど、どうしよう、相思相愛の可能性が出てきた……そ、そうよね、私が隠してるんだもん、お兄ちゃんも隠してるのかも、ああ、どうしよう、聞いてみようかな、お兄ちゃん、私の事好きなのって、実はそうなんだ、え?わ、私も、栞!お兄ちゃん!…………えへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ」

 違うううううううううううううう

 な、なに?お兄ちゃんのお部屋に入ると妄想が止まらない……、ここって異世界とか?、確かに私にとっての異世界……危険だ、早く目的を遂行して現世に戻らなければ……

「そうだ!お兄ちゃんもそろそろ思春期、思春期の男の子って言えば定番の本が、お兄ちゃんの本好き!そっちも当然好きだろうし……、何度か本屋さんでこそこそ買ってたし必ずある!そして大抵の女の子はそう言う姿に幻滅したりする……よし!それだ!!!」

 ターゲットはベットの下、定番の場所……

 私は滑り込むようにベットの下に潜る………………ない……

「そんな単純な場所にあるはずないか……」
 ベットの脇に座り込み部屋を見渡す、男の子の部屋に入ったことはないけど……なんとなく汚いイメージあった、でもお兄ちゃんの部屋はとても綺麗……

「掃除してるのかな~言ってくれれば私が毎日するのに……」
 そん楽しいアルバイトがあれば時給1000円払ってでもやりたい……

 そんな事を考えつつ辺りを見回しているとなんとなく違和感が、そういえば腕の位置が微妙に違う気がする、同じベットを同時に買って貰ったはず……

「マットレスが高い?」

 ベットとマットレスの間に隙間が……

 手を入れると!!!!!!

「あった!!!!」
 マンガ数冊に写真集数冊、そしてDVD数枚……

「お兄ちゃん、結構持ってた…………言ってくれれば私がいつでも……」
 凄く悲しくなる、何か浮気されている気分……ショック……思ったよりショック、

「私というものがありながらああああああ」

 は!!いけない、本を破るとこだった……

 その本をパラパラとめくると!!!

「あれ?この子ちょっと私に似てない?黒髪だし」

「え?あれ、あれあれ?、どうしよう、お兄ちゃんが私にこういうことを求めてきたら、え?、あれ、きゃあああああああああ」

 どうしよう、私全然未経験だし……その時の為に勉強しないとダメかな?
 写真集を元の位置に戻し、次にマンガを手に取る……

「え!なにこれ!お兄ちゃん……こんな趣味が、え?そんな……でもお兄ちゃんとなら……えへへへへへへへへへへへへへへへ」

 暫くパラパラ捲る、私の知らない世界が、これは勉強しないと、いつでもお兄ちゃんの要望に答えられるように……そうだ!パソコンを買おう!!

  そう決めた時ふと時計を見た……

「きゃああああああああああああ、まずい!!」

 すでに1時間以上経っている、お兄ちゃんがお風呂から出る時間……

 私は慌てて本を戻し、動いてしまった掛け布団や枕を元の位置に寸分たがわず戻し部屋を後にした……

 自分の部屋の扉を開けると同時に階段から足音が!
 足音で分かる、お兄ちゃんが上がってきた

 私は自分の部屋の扉をそっと締めた……

「危なかった……ギリギリ……でも……」

 全然嫌いになれなかった、それどころかどんどん好きになっていく……駄目だ、益々のめり込む、いけない、これじゃいけない……何か、何かお兄ちゃんの事を嫌いになる方法……何か………………

 私は部屋の真ん中で座り込み、お兄ちゃんの事を考える……

「容姿も駄目、性格も駄目、エッチな事でも駄目、お兄ちゃんの弱点…………」

「そうだ!!お兄ちゃんって友達が居ない、それってマイナスポイントよね」

  よし!明日から学校から何からずっとお兄ちゃんの後を付けて、いかにお兄ちゃんが駄目か検証すれば、お兄ちゃんの事を嫌いになれるかも!!


「頑張ってお兄ちゃんを嫌いになるぞおおおお」
 私は気合いを入れて片腕を高らかに上げた!


「お兄ちゃんの密着取材……、えへへへへへへへへへへへへ」

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