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27 最大の武器、最大の弱点
しおりを挟むまず施設内に入る前に、公園を散策。
公園内の花壇やともえ学園の電車なんかを見て周る。
中でも一際目についたのは、黒姫高原山荘、ち○ろのアトリエ兼別荘が復元されている。
昭和を思わせる内装、中には入れないが外から別荘内の調度品、アトリエの道具などが見られる。
そして俺と妹が一番心引かれたのが、裏手に飾られていた写真
「なんか、いいな……」
「うん……、素敵……」
高原の中に建てられていた当時の写真、林の中にひっそり佇む、こじんまりした別荘。
孤独とも感じさせるその写真、人混みはあまり好きではない俺は、このひっそり佇む家に憧れた。
「こういう所でひっそり暮らすのも……良いかも……」
ついポロリと出た言葉に自分自身現実に引き戻される。
今、妹と気軽にデートなんて言っているが、あくまでも兄妹として。
妹は俺の事を兄妹としてでは無く好きだと言っている、俺はまだ栞を妹と思っている。
そして俺が妹を恋人と認識したら……
現実にキスをしようとした事もある、自分の中での妹に対する思いが変化しつつあるのも分かっている。
仮に、妹と俺が恋人になったとして当然全ての人間に祝福なんてして貰えないだろう、それどころか親も親戚も友達も何もかも失うかも知れない。
そうなってでも妹を愛する覚悟が自分には無い、いや、自分にはあるのかもしれない、何故なら、この写真を見たとき、林に佇む孤独な別荘でひっそり暮らす俺の隣に寄り添うのは妹と想像した、してしまった。
でも、この俺の孤独に妹を引きずり込む覚悟が無い、妹の人生全てを貰う覚悟が無い、いや出来ない。
友達も大勢いる、頭も良い、何でも出来るこの天才の人生を奪う覚悟が俺には……ない…………
「お兄ちゃん?どうしたの?」
「ん?あ、いや……」
「汗びっしょりだよ?」
「ああ、ちょっと外だと暑いな、そろそろ中に入ろうか」
「そう?今日は涼しいと思うけど?、大丈夫?」
「ああ、うん、ちょっと疲れてるのかな?、中に喫茶店あるみたいだから、そこでちょっと休めば大丈夫だよ」
「うん、ケーキあるかな~~」
妹が俺の汗でベタつく事なんか気にも留めず、いつもの様に腕にしがみつく、今日は昨日とは違いシンプルな服装、半袖の袖部分が大きく広がった白のブラウス、胸にハートの飾りの付いたネックレス、裾がボーダーの白のミニスカート、サンダル状のヒール、黒い髪と白い服装のコントラストが美しい
妹の胸の感触が俺の腕に伝わり一昨日の風呂場での光景を思い出させる……
さっき妹の人生を背負う覚悟がないとは言ったが…………
俺だって男だ!、興奮だってするんだ!、妹に興奮するのがおかしいのは分かっている、でもそれはあくまでも一般の話しだろ、他の兄妹なんて参考にならない!!
だって、俺の妹は世界一可愛いんだ!!、お前らの妹と一緒にするな!!!
ヤバい、理性が崩壊していく…………
#######
展示を見る前に一先ず喫茶店に入る、テーブルには公園内で取れた物なのか? 小さい花瓶に草花が飾られている。
どことなく質素だが小綺麗な喫茶店、俺はコーヒー、妹はケーキセットを頼む。
コーヒーを飲みようやく落ち着いてきた……
先程は失礼しました、取り乱しました……皆さんの妹も俺の妹よりちょっと劣るけど可愛いです……
「はい、お兄ちゃん、あーーーーーーーん」
ケーキを差し出され、普通に食べる、あーーんにはもう慣れた、ただ、お兄ちゃんと聞こえたのか女性店員さんの顔が怪訝な表情になっているのには慣れてはいないけど……
「世界の絵本だって~~どんなのがあるんだろう?英語とかで書いてあるのかな?」
妹がパンフレットを見ながら嬉しそうにケーキを食べている。
その姿を見て思った、今日の妹はいつもより、ものすごく楽しんでいる感じがする。
「楽しそうで良かったよ」
自分の趣味で無理に誘った感じもしたので、楽しんでくれて良かった。
そう思ったが妹はここの事だけで楽しんでいたのではなかった。
「だって~~こっちに来てずっと美月ちゃんにお兄ちゃん取られてたんだも~~~ん」
「栞は美月が嫌いなのか?」
美月に聞いたのと同じ事を妹にも聞く。
「そんな事ないよ、妹みたいで可愛いよ」
「じゃあなんであんなに攻撃的なんだ?」
美智瑠の時にもあそこまで攻撃的態度は見せた事が無い、会長の時に見せた攻撃的なのとは違う、何かこう、子供同士での、おもちゃの取り合いみたいな感じって俺はオモチャか……
「だって……美月ちゃんは私の最強の敵なんだもん、わたしの最大の武器が美月ちゃんには通じない……」
「最大の武器?」
「お兄ちゃんとの繋がり……兄妹っていう繋がり……」
「お兄ちゃんがもし仮に、もしも誰かを好きになって、その人と…………なっても……私との兄妹の繋がりは変わらない、それが私の最大の武器なの、それは美月ちゃんも同じ、何があっても、いとことしての関係は変わらない、そして私の最大の弱点を美月ちゃんは克服している……」
「最大の弱点?」
「美月ちゃんは…………お兄ちゃんと……結婚できる……」
妹の顔が笑顔に変わる、凄く良い笑顔、今までで見た事がないくらいの笑顔、凄く素敵で可愛いと思ったんだろうな。
その目から1滴の涙がこぼれさえしなければ……
「ば、馬鹿だな~~相手は小学生だぞ、結婚とか無いだろ」
まだ昼前なので俺ら以外の客はあまりいない店員も厨房に入っていてこちらには気付いていない
俺は妹の頭を撫でて慰める。
「だって~~お兄ちゃんって、ロリだしい~~~」
今度は口を尖らせ惚けた表情に変わりながら吐かれる聞き捨てならないセリフに、頭を撫でている俺の手がピタリと止まる……
「人聞きの悪いこと言うな!誰がロリだ!」
「えーーーだってーー、一昨日お風呂に入った時、お兄ちゃん超嬉しそうな顔してた、しかも私を見た瞬間スッゴいあわててた、あれってさ~~美月ちゃんに何かいやらしい事してたんじゃないの~~?」
なんですととおおおおおおお!!!
「お、お、お、そ、が、…………」
こ、声が……でねえ……
「お兄ちゃん、顔が真っ赤だよ、とりあえずコーヒー飲んで落ち着いて」
言われて俺はコーヒーを一口飲む、よし落ち着いたぞあー、あー、声が出るな、では……
「俺が~~小学生に~~~~~やらしい事なんて! するか~~~~~~~!!!!!!!!」
妹は俺の大声にニコニコしている。
でも厨房から女性店員二人がこっちを覗き見る、何か物凄く汚い物を見る目で…………
「今……小学生って……通報……」
厨房の奥から声が漏れ聞こえる………勘弁してくれ……ここって子供さん多いんだから………
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