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15-2 俺の嫁?

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 こ、これ、これなぜ?、ツインテール……、あああああああ、あの時のおねえさんって……先生?

「ひっく、うん、やっと思いだしてくれた?、長谷川 裕くん久しぶり」
 泣きながら俺の名前を呼ぶ
 もう目を擦りすぎてマスカラが落ち、パンダを通り越し、目線を隠した犯人の様になっている。

「へ?いや、ええ?なんで、ああ、そうか先生この学校の卒業生か」
 以前妹と話した、ひょっとしてこの学校の卒業生じゃない?という言葉を思い出す。

 白井先生は、泣きつつも昔を思い出すように、俺の事を慈しむ様に笑顔で話し始める。

「そうだよ…、懐かしい……私学校帰りによく一人で遊ぶ裕君を見かけて、かわいい子だなーって思ってたの、そうしたらある日、裕君が怪我しちゃってるのを見て、わたし、もう慌てて裕君泣いてて、わたしも悲しくなって」

「足から血が流れていて、私大丈夫だよ大丈夫だよ、それだけしか言えなくて、おろおろしてたの、暫くして近所の人が裕君を知ってて、家まで送ってくれて、私何も出来なかった……」

「可愛いって思ってた子が、怪我をしていたのに何も出来なかった、そんな自分にずっと落ち込んでたの、そして暫くして裕君が私の前に現れて」

「裕君が私に何で、何にもしてくれなかったの?って言われるとおもった、ごめんなさい、ごめんなさいって心で謝ってたの」

「そうしたら裕君、この間は大丈夫って言ってくれてありがとう、おねえさんのお陰で大丈夫だったって、それだけ言って赤い顔して走って行っちゃった」

 白井先生は満面の笑みになり

「私、凄く嬉しかったの、そう言って貰えて、走っていく裕君を眺めてたら、ポケットから何か落ちたのを見て、それを拾ったら手紙だった、手紙には、お姉ちゃんへって書いてあって、私宛?って思って開けてみたらこれで、もう私その場でわんわん泣いちゃった」

「その日からこれ私の宝物よ」
 机に置いてある手紙を、子供の頭を撫でるように触る。

「今年、自分の受け持つ生徒の名前を、初めて見た時にビックリした、同姓同名?って、でも初めて裕君を見た時に確信した、ああ、この手紙をくれた子、裕君だって」

「ずっと心で話しかけていたの、私だよ、おねえちゃんだよって」

 先生は手紙を大事そうに眺めている。
 しばし眺めていると先生の顔が、再びくしゃりと歪む

「そ、それが、あの裕君が、うう、あの可愛いゆう君がぁ、私の事、お嫁さんにしてくれるってぇ言ったのにいいい、私のお願いきいてくれないいいいい、うえええええええん」
 嘘泣きではなく、涙をボロボロ流し再び泣きはじめる。


 えーーーーまじでええええ、てか言ってねえぞ、書いただけだぞ!


 いくら会議室とはいえ、これで人でも入ってこられたらどう言い訳すれば。

「あーーーーもうわかった、わかりました、手伝いますよ、手伝えばいいんでしょ」

「ほんと?」
 ちくしょう、ちょっと可愛いじゃねえか、ていうかいくつ年上だ?
 どう見ても年下じゃねえか。

「はいはい、やりますよ」

「うう、ありがとう、やっぱり裕君は可愛いそして優しい」
 再び涙ぐみながらニッコリ笑う。

 俺はその笑顔を見て、ちょっと照れ臭くなり、先生から目線を外した。

「で、俺は何すれば?」

「えっと、うーーーんそうねー、とりあえず私と一緒に放課後生徒会室に来てくれるかな?、まず生徒会長に会わせるから」
 先生は気を取り直し、表情を教師の顔に戻すが、目というか顔がすごい事になっているし、元々童顔な為に全く戻って居ない。

 生徒会長……まじか…
 あの悪魔の顔を思い浮かべ、恐怖におののく。

 俺がそんな顔をしていると、

「え?、会長さん知っているわよね、優しくて、清楚で、綺麗で、なんか怖がってる顔してるけど、怖くないわよ?」

 あーーーまあそうですねーーそうなってますよねーー

「じゃあ、まあ分かりました、放課後、生徒会室に直接行けば良いですか?」

「そうね、私、午後の授業は入ってないし、先に行って待ってるわ」
 ちなみに白井先生の担当は国語

 白井先生が立ち上がり扉を開けようとする。
 俺は慌てて扉を開ける先生の手を取り、その手を握りこう言った


「先生その顔で出るのはまずい……」

 化粧がすっかり落ちて、顔がどす黒くなっている先生を、会議室から出る前に何とか止めた。



 ####



 午後の授業が終わり、クラスの緊張がほどける放課後
 妹がいつも通り、俺の所まで来る。

「お兄ちゃん帰ろ」
 妹が俺の所まで来ると、周りの視線が集まるが、何故か最近温かい視線になっている気がするんだが?。
 それをなるべく気にしない様にして、妹に今日は一緒に帰れない事を伝える。

「あ、ごめん俺、放課後ちょっと呼ばれたんだよ」
 昼休みギリギリになったので、昼の経緯を説明する暇がなかった。

「え?誰に」
 瞬間妹の目の色が変わる、え?怖いんだけど……

「あ、いやほら昼休みにジャッジ、白井先生に呼ばれてただろ、その事で今から生徒会室に行かないと行けないんだ」
 特に嘘をつく必要も感じなかった為に、そのまま伝えるが

「白井先生……、生徒会……」
 妹がぶつぶつ言い始めるので、慌てて大丈夫な事をさらに伝えようと、

「えっとなんか生徒会主導でボランティア関係の、おーーい、栞さん?」
 いつもの様に、妹が自分の世界に入っていく、学校では初だっけ?、なんて思っていると、

「……白井先生、綺麗……、生徒会、会長綺麗、お兄ちゃんが……、白井先生、……会長さん」
 さらにぶつぶつと言い始める、日頃と違う感じだったので、声をかけ続けた。

「おーーい、あれ、おーーい」

「お兄ちゃん!!」
 突然反応した妹にビックリしつつ返事をした。

「はい」

「私も行きます!!!」




「………はい?」












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