上 下
15 / 255

4-3 制服デート

しおりを挟む
 
 お台場デートを終え家に帰るとケーキが用意してあった。

 母さんが用意してくれていた物。

 ちなみに母さんは看護師で、今日はどうしても夜勤に行かなくてはいけないらしく

 ごめんねの手紙とプレゼントが置いてあった。

 親父は相変わらず夜遅い。

「もうみんなお兄ちゃんの誕生日なのにーー!」

「仕事だから仕方ないよ、俺達の為に働いてくれてるんだろ」

「うん…そうだね感謝しないとね、でもそのおかげで、お兄ちゃんと二人きりの誕生日を過ごせたんだから、私はお兄ちゃん以上にもっと感謝しないとね」

 妹は立ち上がりケーキに差してあるローソクに火を着け、部屋の明かりを消す。

 綺麗な発音で、妹が『Happy birthday to you』 を歌う。

 その綺麗な声と、ロウソクの灯りに照らされた可愛い姿に見蕩れてしまった。


 妹蕩れーーー


「お、兄ちゃん?」

 いつまでも火を消そうとしない俺に、戸惑い不思議そうに声をかけられる。

「あ、すまん」

 ふーーーーっと一気に17本の火をを消す。


「おめでとうううううううう」


 パチパチと手を叩き嬉しそうにはしゃぐ妹その姿を見た瞬間気付いてしまった。



 あれ、俺、今妹に恋をしてる? いや、恋をし始めている?



 昔から妹の事は嫌いじゃない、好きだ。
 でも……それはあくまで家族として

  母親が好き、父親がそこそこ好き、居ないけれど兄や弟、姉に抱く感情とその差は殆んど無い。

  妹に対しても同じ気持ちだ。

  告白され付き合う事になったけれども、その気持ちは変わらない

  いや変わらなかった。

 でも、今この妹対して思う気持ち

  まだ狂おしい程ではない、心の中にある僅かな気持ち。

  今まで付き合った事も、告白した事も無い。

  しかし人を好きになった事はある。

  出せもしなかったラブレターを書いた事もある。

  その時の、家族に対してと明確に違う物が、今、自分の中に芽生えている事に気が付いてしまった……。

「はい、お兄ちゃん」

 ロウソクを丁寧に取り除き、ケーキを切り分け渡してくれる。

「おいしいいいいい」

 ケーキ頬張る妹。

 自分も食べるが今は全く味がしない。

 そこからの会話の記憶がない、部屋に戻ってベットに腰掛けると我に帰る。

 ふとポケットに入れた妹から貰った手紙に気が付き読み始める。


【大好きなお兄ちゃんへ

 誕生日おめでとう、また今日から一つ年上になって本当にお兄ちゃんになったね

 私はお兄ちゃんがお兄ちゃんじゃなかったら良かったのにと、いつも思っていました。

 お母さんやお父さん、お兄ちゃん、神様、そして私を恨んだ事もあります。

 どうして私はお兄ちゃんの妹なんだろって…

 でもお兄ちゃんが私と付き合ってくれると言ってくれて、私の気持ちに答えてくれて

 嬉しかった、本当に夢が叶った、今はみんなに感謝します。


 お兄ちゃんがお兄ちゃんでいてくれて、私のお兄ちゃんで私の前に現れてくれてありがとう。

 そして改めて誕生日おめでとうお兄ちゃん。

 お兄ちゃん、ずっとずっと大好き      栞】


 俺は制服を着替えもせず、ベットに座りその手紙を何時間も見つめていた。
しおりを挟む

処理中です...