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1-1 告白の答え

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 妹から告白されるという、物凄いイベントが高校入学前日に発生した。

 入学前なので中学最後の出来事なのか……?

 まあそんな細かい事はどうでもいい、とにかく高校入学、波乱の幕開けとなった。


 かといってどうするか、俺は悩んでいた……妹から告白されるなんて、誰にも自慢出来ない、それどころか一歩間違えばトラウマになりかねない……

 この事態をどう処理すればいいのか、俺にはさっぱり分からない状態だった。



 妹は泣きはらした目で精一杯の笑顔を作り、

「返事は……いつ貰える?」と言った……

 俺がどんな答えをするか恐らく怖いんだろう……でも泣き顔よりも笑顔を見せたいと無理に笑う姿が少し弄らしい。


 しかし、そう言われても、いつとは答えられるわけもなく

「今は高校入学で大変だろ、とりあえず落ち着くまで待ってくれないか?」

 俺は動揺の末、何とかその場を取り繕った。

 妹もまだ何か言いたかった様子だったが、これ以上俺を困らせる訳には行かないと思ったのか?

「……わかった」

 と一言だけ言い、涙を拭きつつ部屋に戻っていった。



 俺はそのままベットに倒れこみ、枕に顔を埋め気持ちを落ち着かせる。


「なんで俺に告白なんだ?」

 呟きと共に妹の事がぐるぐると頭を駆け巡る。

 俺と妹、両親は忙しく放任気味だった為、いつも二人、幼稚園、小学校、中学校と常に一緒に居た。

 年子の兄妹は周りにいなかったが、少ない友達(ほっとけ)の兄妹と、俺達兄妹の仲に大きな差は無いと思う。

 特に仲が良いとも悪いとも言えない、普通の兄妹のはず……だった……

 まさか妹が俺に対して、恋愛感情を抱いていたとは夢にも思わなかった。

「ありえない、あの何もかも完璧な妹が俺に?、いや、どう考えてもどっきり?、それともからかっている?」

 ひょっとしてOkしたら真顔で
「やだお兄ちゃん本気だったのー? 」って言われる未来しか考えられない。

 しかし、あの妹が、あの真剣な顔、あの涙を見てしまったら、嘘だとは思えない

「わかんねええええええええええ」

 枕に顔を埋めたまま、悶々とした時間が過ぎていった。





 ####




 翌日入学式の朝。

「うーーーー寝たんだか、寝てないんだか分からねえ……」

 昨日妹から告白されたが特に何も変わらない、いつも通りの朝。

「お兄ちゃんおはようーーー朝だよ起きなきゃ駄目だよーー(にっこり)」

 なんて、うちの妹が某元吸血鬼の妹の様に起こしてくれる事もなく、いつも通り目覚ましで起き、真新しい制服を着て一階に降りる。

 東京近郊に一軒家を構えるわが家は、リーマンの父がずいぶん前にちょっと無理して買った為、両親は共働き。

 二階には俺と妹の寝室、両親は一階の寝室
 一階には他にリビングとダイニングキッチンがあるが、まあ小さな一軒家だ。

 父は毎日出掛けるのは早く、帰るのも遅い、キッチンに入ると既に父はいなく母と妹の二人

 妹が母の前でパンをかじっていた。

「お兄ひゃんおふぁよう」

 パンをかじりつつ妹がいつも通りの挨拶をする。

「あ、うん、おは、よう…」

 なるだけ普通に挨拶しようとしたが、やや噛みながらも、なんとか声をかけテーブルにつく。

「父さんも母さんも入学式出れなくてごめんねー、4月は忙しくて」
 母が手を合わせて謝ってくる

「高校の入学式なんて親が来なくても大丈夫だよ、お母さん、ね、お兄ちゃん」

「あ、ああ」

 駄目だ昨日の事が頭から離れない、……なんで妹は普通でいられるんだ?

 ひょっとして夢だった? 、そんな事を考えていると……

「お兄ちゃんそろそろ行かないと遅れちゃうよ、私食べ終わったから先に行くね」

 妹が立ち上がり鞄を持ってキッチンを出ていく
 いつも通り一緒には行かないよな、まあ中学も別々に登校してたし

  やっぱり昨日の告白は、からかっていた?

 それともやっぱり夢?
 考えつつゆっくりパンをかじっていると

「時間大丈夫?」

 母が声を掛けてくる、時計を見ると妹が出てから30分は経っていた。

「うお! いってきまふ」

 パンをかじりつつ、あわてて家を飛び出した。





 ####





 パンをかじり全力疾走、道の角で美少女とぶつかり恋が生まれることも無く、入学式会場に到着する。

 うちの高校は体育館が小さく、近くのホールを借りて入学式を行う。
 遅れて来た為に、席は自由だったので既にほとんど埋まっている。
 空いている席に着くと、一息付いて辺りを見回す。

 妹はどこにいるかわからない、まあいつも通りの別行動

 いつも通り過ぎて、また昨日の事が頭をよぎる

「お兄ちゃん付き合って」涙を流しながら告白する妹

 悶々としているうちに、美人生徒会長とか、美少女新入生代表とか、若い女教師の担任発表とか全部すっ飛ばして入学式が終わってしまった。

 いや、いたかどうかはわからんが……


 最後にクラス発表の紙が回って来る
 自分の名前を探し妹を探す、迄もなく自分のすぐ上で見つける。
「栞と同じクラス……」

 明日から始まる高校生活に、かなりの不安を持ちつつ、入学式会場を後にした。





 ####


 家に帰ると妹はまだ帰って居なかった。

 部屋に戻り着替え再度悶々もんもんとしていた所
「ただいまーーー」と階下から妹の声が

 告白の返事はいつとは言っていないが、こんな状態で明日からの高校生活が、まともに送れるとは思えない。
 しかし、どう妹に言えば良いか分からない
 しばし考えるが、どうにもいい考えも言葉も頭に浮かばない。

「うーーーーーー、よし! ぐじぐじ考えても仕方がない!」


 妹を目の前にすれば、どうすれば良いか分かるかもしれない。

 そしてその時の自分の気持ちを、そのまま言えば、何か伝わるかもしれない。

 俺は気合いを一発入れ一階に降りる。

 リビングのソファーで、妹が制服姿でスマホをいじっている。

 ピコンと例の音が鳴る。
 友達とライン? 良いね友達一杯居て……


 もう一度気合いを入れリビングに入ると、妹は顔を上げ俺を見るなりにっこりと笑った。

「お兄ちゃんんただいまーー、ねえ見た生徒会長さんスッゴい美人だったよねーーあと新入生代表の子、超可愛くなかった? あとうちの担任、超若くて美人だよねーー、あ、お兄ちゃんクラス一緒だね小学校以来だねーー」

 明るく嬉しそうに話す妹……

 えーー! まじでいたのか、美人生徒会長に美少女新入生代表に若い女教師。

 チクショウーーー
 いやいや、そんな事はどうでも……よくはないが、今はそれ所じゃない。


「栞ちょっといいか、昨日の事何だけど」
 真剣な眼差しで妹を見つめこう言うと笑顔だった顔が一瞬で歪む。

「うん……」
 その歪んだ顔に心が痛む、でもちゃんと言わなきゃ……
 俺は下を向く妹の前に座り、勇気を出して問いかけた。

「昨日の事は本気?」

「うん……」

「そ、そうか……いつから?」

「分かんない……」

 小さく首をふる、小さい身体が小刻みに震え、スマホを持つ手が強く握られている。

「俺と付き合いたいってどういう風に?」

「………」

「言うまでも無いと思うけど、兄妹は結婚出来ないって知ってるよな」

「………うん」

「正直に言うな、俺、女の子と付き合った事ないから、付き合うってどう言う事か、どうするかわからない、ましてはお前は妹だ」

 ポタポタとスマホを握った妹の手に涙が落ちる……

「大事な大事な妹なんだよ、だから泣かしたく無いし傷付けたくない」

「だから」

 断られるとそう感じたのか、妹が顔を上げ背筋を整える。
 ボロボロと涙を流しながら……




「兄妹としての付き合いをしよう」





「へっ?」


 妹は涙をボロボロ流しながら大きな瞳を見開き、小さく奇声を発した。
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