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プロローグ

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「お兄ちゃん……わたしと付き合って!!」

「え……、はあ? な……、なんで?」

 特別仲が良いとも悪いとも言えない実の妹に唐突に告白された……




 温暖化なのだろうか、一昔前の小説では入学式に都内で満開の桜の描写がされていた。

 まあ場所によって咲く次期は変わるからその描写も間違いじゃない。

 親が言うには、東京近郊のここら辺も昔は入学式に満開の花が咲いていたらしいが、ここ数年この辺じゃあ桜は卒業式と相場が決まっている。

 明日は俺の入る高校の入学式、近所の桜はすでに散って青々とした葉が生い茂っていた。

 夕方、自宅の2階自室で俺は入学式の支度を終え、一息ついてベットに寝転がり大好きな本を読んでいた。

 入学式の前夜という以外は特に何て事はなかった俺の日常は、ノックと共に突然入ってきた妹によってとんでもない日に書き換えられ、結果この後の高校生活が一変してしまう事になる。



 『俺には同じ年の妹がいる、ただし双子では無い』



 俺が家に近いと言うだけの理由で決めた高校に、年子の妹も一緒に入学する事になっていた。

 幼稚園、小学校、中学校、妹とは常に同じ学校だった。

 年子の為に「双子? 似てないね」と言われ続け、「双子じゃなくて、年子なんだよ、似てないのは当たり前だろ」と言うセリフも、入学式やクラス替えの度の恒例となっていた。

 俺なんかよりも遥かに頭のいい妹、進学校に合格したと聞き、ようやく高校は違う学校になったと思ってちょっと安心していた矢先、妹が唐突に俺にこう言った。

「あ、お兄ちゃん、私も家から近い方が良いから、同じ高校にするね~」と物凄く軽い感じで言われる。
 結局同じ理由で同じ高校に入学する事になり、俺はまた同じ学校か……と若干辟易していた。

 ここで軽く自己紹介をしておこう、俺は長谷川裕はせがわ ゆう、妹の名前はしおり
 両親は共働きでかなり忙しく、余り家に居ない事を除けば、ごく普通の一般家庭。

 妹はかなり頭が良く、全国トップレベルと言う事を聞いた事がある……が、俺は妹とは違い、成績も見た目も平凡と言うのが自己評価、特に取り柄も隠された才能も今のところ見つかっていない。

 勿論ラノベの主人公の様に突如モテた事もなく、告白なにそれ美味しいの? と言うありさま、ああ、そう言えば幼稚園の時にバレンタインのチョコを貰ったぞ! どうだ凄いだろう…………ううう


 まあ……そんな人生だった俺に妹が告白してきた!

 て言うか……、生まれ初めての告白が妹って……


 ####



「えーーっと、エイプリルフールは先週だよな、なんの冗談だ?」

「じょ、冗談でこんな事言わない!、お兄ちゃんの事が前から好きなの……、だから…………私と付き合って!!」

「付き合うって、買い物とかじゃないよな?、恋愛って意味だよな?」

「当たり前でしょ!!」

 俺の前にいる妹が更に近づき、俺を見上げながら声をあらげる

 近い近い、ちょっと良い匂い

「えーーーーっと、なんで?、てか俺達兄妹だぞ付き合うって……」

「わかってるよ、でも、でもおおおおおぉぉぉ」

 真っ赤な顔で、俺を見つめている妹の瞳から涙が溢れてくる。
 その涙が本気だと言うことだけはわかった……


「まて、わかったから、ちょっと待て泣くな、お前が本気だってのはわかった」

「じゃあ付き合ってくれる!!!」

「なんで俺なんだ?、お前モテるだろ実の兄だぞ俺は……」

 妹は俺と違い凄くモテる……らしい。

 背中まであるロングの黒髪、目はややつり目だが大きな目。
 小柄で細い身体は抜群では無いが、童顔と合わせて特にごく一部の趣味の方には、堪らないであろう。

 明るく友達も多い、俺の数倍以上はいる……、ってほっとけや!

「お兄ちゃん、好きになるのに理由なんて無いの……、恋ってするものじゃない落ちる物なんだよ」

「いや、そんなどこかで聞いた様な、良いこと言われても」

「だから私と付き合って!」

「だからってなんだよ、ちょっと待て兄妹で付き合うっておかしいだろ?」

「そう?、最近のラノベじゃよくあるし、お兄ちゃんの持ってる漫画だと、付き合うどころかもっと凄い事も……」

 赤い顔を更に赤らめ、妹がのたまう……

「まて、俺の漫画って……なに見てるんだああああああ!!」
 妹の両肩を掴み俺は声をあらげた

「なにって、ベットのマットレスの下にある」
 その近い顔を嫌がりもせず平然と答える妹、いやそう言う問題じゃない!

「言わんでいいいいいいいいいい、てかそれは作り話、現実では無いの!
 ついでに探し物は定番のベットの下で諦めろ、てか勝手に部屋に入るな、そして探すな!」

「えーーーでもネットとかでも、兄妹で付き合ってますとかって」

「もう何処から突っ込んでいいかわからねえ、わかったもうそれ以上言わなくて良い……」
 頭が痛くなってきた俺は、こめかみに指を当てつつ何とか答えた

「じゃあ私と付き合ってくれる?」

 真剣な目で見つめてくる妹、その瞳は涙で溢れている。
 別に嫌いではない、むしろ可愛いとは思うが、それはあくまでも妹として

 しかし、ここまで思い詰めた表情の妹は今まで見たことがない……
 そして生まれて初めての告白、傷付けない断り方なんて想像もできない俺は……


「考えさせてくれ」

 ヘタレラノベ主人公の様な答えを選んでしまった。


 どうするか……、とりあえずはエロ本の隠し場所変えないと……











 名前   長谷川 栞
 バスト  お兄ちゃん以外は内緒
 ウエスト お兄ちゃんにだけ教える
 ヒップ  お兄ちゃんに測って貰う
 好きな物 お兄ちゃんの好きな物
 嫌いな物 お兄ちゃんの嫌いな物
 趣味   お兄ちゃんのお部屋探索 お兄ちゃん絵日記を書く事。
 特技   お兄ちゃんの事は何でも知っている事、お兄ちゃんの為にコーヒーを入れる事










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