クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

文字の大きさ
上 下
98 / 99

泉の本質

しおりを挟む

 泉は昨日寝ていないと言っていた、そして僕もあまり寝れていない、とりあえず「少し寝て落ち着こう」と言って泉を自室に行くように、寝る様に言った。

 いや、まあそう言って直ぐに出ていったわけではなく、凛ちゃんの家で寝なくて何をしていた? とか、昨日の凛ちゃんの事とか何で凛ちゃんの家に行ったのか? とか、ミイちゃんの事とか、根掘り葉掘り聞かれた……。

 泉には、本当に何も無かった事を……特にミイちゃんには興味は無い! ロリじゃない! と言う事を強調しておいた。

 本当に興味無いんだからね! 仮にミイちゃんがメイド服を着ても……ミイちゃんがメイド服……ロリメイド……可愛いかも…………いやいや。

 そして最後に今日の事をもう一度謝った……もう二度としないと言って、泉に謝った……でも……泉は僕に謝られても何の事やらと、キョトンとした表情をしていた。

 僕は、泉の事が好きだ……やっぱり諦められない……でも……。

 あんな事を……ベットに押し倒すなんて事をしたのに、何でもない顔をしていた泉……僕は今日少しだけ……ほんの少しだけ……泉が怖くなった。


 とりあえず僕は泉を自室に行かせ、一人自分の部屋で泉の事を考えていた。

 半年……泉が家に来て、僕の妹になって半年。

 奇跡が起きているのはわかっている。
 片思いの相手と、絶対に手の届かない相手と家族になり、一緒に暮らしているなんて奇跡以外にあり得なかった。

 そして半年……僕はこの生活に慣れたばかりに、さらに上を求めてしまった。
 泉の恋人になりたいって。

 そんな分不相応な考えになってしまった。

 僕はベットに寝転びボーッと天井を見上げていた……。
 窓からはどこからか子供のはしゃぐ声が聞こえる、今、学校は冬休み、そしてまだ昼前……。
 その声に少し我に帰った気がした。
 
 昨日から現実離れをしている様な……いや、もうずっと現実じゃない世界にいるような気がしていた、そんな約半年間だった。
 ずっと一人ボッチだったのに……泉と兄妹になり、愛真が帰って来て、凛ちゃんと友達になった。
 
 僕は今凄く幸せなんだろう……去年の僕が今の僕を見たら羨まし過ぎて恐らく悶絶する。


 でも……今、僕は……それほど幸せとは思っていない……。

 
 そして僕は寝返りをうち横向きに寝転ぶ……ベットから微かに泉の香りがする。
 さっき嗅いだ甘い泉の香り……このベットに横たわる泉を思い出す。

 綺麗だった、美しかった、天使の様だった。

 そんな泉を、綺麗な泉を僕は汚そうとした……。

 罪悪感と泉の匂いを感じながら、もうなくなっている温もりを、さっき抱き締められた温もりと柔らかさを思い出しながら……僕は目を瞑る。

 目を瞑りながらこれからの事を考える……。

 やっぱり僕は泉が好きだ……泉を諦めようと、兄妹になろうと頑張ったけど……無理だった……。
 
 一瞬でも妹を襲うとするなんて……全然駄目な証拠だ。

 だから僕は告白した……泉にバカな告白をして終わらせようとした。

 でも……泉は僕の告白を受け入れてしまった……多分……。

 兄からの告白を受け入れてしまう泉……究極のブラコン……。

 今の泉は……多分全てを僕に許してしまう……身体も心も全部……。

 でも……一体それで良いのだろうか? いや、それって絶対に間違えてるよね?
 兄が妹に手を出すとか、どこのエロ小説だよ! それなんて同人だよ!

 だから僕は手を出すわけにはいかない……父さんも義母さんも許す筈がない……。

 でも……。

 泉は究極のブラコン……兄だから好きになる……。
 つまり僕が兄じゃなくなったら……。

 僕は泉の兄にはなりたくない……でも泉は僕が兄だから好きになっている。

「なんなんだよ……一体……」
 
 多分前の……泉の本当の……実のお兄ちゃんが初恋の相手なのだろう……そしてその恋は当然叶わなかった……だから今度は僕で……泉はそういう思いなんだろう……か。

 兄と言う文字が、立場が、泉の恋のフラグ……発動条件……。

 僕はようやく理解してきた……泉という人間の事を。
 はっきり言って……病んでいる……前の兄に心をおかしくされている。
 死んでしまったから……なんだろう……それが恐らく泉の傷に、心の傷になっている。

「それでも……僕は泉が……」

 なんとかしたい……泉の傷を……心を……兄として……家族として……好きな人だから、僕の大好きな人だから……。

 僕はそう思いながら……ゆっくりと眠りに落ちて行った。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。 十分以上に勝算がある。と思っていたが、 「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」 と完膚なきまでに振られた俺。 失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。 彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。 そして、 「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」 と、告白をされ、抱きしめられる。 突然の出来事に困惑する俺。 そんな俺を追撃するように、 「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」 「………………凛音、なんでここに」 その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています

21時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。 誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。 そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。 (殿下は私に興味なんてないはず……) 結婚前はそう思っていたのに―― 「リリア、寒くないか?」 「……え?」 「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」 冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!? それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。 「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」 「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」 (ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?) 結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...