クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

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質問!

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 泉は、今までに見た事のない程の満面の笑みをたたえながら僕をじっと見ている。
 そして、よく躾けられた子供が嬉しさを我慢しているかの様に、正座のまま左右小刻みに身体を揺らす。
「ふふふ、ふふふふ、ふふふふふふふふ」
 さらに聞く人が聞くと不気味な笑い方をし始める泉……完全にキャラがブレている様な気が……。

「えっと……その……楽しそうですね……」
 さっき泣き喚いた恥ずかしさが、泉を押し倒すなんて暴挙に出た情けなさがこみ上げている僕は、なんとなく照れ隠し、罪の意識を隠すかの様に、そう泉に聞いた。

「はい! だって……お兄様と相思相愛になれたんですもの」

「……相思相愛」
 あくまでも兄として、という枕営業……違った枕言葉がつくのだが、泉にとって兄と言うのは最上級の相手……他の誰よりも……好きって事では今の僕と変わらない……変わらないんだけど……。
 
 でも……これって喜んでいいのか本当にわからない……。
 何故なら、そこに僕の人格が存在しているとは思えないから。
 
 
 つまり……泉は兄ならば、誰でもでも良いって、誰でも良かったという事なのだから。

「お兄様……」
 泉はそう言いながら膝の上で手を合わせもじもじとしだす……。可愛い、その仕草も態度も声も全てかわいい……けど。

「えっと……あのね……その……もし父さんと義母さんが結婚してなかったら、僕たちは兄妹にならなかったんだよね? そうしたら泉は僕の事を好きにならなかったって事だよね?」
 もう、いたたまれなくなり僕は泉にそうはっきり聞いた。

「!なんて事を! ありえません! 運命は変えられないんです! つまり私たちは最初から、そう……あの受験の日から、こうなる運命だったんです!」
 泉はそう言って強くこぶしを前に突き上げる……。
 なんか、さっきまでのシリアスな展開はなんだったんだろう……僕はすっかり涙が出なくなった目頭を軽く押さえた。

「そうしたら……えっと、泉は僕のなにが好きなのかなあ?」
 ああ、もう全部聞いてしまえとばかりに立て続けに泉に質問をかます。

「全部です!!」

「いや、えっと……その中でも?」

「そうですねえ……お兄様はお優しくて、思いやりがあって、かっこよくて、お兄様で……だから全部好きです! 大好きです!」

「あ、うん……ありがとう……やっぱりお兄様だから……」

「ああ、まだ言い足りないので、もっと言ってもいいですか?!」

「あ、うん……えっと……それはまた今度で……」

「そうですか……残念です……」
 しょんぼりする泉……なんか性格まで変わってない?

「ああ、そうです……お兄様! 私も質問してもよろしいですか?」
 俯いていた泉が思い出したかの様に、僕にそう言って来た……まあ僕ばっかりじゃ駄目だよね……泉もなにか聞きたい事があるだろうし……。

「えっと……うん、いいよ」
 僕は泉と同じく正座をして姿勢を正してそう聞いた。
 泉の好きな所なんていくらでもあるし……でも泉は僕の思っていた事と全然違う……いや。、ある意味必然とも言える質問をしてきた。

「ありがとうございます。えっとお兄様……さっき抱き付かせて頂いた時、いつもとは違う香りがしました。家のシャンプーとは違う香りが……昨日はどちらにいらっしゃったのですか?」

「え! あ……えっと……漫画きっ……」

「それとこの背中についていた髪の毛はどなたの物ですか?」
 僕がそう嘘を付こうとするのをかぶせる様にいつのまにか指で掴んでいた髪の毛を僕の前に見せつける。

「え!」

「しかも2種類……一本は非常に細いんですが……」

「2種類……細い」
 さっき抱き付いた時にそこまで僕の身体を隅々まで観察をしていたって事なのか? それとも鎌をかけているのか?

「私……さっきお兄様をお迎えに行こうと思っていたんです……昨晩色々多方面に電話かけたり、少しお婆さまの力をお借りして調べたりして……お兄様が行く所はいらっしゃる所ははもうあそこしかないと思って……」

「……えっと……それは……どこかなあ?」

「……凛さんの、一萬田さんの家です!」

「……」

「昨日一萬田さんの家に泊まられましたね?」
 某名探偵も真っ青の推理……てか、まさか携帯に何か仕掛けが?
 昨日凛ちゃんの家で携帯の電源を切ったので、まさかお婆さんの力……財力を使ってそれを調べたとか?
 背筋が凍る思いとはこの事か……僕はもう嘘はつけないと観念したが、とりあえず見の潔白を晴らすべく言い訳をした。
 
「ち、違う! いや、そうだけど! 二人っきりじゃなかったから! 神に誓って!」

「そうですか……それではどなたと?」

「えっと……そう! ミイちゃん! ミイちゃんっていう凛ちゃんの妹と一緒に泊まったんだよ! 本当に!」

「ミイちゃん……まさか女性二人とだったなんて……」

「いやいや、ち、ちがう、いや、違わないけど……ミイちゃんは子供、小学生の小さい女の子だったから!」
 僕は慌ててそう言った、二人きりじゃない、ましてや女性二人とでもないと、だって本当の事だし、なにも……やましい事は無かったし。

「うううう……私が……あんなにお兄様の事が心配で心配で……全然眠れなかった時に……お兄様は楽しくお泊り会だったんですね……」
 今度は泉がメソメソと泣き出す……いや、楽しくは、なくななかったけど……あれはどっちかと言うと……。

「違うんだ! その、凛ちゃんはミイちゃんが苦手で、妹が苦手で一緒に居てくれって言われて、だから……ああ! そう、ベビーシッターみたいな事で、大変だったんだ! そう、ミイちゃんと遊ばなきゃいけなかったり、お風呂に入れたり……あ」

「……お風呂? お兄様いま……お風呂に入れたって」

「いや、違う、子供だから、子供をお風呂に……」

「小学生の女の子とお風呂に? へーーー……そうですか……」
 泉はそう言うと僕から少しだけ……ほんの少しだけ身体を遠ざけた……。

 ああ、泉が……泉の目が……蔑んだ目に変わった……さっき泉は一度として僕をそんな目で見た事は無いって言って言ったのに……。

「えっと……いや、その……」
 違う、違うんだ、僕はロリコンじゃない……違うんだあああああああああ!!



 


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