クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

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愛真とみかんちゃん

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 喫茶店で愛真と別れた……いや、分かれた、解れた?

 もう頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。

 愛真から正式に交際を申し込まれるなんて思ってもいなかった。

 前回の告白だって、なんかの間違いの様な、抱き合った勢いみたいな……そんな夢の中の話の様だった。

 愛真とは泉以上に兄妹の感覚だった。

 親友……兄妹……いや、僕は愛真の事を女の子として意識していなかった……。
 だから兄妹ではなく兄弟と思っていた。

「あんなに胸が大きくなるなんて……」
 小学生の愛真は本当に男の子のようだった……でも今は……どこから見ても女の子その物だ。

 正直……愛真の告白で僕の心は凄く揺れていた……でも……泉がいたから……だからごめんなさいって……でも僕はもう泉の事は泉との事は諦めた……もう泉は僕の妹なのだ。
 
 つまり今、僕は好きな人がいない状態だ。

 そして今日また愛真に告白された……2回目の正式な告白……。

 でも……だからといって……愛真と付き合うなんて今まで想像した事もなかった。

「ど、どうしよう……」
 正直嬉しい……自分の事を好きだと言ってくれた事を、必要とされた事を、僕は今、天にも昇るくらい嬉しかった。

 カースト最底辺の僕が女の子と付き合うなんて……あり得ないって思ってた。

 泉が僕の妹になり……あのカースト最上位の女の子が僕に尽くしてくれ、僕はこの数ヶ月勘違いをしていた。

 ひょっとしたら……って……。

 それは今、勘違いってわかった……泉は僕を男として認識していない……いや、それどころか僕を佐々井真として認識していないかった。

 泉は僕を兄としか、死んでしまった兄の代わりとしか認識していなかった。

 始めから……僕にはチャンスなんて無かった……泉にとって僕は僕自身はクラス最底辺の存在でしか無かった……。

 だから僕は……泉を諦めた……。

 でも……良いのか? だからって……このまま愛真と付き合って……。

 忘れた筈なのに、諦めた筈なのに……なぜだかさっきから泉の顔がやたらと頭に浮かぶ。
 
 寒空の中僕は立ち止まり冷たくなった手に息を吐く……北海道はもっと寒かった……あの屋敷の中は暖かったけど……皆の心は冷めていた……泉とお婆さんの間も何か冷めた雰囲気があった。

 あの冷たい空気……泉のお兄さんが原因なのは明白だった……泉のせいで亡くなったと言っていた……と、泉自身が言っていたけど……。

 その理由は聞けなかった……泉も自ら言うことはなかった。
 「直接的な原因があるとは思えないけど……」

 お婆さんの話を聞いてわかった。

 お兄さんが居れば泉は自由だったって事が。

 お兄さんが居なくなった今、泉はお婆さんの跡を継がざるを得なくなった。

 泉が跡を継いだら………………あのメイドさんは泉が主人になるって事か……。
 本物のメイド様の主人…………いやいや、僕は何を考えているんだ? 今シリアスな雰囲気なのに……。
 
 僕は頭を降って煩悩を追い払う……メイドさんの事は考えない考えない。

 頭を降ってメイドの事は忘れ……忘れ……あれ? 遠くから僕の方に向かってメイド服を来た人が歩いて来る、いやコートは羽織ってるけど僕くらいになるとコートから出ている裾や袖部分でメイド服だってわかってしまう。

「あれ? 真君? こんな所で何してるの? ストーカー?」
 メイド様が僕に話しかけて来た……あれ、このスタイルは!

「…………み、みかんちゃん!」

「いや……私の顔を見てから名前呼んでよ……」

「……あ、みかんちゃん」

「……相変わらずのメイドバカか……」
 だって……みかんちゃんのメイド姿は日本一だから……つい……。

 本物以上の本物がここにいる……。

「それで? 私に何か用?」

「え?」

「え? じゃないわよ……人のマンションの前でウロウロして、本当にストーカーなの? きもーーーーーい」

「あ、いや……えっと……」
 そう……僕はふらふらと歩いていただけだった、何も考えず……いや、愛真や泉の事を考えていただけ……周りを見渡すと……見覚えが……。

「────もう……すぐそんな顔するから……いらっしゃい、コーヒーくらい出してあげるから」
 みかんちゃんは持っていたバックから鍵を取り出すと僕の前でチャラチャラと小とを鳴らして振った。

「え! 良いの?」

「良いも何も前に普通に入ってるでしょ?」

「あ、うん……じゃあ」

「……ふーーん」

「え?」

「ううん、何でも」

 みかんちゃんはそう言うと僕を見ずにマンションの中へ入っていく……そう言えば……僕は凛ゃんにも告白されていた事を思い出す。

 このマンションで告白され、ホッペにキスをされた……。
 そう思った瞬間、顔が火照った……頭の中が今度は凛ちゃんで一杯になった。

 そうだ……僕なんかを好きだって言ってくれる人が二人も居たんだ……。

 そう思ったら、心が軽くなった……泉に認識されていないってわかったあの時、僕の心は完全に凍った。

 それを愛真がさっき融かしてくれた、そして今……凛ちゃんも……。

「おーーい、真君入らないの?」
 凛ちゃんが自動ドアの前で僕を呼ぶ……僕を見て僕を認識して、僕を呼んでくれた。

 その瞬間僕はわかった……愛真にすぐに返事が出来なかった理由が……。

 そうか……僕は今……いや……前から……泉だけじゃなく…………。

 
 二人に恋をしていたんだって事が……。

 
 だから僕は……泉を諦められたんだって事が……今はっきりとわかった……。

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