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私のせいで……
しおりを挟む「えっとじゃあ寝よっか」
「はいお兄様」
「……」
「……」
「お兄様?」
寝ようと言った僕は動かなかったので泉が僕を見て首を傾げる。そう僕はこれから泉にとんでもない事を言おうとしている。
「えっと……ベットが2つあるけど……」
「申し訳ありません、このお部屋は来客用のお部屋なので、お兄様のお部屋は今準備しております」
「あ、うん……ありがとう」
「? お兄様?」
言うのか……僕は……泉は断らない……だからって何かする訳じゃない……でも……。
「あの……泉……眠くなるまで、話したいなって……」
「はい、良いですよ、そもそもお兄様に私の事を知って貰う為にここに来て貰ったんですからね」
笑顔でそう答える泉、そうなんだこの旅は、北海道まで来た意味は、泉の過去を知る為……。
「えっと……それで……その……ベットがちょっと離れてるじゃない?」
「そうですねえ」
「だから……あの……えっと……い、一緒に……寝ながら話そうかなって」
うわあああああああ、ぼ、僕は、な、何を言ってるんだ……これだけ広い部屋、隣に誰が居るわけでも無いのに、そんなのちょっと大きな声で話せば良いのに……泉は僕を見てキョトンとしている。そ、そうだよね、いくら兄妹になったからって同級生と一緒のベットで寝るって……そんなの……いくらなんでも断るよね、ご、ごめんなさい、ごめんなさいいいいい。
「うふふふ、楽しそうですね、良いですよお兄様」
「…………え?……良いの?」
「はい勿論ですわ、お兄様」
泉は立ち上がり隣のベットから枕を持って僕のベットに戻ってくるとそのまま枕を並べ布団中に入った……。
「お兄様?」
「あ、うん……」
泉に促され、布団を捲り中に入ると、すぐに泉の香りに包まれた。
甘い香りが脳を刺激する。うわ、うわ、うわあああああああ……。
泉と……好きな人と一緒のベットに寝ている……そう考えただけで頭がクラクラする。
「お兄様、電気はどうします?」
「えっと……!!」
そう言われ横を向くと目の前に泉の顔が……ち、近い……か、可愛い……。
お風呂上がりの泉は何度か見ているけど、こんな近くで見たの初めてかも知れない……うわうわうわわわわわ……。
「どうしました?」
「う、ううん、な、なんでも……じゃあ少し薄暗くして……下さい」
「はいお兄様」
そう言うと泉はベットの脇に置いてあるリモコンで部屋の明るさを下げた。
明るいと恥ずかしいと思ったが、明るさが落ちるとかえって変な気分になる。
いや、別に変な事をする訳じゃない……僕達は今兄妹なんだ……幼い兄妹が一緒に寝る、多分泉はそんな感覚なんだろう……でも僕は……。
「なんだか懐かしいです……こうやって誰かと一緒に寝るって」
泉は天井を見上げそう言った。僕も同じ様に上を向く、高い天井、高そうな電灯がうっすらと自身を照らしその影を映していた。
「一緒に……それって……」
「――そうですね……私の…………お兄ちゃん……と……以来です」
「…………泉のお兄さんて……死んじゃったんだよね?」
「――――はい…………私のせいで……」
「……え?」
「…………私の我が儘のせいで……」
泉はそう言った……自分のせいで兄が死んだと……。
「泉の……せいで?」
そう言うと泉は寝返りをうち僕の方を向いた……その顔は凄く寂しそうで、悲しそうで儚げで……そして物凄く美しい顔をしていた。
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