63 / 99
メリークリスマス
しおりを挟む今日はクリスマスイブ……クリスマスは僕にとってイベントと言うよりは、そろそろ年末、1年を振り返る日という位置付けだった。
と言うわけで振り返ると、今年はとんでもない1年になった。恐らく僕の人生で1番凄い1年だった。
まず最大の出来事は、あの憧れの天使、薬師丸 泉が僕の義妹になった事だ。
入学試験の日に出会い、ろくに話も出来なかった、とてつもなく遠い存在の泉とまさかの兄妹に……
さらに大ファンのメイドアイドルみかんちゃんが実はクラスメートの凛ちゃんだった事は泉に次いで驚異の出来事だ。しかもまさか友達になれるなんて
最後に愛真が帰って来てくれた事も凄い出来事だった。もう一生会えないと思っていただけに凄く嬉しい出来事だ。
僕は今年二人の友人と一人の家族が出来た。しかもタイプは違えど三人共に可愛くて美人だ。
僕には勿体ない位の友人と義妹、この三人と今年関われた事は僕の人生にとって最も劇的に変化した事だった。
僕は今こんなにも幸せなのに、今までと比べたらとんでもなく幸せなのに、これ以上の幸せを求めてしまった。
『クリスマスに誰かと過ごしたい』
そんな分不相応な事を考えてしまった。
いや、今までだって父さんと過ごした事もあるし、愛真の家に招かれた事もある。ずっと一人だったって意味ではない。
でも今年は……この中の誰かと一緒にクリスマスを祝うんだろうって……そう思っていた、また勝手に思い込んでいた。
結局、僕は部屋で一人某掲示板にて書き込みをして、一人クリスマス廃止運動を行っていた。
「もうそろそろ泉が帰ってくる頃かなぁ?」
パソコンに向かい真剣書き込みをしながら、頭の片隅ではそんな事を考えていた。
そうなんだ、そうは言っても朝までずっと一人じゃないってのが僕の唯一の救いだ。
いや、……僕はまだひょっとしたらって思っている。
そう、泉だ、泉が何かサプライズ的に僕とクリスマスを過ごしてくれるんじゃないか? と言う淡い期待を抱いている。
『クリスマスとかマジでケーキ屋の陰謀、そもそもなんでイブに祝ってるの?』
等々夢中で某掲示板に書き込んでいると、スマホにメールが、僕にメールを送る人なんて限られている。慌てて確認すると泉からメールが……
『お兄様、少し帰りが遅くなり、お友達の家に泊まるかもしれません、お食事は冷蔵庫に入れて置きましたので食べてください、お兄様の好きな物をお作りしておきました、時間が経つと味が落ちるのでなるべく早く食べてくださいね』
「え、ええええええええええええ」
ほ、本当に? 帰りが遅く……いや、泊まりって……イブに泊まり……そんな……まさか……
ひょっとしたら友達って……嘘では……そ、そんな……
泉にひょっとして彼氏が、僕は一瞬そんな考えが浮かんだがそれを打ち消した。それは無い、仮にそう言う人が出来たなら僕に報告するはず、それだけは信じられる。それだけは兄として、僕の後ろにいるだろう僕を通して見ているはずの亡くなった泉の本当の兄として……
しかし、ショックだったのは間違い無い……やはり僕は一人なんだ……って思わされた。
「そんな……そんなあああああ」
最後の望みも消えた。泉と二人きりのクリスマス……でも、でもこれで良かったのかも知れない……だって泉は……僕を見ていないんだから……
「――うん……そうだね……クリスマスイブに泉と二人きりって、ちょっとハードル高すぎだよね……」
僕はパソコンの電源をオフにして席を立つ。夕飯を食べないと……せっかく泉が用意してくれたんだから。
冷えきった家の階段、12月24日クリスマスイブ、家に一人……僕は冷たい階段を一歩づつ慎重に降りていく、だいぶ良くなった膝も下りではまだ若干の痛みが走る。
1階に降りると僕はそのままキッチンに向かった……そう言えば僕の好きな物ってなんだろう? 早く食べないと味が落ちる?
泉のメールに疑問を持ちつつそれが一体なんなのか? 考えながらキッチンの扉を開けた。
「「メリークリスマス! ご主人様!」」
開けた途端にキッチンの電気が点灯し、僕の目の前にメイド姿の美少女が三人…………え?
「真ちゃん! メリークリスマス、クリスマスパーティーと真ちゃんの快気祝いだよ~~~」
「お兄様……騙してごめんなさい、お二人がどうしてもと言うから……」
「あははははははは、何その顔、キモ~~~い」
「え? ええええええええええ!」
「あはははははははは、二人にうちのお店のから借りてきたメイド服貸したの、佐々井君の大好物でしょ~~~♪」
「お、お兄様……どうですか? 似合います?」
「凄いねこれ、なんか本物って感じで、どう? 真ちゃん似合う?」
3人がみかんちゃんのお店のメイド服を着て僕の前に立っている。前に泉が着てくれたなんちゃってメイド服ではない本物のメイド服……僕の好物って……これ?
「――うん……似合う……に……ははっ、あははは、あははははははは」
僕が笑うと三人は同時に微笑んだ……クリスマスイブに三人……さっきまで一人寂しく過ごすと思っていたクリスマスイブ……に……
「はははは、はは、は…………ふ、ふええええええええええええええええん」
僕は笑いながら泣いていた、泣いてしまった。 やはり僕は一人なんだって思ってたから、今後もずっと一人って思ってしまったから、だから嬉しいのと同時にホッとしてしまった。
「お、お兄様?」
「真ちゃん!」
「あーーーあ、また泣いちゃった……」
「だっでええ、皆……酷いよおおおお、でも、でも、嬉しい、凄く……う、嬉しいよおおおおおおおおお」
僕は三人に構わず泣き続けた。だって、だって、また三人と一緒に居られるから、あの楽しかった遊園地の時の三人、僕の大切な大事な三人……またこの三人で一緒に遊べるなんて、しかもクリスマスイブに、しかもメイド服で、僕は唐突に来たプレゼントに、サンタクロースからの贈り物に涙が止まらなかった。
僕への贈り物、メイド姿の三人の天使達は、そんな僕を慈しむ様にじっと見つめてくれた。
僕が泣き止むまで暫く何も言わずに見つめてくれた。
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
男がほとんどいない世界に転生したんですけど…………どうすればいいですか?
かえるの歌🐸
恋愛
部活帰りに事故で死んでしまった主人公。
主人公は神様に転生させてもらうことになった。そして転生してみたらなんとそこは男が1度は想像したことがあるだろう圧倒的ハーレムな世界だった。
ここでの男女比は狂っている。
そんなおかしな世界で主人公は部活のやりすぎでしていなかった青春をこの世界でしていこうと決意する。次々に現れるヒロイン達や怪しい人、頭のおかしい人など色んな人達に主人公は振り回させながらも純粋に恋を楽しんだり、学校生活を楽しんでいく。
この話はその転生した世界で主人公がどう生きていくかのお話です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この作品はカクヨムや小説家になろうで連載している物の改訂版です。
投稿は書き終わったらすぐに投稿するので不定期です。
必ず1週間に1回は投稿したいとは思ってはいます。
1話約3000文字以上くらいで書いています。
誤字脱字や表現が子供っぽいことが多々あると思います。それでも良ければ読んでくださるとありがたいです。
俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前。でも……。二人が自分たちの間違いを後で思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになる。
のんびりとゆっくり
恋愛
俺は島森海定(しまもりうみさだ)。高校一年生。
俺は先輩に恋人を寝取られた。
ラブラブな二人。
小学校六年生から続いた恋が終わり、俺は心が壊れていく。
そして、雪が激しさを増す中、公園のベンチに座り、このまま雪に埋もれてもいいという気持ちになっていると……。
前世の記憶が俺の中に流れ込んできた。
前世でも俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前になっていた。
その後、少しずつ立ち直っていき、高校二年生を迎える。
春の始業式の日、俺は素敵な女性に出会った。
俺は彼女のことが好きになる。
しかし、彼女とはつり合わないのでは、という意識が強く、想いを伝えることはできない。
つらくて苦しくて悲しい気持ちが俺の心の中であふれていく。
今世ではこのようなことは繰り返したくない。
今世に意識が戻ってくると、俺は強くそう思った。
既に前世と同じように、恋人を先輩に寝取られてしまっている。
しかし、その後は、前世とは違う人生にしていきたい。
俺はこれからの人生を幸せな人生にするべく、自分磨きを一生懸命行い始めた。
一方で、俺を寝取った先輩と、その相手で俺の恋人だった女性の仲は、少しずつ壊れていく。そして、今世での高校二年生の春の始業式の日、俺は今世でも素敵な女性に出会った。
その女性が好きになった俺は、想いを伝えて恋人どうしになり。結婚して幸せになりたい。
俺の新しい人生が始まろうとしている。
この作品は、「カクヨム」様でも投稿を行っております。
「カクヨム」様では。「俺は先輩に恋人を寝取られて心が壊れる寸前になる。でもその後、素敵な女性と同じクラスになった。間違っていたと、寝取った先輩とその相手が思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになっていく。」という題名で投稿を行っております。
好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?
すず。
恋愛
体調を崩してしまった私
社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね)
診察室にいた医師は2つ年上の
幼馴染だった!?
診察室に居た医師(鈴音と幼馴染)
内科医 28歳 桐生慶太(けいた)
※お話に出てくるものは全て空想です
現実世界とは何も関係ないです
※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます
3年振りに帰ってきた地元で幼馴染が女の子とエッチしていた
ねんごろ
恋愛
3年ぶりに帰ってきた地元は、何かが違っていた。
俺が変わったのか……
地元が変わったのか……
主人公は倒錯した日常を過ごすことになる。
※他Web小説サイトで連載していた作品です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる