クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

文字の大きさ
上 下
61 / 99

皆見てるよ!

しおりを挟む

「ふーーん、そうなんだ」

「うん……」

 翌日学校での昼休み、僕は凛ちゃんといつもの中庭でお昼を食べていた。
 凛ちゃんは朝から僕の様子がおかしいのに気付いたらしく、昼休みに僕をここに連れて来て話を聞かせろと言ってきた。

 一瞬戸惑った、言っても良いのだろうかと、しかし僕は素直に昨日の顛末を全部凛ちゃんに言った。口が軽いって? だって凛ちゃんに嘘は付けない、怖いってのもあるけど、嘘は全部バレてしまうんだ……


「愛真さんに関しては真君が悪いよ、二人は家族じゃないんだから、そんなのただの勘違いだよ」

「うん、今はわかるよ……僕を一緒に連れていくわけには行かないって事ぐらい、単なる僕の勘違い、わがまま……でも……何も言ってくれなかったのは……正直今でもわだかまりがあるよ」

「――そうだねえ、でも……それもわかる気がするなぁ……中々言いづらいよね、真君って友達居ないからね~~」

「ええええ?」

「えーーーだってさあ、友達全然居なかったんでしょ? 愛真さんだけだったんでしょ? 私が居なくなったら真君どうなっちゃうんだろ、もしかして泣きながら私を追いかけて来るかも、困るううう~~みたいに思うんじゃない?」

「し、しないよ!」

「あはははは、でも……愛真さんなりに悩んでそうしたんじゃないかな、仕方ないよ子供だもん、嫌な事は言えないよ」

「うん……」

「それで泉さんが泣いてた理由がわからないって?」

「うん」

「うーーーーん、馬鹿なの真君?」

「えええええええええ!」

「愛する人が、家族が亡くなったんでしょ? 泣くに決まってるじゃない」

「いや、それくらいわかってるよ、でも、なんであのタイミングなのかなって」

「タイミング?」

「うん、泉って裏表無いって言うか、いつも明るくて優しくて、だから少しショックで、本当は……誰も居ない時は、ああなのかなって」

「ああ?」

「僕が居ないから泣いてたのかなって」

「なにそれ自慢?」

「ちが、違う……自慢とかじゃなくて……泉は僕で紛らわしてたのかなって、寂しいとか悲しいって事を」

「――それで?」

「僕に向けてくれていた優しさとか実は全部嘘で、僕じゃなくて僕を通して死んだ泉のお兄さんに対してやっていたのかなって」

「うんうん」

「僕自身は? 泉は僕の事を見てくれていないって、お兄さんの代わりってだけで、その……僕である意味はないんじゃないかなって……」

「あははははははは」

「そこで笑う?」

「だって、面白いんだもん」

「酷い!」

「あのね、まず一つ、裏表の無い人なんていないよ?」

「え?」

「誰に対しても裏表の無い人なんて存在しないの、人は必ずなにかを隠すの、全てオープンなんて人いたら見てみたいよ」

「そうなの?」

「それはそうでしょ? 真君私に隠し事してない?」

「え? 特には……」

「そう? じゃあなんでも隠さずに全部言える?」

「それは…………言えない……事も」

「でしょ?」

「で、でも……泉はずっと元気でずっと明るて、誰に対しても優しくて」

「うんうん」

「だから……」

「あのさ、私前に言ったよね? 泉さんは嘘つきだって」

「え?」

「あの子は嘘つきだよ、人にも自分にも」

「自分にも」

「そう、自分に嘘をついてる」

「どういう事?」

「さあね~~どういう事かな~~?」

「ええええ、なにそれ」

「それにしても、真君ってこの数日で随分と自信がついた事ですなぁ」

「自信?」

「うん、まあ愛真さんと私と泉さんって美少女三人に囲まれれば自信がつくよね~~」

「それ自分で言う? いや、そんな自信なんて全然」

「そう、だって真君って透明人間なんでしょ? そんな事言ってたのに、僕を見くれないって、あはははははは」

「あ……」

「自覚してなかったんかーーーい」

「…………うん」

「あははは、大丈夫だよ、今はちゃんと見てるよ、愛真さんも、泉さんも、そして……私も……ね」
 凛ちゃんはそう言って僕を見つめてくれる……じっと僕の目を、その綺麗な瞳の中に僕がいる。凛ちゃんの中に僕がいる……

「凛ちゃん……」

「あはははははは、やだああ、真剣な顔しちゃって~~」
 真剣な顔から一転いつもの笑顔で僕の肩をバシバシと叩く凛ちゃん、いや、ちょっと、痛い……

「――いや、えっと……あのさ」

「ん?」

「その……ありがと」

「なにが?」

「ううん、言いたかっただけ」

「あはははははは、なにそれ、キモーーい」

「酷い!」

「あはははは、さあて、じゃあそろそろ教室戻ろっか」
 凛ちゃんはそう言うと立ち上がり僕に手を差しのべる。その差しのべられた手を僕は握る……暖かい手……凛ちゃんの暖かさが心の暖かさが伝わってくる。

「あのさ凛ちゃん」

「うん? なあに?」

「ううん……なんでもない」

「そか……」
 凛ちゃんに支えられながら教室に戻る。今、色んな意味で僕を支えてくれる凛ちゃん……僕は今、凛ちゃんの事が、どんどん好きになっている。もちろん友達として……だけど、でも凛ちゃんは僕の事をどう思っているんだろうか?

 そして……泉は……凛ちゃんの言ってる通り、本当に僕の事を見てくれているんだろうか?
 




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。 妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。 しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。 父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。 レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。 その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。 だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...