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酷い友人関係
しおりを挟む「…………」
「…………」
どれくらいの時間が経ったか……僕と凛ちゃんはようやく泣き止む。
凛ちゃんは持っていたハンカチで顔を覆っていた。
「ううう、佐々井君のせいで化粧完全に崩れちゃたよ~~もう最悪」
「ご、ごめん」
「ちょっと向こう向いてて直すから」
「あ、うん」
僕は凛ちゃんの反対方向を向いた、ごそごそとカバンを漁る音、そしてパチンパチンと何かが開く音がした。
「はあ~~~~、よし! 良いよ」
「……うん」
振り返るとそこにはいつもの学校での凛ちゃんがいた。
赤い分厚いメガネ、髪型も髪の色もみかんちゃんだけど、顔は、表情はいつもの委員長、学校での凛ちゃん……
「これが私……本来の姿……みかんは作った私なの……ごめんね」
「ううん」
僕は何も言わずにただ首振った。どちらが良いなんて思わない、どちらも僕の友達の姿だから……
「私ね……佐々井君の事ずっと見てたの……佐々井君を見て思った、ああ、私が居るって……一人で周りを避けるようにしていた、中3の頃の私だって……虐められない様に周りから隠れる様にしてるって……」
「あははは……凛ちゃんには見つかってたか……僕ね、透明人間だったんだ……透明人間の様に見られない様に目立たない様にずっと過ごしてた、小学生の頃からずっと……」
「ごめんね、私、正直言って佐々井君の事可哀想って思った、思ってた。佐々井君の事を見て私、自分が可哀想って、あの頃の私可哀想って、蔑んでいた……でも……佐々井君が……泉さんと兄妹になった時に、ずるいって思った」
「ずるい?」
「うん……だってそんな偶然な……宝くじの様な偶然な事で今の状態から脱却出来るなんてって……私の今している努力ってなんなのって……ズルいって思った……だから……陥れてやろうって……」
「陥れて?」
「本屋で会ったの……あれ偶然じゃないよ……佐々井君がメイド好きって言うの知ってたからね、しかも極度に、だから絶対に本屋に来るって思って待ち構えてたの」
「ええええ! で、でも! 僕の事知らない振りって言うかなんか微妙に知っている振りって言うか」
「私の演技力舐めないでよね、みかんで、メイドで、演技だけで全国1位になったんだよ」
「演技……」
「佐々井君なら気付かれても誰にも言わずにいてくれる、そう仕向ける事も出来るって思った。そして佐々井君が泉さんの兄妹である佐々井君が私に夢中になれば、うちのクラスでの地位も保証されるかなって、案の定私の所に来たけど、まさか友達になってくれって言われるとは思わなかったけどね」
「そうなんだ……でも僕が凛ちゃんに夢中なってもうちのクラスでは変わらない気が」
「そんな事無いよ、実際泉さんは動いたんだから……でも悪い方向に動いたんだよね、失敗したな~~」
「失敗?」
「そう……大失敗……まさかね……」
「まさか?」
「うん、泉さんが……そこまで……そこまで佐々井君の事を好きだったなんて思って無かった」
「え!」
「兄妹じゃない……あなた達は兄妹じゃなかった……騙されたよ」
「兄妹じゃない?」
「うん、だって私、妹の事好きだけど、でも妹に彼氏が出来たからって、その彼氏の素性を調べるなんてしない……普通兄妹でそこまでなんてしない、ましてやあなた達は兄妹になったばかりなのに……」
「……兄妹じゃない」
「だから嘘つきだって、泉さんは嘘つきだって、まあ私が言うなって話だけどね」
「嘘……」
「折角泣いてくれたけど、私本当はこういう女なんだ、幻滅したでしょ、ついでに言うとお客を取ったって話しも本当だよ、奪い取ってやった、実力でだけどね」
「実力」
「どうせ身体を使ってとか言ったんでしょ? さっきも言ったけど私の身体に価値なんてないからね……まあ」
そう言うと凛ちゃんは僕の手の甲に自分の手を重ねる。そして僕を見つめながら言った。
「お客様……みかんを応援してくださいますか? って事くらいはしたかな? あはははは男って単純~~~皆これぐらいでコロッと騙される」
「みかん……ちゃん」
「あーーーあ、全部ばらしちゃった、本当大失敗、佐々井君も私の作戦通りお客になってくれたのにね~~」
「お客……」
「そう、ただのお客……だから……もう……友達じゃない、だから……もう……私に構わないで」
「やだ!」
「え?」
「やだよ、嫌だ! 言ったよね? 友達になろうって言ったよね?」
「言ったけど」
「はい駄目~~言ったんだから駄目~~」
「そんな子供みたいに」
「子供だもん、凛ちゃんだってまだ未成年じゃん、子供じゃん、だから駄目~~~はい残念でした~~~」
「さ、佐々井君?」
「嫌だよ、僕の大事な貴重な友達なんだから、絶対に絶交なんかしない、凛ちゃんがそれでも絶交したいって言うなら」
「言うなら?」
「ばらしてやる、凛ちゃんがみかんちゃんて皆にばらしてやる、脅しだからね、これは僕がみかんちゃんを脅してるんだ。凛ちゃんは僕に弱味を握られているんだからね!」
「佐々井君?…………うん……そうか……じゃあ……仕方ないか……そうか、酷いね佐々井君って」
「酷いのは凛ちゃんだよ」
「うん……そうだね……私も……佐々井君も、酷いね、最悪な友達だね」
凛ちゃんは笑った、いや、眼鏡でよくわからないけど笑っている様に見えた……さっきまでの悲しそうな笑いではない、メイド喫茶の時の笑顔でもない、これが初めて見る僕が初めて見る凛ちゃんの……本当の笑顔……
「でも……それでも……友達だから……ね?」
「それでも……か…………うん……佐々井君……ありがと」
「うん……凛ちゃんこそ……ありがとう」
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