クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

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火傷の跡

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「嘘…………嘘だ!」

「本当だよ……私はお客さんを取ったし、中学の頃は虐めや……万引きもしてた」

「万引き……」

「そか……泉さんはそこまで言わなかったんだ……優しいね、もっと凄い事まで言われてると思った」

「もっと凄い事?」

「援○とか……ね」

「援……嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ!」

「まあ……それはしていないけど、他はやったよ……本当に」

「な、何で?」

「……お金の為」

「お金?」

「そう、お金が必要だったの」

「何の……お金?」

「仲間で居る為に……二度と虐めに会わない為に……」

「それって……」

 凛ちゃんは僕を見て笑った、こんなに悲しそうな笑顔は見た事が無い。


「…………聞きたい?」

「うん……」



「…………私ね……父親から虐待されてたの、小さい頃に……それで大きな怪我をして、ここ、胸の所に大きな跡があるの」

「跡?」

「うん、火傷の跡……父親に熱湯をかけられてね……」

「そ、そんな……」

「お母さん、そのせいで父親と離婚したの……私に暴力を振るったお父さんから私を守る為に…………そして離婚した後はお母さん一人で妹と私を育ててくれた、一生懸命に…………でも……私ね……この火傷のせいで虐めにあったの……プールの時に皆に見られて……気持ち悪いって」

「この火傷の跡を、お母さんは凄い気にしてた。守ってあげられなくてごめんねって言って傷跡を見る度に言ってくれた……そんなお母さんに私は言えなかった……虐めの事をお母さんに、ううん誰にも言えなかった……知ったら悲しむから……お母さんがまた悲しむから」

「凛ちゃん……」

「虐めは辛かった……本当に辛かった……思い出すのも嫌、もうあんな目には二度と遭いたく無いって思ったの……だから」

「だから?」

「中学に入った時、クラスカーストの高いグループに媚びまくって入った……」

「カースト……」

「そうしたら……その娘達にお金をもって来いって言われたの……持ってきたら仲間に入れてやるって、だからなけなしの小遣いを出した、でも足りないって」

「私がもう無いって言ったら、じゃあ仲間でいられないって……居たければ、弱い奴から借りて来いって」

「借りて来い……」

「返す当てなんて無いよ、犯罪行為、かつあげと一緒……そして更に万引きしてこいって言われて……」

「……」
 僕は何も言えなかった……声が出なかった。凛ちゃんの話は……あまりにも悲しくて、あまりにも壮絶で……

「私はそこまでやってようやく仲間としてグループに入った……クラスカーストトップのグループに、そして小学校の時に私の事を虐めた奴等の上に立った。気持ち良かったよ、あいつら私にヘコヘコして……私ね、小学校の時にやられた事をやり返したりもした……あははは、凄い気持ち良かったな~~、ざまーみろって思った……」

「…………っ」

「中学で私は逆転したの、虐めた奴等を見返したって……私は強くなったって思ってた……でもそれは違った……私が強くなったわけじゃない、そのグループにいたから、私は全然強くなんて無かった」

「ある時仲間に言われたの、金持ちのおじさんを紹介してやるから、お金巻き上げて来いって」

「ふ……」

「私……怖くなった……それは出来ないって、そもそも私……傷が、それを他人に見せるなんて……肌を見せるなんて……出来ない」


「ふっ」


「だから断ったの……」


「ふぐっ……」


「そうしたら、もうお前は仲間じゃないって、あっさりグループから外されそして無視された……私はクラスで……ううん、学校で一人になったの……あ、でももう中3だったし、さすがに受験だし皆内申とか気にしてたからかな? 小学校の時の様な酷い虐めは受けなかったのがせめてもの救いかな?…………ただ私は孤立した、させられた……クラス中が私を無視した……まあ……ある意味虐めだよね……また小学校の頃に逆戻り……今思えば私……仲間として見られてなかったんだろうね、お金目当てのパシりって所? あはははは…………」


「ひっ」

「だから……私……逃げたの……誰もいない所に、私の事を知っている人のいない所にって…………さ、佐々井君?」

「ひっひっひひっ………………うわああああああああああああああああああああああああああああん」

「え、ちょ、ちょっと佐々井君?!」

「凛ちゃん、りんちゃんんんんん、うわああああああああああああああああ」

「ちょっと、ど、どうしたの!」

「ううう、痛かったね……、ふ、ふぐう……つ、辛かったね……、寂しかったね……うわあああああああああああん」

「さ、ささい……君」

「ふ、ふぐう、わ、わかる、わかるよ……僕も、ずっと一人だったから、でもぉ、凛ちゃんは……もっと辛かったよね……わかるなんて言ったら駄目だよね、でも、でもおぉ、う、うわあああああああああああああああああああああん」

「ちょっと……泣かないでよ、何で泣くのよ……、怒る所でしょ……私、佐々井君の……期待を……裏切って……嘘ついて……私……ふ、ふ、ふえええええええええええええええええええええええん」

「うわああああああああああああああああああああああああああああん、りんちゃんんんんん」

「ふええええええええええええええええええええええええええええん、佐々井くんんんんんん」


 僕と凛ちゃんは泣いた、誰もいない公園で、ただただ泣いていた……
 ずっと二人でいつまでも泣いていた。

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