34 / 99
メイド喫茶に行こう!
しおりを挟む「メイド……それは僕の憧れ、メイドそれは僕の命……
いつも一人だった僕、唯一僕に話しかけてくれる人……それはメイド。
メイドアニメやメイド漫画、メイドはいつだって僕の側にいてくれた。
そして僕に語りかけてくれる。「お帰りなさいませご主人様」と、どんな時にも優しくそう呼び掛けてくれる。
その本物のメイドが、いらっしゃる地、それはメイド喫茶!
2次元だけには飽きたらず僕は3次元にも手を出した。『全国メイド喫茶女子決定戦』僕のお気に入りの雑誌の一つ、全国の容姿端麗なメイド達が競い合う、メイド界の頂点、僕はその頂点が働くお店に今まさに足を踏み入れようとしているのだった!」
「佐々井君、きも~~~~い」
「えええええ! ってか僕喋ってた?」
「うん! おもいっきり」
「しまった……モノローグになってなかったか……」
「なにそれ? あ、ほらあそこが私のお店の入口ね」
みかんちゃんが指差す先に大きな看板があり、その看板には数人のメイドが軽く会釈をしている写真が貼られている。
「あそこ? ってええええ? い、一緒に入らないの?!」
「うんだって私従業員だからね~~じゃあお店で待ってるから~~」
「えーーーーー!?」
そう言ってみかんちゃんは手を振りながら従業員入口らしき扉に入って行く……えええ! ま、マジで?
みかんちゃんに誘われ、放課後一緒に下校しここまで来た。当然一緒に入るとばかり思っていたが……最後に放り出された……ひ、酷い……
「そ、そんなああああ……」
自他共に認めるメイド好きの僕が……まあ他に認められた事はないけど……その自が認めるこの僕は、何度も言っているが、今までメイド喫茶に入った事が無い。
その理由はただ一つ!
「怖くて……は、入れない」
今までも何度も店の前まで来た。看板やメニューにトキメキ、宣伝で立っているメイド喫茶のお姉さまからさりげなく頂いたチラシや名刺は数知れず、でも、僕は一度も入れなかった……
『メイド喫茶、入りずらい』とググったら友達と一緒に入るのが良いって書いてあり、メイド喫茶に入るより遥かに難易度の高い事を言われ愕然としてしまった時もあった。
今日は友達兼従業員と言う最強の体制でメイド喫茶に突入出来るとさっき迄意気揚々としていた僕は、みかんちゃんに裏切られ今は完全に意気消沈してしまった。
僕が、この僕が……入るの? たった一人で?
しかもみかんちゃんが働いている喫茶メイドっ子倶楽部、僕は略してメイドっ子喫茶と呼んでいるが、軽い名前とは裏腹に調度品、家具、食器全て高級品を取り揃え、メイドはコスプレで着るような簡易な服では無く、かなり本格的な衣装を着ており、接客も素晴らしいとの事。
みかんちゃんだけでは無く他のメイドの子達もコンテスト上位に名を連ねており、どこぞのヘボ作家のコンテストのランキングとはわけが違う。
ここに来るお客は、皆ご主人様になれると謳われる物凄いメイド喫茶だ。
つまりここに在籍出来るメイドは、ただのメイドでは無い、メイドの中のメイド、メイド様達なのである。
その最強のメイド喫茶に僕が一人で入るなんて、戦車に素手で立ち向かう様なもの……
「ハードルが高すぎる……」
もっと入りやすい所でさえも入れなかった僕が、全国最高峰のメイド喫茶、いや、世界最高峰のメイド喫茶に入るなんて……
「と、とりあえず入口迄は……」
僕はゆっくりと店の入口迄歩く、普通はビルの地下や2階3階にあったりしてどちらかと言えばひっそりした感じであるんだけど、ここは1階、しかもかなりお洒落なビル。それだけでも僕は既に戦意喪失してしまう、が、せめて見るだけでも、みかんちゃんの働いているお店を一目見るだけでもと看板の横をすり抜け、入口の前に立った。
入口に立って驚いたのは まずその豪華な作りの扉だ。
もはや喫茶店の扉では無い、高級住宅の、いや、もう異世界の扉なんじゃないかってくらいの高級な扉、その扉を見て僕は足が震えた。以前に入ろうとしたお店は手作り感満載でどこの学祭? と思わせる程だったにも関わらず僕は入れなかったのに、ここは……
「や、やっぱり止めよう……みかんちゃんには後で謝ろう」
そう思い踵を返そうとした瞬間、その扉が勢い良く開いた。
「お帰りなさいませご主人様」
扉の向こうには丁寧にお辞儀をする二人のメイド様が……ってええええええ!
カメラでもついていたのか? 自動扉だったのか? 僕が踵を返そうと足を少し踏み入れた瞬間に扉が開いてしまった。
「あ、いや、えっと……」
「ご主人様? どうぞ、ここはご主人様のお屋敷でございます、ご遠慮なさらずに」
ニッコリと笑うメイド様、あああ、凄い、後光が差している……ま、眩しい。
「尊い……」
僕はそう一言呟くと、まるであの中学受験の時の様に、泉に導かれた時の様にフラフラと店内……いや、僕のお屋敷に入って行った。
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる