クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

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あんたばかぁ?

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「ぼ、僕は……」

 凛ちゃんが僕を見つめる、僕の憧れ、メイドアイドルの凛ちゃんが僕を。

「そう……せっかく佐々井君と友達になれたと思ったのに……」
 凛ちゃんの目から涙が! ポロポロと涙を流す凛ちゃん。

「あ、え? あれ? えっと」
 え? なに? 何で泣くの? え?

「佐々井君の事……私佐々井君の事……」
 顔を押さえて泣きじゃくる凛ちゃん、え? これって……

 これってつまり……僕は泉が、泉は凛ちゃんが、凛ちゃんが僕がっていう、いわゆるこれが……三角関係って事!!

 あ、愛真はどうでもいいや……

「え、ちょっと凛ちゃん、ごめんね、えっとえっと、その……違うんだ」

「違う?」
 そう言いながら顔を上げる凛ちゃん。ウサギのような真っ赤な目で僕を見つめる、えっと何この可愛い動物は?

「えっと、その実は……実はね……泉が、泉がその……凛ちゃんの事を」

「泉さんが私の事を?」

「泉が……その……凛ちゃんの事を好きなんだ……」

「は?」
「は?」

 ん? あれ? 今なんか声が多重で聞こえたぞ?

「お兄様? 今なんておっしゃいました?」

「え?」
 そう言われ振り向くとそこにはニッコリ笑った泉の姿が、いや、笑ってない、笑ってないよ、目が、目が全く笑ってないよ……


「あ、ああああああ、ご、ごめん、僕、つい」

「つい? つい何ですか?」

「つい、泉の事を、ごめん、ごめんなさい、こういうのは泉が直接言わないと行けない事」

「ですからこう言う事って何ですか?」

「いや、だから……」

「お兄様、はっきり言って下さい!」

「だから! 泉が凛ちゃんの事を好きって事だよ!」

 ああ、言っちゃった……これで完全に終わった……僕の恋は……これで完全に…………


「えっと……お兄様? 何故そんな事を思いになったんですか?」

「え?」

「佐々井君……あんたばかぁ?」

「え? え?」

「真ちゃん……何いってるの?」
 泉の後ろからさらに愛真が追い討ちをかける。いや、待って、え? どういう事?

「え? ひょっとして……違うの?」

「あ、当たり前です! 私はノーマルです!」

「あーー、まあ、私は嫌いじゃないけど……泉さんはちょっとね」

「一萬田さん、それはどういう事ですか?」

「えーーーー、だってさ、泉さんは嘘つきだからね」

「失礼ですね貴女、いくら委員長だからって言って良い事と悪い事がありますよ!」

「だって~~泉さんてさーー」

「ちょっと待って、待って、喧嘩しないで、え? 違うの? 本当に?」
 今の感じは……え? 間違いなく泉は凛ちゃんの事を好きじゃない感じがする。
 あれ? あれあれ?

「お兄様は何故そんな事を?」

「えっとそれは……」
 えっと、なんだっけ? 誰か覚えてる? 僕は今思い出したよ。


「僕が凛ちゃんの事を言ったら、泉の機嫌が悪くなったから」

「え?」
  僕がそう言うと、泉の顔が赤くなる……ほら、これ、これだよ!

「あははははは、真ちゃん、それってただの焼きもちじゃん」

「え? 焼きもち?」

「え、愛真さん!」

「そ、そうだよ愛真、そんなわけ、だって、僕が凛ちゃんと友達になったって言ったら、凄くホッとした顔してたんだよ」

「お、お兄様!」

「だからそれは」

「え、愛真さん!」

「それは?」

「あ、えっと、その……そうです、お兄様が、やっと、やっと友達を作る気になってくれたので、それで」

「あ、ああああああああああ!」
 そう言えばそんな喧嘩を、ああ、それで……
 僕もそれで凛ちゃんと友達になってって言ったんだ。

「え、じゃ、じゃあ、全部、僕の勘違い?」

「そ、そうです!」

「そうだったんだあああああ」
 僕は頭を抱えた、えーーーそうなの、何、全部僕の勘違いなの?

「あははははは、真ちゃんのばか~~~~」

「うるさい愛真! そうか、そうだったのか……ごめん泉、ごめん凛ちゃん」

「お兄様ったらもう」

「私別に被害ないし~~」

「あ、でも凛ちゃん泣かしちゃったし、本当にごめん」

「あ、あれ? あれ嘘泣きだから」

「えーーーーーーーー!」

「だから言ったでしょ、私嘘つきだから」
 ケタケタと笑う凛ちゃん、嘘つき嫌いな嘘つきってもうどこまで嘘かわからないよ。

「そんなああああ」

「まあまあ、良いじゃん、さあ次は何乗る」
 相変わらずの空気の読めない愛真……でも今日は本当に助かる。

「そんな青い顔して……」

「大丈夫大丈夫! さあ行こう、次はこの落ちる奴が乗りたい!」

「しょうがないなぁ」
 何事も無かったか様に振る舞ってくれる愛真、でも色々腑に落ちない事があるんだよな……凛ちゃんの涙とか泉の態度とか……
 でも良かった……僕の勘違いだったんだ、本当に……良かった。

 でも……


「本当に嘘つき……」

 次の乗り物に向かう時、誰が誰に言ったのか……その小さな声が微かに聞こえてきた……誰が嘘つき? 僕はそれが気になっていた。










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