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初めての嘘
しおりを挟む「お兄様……一体これは?」
「真ちゃん……どういう事?」
「佐々井君?」
「えっと、一応……Wデート的な?」
「は?」
3人が一斉に声を上げる。
今僕たちは、都内のある遊園地に来ている。千葉のネズミさんは高いし書けない……楽しさなので……こっちの遊園地に……
「ちょっとちょっと佐々井君、なんで男一人と女三人でWデートなの?」
凛ちゃんが困惑した顔でそう言う。うんそうだよね、凛ちゃんはまだ知らないんだもんね……泉に愛されている事を……
「真ちゃん、今日は私とデートって言ってたよね?」
いや、一応だよ、仕方なくだよ、言わないけど。
「お兄様本日は私と遊園地に来たんでは?」
あれ? 何で怒ってるんだ? 凛ちゃんだよ? 目の前にいるよ?
「えっと、いや、えっと」
あれ? おかしい……泉が普通だ……目の前に恋い焦がれている凛ちゃんがいるのに?
照れ隠し?
何度か泉に目で伝えてみた、ほら!凛ちゃんだよ、凛ちゃんと一緒にいられるんだよ?
しかし、僕のアイコンタクトに泉は全く反応しない……あれ?
これは……予想が外れた……凛ちゃんはともかく泉は凛ちゃんを見たら喜んで、僕のWデートの意味を察してくれるかと……
あの勘のいい泉だから敢えて何も言わずにサプライズゲストの様に登場させたんだけど……いや僕の胸が苦しいってのも原因だったけど……あれ?
僕は困惑した……何か間違えている可能性があるんでは? と……
や、ヤバイ、何か間違えた? 僕はパニック寸前で3人前見た。
3人は黙って僕を見てい。そう、僕にこの状況を説明しろと、その答えを求めている。
何故この3人でWデートなのかと……でも……そんな事を言われても……何も言えない……
「とりあえず、中に入りません? みんな見てる……」
僕が固まっていると、見かねたのか愛真がそう言って助け船を出してくれる。
女三人と男一人遊園地の入り口で揉めていたら当然目立つ、視線が集まる。
しかも今日は3人かなり気合が入っているような恰好。
泉は白いタートルネックのセーターに紺のロングニットカーディガン、デニムのミニスカートにスニーカーと秋の遊園地にぴったりの恰好。
凛ちゃんは学校とは違い、今日は眼鏡なし、少しフリルの付いたシャツにジャンスカ、肩には大きめのショールに黒のパンプスとなんか若干メイドっぽい恰好。
そして愛真は別にいいか、みんな興味ないよね……まあ一応言うとピンクのフリフリ……ゴスロリのピンクバージョンみたいな恰好……みんなが見てるのは僕たちじゃなくて愛真だよ!
「とりあえず行こう入場料はいらないらしいから」
なんていい遊園地、某ネズミさんの国とは大違い、僕あそこの10円ゲーム好きなんだけど、それだけで行くのは勿体ない。
チケットを買い各アトラクション毎に支払う方式と乗り放題のワンデーパスポートとあるがいずれも入場料はいらない、なんかこのままアトラクションに乗るって感じではない……それを押しきる程のコミュニケーション能力も無い、とりあえず4人でどこかで話を……
「えっと、一人の知らないんだけど、どなた?」
僕がキョロキョロとお店を探している時、僕と泉の後ろを歩いていた二人、その愛真が凛ちゃんに話しかける。
「あ、私か、佐々井君と同じクラスの萬田です」
「え!!」
凛ちゃんが名乗った時、僕の隣にいた泉が驚きの声をあげ振り向いた。
「あ、やっぱり気付いて無かったか……」
「うん、萬田さんだったんだ……」
その時僕は見た、泉の顔が変わったのを……少し怒り気味だった泉の顔が何か慈愛に満ちた顔に変わった……ああ、そうか気付いて無かったんだ、そして気付いた瞬間に……
やっぱり間違いじゃない、泉は凛ちゃんが……
また僕の胸がズキズキと痛み始める……さっき一瞬疑ったけど、あの顔は間違いない……
一瞬勘違い? って思いかけたけど……残念だけど……違った。
もうこれで間違いない、泉は凛ちゃんが好きなんだ。
「えっと今日はごめん皆……僕友達皆で遊んだこと無くて……つい」
「真ちゃん……」
「お兄様」
「……」
「だから今日は皆で僕と一緒に遊んで下さい」
僕は頭を下げた、痛い、心が……胸が痛い……嘘をつくって……辛い……でも。
「うん! 遊ぼう!」
「お兄様……わかりました!」
「…………」
「凛ちゃん?」
「ま……とりあえず……いいんじゃない?」
「ありがとう」
なんか凛ちゃんの目が……怖かった……でもとりあえずいいって、とりあえずって?
まあでも……とりあえずなんとかなった、さあ作戦スタートだ。
泉と凛ちゃんの恋を応援するんだ!
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