27 / 99
Wデート?
しおりを挟む泉との楽しい夕食を終え部屋に戻って来た……楽しい? 全然楽しくなんてなかった、苦しい……苦しかった。
なぜこんなにも苦しいのか……
泉の事を思うと苦しい、泉の笑顔を見ると切ない……なぜだ?
泉に好きな人がいるんじゃないか? 恋人がいるんじゃないか? なんて事今までだってあった。でも、こんなに苦しくなるなんて事は今まで無かった。
「駄目だ! こんな事じゃ駄目だ……泉の為なんだ! 僕は泉の兄なんだ!」
そう自分に言い聞かせる……駄目なんだって……僕じゃ、僕なんかじゃ……
僕なんかじゃ? 当たり前だろ?
背も高くない、特技もない、運動も出来ない、勉強も普通……そんな僕が……カースト底辺の僕が泉と?
「はは、あはははは、何言ってるんだろうな……泉が身近に居すぎて、僕でも可能性があるなんて思っちゃってたのか? 僕と泉は兄妹であって恋人じゃないんだよ」
そうだよ、そうなんだよね……何言ってるんだ僕は…………
「よし! 泉の恋をなんとかしよう! 兄としてなんとかしてあげよう!」
泉の恋が成就すれば、僕のこの思いも消えるんじゃ、諦められるんじゃないか?
どうすれば泉と凛ちゃんをくっつける事が出来るか? 僕は考えた…………
告白もした事がない僕が人と人をくっつけるとか、無理ゲーだよ。
「うーーん、思い付く事と言えば……前に読んだラノベであった2組のカップルでデートしてさりげなく別れて二人きりになるパターンとか?」
「あははは、そもそも友達いない僕が二人以外をって…………あ……いた」
いたよ、いるじゃないか……あいつが! 愛真が!
僕は愛真に電話を掛けた、愛真だけは全く緊張しないんだよね。
前に愛真から紙で貰って登録をした番号を電話帳から見つけ、あ、僕のスマホには他にも200件登録されてるから探すのに時間がかかるんだ。ほぼ……全部ダミーだけど……
愛真に電話を……ああ、ひょっとしてこのスマホを買って貰ってから掛ける初めての他人……、コール3回で愛真が出た。天気予報でも無く時報でもない、相手がちゃんといる電話に少し感動する。
「あ、もしもし佐々井真ですけど、愛真さんいらっしゃいますか?」
『あははは、家の電話じゃないんだから~~』
「あ、そうか、小学生の時の癖が」
『真ちゃんから掛けて来るなんて滅多に無かったけどね~~ありがとう掛けてきてくれて』
「あ、うん」
『それでどうしたの?』
「えっとね、今度の日曜日あいてるかなって、予定」
『うん? 特に無いけど……な、何かあるの?』
「ああ、えっとね……どこかに行かないかなって」
『…………』
「あれ? 愛真?」
『行く!!』
「うお!」
『し、信じられない……まさか真ちゃんから……ああ、真ちゃんが大人に、う、嬉しい』
「あ、えっとね」
『どこに行こうか~~映画とか? 今何かやってたっけ?』
「あ、えっとね、遊園地なんかが定番なんじゃないかなって」
混んでる遊園地じゃないとはぐれるって言う定番イベントが出来ないし。
『いいね~~遊園地、真ちゃんと遊園地かーー超楽しみ!』
「あ、えっとねごめん、まだ決まりじゃないんだ、他の人の予定を」
『え! 二人きりじゃないの?』
「あ、えっとね、一組カップルに」
『えええええ! ダブルデート! 真ちゃんが!』
カップルにしたい二人がって言いたいのに相変わらず押しが強いと言うか人の話しを聞かないんだから……
「うん、まあ……」
『良いよ~~良いね~~真ちゃんがそんな大人になってたなんて』
「ああ、うん、だから決まったらメール送るから」
なんか説明するのがめんどくさくなってきた。
『うん! わかった! 楽しみに待ってるからね!』
そう言って電話を切った。
愛真の高いテンションに少し萎えたけどここまで来たら一気に決めなくては! 僕は気持ちを切り替え、もう一度凛ちゃんにラインを送った。
『凛ちゃん日曜日暇?』
『うお! いきなりそう来たか!』
『そう?』
『なんかさーー佐々井君と話してると私って大したこと無いのかなってさー自信を無くしてたのよね』
『ミカンちゃんは大したことあるよ!! 凄い人だよ!』
『ああ、うんありがとう、ミカンちゃん言うなし』
『あ、凛ちゃん♡』
『佐々井君少しキモいよ♡ まあ、でも正体を知られて弱みも握られて、何も無いとか、私って魅力無いのかなって思ってたのよね』
『え、魅力しか無いけど?』
『あ、ありがとう』
『で、日曜日なんだけど』
『うん、まあ、特に予定は、でもあまり過激なのはちょっとって言うか』
『本当に! 遊園地に行きたいなって』
『遊園地ですかそうですか』
『え? 嫌?』
『いや、健全過ぎてまた自信が』
『健全?』
『ううん、何でもない、良いよ』
『あ、じゃあちゃんと決めたら時間と場所送るね』
『決めてないんかーーい、まあいいや、じゃあよろ~~』
凛ちゃんも大丈夫、後は泉なんだけど……まあ明日でいいか……
僕はそのまま寝ないで計画を練った、泉の恋の為に、凛ちゃんの為に……
そして翌日朝
「ねえ泉、今度の日曜日ってあいてるかな?」
「日曜日は特に予定は入って無いですが?」
「遊園地行かないかな?」
「え! あ、はい喜んで!」
嬉しそうに笑う泉の顔を見て僕は何も言えなくなってしまった。
計画は完璧、間違いなく泉と凛ちゃんは二人きりに……でもそうすると……この笑顔は……もう僕1人の物じゃ無くなるんだ、そう思ったら、ぼくは何も言えなくなってしまった。
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる