クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

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お尻を……

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 泉が僕の膝の上にいる……

 僕は硬直してしまった……泉の重みが僕の膝にダイレクトに伝わる。
 軽い、人間の身体、女性の身体ってこんなに軽いのかと思わされる。
 5キロとは言わないが、ふわりと乗る泉の軽さに驚く、そして泉の身体の熱が徐々に僕の膝を包み込んでいく。

「…………」
 こんな事してはいけない、僕は泉に降りてと言わなければと思ったが、ふわりと漂うなんとも言えない良い香り、そして泉の体温、さらには身体の柔らかさが僕の膝から脳に伝わる。そして僕の脳はその言葉を拒絶する。

 幼い頃に死んだ母、僕は母の温もりを知らない。生まれて初めての女性の温もり、初めての経験、ああ、幸せだ、女の子の感触、女性の感触、たったこれだけで僕はこんなにも幸せな気分になれるのかと驚いた。

「お兄様……」
 
 泉が小さな声で僕を呼ぶ、僕に罰をと訴える。
 
 そうだ、そうだった、僕は今から泉に罰を与えなければいけない。泉のお尻を叩かなくてはいけない……泉のお尻を……お尻…………


 女の子のお尻を……叩く……僕が?


 僕が女の子のお尻を叩く、女の子のお尻に触れる……そんな事出来るわけないと思っていた。ましてや今僕の膝の上に無防備に乗っているのは、あの憧れだった、いや、今も憧れている泉だ。旧姓薬師丸 泉、あのクラスカースト最上位、いや、クラスの頂点、いや、学校の頂点……そんな女の子のお尻を叩く…………触れられる、こんなチャンスは二度と来ないかも、いやこのチャンスを逃がしたら……



 僕は一生女の子のお尻を触る事は無いかも知れない。



 僕はゆっくりと手を振り上げる。え、何? 僕叩くの?
 
 そんな事出来ない、出来るわけないと頭は思っても、身体が勝手に動き出す。だ、駄目だよ、止まって、止まって僕の腕、僕の身体。

 僕の目は一点を見つめている。泉のお尻の中心部、今、泉はロングのスカートを履いている。泉の丸みを帯びた美しい形のお尻が突き出すような状態で僕のやや右横にある。

 振り上げた腕、僕の動きが泉に伝わる。そして泉の身体が硬直する。膝に伝わっている柔らかい感触が固くなって行くのが分かる。

 泉は覚悟を決めている、僕はそう思った。一度叩けば終わる、逆に言えばチャンスは一度だけ……泉に触れられる、泉のお尻に触れられるチャンス、もう二度と来ない最後のチャンス。

 僕は泉のお尻、その中心付近に狙いを付けた、そして……


 腕をお尻に向け振り下ろす瞬間、僕の膝は泉の変化を感じ取った、感じ取ってしまった。震えている……泉の身体が……全身が震えていると……

 僕の振り下ろされた右手はそのまま泉の右肩に、そして背中を押さえていた左手は泉の左肩に移動する。


 そして僕はゆっくりと泉を起こした。


「泉……無理しなくていいよ」
 そのまま泉を横に座らせ、僕は泉の肩を持ちながら、泉の目を真っ直ぐに見ながら話し始めた。

「お兄様?」

「急に兄妹なったから、急に家族になったから、泉は色々無理してるんだよね? 僕達は急に兄妹なった……何の準備もなく急に家族になったから、いや違うな、まだ家族になっていないから、泉は頑張って家族になろうって思ってくれているんだよね?」

「……」

「でもね、でもさ……そんなに頑張らなくてもいいよ。大丈夫だから、少しずつ家族になれば良いんだから……頼りない兄で泉には本当申し訳ないけど、僕も頑張るから、泉の兄として、泉の理想の兄に近づける様に僕も頑張るから、だからゆっくりと、ゆっくりと兄妹になろう、家族になろう、大丈夫、僕は泉が好きだから、大好きだから、大丈夫だから、だから焦らずゆっくりと……ね?」

 僕は泉の顔を、その美しい顔を、綺麗な目を……瞳を見ながらそう言った。


 泉は僕を見る、見つめている。真っ直ぐに真っ直ぐに僕を見つめ返す。その瞳に僕の顔が映っている……こんなに近くに泉は居る。泉の瞳に、瞳の中に僕は居る。でも今、泉は遠くなった……今、泉が僕から離れて行っている、少しずつ離れて行っている、僕はそんな気がした。

「お兄様…………はい」
 泉はそう言い微笑んだ。

「うん」
 そんな泉を見て僕もにっこりと笑った。

 ゆっくりと、ゆっくりと兄妹になろう、ゆっくりとゆっくりと家族になろう、本当の家族に…………血の繋がりなんて関係ない、血が繋がっていても家族になれない家庭だってある。繋がっていなくても家族以上の関係になっている家庭だってある。焦らずにゆっくりと、ゆっくりと家族になればいい、兄妹になればいい、そうすれば……


 そうすれば……そうすれば…………僕は。




 泉を……諦められるから……
 

 




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