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嫉妬心
しおりを挟む「……と、言うわけで私本日から姓が薬師丸から佐々井に変わります、お兄様……兄共々今後も宜しくお願い致します」
洗練されたお辞儀をする泉にざわつくクラス……まあ結構前から皆の前でお兄様って言ってるんだから薄々は感じてると思っていたけど、やはりいざ正式発表となると、クラスメイトの動揺は隠せない。
「えっと、他に無ければこれでホームルームを終了します」
ざわつくクラス、先生の終了の挨拶もそっちのけで各々がヒソヒソと話している。
「え? やっぱり本当だったの?」
「泉様が……えっと……あの人ってだれだっけ? そもそもいたっけ?」
「人身御供」
「囚われの身?」
「人柱?」
そんな声が僕の耳に届く……
「なんだ? 僕は妖怪とか魔王とかなの?」
泉と、カーストトップの泉と底辺の僕じゃ釣り合わないって事は百も承知している。でも妹なんだからしょうがないだろ、良いじゃん妹なんだから……こ、恋人じゃないんだし……恋人じゃあ……ない……
そうなんだ……僕と泉は兄妹なんだ、恋人じゃないんだ……
昨日の買い物は凄く楽しかった……まるで恋人同士のデートの様で、薬師丸さんとのデートは僕の夢だった。まるで夢が叶った様な気分で1日過ごしたんだ、でも……何も叶ってない、僕と泉は兄妹……ただの兄妹。
「お兄様?」
「あ、うん、ご、ごめん、か、帰るよね」
「あ、いえ、申し訳ありません、今日友達がどうしても付き合って欲しいと……」
「あ、ああ、そうか、うん行っておいで、僕もちょっと寄りたい所あるし」
慌てて寄りたい所なんて別に、でも……そう言わないと泉は友達の誘いを断りかねない。
「寄りたい所……お兄様? どちらへ?」
「え?」
な、何? こわ! 目こわ!
「あ、えっと」
「まさか……」
「ま、え?」
「お兄様……愛真さんの所へ?」
いつもの慈愛顔、優しい眼差しの泉が、泉の目が、突然人でも殺しそうな目に変わる……
「え、えええ! い、行かないよ、だ、だって今何処に住んでるのか知らないし」
そう、知らない、家所か小学校の時以来なので携帯番号もアドレスも知らない。
「そうですか……ではどちらへ?」
それだけでは納得しない泉は更に僕のこれからの行動を問う、え? な、なにこれ……
「えっと……あ、そうそう本、本屋に行かないと行けなかったんだ」
「本屋……昨日行きましたよね?」
「あ、えっと、うん、あ、そうそう、今日発売の本があったんだよ」
「そうですか……」
「あ、うん、そうなんだ」
「お兄様、それでその本はどういった本ですか?」
「え!」
「どういった内容の本をお買いになるのかをお聞きしているんです!」
え、なに、なんか泉の様子が変……内容って……
「お兄様?」
「あ、うん、えっと……」
「泉~~~?」
後ろから泉を待っていた集団、このクラスのカースト上位の女子達が少し様子がおかしい僕達を見かねたのか、声を掛けてくる。
「あ、うん、ごめんなさい、今行きます」
僕に詰め寄っていた泉は振り返りそう言うと、少し距離を取り、満面の笑みをたたえながら言った。
「お兄様、今日お買いになった本は後で、か、な、ら、ず、見せてくださいね、じゃあすぐに帰りますから」
スカートを翻し、クラスのカースト上位陣達の元に優雅に歩いて行く泉、一体さっきの迫力はなんだったんだろう……
「本見せろって……」
実は……今日発売の本は本当の事、僕が買おうとしている本のタイトルは……
『全国メイド喫茶女子ナンバー1決定戦』
日本全国のメイド喫茶の女子達がナンバー1を競う、ちょっとエッチな写真も載っているメイドファンには堪らない雑誌、僕の1推し、メイドっ子学園のミカンちゃんが前回セミファイナルまで進出、ナンバー1になれるか今回遂に発表になるから楽しみに…………って……
「か、買えねえええええええええええええ!」
「え、なに? 泉と一緒に見るの? ミカンちゃんがナンバー1になったよ~~やったね! とか言って?」
無理だよ、絶対に無理だよ……
て言うか、そんな事より……今おかしかったよね? なんか……怖かった。
いつもは優しい泉が今日は怖かった……一体なんだろう?
愛真に会うのかって少し怒り気味に言ってたよね……えっと……あれってよくラノベとかで出てくる、僕にとっては都市伝説の乙女心、その名も…………嫉妬心?
まさか……だって僕と泉はただの兄妹、義理でも完全に泉は僕を兄と思ってるし、妹が兄に嫉妬って……それこそラノベの世界だよね……あり得ないあり得ない。
「あははははは、まっさかね~~~」
僕は頭を降ってその思いをふり払った。
「さてと……」
取り敢えず本屋に行かないと、今日発売の本を買わないと……後、何か泉誤魔化す本を探さないと……
2冊買って1冊を見せれば大丈夫だろう……何か真面目な本でも……
僕は財布の中身を考え買いたくもない本の出費にため息を一つ、ついて、学校を後にし本屋に向かった。
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