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システムに繋がれた二人

システムを使うくらいなら……僕が!

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 心地の良い季節、心地の良い会話……自分の事を、趣味を隠しもせず、何も考えずに会話が出来るって、凄く気持ちがいい……。

 ただ……趣味がオタ趣味が微妙に違うんだけど……そして高麗川がマジで拘りすぎなんだけど……。
 相変わらず競技場近くの林の中でギャルゲーについて俺達は語り合っていた……、色気も何もあったもんじゃ無い……。

 そして今は、ギャルゲーが実践で使えるかどうかという至極どうでもいい不毛な争いを繰り広げていた。

「いや、そもそも選択肢が数個の時点でおかしいんだよ、現実はそんなに甘く無い、答えは無限なんだから」

「よく言う、今さっき3つの選択肢から選んでたじゃないか、しかも(3.押し倒す)って何だよwww草生える」

「わらわらわらとか言うな! 気を使ったんだ」

「押し倒すって選択肢が気を使うって、どんな鬼畜主人公だよ」

「しょうがねえだろ、経験無いんだから」

「あはははは、童貞自慢とかうける」

「してねえ! そんな話はしてねえ」
 いや……楽しいんだけど、高麗川はよくも悪くも隠し事をしない……何でも赤裸々に言う。ただどうしても女子としてそれはどうなんだ? っていう考えが頭をよぎってしまう。ただそんな真っ直ぐな高麗川を俺は凄く羨ましく、そして美しく思えた。

 ……もし高麗川が男だったら多分大親友になれたのかもなって……そう思ってしまった。


「ギャルゲーでもエロゲーでもいいんだよ、参考にしちゃえば、そっちの方がましさ! 最近最悪な状況なんだからさ」
 
「最悪?」

「そうさ、あのマッチングシステムとか言うの? あんなのに頼るとか皆どうかしてるよ! 自分で探して恋に落ちてこその恋愛だろ! フラグを立ててこその恋愛だろ! あんなのに頼る奴の気が知れない」


「…………」

「どうした?」

「いや……何でも……」
 俺がそう言うと高麗川は俺の顔を覗き込む、物凄く近い距離で俺の目を見つめる……近い近い……。

「ま……まさか!」

 や、ヤバい……高麗川は変に勘の良い奴だ。そもそもこいつが最初に話して来たきっかけは、俺と月夜野の関係の変化からだ。ひょっとしたら……システムを使っている事も既にバレている? 

「まさか……君まで……使おうとしてるのか!?」

 良かった全然バレて無かった……しかし……そう思うのと同時に今の高麗川の言葉に疑問が生じる……。

「君…………まで?」

「…………うん」

 高麗川は少し寂しそうな顔をすると、目をつむり話始めた。

 彼女には前にも言ったが年の離れた兄がいる。高麗川がギャルゲーに嵌まったのは兄の持っていたゲームからだ。そもそも兄は何故高麗川に、妹にゲームを譲ったのか? 

 高麗川の兄は今年結婚するらしい……システムによってカップリングされた相手と。
 システムを利用するのに当たって高麗川の兄は一つ嘘をついたらしい……趣味をゲームから旅行等にしたのだ。あれだけやめないと言っていたオタクをゲームをシステムによってあっさり捨てたのだ。

 高麗川はそれが許せなかったそうだ……システムを使って……相手に嘘をついてまで結婚したかったのかと……そう悔しそうに呟いていた。

「まさか君は、君まで……来年使おうとか考えているのか?」
 来年……そう今年高校生に導入されたシステムは、学生が使用するという都合上4月に募集がかかる。
 2次募集もあるそうだが、今の所未定で、次の募集は来年、今のカップルの期限が切れてからとアナウンスされていた。
 
 そもそも成功率90%というのには少しカラクリがある。
 システムはすべての募集から上手く行きそうなカップルを選出し、それぞれに通知される。募集した全員が全員カップルになれるわけでは無い。管理ができるカップルのキャパはどうしても必要、という理由から成功率の高そうなカップリングが優先される。
 つまり個人の趣味などを変更しカップルの確率を上げる事は可能だ。
 ただし、極端に自分を偽った入力をした場合結婚詐欺と同等の犯罪行為とみなされ処罰の対象となる。
 趣味の変更でも、バレた場合、最低システムの永久停止は免れないだろう。

「来年……やらないよ」

「本当か? 本当に本当だな?! も、もし……君が……そこまでしてまで彼女が欲しいなら……ぼ、僕が君の!」

「あーーーほーーーかーーーー」
 また俺は高麗川をチョップした。今回はやや強めに。

「それをやったらシステムと変わらないだろ! 俺たちにフラグは立ってないんだ。好きでもない相手にそんな事言うな!」

「……でも……あんなものに……あんなだか、だか、なんだかわからない物に大事な人を取られるなんて、僕はもう嫌なんだ……」

「なんでAIに取られるんだよ、マッチングするだけだろ……このブラコンが……大丈夫だよ俺は来年応募しないから、まあ30過ぎて相手が居なかったら考えるよ」 

「魔法使いにはなりたくないか、あははははははは」

「うっせ」
 林に広がる様に高麗川が高らかに笑う……嘘はついてない……俺は今の所、来年使用するつもりはない……でも、少しだけ、ほんの少しだけ心が痛んだ。

「さて……そろそろ戻らないと皆が心配する」
 高麗川はゆっくりと立ち上がる。そう言えばユニフォームのままなんだよな今、薄いランニングに短パン……短パンから伸びた細い足、太もも近くに目が行くと丁度お尻の辺り、日焼け跡の境が見えた。その白と黒のコントラストは芸術と言っても過言ではない……ありがとう高麗川……。

「そうだな、俺も帰るか」
 なるべく気が付かれない様に、それを見ながら俺もゆっくりと立ち上がる。

「え~~~~見て行かないのか? 陸上はいいぞ、際どい恰好の女子が一杯いるぞ!」
 目をランランと輝かせ鼻息を荒げる高麗川……この乗り嫌いじゃないんだけどなあ、しかし何故か残念な気持ちになってしまう。

「だからなんでお前が興奮する? 百合か? 百合なのか?」

「否定はしない!」

「キマシタワーーーー」

「「あはははははははは」」
 

 こんな冗談を言える友達がオタ友が俺に出来た。凄くうれしい……凄く楽しい。オタク友達との会話がこんなに楽しいなんてと初めて思った。

 そして……もし……もしも……月夜野がオタクだったら、オタクに理解があるあいつが、実は本当はオタクだったりしたら……あいつと会うのがもっと楽しくなるのになって……俺はそう思っていた。

 



 
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