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システムに繋がれた二人
こんな所に小学生?
しおりを挟む「はい、決まりね、じゃあ次のデート先は五十川君が決めてね」
「は?」
「だってこういう事は男の人が決める物でしょ?」
「はああああ? なんでそんな事!」
俺がまた声を荒げると、月夜野はにっこり笑って言った。
だから可愛いんだよ天使みたいなんだよ、その笑顔は……ただ言ってる事が悪魔なんだよ、こいつ本当は堕天使なんじゃないのか?
「ほらほら、駄目でしょ愛しの人に対して大きな声を出しちゃ、そう決めたでしょ?」
「くっ」
やられた……まんまとやられた……これって、全面的に俺が不利なんじゃないのか!?
「どこに連れて行かれても、怒らないから安心してね~~、そういう約束だし、いいわよ貴方の趣味で、あははは、じゃあ、そういう事で再来週ねえ~~」
月夜野はそう言うと立ち上がり、俺に笑いながら手を振り先に帰っていった……。
「…………おい……ここの支払いも俺か」
彼女を呆然と見送りふとテーブルの上に置いてある伝票を見て気が付いた……あいつから金貰ってねええええええ。
◈ ◈ ◈ ◈ ◈
私はお店を慌てて出た。あ、お金! まあいいか、次で払えば……。
そんな事より……言っちゃった、言っちゃった、言っちゃったああああああ。
彼に言っちゃった……。
言いながら思った……私……何言ってるんだろうって……でも……でも気になる……彼の事が段々と気になって来た。
好きとかじゃないの……でも……何か気になるの……。
池袋の専門店でもそう……彼に何かを感じた……。
本当はなんであそこにいたのかを聞きたかった……でも、私彼を追って中に入った……そんなストーカーみたいな事をしちゃった。
そして、それを聞いた瞬間私の趣味もバレる可能性が高い……。
怖い……色々怖い……でも……だから言ってみた。「私達ちゃんと付き合ってみる?」 って、テストでもお試しでも……ちゃんと付き合えば……彼の事色々わかると思うから……。
彼は再来週、私をどこに連れて行くんだろう……どこでもいいって言ったから、彼の趣味の場所に連れて行って貰える……かも。そうしたら、あそこに、BL専門店に居た理由がわかるかも……。
でも、とりあえず……それよりも問題は来週よ、私の大好きな先生が出品するBL同人即売会、そこで必ず先生の本をゲットしなければ、だから彼とのデートを再来週にしてもらったの。
とりあえず今、私はそれで頭が一杯なのです! 腐腐腐……。
◈ ◈ ◈ ◈ ◈
月夜野のむちゃぶり、デートコースを考えろと言われた。しかも来年を見据えてカップル(仮)として、これから11ヶ月ちゃんと付き合う事になった。
いや、まあ色々言いたい事はあるが、そうなった以上は真面目にやらなければいけない……そしてそう思った瞬間、頭の中が真っ白になった。
それがいかに、いい加減にシステムを使ったかっていう結果だ。
自分でもバカだって事が本当によくわかる……。
「それにしても……わからねえ……ちゃんと付き合うって……どうやって?」
だって、俺は付き合うどころか、女子とまともに喋った事さえろくに無いんだ。
中学の頃隣にいた女子が友達とふざけていて、俺の座っていた所に倒れ込んで来たのを支えた時のあの柔らかさは俺の一生の宝物だ。
ちなみに、その後の「五十川、変な所触らないでよ! キモい」は脳内削除した。
あとそうだ、バレンタインデーで、これまた隣の席の女子が俺にチョコレートを見せて「こっちとこっちってどっちが欲しい」と言われ、ドキドキしながら欲しい方を選択したら「だよね!」って言ってそのまま可愛い袋に入れサッカー部の奴の机に入れていた……。
ちなみに残ったもうひとつは……ケラケラと笑いながら友達とバリバリ食べていた……。
ううう、心が痛い……。
とにかくだ、これ程までに女子と接点がない俺が、練習でも女子と付き合うなんて出来っこない。
しかし、出来ないでは始まらない……俺は無い頭をフルに使い考えた。
考えに考えた結果、一つの結果にたどり着いた。
そうだ! 練習の練習をすればいい!
……どういう事かって? それは今俺が居る場所に答えが隠されている。
俺は今、家の近くのゲームショップに居る。最近すっかり無くなってしまったゲームの中古販売のお店。
この辺りじゃあ唯一の生き残りだ。
ここに来た理由はただ一つ、そう! ギャルゲーを買いに来た!
いや、待って、ホントこれしか無いんだよ~~、オタク脳で考えられる唯一の方法なんだよお……。
と、いうわけで俺はゲームショップのギャルゲーの棚を片っ端から吟味していた。
今どきネットを使えって思うかも知れないけど、やっぱりパッケージの裏を片っ端から見た方が早いんだよねえこういうのは。
ネットってピンポイントで検索してヒットさせるのには優れているけど、こういう何となく探すってのには適して無いんだよねえ。
ちなみにラノベとかも考えたが、最近は女の子がいきなり好き好き状態の物が多くてあまり参考にならない。
なんであんなに簡単に惚れられるんだ、普通の高校生が……こっちはそれとは真逆、最悪の相手なんだ、参考にもならないよ。
ゲームならキャラも多いし、ツンデレのデレなしなんて月夜野みたいなキャラも、それなりに居るはず。
そう思い俺は片っ端から棚を探すが、やはり中々、見つからない。そもそもギャルゲー自体があまり無い。
「やっぱり時代遅れだよなあ……ギャルゲーって……仕方ない……最後の手段を取るか……」
俺は店舗の奥、禁断の暖簾の向こうに向かった……そう……18禁ソフト……エロゲーコーナー……こっちもネットのせいで最近すっかり廃れているが、全年齢のギャルゲーよりもわりと豊富だ。
特にこの店はかなり古い昭和のソフトから取り揃えられていた。
俺は勢い良く暖簾をくぐった。すると中には一人の男の子がいた。男の子……そう、どう見ても小学生くらいの身長、そしてジャージに帽子にマスクという怪しさ全開の恰好をした子供がそこにいた。
その子は俺に気が付かず、何やら棚の上の方をじっと見つめていた。
身長が低いので取れない様子の様だ……俺はそれを取って上げようとしたが、さすがに小学生の男の子にエロゲーは駄目だと思い直し、心の鬼にして自分の事は棚に上げてその子に注意をした。
「僕、駄目だよ、ここは大人の人だけが入れる所だからね、店員さんに怒られる前に早く外に出なさい、ね?」
俺は出来るだけ優しくそう言うと、その子は俺を見て幽霊でも見たかの如く、目を見開き驚いた。
「ひ!」
更に悲鳴にならない悲鳴とでも言うのだろうか? その子はそんな声を出す。
「ああ、怒ってない、怒ってないから…………あれ?」
こんな所で騒がれては俺が何かをしたかのように勘違いされる。それだけは避けるべく、その子を落ち着かせようと近くに寄った…………あれ? この子? なんか何処かで会ったような顔つき……えっと誰だっけ?
「い……五十川君……どうして」
「え?」
突然その子が俺の名前を呼ぶ…………こんな小学生に知り合いなんて居たっけ……。
俺はその子をさらに良く見た……………あああああああああああああ!!
その目に覚えがあった……つい最近俺の机に頭を乗せ、下から見上げていた、あの顔、あの目……。
そう……その小学生と思っていた子は、俺と同じクラスの陸上娘、僕っ子の高麗川 菫その人だった。
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