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システムに繋がれた二人

1年間のお付き合い

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 翌土曜日、学校は休みと言うことで俺は惰眠を貪っていた。するとスマホに着信が……誰が? と眠い目を擦りながら枕元のスマホを取り名前を確認すると月夜野 瑠つきよの るりと表示されていた。

 登録した記憶は無い……だが知っている名前なので無視は出来ないと俺は設定していたコール回数制限ギリギリで電話に出た。


『ちょっと、どういう事!!』

「うお!」
 出るなりヒステリックな声、一瞬で目が覚める。しかし休日の朝から怒鳴られる覚えはないと俺は思いっきり男らしく強い口調で返答した!。

「な、何がですか? 月夜野さん?」
 思いっきり敬語で……いや……だってなんか昨日は俺がいい加減な気持ちで登録しちゃって、彼女とカップリングされちゃって、なんか凄く迷惑かけた気がしてさ……そうじゃなくても元々彼女怖いし……。

『あ……あんたまさか……寝てたの?』

「は、はいそうですけど」

『ば、バカ! まさかメール見てないの!!』

「メール? 今電話してるから見れんけど、メールが何かあるのか? いや、そもそもなんで俺の番号知ってるんだ?」
 
『ああ、もう最悪……なんでこんな奴とカップリングされたんだ私……わかったもう良いから、すぐにシステムからのメールを確認してその場所に来て、そんなに遠くないから』

「ああ? なにそれ?」

『い、い、か、ら、早くしろ!』

「あ、うん、じゃあ30分で支度して」

『ちんたらすんな! 40秒で支度しな! じゃあ待ってるから!』

「40秒……いや、無理やろ」
 
 俺は通話を終えるとメールを確認、すると日時と場所を指定されているメールがメールBOXに入っていた。
 メールする友達なんていないから全く見てなかった……。
 俺は急いで着替えると(40秒では無理)その指定された喫茶店に向かった。



◈ ◈ ◈ ◈ ◈


 月夜野 瑠つきよの るりは女子から絶大な人気がある。
 人当たりの良い性格、気軽に相談なんか受けているらしくお姉さん気質でクラスでも頼れる存在。

 しかし、彼女は男子相手となると全く別人と化す。

 きつい性格、可愛いげのない態度、ツンデレのデレ無しというなんとも最悪な女……顔はまあまあいいくらいで、性格は最悪、間違っても俺の恋愛対象にはなり得ない……、何故か1年の頃から同じクラス、席も近く言い争いが絶えない、今俺の最も苦手な女子であることは間違いない。

 
 喫茶店にたどり着くと店の奥に変わった格好の女子が、よく見ると顔は月夜野だ。店員に彼女と待ち合わせている事を告げ、月夜野のいるテーブルに向かう。

「ご、ごめん見てなかった」

「呆れた……あんた本当に何も知らないのね」
 
「いや、そうなんだけど、その前にさ……その格好は……」

「…………な、何よ、文句ある?」

「いや、えっと……文句はないけど」
 月夜野の着ている服は、俺もあまり詳しくはないが、これはいわゆるゴスロリって部類に入るのだろう、そんな格好をしていた。

 俺は月夜野の対面に座りちょうど水を持ってきた店員さんにコーヒーの注文をする。

「えっと……それで……今日は一体なんなんだ? あのメールは一体何?」

「はあああああ……もう本当に何も知らないのね」

「最初からそう言ってるけど……」

「今日は初顔合わせよ」

 月夜野はそう言った……初顔合わせ、今日から俺達の付き合いが始まると。
 初回の為お互いの都合があるので今日は断る事も出来たらしい。しかし俺が日付け変更をシステムに送信していなかった為に受諾したと思い待ち合わせの場所に来たそうだ。しかし待てど暮らせど俺は来ない、まさかと思って電話をしてきたというのが事の顛末だった。ちなみにカップリングされた時点で番号とアドレスは自動でお互いのスマホに登録されるらしい……怖えなシステム……。

「そ、そうなのか……ごめん……でも……まさか……カップリングの相手が月夜野なんてなあ……はあああああああ」
 俺は改めて目の前にいる月夜野を見て昨日の事が夢ではないというのを確信しテーブルに肘を付き顔を覆って深くため息をついた。
 
 しかし、そもそも女子と初めて入る喫茶店なんだが……まさかこんな奴が初めてとは……本当嬉しくもなんともない……。

「何、ため息ついてるのよ、それはこっちのセリフだし」
 俺の目の前で足を組み横柄な態度でコーヒーを飲む月夜野……本当態度でけえなこいつ……。

「で……どうするんだ?」

「どうもこうもとりあえず付き合うしかないでしょうね」

「そうなの? マジか……」

「これで初顔合わせが終了したし、週明けには学校にも親とかにも通知が行くしね」

「マジか……」
 通知……まあ親には許可の際、寧ろ喜ばれたから問題ないだろう。母さんなんて泣いて歓迎してたし……でも学校ってなんだ? 学校に連絡が行くってどういう事だ?

「って言うか……あんた本当に何も知らないで利用してるのね」

「ま、まあ……」

「本当バカじゃないの? その辺のアプリと一緒と思って気楽に考えてる奴がまだいたなんて信じられない」

「そ、そんな事言ったって、高校生が利用出来る様になったのは今年からだろ?」

「正式導入されたのは8年も前よ! 去年20歳以上から18歳以上に引き下げられたんだから友達や先輩から情報入って来るでしょ!」

「いや、だって俺部活もやってないし友達も……あまりいないし」

「うーーわ……ボッチとかキモ」

「ボッチじゃねえよ!」

「よくいう、あんたいつも一人でお昼食べてんじゃん」

「う、うるせえな、話しながら食ったら味わかんねえだろ」

「聞いてない聞いてない、あんたのボッチの言い訳とか聞く気もしない」

「……とりあえず……どうなるんだ? 俺達……」
 そういうと月夜野はコーヒーを一口飲み、そして肩から垂れていた黒い髪をパサッと後ろにはたくと、俺を暫く見つめてから言った。

「――――1年間よ……」

「1年間?」

「そう……カップリングされた者は1年間、親、し、い……付き合いをしなければならない、ふりでも何でも1年間、私はあんたと付き合わなきゃいけないのよ……」

「……1年間……マジか……」
 1年間……彼女と付き合うって? どうやって? 
 俺は彼女の真剣な眼差しに少し怯えていた。

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