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綾波明日菜の正体
ええええ! 妹いたんですか?!
しおりを挟む夜になっても綾波からの既読は付かなかった……。
俺は食卓で夕飯を食べながら、ずっとスマホを見続け考えていた。
どうすれば良いのか……を……。
「ねえお兄ちゃん、せっかく私が久しぶりに帰って来たのにずっとスマホばっかり見てて、マジでつまんないんですけど?」
「え? あ、ああ、うん、突然ワイハーに留学しちゃう妹の存在を、俺はまるで……そうだ、そういう設定にしちゃえなんて考えちゃう、ヘボ、ラノベ作家の様に、さっき唐突に帰ってくるまで忘れてたよ、あははは」
「──もう、相変わらずのラノベオタク?」
「いや、某妹作家の様に脳内妹の存在もまだ否定出来ないな……」
「2巻から急遽妹出しちゃうパターンみたいな?」
「そうそう、新キャラに妹ってのは少々無理があってキツイよなぁ」
「いや、いや、そこで乗って来ないでよ! 私は本物の妹だから! お兄ちゃんなら久しぶりに帰って来た妹の留学先の話とか普通聞いちゃわない? ハワイはどうだ? とかトップレスのお姉ちゃんはいるの? とか聞いちゃわない?」
「……ハワイは暑い?」
「──そうねえ……日本よりは涼しいよねえ」
「……そうか、いいな……」
俺は目線をスマホに戻し、再び綾波へ送ったメッセージを眺めた。
「ああ、もう……相変わらずだなぁ……お兄ちゃんって雪乃さん以外の女の子の前じゃいつもそんな感じだったよねえ、そんなんだから彼女出来ないんだよ?」
「ああ? 何で俺に彼女がいないなんて思うんだ?」
「えええ! いるの?! まさか遂に雪乃さんを射止めた?!」
「……いねえよ、射止めねえよ」
「ですよねええ~~~~」
キャハハと笑う妹……いつもこうだ……そして俺はこの妹が嫌いだ。
一つ違いの妹はおれとは正反対の性格。
人付き合いがよく何でも出来る。おまけに頭もとんでもないほどいい、さらには新しい事をとんどん吸収し、小さな頃からどんどん一人で行動してしまう。
留学もあっという間に自分で決め、しかも返還不要の奨学金までも……。
小さな頃から自立心が強く、ある時は母の実家、ある時は南の島、またある時は交換留学、親父の仕事の関係で海外にも時々一緒に行っており、俺は妹と一緒に暮らした記憶があまり無い程だ。
いいわけはこんなもんでいいかな? と俺は綾波の既読を諦めて、スマホから妹に視線を向けた。
「そういや、お前と会うのって、何年ぶりだっけ?!」
「お前なんて大人ぶっちゃって、そういえばお兄ちゃん、いつの間にか一人称が僕から俺に変わったんだねえ~~、また昔みたいに私の事『ふう』ちゃんって呼んでいいよ」
「楓と、会うのは何年ぶりだっけ!!」
俺は昔、楓って呼べなくて『ふう』って読んでいた……。
「ふうちゃんはねえ……って、お正月帰って来たでしょ?」
「……そうだっけ……でもあっちって8月が年度の始まりじゃなかったか?」
「うん、そうだよ、まあでも私の場合いつでも飛び級出来るからあんまり関係無いんだよねえ、帰りたい時に帰ってきます!」
「帰ってきますって」
そう言って、どやる妹……ああ、もういないもんだと思ってたから、たまに帰ってくるとうざい……。
「本当の所、飛び級しようと思ったんだけど、来年お兄ちゃんの学校に行くことにしたから~~」
「はああ?」
「お兄ちゃんが、まさかあの名門校に入るとはマジで正直ビックリだわ~~雪乃さん、様様だねえ~~、あそこなら学力的にも問題ないし~~お兄ちゃんいるし雪乃さんいるし面白そうだから行こうかなってねえ」
「──ずっと海外で日本語おかしいぞ、とにかくそろそろ勝手な事ばかりしてないでなあ……しっかりと……」
『ピンポーン』
放浪癖のある妹に一言、言ってやろうとしたその瞬間、スマホからメッセージの着信音が──遂に綾波から返信かと俺はスマホに飛び付いた。
「────はわわわわわわわわわわ!」
「え? な、何? お兄ちゃんどうしたの?!」
「かかかか……神から、神様から……メッセージがあああぁぁ」
「……は?」
妹の怪訝な顔はとりあえず無視して、俺はスマホを……メッセージを何度も確認する。
間違いない……綾さんから……あやぽんからのメッセージだ……。
「──明日? 12時集合? はわわわぁぁ」
「え? な、何? 12時? お兄ちゃん一体何があったの? 誰? 神様って誰?」
「……ななな、何でも……ない……よ、ごちそう様」
俺はそう言って席を立つと足早に部屋に向かった。
「ちょっと、お兄ちゃんってば? 何でもないわけ無いでしょ? ああ、そうだ! お風呂は? 今日は一緒に入らないの?」
「入らねえよ! 今日は──とか人聞きの悪い事言うなし!」
何で妹と風呂に入るんだよ? そんな兄なんてこの世にいねえよ、そんな考えをする奴も……まあ、いない事はねえか……。
そんな下らない事よりも今はあやぽんの事だ。
どうすれば……いや、行かないって選択肢はあり得ない……。
俺は部屋に戻って暫し考えた挙げ句……『ええええええ! い、行きます』
と、感情のまま文字にして、返信をした。
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