幼馴染に良い様に使われた、だから俺は彼女を見返す為にいい女と付き合う事にした。そして出会った女子はモデル活動をしていた隠れ美少女だった。

新名天生

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綾波明日菜の正体

綾の……ファン?

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 日下部君との待ち合わせ場所……早く来すぎてしまった私は……またいつもの様に自分の事を考え込んでいた。

 やっぱり……私はお姉ちゃんとは違う……。

 人の目が怖い、人の目線が怖い……。
 奇異な目で見られるのが怖い。

 昔から、まじかに双子であるお姉ちゃんを見ているので、自分の顔が整っているという自覚はあった。
 子供特有の綺麗な肌、大きな瞳、整った目鼻……そしてそれは私の……私達の傷を引き立たせる結果となった。
 目の横にある……醜い痣……それを際立たせる事に……。

 その痣は、可愛い顔に似つかわしくない色と形だった。
 男子からは貶され、女子からは気持ち悪がられた。

 お姉ちゃんは周りを気にせず堂々とすればいいと言っていた。
 でも……私は、耳を塞ぎ目を閉じ口を噤んだ。

 それから……私はずっと殻に閉じこ籠った。
 お父さんの本に逃げた……。

 お姉ちゃんの事もあり、私は顔を隠し、ずっと自分を隠してきた。
 仕方ないって思ってた。

 話かけられても……中々打ち解けられない……。ずっとあの頃の事を、苛めにあっていた時の事を引き摺っていた。
 
 なんとかしないと……ずっとこのままなの? 友達も出来ずにずっと……私はもがいていた。

 でもそんな私に転機が訪れる。

 そう……私は遂に出会った……運命の人に……日下部君に出会った。

 日下部君は、我慢強く私に接してくれた……決して無理強いせずに接してくれた。
 そのおかげで……私は少しずつ日下部君に慣れて行った。

 日下部君は私を尊重してくれる。私を否定しないでいてくれる。
 お父さんの古い本の話も、楽しそうに聞いてくれた。
 
 私は思った……もっともっと知りたいって……日下部君の事をもっと知りたいってそう思った。

 もっと話たい、もっと仲良くなりたいって……。

 そして……私は思った。日下部君の事を知りたいなら、私の事を知って貰わないと駄目だって。
 
 だから私は決めた……今日……告白する……初めて自分の事を明かす。
 私のお姉ちゃんが綾だという事を、そして私も綾になっているという事を。

 大丈夫……日下部君なら大丈夫、なにも変わらない。今まで通り接してくれる筈。
 私は……覚悟を決めた……。

「綾波!」
 時間よりも早く日下部君が待ち合わせ場所に来てくれた。そして、笑顔で私の名前を呼ぶ。

「日下部君!」
 遂に逢えた……日下部君に……ずっと会いたかった、ずっと逢いたかった。

「久しぶりって言っても毎日メッセージ送ってたからそんな感じはしないか? あははは」

「うん! あれ? でも……日下部君焼けた?」

「あ、うん、昨日フェスから帰って来たんだ」

「……フェス?」

「そう、音楽フェス、昨日苗場山から帰ってきたんだ」

「……へ、へえそうなんだ……」
 苗場山って……ええ? 日下部君も行ってたの? でも……そんな事一言も言わなかった。

「あ、そうか、言ってなかったね……俺さ……綾波に言ってなかった事があってさ~~」

「え? な、なに?」

「……綾波は知ってる? 綾ってモデルの事、俺さ、あの人の大大大ファンで、イベントがあればいつも行ってるんだ」

「……え」
 綾って……ええ? ど、どういう……事?

「昨日、まあ、綾が出たのは一昨日なんだけどね、わざわざあやぽん、ああ、綾ってあやぽんって愛称で呼ばれてるんだけど、俺さ、ミーハーかなって思って、ずっと綾波に言えなかったんだ~~」

「……そ、そうなんだ……その……綾って……人の事……好きなんだ……」

「まあ、好きってて言ってもさただのファンなだけで、ああ、でも……俺が悩んでいた時に色々助けられてさ、大袈裟に言うと俺にとっての神様みたいな物かなあ? あはは」

「神……さま……」
 日下部君は……何を言ってるの? 私は……わけがわからない……一体どういう事?

「ああ、でもこの間イベントの後に偶然海で会ってさ、あやぽん怪我してたんだよ、で、手当とかしたんだ。そしたら、一昨日なんとまた偶然会ってさ、一緒に会場とか回ってね……それで……」

 海……会場……それってお姉ちゃんと……私は何がなんだかわからなくなっていた。
 ショックで日下部君の声が聞こえない……それ以上何を言ってるのかわからなくなっていた。

「綾波? 綾波ってば? 聞いてる?」

「え? あ、ああ……うん……そうなんだ……す、すごいね……」
 私は……なんとかそう言って相槌を打った。でも、そこから日下部君との会話は一切覚えていない。
 

「日下部君……ごめん……私ちょっと体調が……」
 最後にそう言った事だけは覚えている。

 そして気が付くと私はいつの間にか自分の部屋に戻っていた。
 
 そしてベットの上で……一人……涙を……流していた。
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