40 / 62
綾波明日菜の正体
疑惑
しおりを挟む「ふふふ、うへへ、うへええ」
私は会場から止まっていたペンションに戻ると、本も読まずにずっとスマホのメッセージを眺めながらベットの上で寝転んでいた。
そして……今の気分はウキウキハッピー……まずいお父さんの本の影響で語彙がかなり古い気が……。
でもいいの……だってだって……日下部君から遂に言ってくれた、誘ってくれた、送って来てくれたの!
まるで……今日私が歌った歌に反応してくれたかの様に!
『突然でごめん! 明後日……また一緒に本屋にいかない?』
バスに乗ってたら突然こんなメッセージが、慌てて『いいよ』って送ったけど、あんな文面だったけど大丈夫よね? ああ、でも……ちょっと軽かったかなぁ?
もっと待っていたの! とか、嬉しい嬉しくて泣いちゃうとか送った方が……。
「でも、よかったあ……明日って言われなくて」
午前中には帰るけど……準備とかあるじゃない? そのお風呂に入ったり……着ていく服を選んだり、下着も……あと髪とか…………ってそうか……。
「お洒落……したいなあ」
着ていく服なんていくらでもある……お姉ちゃんのだけど……。
着てくださいって送られてくる事もあるので家には色々な服がいくらでも……。
日下部君に気に入られたい……夏休みにようやく会えるのに……でも……私は綾と同じ顔……私が綾として素顔で町を歩くわけにはいかない……ましてや男の子と一緒にいるなんて……お姉ちゃんに迷惑がかかる。
「はううううう……ぴえん」
どうしよう……いつもの格好で日下部君に会うの? 折角の夏なのに……可愛い服着て、お洒落して、髪だって、眼鏡も一応持っているコンタクトにすれば……日下部君だって……。
でもでも……そうよ……日下部君そんな人じゃない……こんな私を誘ってくれたんだもん!
私の中身を気に入ってくれているのだから、外見なんてどうでも……。
「えへへ、うへええええ」
「気持ち悪いわねえ、さっきから笑ったり泣いたり」
「ひうう! お、お姉ちゃん! いつの間に! ノックしてっていつも言ってるでしょ!」
いつの間にか、お姉ちゃんが戻って来て私の枕元に立ち私を上から見下ろしていた!
「明日菜の部屋入るわけじゃないんだからノックなんてしないわよ、そもそも明日菜が部屋代勿体無いって言ったから同じ部屋にしたんでしょ? 」
「だって、だってフェスのせいでこの辺り高いんだもん」
「宿泊代も含めて貰ってるんでしょ?」
「だって、二人分は貰えないでしょ?」
「まあ、いいわ、その辺は明日奈に任せてるんだから、で? 何をニコニコとしてたの?」
「え!な、内緒」
「あの王子様にでも誘われた?」
「え! そ、そんな事は~~」
「はいはい、せいぜい騙されないでね、あんたちょろいから……あ、これ会場の写真ね」
お姉ちゃんはそう言って私にスマホを投げてきた。
「な、投げないでよ! 壊れちゃったら高いんだから!」
「はいはい、じゃあ私お風呂入って来るから」
「あ、お姉ちゃん、腫れは引いた?」
「大丈夫よ……今日はありがとね」
「ううん……てか、そこで脱がないでよお~~」
お姉ちゃんはパパっとスーツを脱ぎ捨てお風呂場に入って行く。
私はそれを見届けると、ベットから降りて、眼鏡を装着した。
そして持ってきたノートパソコンを立ち上げ、お姉ちゃんのスマホとリンクさせる。
今日の情報は今日発信しないと……。
お姉ちゃんの撮って来た会場の写真、食べ物の写真から良い物を選びSNSにアップする。
「……あれ? これって……」
食べ物を映している写真の中で1枚だけ……ケバブと……焼きそば? の様な物がテーブルに置かれている写真があった。
でも、なにか……明らかに正面に人が居る様な気がするんだけど。
「相席? お姉ちゃんがそんな事するかな?」
その前の写真を見る限りケータリング会場は、それ程混んでいなかった……つまりお姉ちゃんは誰かと一緒に居た?
私に内緒で……。
「ま、まさか……彼氏?」
きゃあああああ、お姉ちゃん……まさか彼氏が! 会場で落ち合ったって事?
いいなあ、いいなあ、フェスで彼氏となんて……ああ、だからさっき同部屋怒ってたのかな?
別の部屋だったら……ああん、お姉ちゃんそうならそうと言ってくれれば。
「お姉ちゃんの彼氏って……どんな人なんだろうなあ、綾の彼氏なんだから、相当かっこいいんだろなあ……」
でも、昔から好きな男の子被ってたんだよなあ、お姉ちゃんと私……。
そんな所ばっかり似てしまう……そういう所だけは双子だなあって思わされちゃう、私とお姉ちゃん。
「ふふふ、でもお姉ちゃん……最近機嫌がいいのはそういう事か……」
お風呂場から聞こえてくる鼻歌……海から帰ってきた時も歌ってた……。
どんな人なんだろう……いつか紹介してくれるだろうか? その時を楽しみにしておこうって、私はそう思った。
そして、私もいつかお姉ちゃんに日下部君をちゃんと紹介しようって、そう思っていた。
「その時……なんて言うんだろう……クラスメイト? ……友達? か、彼とかだったり……うへええええ」
ああ、早く明後日にならないかな……日下部君に会える明後日に……。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる