幼馴染に良い様に使われた、だから俺は彼女を見返す為にいい女と付き合う事にした。そして出会った女子はモデル活動をしていた隠れ美少女だった。

新名天生

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綾波明日菜の正体

奇跡の演奏

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♪♪♪
 隣で座るあなた……初めは怖かった
 気付いていたけど見ない素振り

 だけどあなたの優しい笑顔、暖かい気持ちで一杯になる
 友達になりたくて、友達になれなくて

 いつも嬉しそうに話すあなたの笑顔
 でも私はまともに見れない

 好きになりたくて、好きでいたくて
♪♪♪

 
 あやぽんのオリジナルソングと思われる歌……
 その歌声に会場が静まり返る。
 俺は驚きで声が出ない、いや……会場にいるだれもが皆一様に驚いている。

 でも俺はこの中で、この会場の中で誰よりもあやぽんが好きだ、俺が一番のファン……聞き惚れている場合じゃない……。
 一生懸命に歌うあやぽんを応援しなければ……と、俺はおもいっきり手を叩く。
 あやぽんの歌に合わせて手拍子する。

 すると、俺の隣にいた、さっきまであやぽんを小馬鹿にしていた男が俺に合わせて手拍子を打ち始める。
 
 パラパラと広がる手拍子、そして会場中があやぽんの歌に合わせて手拍子を打ち始めた。

「どわあああああああああああ」
 その直後、歓声が広がる。その歓声を聞いてあやぽんが微笑んだ。

「可愛いいいい、あやぽ~~~~ん」

 あやぽんはハニカミながら声のする方に手を振る。会場が、あやぽんと一体になる!

♪♪♪

 離れてみて、初めて気付くあなたの存在

 会えなくなって、初めてわかる自分の思い

 逢いたいよ、今すぐ逢いたいよ

 早くあなたに逢いたいよ

♪♪♪

 そして、あやぽんは歌いきると目を閉じる……。
 
「どわああああああああああああああ」
 そしてさらに大きな歓声が起こった。

 俺はあやぽんの歌声を……天使の歌声を……もっと聞きたかった、ずっと聞いていたかった……そう思った直後!

『ダダダダダダダダ』
 ドラムの音が鳴った、次に出演するバンドのドラマーがあやぽんが歌い終えた直後にドラムを叩き出す。
 それに続いてベースの音が鳴り響く、バンドのリズム隊が音を鳴らす。

 邪魔だと言っているのか? 俺達が主役だと言っているのか? 俺は余韻を楽しませろ……と憤る……が……。

 しかしそれは直ぐに違うとわかった。リズム隊に続いてピアノが演奏を始める、さらにエフェクターの交換が終わったのか? ギターも音を奏でる。

「こ、これは!」

「ゴワアアアアアアアアアアアア」
 それを聞いた全員がその曲に気付く、それと同時にどよめき、そして会場全体がこれ以上ないくらいに沸き上がる。会場が揺れる。皆の心が揺れ動く。

 なぜならこの曲は、今、あやぽんが歌った曲だったから。

 あやぽんは呆然とバンドを見ていた……そして……正面を向くと満面な笑みをたたえて言った。

「2番行きま~~す!」

「うわああああああああああああ!」
 会場に地響きの様な歓声が広がった。
 あやぽんはアイドルの様に、いや、スターの様に手を振りながら歌い出す。


♪♪♪
 あなたから言って欲しい、あなたから誘って欲しい

 私からは言えないこの気持ち

 今は想像だけ、あなたとのkissを夢見てる

 いつかは言いたい、いつかは伝えたい

 好きって意味を私の気持ちを
 ♪♪♪

 更にあやぽんは軽くステップ踏み出す。その場でダンスまでし始めた。
 嬉しそうに楽しそうにバンドの演奏に乗ってステップを踏む。
 
「す……すげえ……」
 その姿を見て、隣の男がそう言って俺を見た。

「すげえ、すげえよ、な、なあ……」

「あ、はい」

「すげえ、インストしかしないのに、このバンド……インストゥメンタルしか絶対にやらなかった……のに」

「そ、そうなんだ……すげえ」
 俺でも、興味無い俺でも聞いた事のあるバンド名、それが今あやぽんに合わせて演奏している。

「いや、つまりこれって、アドリブなんだぞ?! 打ち合わせなんてしてないって事なんだぞ? やるわけ無いんだ……そんなの断るに決まってる……まさか……どうなってるんだ、認められたって事? この場で? 即興で? あの娘……ど、どんな才能の持ち主なんだよ……」

「そ、そんなに」
 それを聞いて俺はごくりと唾を飲む、そして背筋が寒くなる。嬉しい、でも少し悲しいそんな気持ちになる。あやぽんが、皆に認められている事に……俺は少しだけ……嫉妬した。

 あやぽんは歌いながらバンドに向かって振り向く。
 振り向くとあやぽんは……突然転調した。
 
 バンドメンバー全員それに驚く……が、さすがはプロ、直ぐに全員がニヤリと笑ってあやぽんに合わせる。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
 会場がこれ以上無い位にヒートアップする。

「すげえ……あやぽんって、凄すぎる……うう……す、すげ……え……」
 あやぽんの姿が段々と霞んで来る。気付くと俺は泣いていた。あやぽんの歌声に、そしてその歌詞に何故か涙が出始めた。

「やっぱりあやぽんは最高だあああああ!」
 俺は周りを気にする事なく、いや、周りに合わせる様に、その場で叫んだ!

♪♪♪
 あなたに送るメッセージ、外を見てって書いてみる

 一緒に見る月はどんな色? 同じ色に見えるかな?

 アイラブユーとは絶対に言えないけど

 月が綺麗だねって送ってみる

 あなた、にはわかる私の気持ち

 あなた、にだけわかって欲しい私の気持ち

 一緒にいたい……ずっと……一緒に……

♪♪♪

 あやぽんは歌い終わる。余韻の様なピアノの美しいエンディング……そして……曲は終わった。

「どわああああああああああああああああ」
 会場が沸き上がる、これ以上ない位に……そして拍手が、会場から万来の拍手が起こった。

「──あ、あやぽんさん……でした~~で、では準備ができた様です!」
 その拍手で茫然としていた司会者のお姉さんは、なんとかそう言ってバンドに演奏を促した。
 
 言われて、あやぽんが手を振りながらステージを後にする。
 
 バンドのメンバー達はあっさり去っていくあやぽんを眺め、全部持っていかれた。みたいな表情で苦笑いをした後、自分達の曲の演奏を始めた。


 あやぽんの出番が終われば、もうここに居る意味はない。

 でも、俺は動けなかった……感動して……動けなかった。
 俺は……その場で泣いていた、ずっとその場で……わんわんと泣いていた。

「あやぽん……すげえよお…………あ、綾波に……逢いたいよおおおお……」
 泣きながら思わずそう呟いてしまった。
 なぜだかわからないが、俺は……あやぽんの歌を聞いて……そう……思ってしまった。
 

◈ ◈ ◈


 私は歌い終えるとステージを後にする。
 スタッフの拍手に笑顔で応えながら、足早にステージ脇にある楽屋代わりのテントに入る。
 そこには、黒髪で、サングラスをかけた女の人が立っていた。
 私は周りを見て、テントにはその人だけなのを確認すると……その人に思いっきり抱き付いた。

「おねええええちゃんんんん、ご、ごわかったよおおおおおお」
 そう……この人は私のお姉ちゃん。お姉ちゃんは付き人として、私のステージをここで見ていた。

「明日奈ちゃん……凄かったよ、よく頑張った、ありがとうね」

「う、うんんんん、わだじ、がんばっだ、でも……ごわがっだよおおおおお」
 ほっとした。ようやく終わった。
 現場では、よっぽどの事が無い限りお姉ちゃんは嫌とは言わない。それが仕事だからっていつも言っている。
 だから私はお姉ちゃんになり切り、即興で歌を歌った。
 お姉ちゃんがこの間歌っていた鼻歌に合わせて……詩を思い浮かべた。日下部君を思いながら……。
 
 朝、おねえちゃんの持病が出てしまった。子供の頃からの持病……目の横にある痣の部分が腫れ上がる謎の持病……。
 双子なのに、私には発症しない。お医者様には、精神的な物だろうと言われている。
 
 でも……これがあるから……私はお姉ちゃんの代わりをしている。
 いつでも代わる準備をしている。

 無理でも、やらなければいけない。
 私はおねえちゃんの様にならなければいけない。
 
 それが、私の仕事……だから。
 綾は……私とお姉ちゃんの仕事だから……。
 


                                        
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