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幼なじみと隣の席の女の子

じゃあ、良いのかな?

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「ふーーーん、ふん、ふふーーん」
 何か気持ち悪い……お姉ちゃんは仕事から帰って来るなりずっとこんな調子だった。
 ニコニコしながら鼻歌を歌っているお姉ちゃんなんて、あまり見ない。
 そんなお姉ちゃんの姿を見て私は何だか不安が過る。
 
 なので、夕御飯を食べながら私はお姉ちゃんに聞いた。

「あ、あのさ……お姉ちゃん……何か良いことでもあったの?」

「……へ? 何で?」

「いや……なんか……機嫌が良いから」

「えーー? そ、そうかなあ? べ、別にい~~いつも通りでしょ?」

「嘘、今日の仕事初の水着で、私に散々嫌だ代われって、ずっと言ってたのに」

「えーーそうだっけ?」

「そうよ、そもそも私が水着で人前に立てるわけ無いし、それに今日は夏期講習で付き添いも出来ないって言ったら、凄く不機嫌になってたじゃない」

「えーーーそうだっけ?」

「そ、う、だ、よ!」
 なんだこのテンションは? やっぱりおかしい……。

「そうかなあ、ふふふ」

「ほら! それ! さっきからニコニコしちゃって、キモいよお姉ちゃん」

「うるさい、キモいって言うなし」
 そう言うとお姉ちゃんは乱暴にバクバクとご飯を食べ始める。

「そういえばさあ……明日菜ちゃん、例の王子様とは進展あったの?」
 そしてある程度ご飯を食べると、お姉ちゃんは箸を置き何故か突然……彼の事を聞いてきた。

「王子様って、別に日下部君とは……」

「ふふーーん、王子様って言ったら日下部君を思い出す時点でもう好きって事なんじゃない?」
 ニヤニヤしながら私にそう言う『いわる』……なお姉ちゃん。

「引っかけないで! それを揚げ足って言うんだよ!」

「まあまあ、それで本当の所は、どうなの?」

「え? いや、本当に日下部君とは友達で、本の事とか──たまに話す程度だから……」
 私は自分の事を深く話せない、日下部君に嘘ばかりついている……だから……彼には相応しくない……彼は優しくて思いやりがあって……それに引き替え、私は暗いし……人見知りだし……。

「そんな事言ってたら、誰かにとられちゃうよ~~」
 お姉ちゃんが笑いながらそう言う、でも目は笑ってなかった。お姉ちゃんは何か私に対して一家言ある時はいつもこんな顔をする。

「……でも……ほ、本当にただの友達……だから」
 彼だってこんな私になんて、興味ない……あんなに綺麗な人が振りとは言え彼女なんだし……。

「へーーそうなんだあ、へーーーー」

「な、何よお!」

「べっつにい~~じゃあ良いのかなあ?」

「……な、何が?」

「えーーべつにいいぃ」
 お姉ちゃんはニヤニヤ笑いながら再びご飯をパクパク食べ始める。
 一体何を言っているのか? 一体何が言いたいのか? 
 でも……一つだけわかっているのは、今日お姉ちゃんに何か良い事があったって事だ。
 そしてそれは多少なりとも私に関わる事だって……双子である私にはわかった。
 仕事の事? プライベートの事? そこまではわからない。
 お姉ちゃんはよく隠し事をする。モデルの仕事もずっと隠していた。
 勿論お母さんには言ってたらしいが、私には隠していた。

 中学生の時、私が知らない人からファンですって話しかけられ、お姉ちゃんの仕事が発覚したのだ。
 私はそれ以来変装するかの様に眼鏡をかけ前髪伸ばしうつ向いて道を歩いている。

 それ以来お姉ちゃんと私が双子だと、同一の顔を持っているって事を知られた事は無い。

 でも……違う……私とお姉ちゃんは全く違う……私の明るさは、全てお姉ちゃんに奪われた、先に生まれたお姉ちゃんに全て奪われた……って、私は思っている。

 だから私は……相応しくない……彼には……相応しく……ない。
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