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前編 ユルバスカル王国編
14 私の心のカギとは
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この手がかりのカギは、心のどの引き出しに差すのべきなのだろう。手にしたカギを具現化するなら、古ぼけたカギ。簡素な小さいカギかな。なら最近のカギではない。どの頃のものだろう?このカギは殿下をきっかけに手にしている。ということは、彼には素直になれるということが引き出しの手がかり。私が素直に気持ちをみんなに話していた頃のカギということになる。
「なにか……気が付きそうなんです。少しお待ち下さいませ」
「うん」
軽く目を閉じて記憶をたどる。いつから私は人に自分の気持ちを話さなくなった?家族や家臣を信じていないとかではない。少しずつ過去をさかのぼっていると母様の顔が浮かんだ。なんの脈絡かは忘れたけど、
「ティナ。母様は頑張るけどきっとあなたの花嫁姿は見られない。そんな予感がします」
「母様そんなこと言わないで下さいませ」
優しく微笑む母様の笑顔がいきなり霧散するような不安に陥った。それを話すと、すぐにはいなくならないけどねと母様は微笑んで撫でてくれた。
「エミリーをよろしくね。セドリックも強そうに見えるけど三人とも私に似て、あまり心が強くはありません。だから助け合ってね。父様は心の問題には当てにならないから」
「うん。頭の中まで筋肉みたいですもの」
「ふふっそうね」
病床の母のベッドにもぐり込み甘えてた記憶。あなたは兄妹で一番心が強いと私は思います。みんなの道行きを指し示してあげてねと、優しい笑顔を見せてくれた。
「そんなこと私には出来ませんよ。母様」
「出来ますよ。私の自慢の娘ですもの。勉強では測れない心根の優しさと、芯の強さをあなたに感じます。大丈夫、あなたならきっとね」
「そう?」
「ええ。そしてその役目はお嫁に行くまででいい。そしたら次はその優しさを旦那様に向けなさい」
母様の言葉はよくわからなかった。でも私がしっかりして、兄妹を導けと言われたのは分かった。後半が分からなくて、母様が存命中から亡くなってからも恋愛物の本を読みあさった。答えがあるかもと。でも、いくら読んでも他人を愛する気持ちが分からなかった。家族以上に愛する人?なにそれって。家族が大好きでよく分からなかった。
物語の中の男性も女性も「あなただから秘密を話すの」と言う。またはこの愛はあなただけに、私の身も心もあなたに捧げると男性は恋人に言う。それを嬉しそうに恋人は微笑んで抱き合う。分からないとしか思わなかった。家族以上に愛を向ける対象なんていないもん。頭では理解するけど、心がついていかなかった。
「カギはここのだ。まだ母様がかろうじて元気な頃で、寝込み始めた頃かな」
「なんの話し?」
軽く殿下に説明した。自分の心を閉じた原因というかなんというか。目先の目標を定めた頃かな。自分がしっかりしなきゃって。
「母の呪縛とでも言いますかね。兄妹で頑張りなさい。あなたならきっとみんなを支えられるって言われたのです。だから困った時にこの言葉が魔法のように私を支配するのです。たぶん」
「ほほう。考えて疲れたろ?あーん」
「あーん」
口の前に差し出されたクッキーをパクリ。おいしい。だろ?って。ハッなに当たり前のように食べた!私はオロオロしてしまった。
「クックッ君は俺が好きだろ」
楽しそうに笑う殿下。君のその素直なところが好きだよって。
「だから好きですしとても大切な方です。考えてるのは男性としてあなたが好きか考えてるのです」
「ふーん。まあいい答えは出たか?」
答えか。あのベッドの中で母様とふたりで話した言葉。他にも言ってたような?たぶん他人への愛は分からないと言った気がするのよね。母様はいつか分かりますよって。父様や兄妹に向ける愛とは違うものよと。母様はあんな父様だけど愛しています。みんなの見てないところでたくさんの愛をくれます。恥ずかしくて隠すような、かわいい父様なのと惚気てた気がする。本当か?と疑って聞いていたはず。
「スッキリ納得は出来ないのですが、あなたにしか心の内を話したことはないのです。個人的に話した初めての日。リアムとの関係をペラペラしゃべったし、今もこんな億面もなく自分の考えを垂れ流すとか。男性として好きなのは間違いないと考えます」
「なにその業務報告みたいなのは」
「だってそう思ったんだもん」
ほらぶどう食べるか?あーんと差し出されてあーん。モグモグおいしい。このマスカット好きなのよね。酸味と甘みが……はうっ
「アハハッ本当にかわいいよ」
「すみません。つい」
楽しそうに笑う殿下。バカか私は。何度同じ手に引っかかるの。恥ずかしくて真っ赤になった。ダメだ殿下のペースになってる。
「例えばさ。他の人が同じことしたら君は口を開けたか?カールとか」
「いやいや、毒かと思って食べませんよ。あの人は私をおもちゃかなんかと勘違いしてますから」
「だろ?そういうことだと思うよ」
あっ私は明確に他の男性と殿下を分けてたのか。彼を信用に足る人と思ってるんだ。そりゃそうか主だし。主が毒を食わすとは思わないもんね。ブツブツ声になってたのか、
「分からんぞ?臣下を毒殺なんてのはあるし」
「まあ。でもその時は前フリがあるでしょう?主が不穏とか虐められてるとか」
「まあなあ。ほら」
そうよねえとか考えていると目の前にぶどう。
「あーん。じゃないでしょッ」
「食べろよ」
「はい」
差し出されたブドウをパクリと食べた。おいしい。モグモグ食べていると殿下が立ち上がった。ん?私を見下ろす彼は呆れ顔で、
「君は自分感情にもニブチンなんだな」
「否定はしません。会議とか、領民のみんなと話してる時はよく察すると褒められるのですけど」
「なぜ俺には出来ない?」
「それは……改めて聞かれると分かりません」
まあいいや俺が好きなのは自覚したな?と問われ、たぶんと答えた。すると隣に座って、
「では、俺への答えは?」
「え?……そっか好きです。男性として心許せる人と思います」
「ふう……言い方があるだろ」
さらに呆れた顔をする。他に?と彼をマジマジと見つめた。なにかあります?と言えばあるだろって。
「好きです以外に?」
「ああ」
「ふむ」
男性だけど綺麗というのがぴったりの人だと思う。王家の見た目の良さと、話しかけやすい温和な表情。それと身分をかさにきない物ごし。そして法案以外は抜群の有能さ。そこを褒めるのはおかしいか。
「髪がきれい。私は特にあなたの髪が好きです。艶々で素敵です。それと透き通る青い目も好き」
「それで?」
「えっと……有能なのも好き」
「そして?」
「そして?好き?」
「なんで疑問形なんだよ」
彼はなにを求めてるの?好きしかないでしょう?うーん察しが悪いのは分かってるはず。なら教えてとニコッとした。
「ティナ。それ自分の気持ちでしょう?」
「ですね」
「じゃあさ。俺にそんな子どもみたいな感情だけ?」
「え?」
「え?」
君はこの先を考えないの?と困り顔で言われた。この先、彼の気持ちを受け入れれば婚約して結婚式して、いずれ赤ちゃん……ブワッと顔に熱。そ、そうよね。好きの先はそうよ……あわわわっ
「よかった。ならそれを感じても俺が好き?俺に抱かれてもいいと思える?」
「あ、あの……」
言葉がでなくてふるふると震えた。抱かれるって……なんとなくの想像が浮かんで恥ずかしくて頰に手を当てた。すると顔をクイッとされて、ならこうしたらと考えられる?と唇が重な?ンッ……
「どう?」
「あ、あの……どうとは?」
「気持ちは?」
「好きで……す。変わりません」
ほら。言葉に出来ないだけで君は俺が好き。愛してるとは言えないかも知れないけど、触れられてもイヤじゃないでしょう?と。確かに。
「体で落とす手も考えたけど、嫌われたくはなくてね」
「あの……私家族以外の男性とのキスはあなたが初めてで…そのなにも分かってなくて……そのですね」
「そんなの見れば分かるし、聞いた」
もうすこしいい?と唇が重なる。ついばむようにチュッチュッと触れて……そのうち唇は首筋に移動して手は胸に。その手は揉み始めて。
「あの……殿下…あっ…ねえ……」
「ごめん。したい」
「え?いやいや正式な婚約もしておりません!体は結婚後ではないのですか!」
「もう俺のものだろ?」
「ですが!ベッドもないし」
「そこ?」
「初めてには夢を!」
ふむと納得したのか離れた。ハァハァよかったまだ心がついていかないの。それにちょっと怖い。
「なら我慢する」
「ありがと」
「今夜誘う」
「違いますぅ。結婚式の後ですぅ」
「マジで?」
「マジです」
「股間爆発するけど?したくてそこらでよその人襲うかも?」
「ゔっそんなことしない人と知ってます!」
ふ~んと嫌な笑いを浮かべ、君は男を甘く見てる。俺も普通の男で、愛しい人とは体を重ねたい欲がある。当たり前だろと。
「そ、それはそうかもですが……うん?はしたないですけど普段はどうされてる?」
「聞くの?」
「いえ……聞くものではありませんでした」
余計なことは聞かないことにしよう。そしてそのまま胸に抱かれ、今後の流れだと話しを詰める。自分のドキドキが大きくなる。そして殿下の胸の鼓動も少し早い気がする。
「正式に婚約が決まるのが今月中で、結婚式はこのご時世だから盛大には出来ない。身内と少しだな」
「構いません」
「そして屋敷を城の敷地内に持つ。空いてる屋敷を改装してそこからここに通うようになる。君は結婚後も働く?」
「働きます。万が一あなたに捨てられてもいいように。ここがダメでも他の省庁で図太く働きます」
「そ、そうか。他の三人は今まで通りで、領地もな」
「はい」
見上げたらそんな仕事みたいな顔すんなよとチュッとされた。そんな顔になってた?
「なってたよ。ふたりの時は甘えて」
「はい。殿下」
「その殿下も止めて」
「ではなんとお呼びすれば?」
「サイラス。名前で呼んでよ。妻になるんだから」
「では、仕事中以外はそうさせてもらいます」
君はもうと唇が重なる。臣下モードは止めてよ。俺の姫と舌が絡む。んんっなんだろ。ヌルヌルと……不思議な気分がする。…息が?ンッあっグッ待って苦しッ本気で苦しくて……死ぬッウーッ
「ばかだなあ。息は止めないの」
彼は息苦しくて震える私の唇をベロッて舐めてフフッと微笑んだ。
「プハッハァ……そうなの?」
「うん。ねぇ名前呼んで?」
鼻が当たるくらいの顔の近さでドキドキする。見つめるのすら恥ずかしい。
「えっと……サイラス様?」
「うん。君は仕事中もサイラス様と呼んでよ。それくらいしないと君は俺のものにならない気がする」
そんなことはないけど?こうしてるのも悪くないと思うし、キスは思ったより好きかも。問題は体がおかしいだけ。これなんだろう。息苦しかったけど気持ちいい?というのかな。ふわふわするの。あ、ンッ……口を塞がれて続きって。俺に抵抗しないで、同じようにしてって。
「サイラスぅなんか変なの」
「うん」
体が熱くなる気がする。息も上がるし変な声が出る。かわいくて堪らないないティナと囁く。体を触る手もなんかいい。そのうち腰に力が入らなくてゆらゆらし始めるとドサッと押し倒された。見上げると、
「それは君が性的に感じているからだ。当たり前でしょ」
「え?」
なんてはしたないのッここは執務室でしょ!焦って彼から体を離した。それでも迫ってくる殿下の口に手を当てる。
「キスは禁止。私が…そのあの。だから結婚式までダメッ」
「は?バカか君は」
「なぜ?」
「触れ合いくらいいいだろ?」
「でも……」
じゃあ妥協する。初夜の準備にキスに慣れよう?すぐエッチな気分になれるようにさって。はい?
「君は素敵だ。俺のキスだけでこんなに蕩けてさ」
「ふえ?」
そう言うと頰に手を当て唇が重なる。
「サ、サイラスぅ」
「うん」
なんて感じで話し合いは初めだけで、エッチィ手つきで触られてフワフワ。キスだけでも気持ちよくて、私に触れる彼の手も……されるがままだった。
「なにか……気が付きそうなんです。少しお待ち下さいませ」
「うん」
軽く目を閉じて記憶をたどる。いつから私は人に自分の気持ちを話さなくなった?家族や家臣を信じていないとかではない。少しずつ過去をさかのぼっていると母様の顔が浮かんだ。なんの脈絡かは忘れたけど、
「ティナ。母様は頑張るけどきっとあなたの花嫁姿は見られない。そんな予感がします」
「母様そんなこと言わないで下さいませ」
優しく微笑む母様の笑顔がいきなり霧散するような不安に陥った。それを話すと、すぐにはいなくならないけどねと母様は微笑んで撫でてくれた。
「エミリーをよろしくね。セドリックも強そうに見えるけど三人とも私に似て、あまり心が強くはありません。だから助け合ってね。父様は心の問題には当てにならないから」
「うん。頭の中まで筋肉みたいですもの」
「ふふっそうね」
病床の母のベッドにもぐり込み甘えてた記憶。あなたは兄妹で一番心が強いと私は思います。みんなの道行きを指し示してあげてねと、優しい笑顔を見せてくれた。
「そんなこと私には出来ませんよ。母様」
「出来ますよ。私の自慢の娘ですもの。勉強では測れない心根の優しさと、芯の強さをあなたに感じます。大丈夫、あなたならきっとね」
「そう?」
「ええ。そしてその役目はお嫁に行くまででいい。そしたら次はその優しさを旦那様に向けなさい」
母様の言葉はよくわからなかった。でも私がしっかりして、兄妹を導けと言われたのは分かった。後半が分からなくて、母様が存命中から亡くなってからも恋愛物の本を読みあさった。答えがあるかもと。でも、いくら読んでも他人を愛する気持ちが分からなかった。家族以上に愛する人?なにそれって。家族が大好きでよく分からなかった。
物語の中の男性も女性も「あなただから秘密を話すの」と言う。またはこの愛はあなただけに、私の身も心もあなたに捧げると男性は恋人に言う。それを嬉しそうに恋人は微笑んで抱き合う。分からないとしか思わなかった。家族以上に愛を向ける対象なんていないもん。頭では理解するけど、心がついていかなかった。
「カギはここのだ。まだ母様がかろうじて元気な頃で、寝込み始めた頃かな」
「なんの話し?」
軽く殿下に説明した。自分の心を閉じた原因というかなんというか。目先の目標を定めた頃かな。自分がしっかりしなきゃって。
「母の呪縛とでも言いますかね。兄妹で頑張りなさい。あなたならきっとみんなを支えられるって言われたのです。だから困った時にこの言葉が魔法のように私を支配するのです。たぶん」
「ほほう。考えて疲れたろ?あーん」
「あーん」
口の前に差し出されたクッキーをパクリ。おいしい。だろ?って。ハッなに当たり前のように食べた!私はオロオロしてしまった。
「クックッ君は俺が好きだろ」
楽しそうに笑う殿下。君のその素直なところが好きだよって。
「だから好きですしとても大切な方です。考えてるのは男性としてあなたが好きか考えてるのです」
「ふーん。まあいい答えは出たか?」
答えか。あのベッドの中で母様とふたりで話した言葉。他にも言ってたような?たぶん他人への愛は分からないと言った気がするのよね。母様はいつか分かりますよって。父様や兄妹に向ける愛とは違うものよと。母様はあんな父様だけど愛しています。みんなの見てないところでたくさんの愛をくれます。恥ずかしくて隠すような、かわいい父様なのと惚気てた気がする。本当か?と疑って聞いていたはず。
「スッキリ納得は出来ないのですが、あなたにしか心の内を話したことはないのです。個人的に話した初めての日。リアムとの関係をペラペラしゃべったし、今もこんな億面もなく自分の考えを垂れ流すとか。男性として好きなのは間違いないと考えます」
「なにその業務報告みたいなのは」
「だってそう思ったんだもん」
ほらぶどう食べるか?あーんと差し出されてあーん。モグモグおいしい。このマスカット好きなのよね。酸味と甘みが……はうっ
「アハハッ本当にかわいいよ」
「すみません。つい」
楽しそうに笑う殿下。バカか私は。何度同じ手に引っかかるの。恥ずかしくて真っ赤になった。ダメだ殿下のペースになってる。
「例えばさ。他の人が同じことしたら君は口を開けたか?カールとか」
「いやいや、毒かと思って食べませんよ。あの人は私をおもちゃかなんかと勘違いしてますから」
「だろ?そういうことだと思うよ」
あっ私は明確に他の男性と殿下を分けてたのか。彼を信用に足る人と思ってるんだ。そりゃそうか主だし。主が毒を食わすとは思わないもんね。ブツブツ声になってたのか、
「分からんぞ?臣下を毒殺なんてのはあるし」
「まあ。でもその時は前フリがあるでしょう?主が不穏とか虐められてるとか」
「まあなあ。ほら」
そうよねえとか考えていると目の前にぶどう。
「あーん。じゃないでしょッ」
「食べろよ」
「はい」
差し出されたブドウをパクリと食べた。おいしい。モグモグ食べていると殿下が立ち上がった。ん?私を見下ろす彼は呆れ顔で、
「君は自分感情にもニブチンなんだな」
「否定はしません。会議とか、領民のみんなと話してる時はよく察すると褒められるのですけど」
「なぜ俺には出来ない?」
「それは……改めて聞かれると分かりません」
まあいいや俺が好きなのは自覚したな?と問われ、たぶんと答えた。すると隣に座って、
「では、俺への答えは?」
「え?……そっか好きです。男性として心許せる人と思います」
「ふう……言い方があるだろ」
さらに呆れた顔をする。他に?と彼をマジマジと見つめた。なにかあります?と言えばあるだろって。
「好きです以外に?」
「ああ」
「ふむ」
男性だけど綺麗というのがぴったりの人だと思う。王家の見た目の良さと、話しかけやすい温和な表情。それと身分をかさにきない物ごし。そして法案以外は抜群の有能さ。そこを褒めるのはおかしいか。
「髪がきれい。私は特にあなたの髪が好きです。艶々で素敵です。それと透き通る青い目も好き」
「それで?」
「えっと……有能なのも好き」
「そして?」
「そして?好き?」
「なんで疑問形なんだよ」
彼はなにを求めてるの?好きしかないでしょう?うーん察しが悪いのは分かってるはず。なら教えてとニコッとした。
「ティナ。それ自分の気持ちでしょう?」
「ですね」
「じゃあさ。俺にそんな子どもみたいな感情だけ?」
「え?」
「え?」
君はこの先を考えないの?と困り顔で言われた。この先、彼の気持ちを受け入れれば婚約して結婚式して、いずれ赤ちゃん……ブワッと顔に熱。そ、そうよね。好きの先はそうよ……あわわわっ
「よかった。ならそれを感じても俺が好き?俺に抱かれてもいいと思える?」
「あ、あの……」
言葉がでなくてふるふると震えた。抱かれるって……なんとなくの想像が浮かんで恥ずかしくて頰に手を当てた。すると顔をクイッとされて、ならこうしたらと考えられる?と唇が重な?ンッ……
「どう?」
「あ、あの……どうとは?」
「気持ちは?」
「好きで……す。変わりません」
ほら。言葉に出来ないだけで君は俺が好き。愛してるとは言えないかも知れないけど、触れられてもイヤじゃないでしょう?と。確かに。
「体で落とす手も考えたけど、嫌われたくはなくてね」
「あの……私家族以外の男性とのキスはあなたが初めてで…そのなにも分かってなくて……そのですね」
「そんなの見れば分かるし、聞いた」
もうすこしいい?と唇が重なる。ついばむようにチュッチュッと触れて……そのうち唇は首筋に移動して手は胸に。その手は揉み始めて。
「あの……殿下…あっ…ねえ……」
「ごめん。したい」
「え?いやいや正式な婚約もしておりません!体は結婚後ではないのですか!」
「もう俺のものだろ?」
「ですが!ベッドもないし」
「そこ?」
「初めてには夢を!」
ふむと納得したのか離れた。ハァハァよかったまだ心がついていかないの。それにちょっと怖い。
「なら我慢する」
「ありがと」
「今夜誘う」
「違いますぅ。結婚式の後ですぅ」
「マジで?」
「マジです」
「股間爆発するけど?したくてそこらでよその人襲うかも?」
「ゔっそんなことしない人と知ってます!」
ふ~んと嫌な笑いを浮かべ、君は男を甘く見てる。俺も普通の男で、愛しい人とは体を重ねたい欲がある。当たり前だろと。
「そ、それはそうかもですが……うん?はしたないですけど普段はどうされてる?」
「聞くの?」
「いえ……聞くものではありませんでした」
余計なことは聞かないことにしよう。そしてそのまま胸に抱かれ、今後の流れだと話しを詰める。自分のドキドキが大きくなる。そして殿下の胸の鼓動も少し早い気がする。
「正式に婚約が決まるのが今月中で、結婚式はこのご時世だから盛大には出来ない。身内と少しだな」
「構いません」
「そして屋敷を城の敷地内に持つ。空いてる屋敷を改装してそこからここに通うようになる。君は結婚後も働く?」
「働きます。万が一あなたに捨てられてもいいように。ここがダメでも他の省庁で図太く働きます」
「そ、そうか。他の三人は今まで通りで、領地もな」
「はい」
見上げたらそんな仕事みたいな顔すんなよとチュッとされた。そんな顔になってた?
「なってたよ。ふたりの時は甘えて」
「はい。殿下」
「その殿下も止めて」
「ではなんとお呼びすれば?」
「サイラス。名前で呼んでよ。妻になるんだから」
「では、仕事中以外はそうさせてもらいます」
君はもうと唇が重なる。臣下モードは止めてよ。俺の姫と舌が絡む。んんっなんだろ。ヌルヌルと……不思議な気分がする。…息が?ンッあっグッ待って苦しッ本気で苦しくて……死ぬッウーッ
「ばかだなあ。息は止めないの」
彼は息苦しくて震える私の唇をベロッて舐めてフフッと微笑んだ。
「プハッハァ……そうなの?」
「うん。ねぇ名前呼んで?」
鼻が当たるくらいの顔の近さでドキドキする。見つめるのすら恥ずかしい。
「えっと……サイラス様?」
「うん。君は仕事中もサイラス様と呼んでよ。それくらいしないと君は俺のものにならない気がする」
そんなことはないけど?こうしてるのも悪くないと思うし、キスは思ったより好きかも。問題は体がおかしいだけ。これなんだろう。息苦しかったけど気持ちいい?というのかな。ふわふわするの。あ、ンッ……口を塞がれて続きって。俺に抵抗しないで、同じようにしてって。
「サイラスぅなんか変なの」
「うん」
体が熱くなる気がする。息も上がるし変な声が出る。かわいくて堪らないないティナと囁く。体を触る手もなんかいい。そのうち腰に力が入らなくてゆらゆらし始めるとドサッと押し倒された。見上げると、
「それは君が性的に感じているからだ。当たり前でしょ」
「え?」
なんてはしたないのッここは執務室でしょ!焦って彼から体を離した。それでも迫ってくる殿下の口に手を当てる。
「キスは禁止。私が…そのあの。だから結婚式までダメッ」
「は?バカか君は」
「なぜ?」
「触れ合いくらいいいだろ?」
「でも……」
じゃあ妥協する。初夜の準備にキスに慣れよう?すぐエッチな気分になれるようにさって。はい?
「君は素敵だ。俺のキスだけでこんなに蕩けてさ」
「ふえ?」
そう言うと頰に手を当て唇が重なる。
「サ、サイラスぅ」
「うん」
なんて感じで話し合いは初めだけで、エッチィ手つきで触られてフワフワ。キスだけでも気持ちよくて、私に触れる彼の手も……されるがままだった。
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