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三章 和樹しか見えない
11 新婚旅行とお式 後編
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俺たちは控室でたくさんの衣装から和樹は濃いシルバーのタキシード。俺はもう少し色の薄めのゴールド系のタキシード。同じにするか?とも思ったけど、俺お嫁さんの気分がどこかあって、でも白は違う気がしてね。
「和樹……かっこいい」
「智もかっこいいよ」
「ふふっありがとう」
髪の毛をセットしてもらってお化粧も少し。そしてチャペルに移動。扉の前で緊張しながら開けてもらうと、あれ?牧師さんが正装して待っていた。
「キリスト教はゲイ嫌いなはず……」
「今は一部の理解ある牧師さんが立ち会ってくれたりするんだよ」
「へえ……」
和樹の家はキリスト教の信者だそう。だからアルバイトさんではなくて、本物の牧師さんに依頼したんだって。形だけではいえ、僕は本気で智と生涯を共にしたいのは普通の夫婦と変わらないからと。
「ほら智腕を」
「うん」
俺は和樹の腕に腕を絡めてふたりでゆっくりと祭壇の方に向かう。正面のステンドグラスが美しく、パイプオルガンの音色が現実なんだとチャペルに響く。
俺に一生のパートナーが出来るなんて誰が予想出来たんだろう。自分ですらこんな未来があるなんて考えてもいなかった。
俺たちが祭壇の前に立つと、ドラマでも見たような牧師さんの言葉が朗々と……感動しながら聞いていた。
「では指輪の交換を」
和樹と俺は前日に指輪を外して預けていたものがリングピローにふたつ並んでいた。
「智、手を出して」
「うん」
薬指に指輪を入れる。何度してもいいものだな。
「和樹も……」
「うん」
彼の薬指に指輪を入れた。改めて見ると和樹の指長いな。
「では誓いのキスを」
お嫁さんみたいにベールはないから向き合って見つめ合う。
「智愛してる」
「俺も愛してます」
チュッと軽く触れるように。それだけで幸せだった。するとパチパチパチと盛大な拍手?驚いて横をを見ると拓司さんや、ホテルのスタッフがいた。緊張してて入って来たの気が付かなかったよ。
「おめでとう」
「おめでとうございます!」
などと声がかかった。祝福してくれるんだね?男同士なのに……俺は驚きと嬉しさでダバーって涙が溢れた。
「泣くなよ智也」
「だってぇ……嬉しくて。みんな忙しいのに来てくれて……」
新たな人生を歩むふたりに祝福を!と牧師さんが言うと通路にみんな並んでくれた。手には花びらを持ってね。
その間をゆっくり歩いた。ふわふわと花びらがかけられて……なんて幸せなんだろう。こんな幸せでいいのかな?みんな制服のまま来てくれて、忙しいのに俺たちのために。言われたからの人もいるだろうけど、それでも嬉しくて涙は更にドバーって。
外に出ると扉が閉められて、拓司さんがおめでとうって。
「写真撮影を用意してるんだ」
「あ…ありがとう兄さん。僕それ忘れてたよ」
「うん。抜けてたから勝手に追加しておいた」
「ありがどゔございまずぅ…グスッ」
拓司さんはうーん。こんなに泣いてしまったかと、メイクさんを呼んでくれて、俺を手直しした。ごめんなさい、おテスをお掛けします……俺の顔をごまかしたところで、庭やチャペルで写真を撮った。少しカメラマンさんに見せてもらったらいい写真で嬉しかった。式の最中も撮っててくれたんだって!
撮影が終わり、着替えてから拓司さんの執務室に出向いて感謝を伝えた。
「和樹もお嫁さんをもらったしホテルに来ないか?」
「嫌ですよ。僕は智と自由に楽しく暮らすんですから。そうだな、万が一僕が会社で不正でもしてクビになったら来ます」
「えー……それ定年まで来ねぇって言ってるのも同じだろ?」
「そうですかね。ははは」
まあいいやって、こっちは奥さんの真央だって紹介された。
「初めまして楠木智也と申します。今日はありがとうございました」
いいえって。真央さんはきれいなんだけど……そう!タカラジェンヌの男役の方のような凛々しさのある方で、制服姿がかっこいよかった。
「ふふっ初めまして。妻の真央です。私たちはあなたを正式に弟と思って接しますので、これからよろしくね」
「はい!ふつつか者ですがよろしくお願いします!」
俺は精一杯の感謝を込めて頭を下げた。手隙のスタッフに声を掛けてくれたのは真央さん。自分たちだけじゃ寂しかろうって。
「なんてかわいい方なの。身内にはいないタイプよね?拓司さん」
「本当にな。こんなかわいい子が和樹を好きになるとはね。この腹黒になあ」
「兄さん。腹黒は僕に失礼です」
二人は和樹の子供の頃の話や、俺と付き合うまでとか色々話してくれた。
「そこら辺でやめていただけますか。智也に僕の悪い面なんか教えなくていいでしょうよ」
「パートナーなんだろ?智也さんも今の和樹だけじゃないことも知りたいかなって」
「はい!」
はいじゃないでしょ智也……とげんなりしているが、俺は聞きたかったもん。和樹は子供の頃から腹の中は見せず飄々としててなあって。いつしか俺になんにも言わなくなって蒼士に懐いてさって。
「兄さんは尊敬してますし、色々話してますよ。今回も蒼士ではなく兄さんにお願いしてますし」
「そうだが……俺は疑ってるね」
兄さんはもうって嫌そうに言いながら、
「すぐホテルに来いとか言わなければもっと懐きますよ」
「そうか?でもなあ、ホテルが増えてるからさ。旗艦ホテルは出来れば身内を支配人にしたいって会長も言ってるんだよ」
「知ってますが嫌です」
そんな話をしてお昼になり、拓司さん夫婦と昼食を取りに繁華街に車で出かけた。そこでソーキそばとかラフテー、シリシリとか後よく分かんなかったけど地元の料理を堪能。ふたりのおすすめのお店だと言うだけあってとても美味しかったし、話も面白くて楽しかった。食事のあと俺たちは街に残り散策、拓司さんたちは仕事に戻った。
「和樹!シーサー欲しい!玄関の靴箱の上に置きたい!」
「はいはい。どれがいいの?」
「うーんとね」
俺は土産物屋で見つけたシーサー欲しくてお土産屋さんでうーん。迷ったけど小さめのをふたつ買った。和樹がなんかのオブジェとか置いてるから邪魔にならないやつをね。後は会社に持っていくお菓子を買ったり。
当然和樹は甘いものを食べ歩きして喜んでいた。どこに入れてるのやらだよ。和樹は見た目より食べるんだ。
「甘いものは別腹って言うだろ?あれ本当に胃に隙間が出来るんだよ。だから入る」
「はいはい……」
午後はタクシー拾って首里城をゆっくり散策。夕方ホテルに戻った。夕食はホテル内のレストランで済ませた。
「疲れた……さすがに疲れた」
「そうだな……」
バーカウンターでビールを飲みながらお式のこととおしゃべりしていた。これで身内の方に全部会ったかな。
「まあ、近い身内はね。お祖父さんの兄弟の子とかはまだかな」
「ゲボっ!まだいるの?」
口に付けてたビールを吹いた。
「うん。蒼士の兄の匠海さんとも陽菜さんとも話したことないだろ?雄二に貴也と……えーっと子どもたちもそうだし、お祖母さんの方とか。信子叔母さんとか貴志伯父さんとか……」
「ど、どんだけいるの?」
「僕もよく分かってないけど、かなりいる」
うそ……いやそうか。これだけホテルかあって半分は身内が支配人って言ってんだから。
「ふふっ他はゆっくりでいい。そのうち呼ばれるから」
「ええ?」
「当たり前だろ?僕の伴侶なんだから。冠婚葬祭、完成披露とか。伯父伯母が多いから祝いごとも多い」
「う、うそ……」
まあ全部行かなくてもいいけどねって。でも今回会った身内のキャンセルはあとが怖い。なんで来なかったんだ?とネチネチ嫌味言われたりするかららしい。
「身内の結束力が強いんだよ。だからこれだけのグループをやれてるんだ。僕がいようがいまいがどうでもよさそうなもんだけど、顔見せろって」
外面だけはいいから一族にはかわいがられてるんだってさ。蒼士以外のいとことも仲はいいって。
「へ、へえ……俺に出来るかな?」
「僕が隣から離れることはないから大丈夫だよ」
「そう……なら頑張る」
母方のお祖母さんはご病気でもう亡くなってるそうだが、ご兄弟はまだご健在。ことあるごとに、「和樹はどこのホテルにいるの?」とか知ってて聞いてくるそう。……面倒臭そうだな。
「さて抱くかな」
うそ……その体力はどこから?まあ今日が初夜だからそうなんだろうけど、不敵に微笑むのに不安を感じる。
「僕に抱かれれば眠気なんてどこかにいくさ」
「そうかな?」
「そうだよ。明日の飛行機は寝ていればいい」
「うん……」
「僕は観光すらしなくて智を抱いていたいくらいだったのを我慢した」
「へ?」
うお!もう勃起してるし……どこに勃つ話しあったんだよ。毎回分からん!
「昨日足りなかったから部屋に戻ってからずっと勃ってた」
「マジでぇ?」
「うん」
ほら脱げって全裸にされてジャグジーに入ってあんあん。昨日のようにちんこ握られて快感に悶絶意識は曖昧……ぼんやり目を開ければベッドに移動してて突っ込まれてた。
「か、かずき……お尻壊れちゃうぅ」
「二晩なら持つと知ってる」
クソッ騙されないか。ならと自分で上に乗ってあんあん。
「智エロくなったよね」
「あなたのせいでね…あっ出ちゃうかも……クッ……っ」
和樹に倒れ込みキスして……お尻は和樹の精液でグチュグチュといやらしい音を立てていた。
「愛してる。僕を見て」
「ふふっうん」
頬を撫でながら幸せそうにしている。俺も幸せだよ。
「なんてかわいいだろう。僕の智は本当にかわいい」
「和樹はかっこいいよ。俺の知ってる誰よりもね」
「うん。愛してるって言って」
腰は止まらず言葉を欲しがる。短い賢者タイムは愛してる、大好きっていい続けてね。
「愛してるよ和樹」
「ふふっうん」
幸せな夜は更けていった。
翌朝起きて体を流してお昼を食べて、荷物を整理してからクラークに荷物を預けてホテル内で遊んだ。まあ、買い物とか、ビーチの散歩とか。そして夕方、タクシー乗り場近くに初日の高級車があった。
「送ってくる」
「はい。気を付けて。また来てね和樹さん、智也さん」
「ええ。今度は自腹で来ます」
「待ってるわ」
俺は拓司さん夫婦と和樹の会話を聞いて震えた。次は自腹ってどういうこと?和樹は拓司さんと久しぶりに会ったせいか、車でもずっと話していて聞けない。俺はさっきの話が頭から離れなかった。空港で拓司さんにお礼を言って飛行機に乗り込んでから、
「今回の滞在費のお金払ってないとか怖いんだけど、どういうことなんだよ」
「ああ、あれ兄さんの結婚祝いだから気にすんな」
「はあ?いくらすんだよ!スイート二泊にチャペルだけとはいえ……こわっ……」
「まあ、うん百万…かな。飛行機代だけ僕が払った」
あ、ああ……披露宴なくてその金額は……俺の魂は理解出来なくてフリーズ。それをプレゼントとしていいの?いいのか?
「いいの。都内の蒼士のところでもよかったんだけど、打ち合わせを蒼士としているのがどこかで漏れて、兄さんがこっちに来いって。だから相談したんだよ」
「そう……」
金持ち信じらんない。なら体で返すしかないな。冠婚葬祭頑張ろうとしか。
「智、少し寝よう」
「うん」
着くまで寝てて、羽田に着いてタクシーで帰宅。さすがに死んだように眠った。
自分たちだけの結婚式と新婚旅行だったけど、嬉しかった。俺の周りは恵まれててみんな祝福してくれたけど、世間はそうじゃない。啓発もたくさんされていて認知は浸透してきたけど、反発も多い。これは日本のみならず世界中でだ。
俺はゲイに関しては他人に認められなくてもいいと思って生きて来たけど、今は和樹が俺を必要としてくるだけでいい。それだけで生きていけると本気で思っている。
あんまりにも幸せ過ぎて、脳がバランスを取ろうとしてるのか嫌なことも思い浮かんだりした。隣で寝息を立てているこの人がいれば……俺なんにもいらない。
愛してるよいつまでも…いつまでも。だから俺を愛して……
「和樹……かっこいい」
「智もかっこいいよ」
「ふふっありがとう」
髪の毛をセットしてもらってお化粧も少し。そしてチャペルに移動。扉の前で緊張しながら開けてもらうと、あれ?牧師さんが正装して待っていた。
「キリスト教はゲイ嫌いなはず……」
「今は一部の理解ある牧師さんが立ち会ってくれたりするんだよ」
「へえ……」
和樹の家はキリスト教の信者だそう。だからアルバイトさんではなくて、本物の牧師さんに依頼したんだって。形だけではいえ、僕は本気で智と生涯を共にしたいのは普通の夫婦と変わらないからと。
「ほら智腕を」
「うん」
俺は和樹の腕に腕を絡めてふたりでゆっくりと祭壇の方に向かう。正面のステンドグラスが美しく、パイプオルガンの音色が現実なんだとチャペルに響く。
俺に一生のパートナーが出来るなんて誰が予想出来たんだろう。自分ですらこんな未来があるなんて考えてもいなかった。
俺たちが祭壇の前に立つと、ドラマでも見たような牧師さんの言葉が朗々と……感動しながら聞いていた。
「では指輪の交換を」
和樹と俺は前日に指輪を外して預けていたものがリングピローにふたつ並んでいた。
「智、手を出して」
「うん」
薬指に指輪を入れる。何度してもいいものだな。
「和樹も……」
「うん」
彼の薬指に指輪を入れた。改めて見ると和樹の指長いな。
「では誓いのキスを」
お嫁さんみたいにベールはないから向き合って見つめ合う。
「智愛してる」
「俺も愛してます」
チュッと軽く触れるように。それだけで幸せだった。するとパチパチパチと盛大な拍手?驚いて横をを見ると拓司さんや、ホテルのスタッフがいた。緊張してて入って来たの気が付かなかったよ。
「おめでとう」
「おめでとうございます!」
などと声がかかった。祝福してくれるんだね?男同士なのに……俺は驚きと嬉しさでダバーって涙が溢れた。
「泣くなよ智也」
「だってぇ……嬉しくて。みんな忙しいのに来てくれて……」
新たな人生を歩むふたりに祝福を!と牧師さんが言うと通路にみんな並んでくれた。手には花びらを持ってね。
その間をゆっくり歩いた。ふわふわと花びらがかけられて……なんて幸せなんだろう。こんな幸せでいいのかな?みんな制服のまま来てくれて、忙しいのに俺たちのために。言われたからの人もいるだろうけど、それでも嬉しくて涙は更にドバーって。
外に出ると扉が閉められて、拓司さんがおめでとうって。
「写真撮影を用意してるんだ」
「あ…ありがとう兄さん。僕それ忘れてたよ」
「うん。抜けてたから勝手に追加しておいた」
「ありがどゔございまずぅ…グスッ」
拓司さんはうーん。こんなに泣いてしまったかと、メイクさんを呼んでくれて、俺を手直しした。ごめんなさい、おテスをお掛けします……俺の顔をごまかしたところで、庭やチャペルで写真を撮った。少しカメラマンさんに見せてもらったらいい写真で嬉しかった。式の最中も撮っててくれたんだって!
撮影が終わり、着替えてから拓司さんの執務室に出向いて感謝を伝えた。
「和樹もお嫁さんをもらったしホテルに来ないか?」
「嫌ですよ。僕は智と自由に楽しく暮らすんですから。そうだな、万が一僕が会社で不正でもしてクビになったら来ます」
「えー……それ定年まで来ねぇって言ってるのも同じだろ?」
「そうですかね。ははは」
まあいいやって、こっちは奥さんの真央だって紹介された。
「初めまして楠木智也と申します。今日はありがとうございました」
いいえって。真央さんはきれいなんだけど……そう!タカラジェンヌの男役の方のような凛々しさのある方で、制服姿がかっこいよかった。
「ふふっ初めまして。妻の真央です。私たちはあなたを正式に弟と思って接しますので、これからよろしくね」
「はい!ふつつか者ですがよろしくお願いします!」
俺は精一杯の感謝を込めて頭を下げた。手隙のスタッフに声を掛けてくれたのは真央さん。自分たちだけじゃ寂しかろうって。
「なんてかわいい方なの。身内にはいないタイプよね?拓司さん」
「本当にな。こんなかわいい子が和樹を好きになるとはね。この腹黒になあ」
「兄さん。腹黒は僕に失礼です」
二人は和樹の子供の頃の話や、俺と付き合うまでとか色々話してくれた。
「そこら辺でやめていただけますか。智也に僕の悪い面なんか教えなくていいでしょうよ」
「パートナーなんだろ?智也さんも今の和樹だけじゃないことも知りたいかなって」
「はい!」
はいじゃないでしょ智也……とげんなりしているが、俺は聞きたかったもん。和樹は子供の頃から腹の中は見せず飄々としててなあって。いつしか俺になんにも言わなくなって蒼士に懐いてさって。
「兄さんは尊敬してますし、色々話してますよ。今回も蒼士ではなく兄さんにお願いしてますし」
「そうだが……俺は疑ってるね」
兄さんはもうって嫌そうに言いながら、
「すぐホテルに来いとか言わなければもっと懐きますよ」
「そうか?でもなあ、ホテルが増えてるからさ。旗艦ホテルは出来れば身内を支配人にしたいって会長も言ってるんだよ」
「知ってますが嫌です」
そんな話をしてお昼になり、拓司さん夫婦と昼食を取りに繁華街に車で出かけた。そこでソーキそばとかラフテー、シリシリとか後よく分かんなかったけど地元の料理を堪能。ふたりのおすすめのお店だと言うだけあってとても美味しかったし、話も面白くて楽しかった。食事のあと俺たちは街に残り散策、拓司さんたちは仕事に戻った。
「和樹!シーサー欲しい!玄関の靴箱の上に置きたい!」
「はいはい。どれがいいの?」
「うーんとね」
俺は土産物屋で見つけたシーサー欲しくてお土産屋さんでうーん。迷ったけど小さめのをふたつ買った。和樹がなんかのオブジェとか置いてるから邪魔にならないやつをね。後は会社に持っていくお菓子を買ったり。
当然和樹は甘いものを食べ歩きして喜んでいた。どこに入れてるのやらだよ。和樹は見た目より食べるんだ。
「甘いものは別腹って言うだろ?あれ本当に胃に隙間が出来るんだよ。だから入る」
「はいはい……」
午後はタクシー拾って首里城をゆっくり散策。夕方ホテルに戻った。夕食はホテル内のレストランで済ませた。
「疲れた……さすがに疲れた」
「そうだな……」
バーカウンターでビールを飲みながらお式のこととおしゃべりしていた。これで身内の方に全部会ったかな。
「まあ、近い身内はね。お祖父さんの兄弟の子とかはまだかな」
「ゲボっ!まだいるの?」
口に付けてたビールを吹いた。
「うん。蒼士の兄の匠海さんとも陽菜さんとも話したことないだろ?雄二に貴也と……えーっと子どもたちもそうだし、お祖母さんの方とか。信子叔母さんとか貴志伯父さんとか……」
「ど、どんだけいるの?」
「僕もよく分かってないけど、かなりいる」
うそ……いやそうか。これだけホテルかあって半分は身内が支配人って言ってんだから。
「ふふっ他はゆっくりでいい。そのうち呼ばれるから」
「ええ?」
「当たり前だろ?僕の伴侶なんだから。冠婚葬祭、完成披露とか。伯父伯母が多いから祝いごとも多い」
「う、うそ……」
まあ全部行かなくてもいいけどねって。でも今回会った身内のキャンセルはあとが怖い。なんで来なかったんだ?とネチネチ嫌味言われたりするかららしい。
「身内の結束力が強いんだよ。だからこれだけのグループをやれてるんだ。僕がいようがいまいがどうでもよさそうなもんだけど、顔見せろって」
外面だけはいいから一族にはかわいがられてるんだってさ。蒼士以外のいとことも仲はいいって。
「へ、へえ……俺に出来るかな?」
「僕が隣から離れることはないから大丈夫だよ」
「そう……なら頑張る」
母方のお祖母さんはご病気でもう亡くなってるそうだが、ご兄弟はまだご健在。ことあるごとに、「和樹はどこのホテルにいるの?」とか知ってて聞いてくるそう。……面倒臭そうだな。
「さて抱くかな」
うそ……その体力はどこから?まあ今日が初夜だからそうなんだろうけど、不敵に微笑むのに不安を感じる。
「僕に抱かれれば眠気なんてどこかにいくさ」
「そうかな?」
「そうだよ。明日の飛行機は寝ていればいい」
「うん……」
「僕は観光すらしなくて智を抱いていたいくらいだったのを我慢した」
「へ?」
うお!もう勃起してるし……どこに勃つ話しあったんだよ。毎回分からん!
「昨日足りなかったから部屋に戻ってからずっと勃ってた」
「マジでぇ?」
「うん」
ほら脱げって全裸にされてジャグジーに入ってあんあん。昨日のようにちんこ握られて快感に悶絶意識は曖昧……ぼんやり目を開ければベッドに移動してて突っ込まれてた。
「か、かずき……お尻壊れちゃうぅ」
「二晩なら持つと知ってる」
クソッ騙されないか。ならと自分で上に乗ってあんあん。
「智エロくなったよね」
「あなたのせいでね…あっ出ちゃうかも……クッ……っ」
和樹に倒れ込みキスして……お尻は和樹の精液でグチュグチュといやらしい音を立てていた。
「愛してる。僕を見て」
「ふふっうん」
頬を撫でながら幸せそうにしている。俺も幸せだよ。
「なんてかわいいだろう。僕の智は本当にかわいい」
「和樹はかっこいいよ。俺の知ってる誰よりもね」
「うん。愛してるって言って」
腰は止まらず言葉を欲しがる。短い賢者タイムは愛してる、大好きっていい続けてね。
「愛してるよ和樹」
「ふふっうん」
幸せな夜は更けていった。
翌朝起きて体を流してお昼を食べて、荷物を整理してからクラークに荷物を預けてホテル内で遊んだ。まあ、買い物とか、ビーチの散歩とか。そして夕方、タクシー乗り場近くに初日の高級車があった。
「送ってくる」
「はい。気を付けて。また来てね和樹さん、智也さん」
「ええ。今度は自腹で来ます」
「待ってるわ」
俺は拓司さん夫婦と和樹の会話を聞いて震えた。次は自腹ってどういうこと?和樹は拓司さんと久しぶりに会ったせいか、車でもずっと話していて聞けない。俺はさっきの話が頭から離れなかった。空港で拓司さんにお礼を言って飛行機に乗り込んでから、
「今回の滞在費のお金払ってないとか怖いんだけど、どういうことなんだよ」
「ああ、あれ兄さんの結婚祝いだから気にすんな」
「はあ?いくらすんだよ!スイート二泊にチャペルだけとはいえ……こわっ……」
「まあ、うん百万…かな。飛行機代だけ僕が払った」
あ、ああ……披露宴なくてその金額は……俺の魂は理解出来なくてフリーズ。それをプレゼントとしていいの?いいのか?
「いいの。都内の蒼士のところでもよかったんだけど、打ち合わせを蒼士としているのがどこかで漏れて、兄さんがこっちに来いって。だから相談したんだよ」
「そう……」
金持ち信じらんない。なら体で返すしかないな。冠婚葬祭頑張ろうとしか。
「智、少し寝よう」
「うん」
着くまで寝てて、羽田に着いてタクシーで帰宅。さすがに死んだように眠った。
自分たちだけの結婚式と新婚旅行だったけど、嬉しかった。俺の周りは恵まれててみんな祝福してくれたけど、世間はそうじゃない。啓発もたくさんされていて認知は浸透してきたけど、反発も多い。これは日本のみならず世界中でだ。
俺はゲイに関しては他人に認められなくてもいいと思って生きて来たけど、今は和樹が俺を必要としてくるだけでいい。それだけで生きていけると本気で思っている。
あんまりにも幸せ過ぎて、脳がバランスを取ろうとしてるのか嫌なことも思い浮かんだりした。隣で寝息を立てているこの人がいれば……俺なんにもいらない。
愛してるよいつまでも…いつまでも。だから俺を愛して……
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