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三章 和樹しか見えない

6 日中は穏やかだけど!

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 お祖父さん来襲から数ヶ月。和樹との生活のパターンも出来上がり、快適に暮らしていた。まあね、半分以上やってもらってるからだけど。それと、自分でも驚いてるんだけど、お手伝いをしたいんだ。
 彰人との時は最初はともかく、なんで俺ばっかって気持ちが湧いて、面倒臭いなと思いながらやってたんだ。だって彰人が俺のところに来ても、なーんにもしなかったから。

「和樹、俺次なにしたらいい?」
「ああ、乾燥機がそろそろ終わるから畳んでしまって」
「うん」

 和樹は一緒に住む前と変わらず「自分の部屋だけ片付けろ」しか言わなかった。だけど、なにかしたい。俺がいない日はこんなにも動いていたんだって知ったし、ご飯の支度は土日に仕込んでいた。

「和樹の料理っていつも美味しいなぁって思ってたけど、こんなに手間かけてたんだね」

 俺はリビングで洗濯物を畳みながら、キッチンでなにかしているのを眺めた。

「ああ、一緒に住む前は平日に少しずつやってたんだよ。今もだけど、趣味だから辛いとも思わないんだ」
「ふーん。でもありがとう」
「いいえ」

 この洗濯物を畳むのも、和樹のやり方を教えてもらってやってるんだ。俺ひとりの時は面倒臭くてさ、乾いたらハンガーごと移動させてただけでね……
 畳み終わってタンスにしまってから、玄関に纏めてたゴミを廊下のダストシュートに捨てに行く。高級マンションは設備もすげえ。一階のゴミ捨て場に捨てに行くとかはない。生ゴミも排水のところで砕かれるから捨てることもない。

「和樹、他なにやる?」
「もうないから座ってろ」
「はーい」

 ということで、和樹が仕込みをしているのを見ることにした。平日は外食も多いが、やれる日はやりたいってね。この作業は時短のためのもの。解凍して焼くとか、レンジで温めればいいまでをするんだ。

「そのお肉俺好き」
「だろ?だからね」

 手際いいなあ。保存袋に色んな物を詰め込んで冷凍庫に入れる。和樹は和食も好きだから、通販でお取り寄せなんかもしていてね。そのチョイスもよくて美味い。

「ねえ」
「うん?」
「俺本当に家賃入れなくていいの?食費と光熱費だけだからさ」
「いらないよ」
「でもさ」

 そろそろ終わるのか片付け始めた。

「智にして欲しいことはあまりないんだ。僕の悪いクセで、なんでも自分でやりたい。お金も……僕は古い考え方をしてるから、お嫁さんに負担かけたくない」
「お嫁さん……ふふっなんかくすぐったい」

 パートナーだけど夫のつもりだって。それと実はねって片付けをしながら、

「仕事でも自分がやった方が早いからってしてしまうことがある。ダメだと分かってるんだけどさ」
「ああ、だから俺たちがワタワタしてる時にもう終わってる?なんてことがあるのか」
「うん。課長代理の篠原さんをアシスタントにしてやっちゃうんだよね。たまに彼すら忘れる」

 これだと下が育たなくなるからダメなのにねって苦笑い。でも家で智がなにも出来なくても困らないだろ?だから気にするなって。

「ひとりで出来ないんじゃないんだから、ここは僕が甘えさせてよ」
「うーん。でもこれ甘えられてるの?俺が甘えてるだけだろ?」
「いいんだよ。細かいことは気にするな。出来ない時は頼むからさ」

 片付けが終わり、和樹はお茶を用意してくれて俺はカップを手にソファに座る。

「智がいるだけでいい」
「はい」

 和樹おすすめ映画を見ながらまったり。明日は和樹に用事があるから今日はゆっくりしようって。

「ごめんね」
「気にしてないよ」

 肩を抱かれながらうーん……なんだこれ。やたらに首がもげる映画を観ていた。人の欲と業しかないような時代劇で、でもなんでか見入ってしまって会話もなく二時間。

「ふう……人の欲を惜しげもなく打ち出したらこうなるのかもね」
「そうだね。僕はこの監督が好きなんだ。戦国の世に、純粋に成り上がりたいって欲がいい」
「確かに。欲に忠実だよね」

 昔は生活を楽にするにはやる気が今よりもずっと必要だったんだろうと思う。それが誇張されてはいるけど間違ってもいないかなって。

「うん」
「僕は……」

 言葉が止まった。エンディングを眺めながらなんか考えている様子だけど、なんか変な感じがして見上げた。

「どうしたの?」
「ふふっなんでもない。さて、スーパーに買い物に行こう。さっきのは平日用だからね」
「うん」

 和樹は一緒に住むようになってから、おかしな「エロスイッチ」はあまり入らなくなった。毎日一緒にいるからだろうけどね。心配してた毎日抱かれるとかもなく、平日はたまにで、週末は変わらず抱かれている。
 一緒にスーパーに買い出しに出かけて戻り、和樹手作り夕飯を食べて、お風呂入ってビール飲みながら和樹の立膝に入り込んでスマホをいじる。

 俺は同棲するのずいぶん悩んだよね。自分の生活スタイルが適当すぎたから。でも和樹に合わせても思ったより辛くなかった。そりゃあ初めの頃は辛かったよ?早起きだし、きちんと朝ご飯食べる人だから。
 でもね、他人と暮らすって悪くないと思う。和樹の言う通り人は慣れるものなんだよ。

「この間木村さんに、楠木くん変わりましたよね。一ノ瀬さんなにかしたの?って聞かれた」
「ゲッ!木村さんはもう……」

 俺は見上げて困った人だよねと笑った。

「なんて言ったの?」
「ん?一緒に住んでるからだよって」
「うっ……だから変なニヤニヤで俺を見てたのか」

 そうなんだよねぇ……和樹と暮らすようになって疲れが出にくくなってるんだ。きちんとした生活サイクルで、寝過ぎとかなくなってるからかも。日曜日に抱き潰されることもないし、一緒に筋トレもする。

「智」
「うん?」
「……春の定期人事異動で君は僕から離れる」

 へ?なんでだよ!俺は慌てて起き上がった。

「俺は問題起こしてないだろ?」
「ああしてない。そうじゃなくてね。先日部長と面談して、智と恋人なら異動しないとねって言われた。前回のもあるからねって」

 あ……そっか。そう言われるとなにも言えない。それに部長のパートナーは近くの支社にいるはずだ。俺が和樹のところに来れたのは部長の口添えが大きい。彼のパートナーも男性だから。 
 その頃の和樹はカミングアウトしてないけど、部長は俺に思うところがあったようで引き取ってくれたんだ。

「実は部長も若い頃色々あったんだそうだ。相手も同じ部署で、四六時中一緒にいるのが難しいことを知っていたんだ」
「そう……」

 細かいことは話してはくれないけど、辛そうに部長が笑って和樹は察したそう。俺は更に問題児だし仕方なし。

「うちも家族でホテルやってるだろ?同じホテルにずっといると上手くいかなくなるんだよ」

 僕は子供でよく分からなかったけど、対立が多くなって家でも険悪とかがあったそう。揉めた時に家でのこととか、スタッフには言わないことを口走ったりでさらに泥沼に。

「母が好戦的なのもあるけどね」
「へえ……ならお店とかやってるは人すごいんだね。何年も同じところで仕事するんだもん」
「ああ、規模の問題じゃないな。みんな努力して妥協点を見つけて老舗にしているんだよ」

 俺はどこに異動になるかは分からない。でも僕らは何も変わらないよって和樹は微笑む。

「うん……でも寂しいな」
「そうだね」

 大丈夫、僕らは上手くやっていけると頬を撫でてキスしてくれる。チュッチュッと唇をついばむように何度も。そのうち舌が……んっ

「智が好き。見張れないのは心配だけどね」
「ハァハァ……見張らなくても俺は和樹だけ」
「うん」

 珍しく俺を抱っこしてベッドに運んでそのまま抱かれた。いつもより長い愛撫で、俺は入れる前から頭がふわふわした。それに和樹は自分の快感に正直。先からだいぶ漏れて俺のお腹を濡らしていた。

「和樹…欲しい」
「うん」

 返事はするけど入れてはくれない。なぜか指すら入れてくれなくて疼いて辛い。

「入れてよ」
「……うん」

 すると俺の腰を持ち上げて舌を入れて!んーっ

「うっ…フウッ……違うの…和樹の……」
「知ってる…もう少し」

 穴を広げて舌で責めてくる……うふぅ……気持ちいい……

「和樹いじわるしないで」
「うん…」

 グチュグチュと舌を入れたり舐めたり……これ恥ずかしいんだよ。気持ちいいけど、俺の股に和樹のきれいな顔があるとか精神的に辛い。

「お願い…やめて……」
「なんで?こんなに漏れてんのに」
「そうだけど、俺の股に和樹の顔がセットとかホントにムリなんだ……うっ…あっ…」
「ふーん」

 やめやしねえ!とろけて朦朧としてくるし和樹の目はヤバいし。

「入れて!ヒクヒクしてんの分かってるでしょ!」
「うん」

 自分で言うのもどうかと思ったけど、もう欲しくて我慢するのが嫌になって懇願。
 すると和樹は俺の足を離した。おぅ……彼のちんこは糸を引くように漏れている。どんだけ我慢してるんだよ。

「硬くなりすぎてるけど許せよ」
「うん」

 俺の足を広げて穴に先が当たると一気にずぶり。

「アァーっ…はっ……んん……っ」

 俺は入れただけでイッた。震えるほどの快感で腰も反ってガクガク震え……いい……

「気持ちいい?」
「いい……」

 じらされ過ぎてて……ハ…ァ……ん…気持ちよすぎ……

「かわいい……智のこの顔見たくていじわるした。ごめんね」

 興奮しながらもかわいらしく微笑んだ。……鼻血出そう……俺この、イケメンの照れるような笑顔好き……愛しい人ならなおさらだ。

「和樹その顔反則。俺嬉しくて死んじゃうだろ」
「そう?ならお互い様だ」

 そこからは会話もなく和樹は押し込んだ。割とすぐにイッたけど抜きもせず継続。俺はされるがままで快感に酔いしれた。途中から意識も曖昧で、快感だけしか分からないような状態でゆさゆさ揺れてね。いつもより気持ちいいかも……

「智愛してる……」
「うん……はっ…あっ……」

 ことが終わると和樹はヤリきったという感じで清々しい顔をしていた。だが、俺の股間は自分のもだが、和樹のでビチョビチョ……
 またもやゴム無視か……全てをきちんとする和樹の唯一の問題点なんだよなあ。

「和樹、ゴムは?」
「ヤダ」
「ヤダじゃなくてさ」

 ズルんと抜くとブチュっと漏れて精液が割れ目を伝う……

「俺も強く言わないのも悪いけどさ。リスク考えろよ」
「んふふっ僕は下半身に関してはだらしないからムリ。快楽を優先する」

 すげぇ偉そうに……昼間と真逆の荒々しいセックス、リスク承知の生でヤりたがり、回数はおかしいくらいする。

「和樹、今日は何回イッた?」
「うーん……?五回…くらい?」
「え?」

 俺が窓の方を向くとかなり明るい!一晩中……か?この歳でこれほどとは……絶倫にもほどがあるだろ!俺もおかしいのか?付き合ってるし。

「智も悦んでるから同罪だよ」
「いやいや……」

 そうなんだけどさ。これはタチのほうがより気を付けてくんないと。俺は体を拭きながら文句をつけた。

「まあこの際リスクは置いておこう。俺セックスの後に出さなきゃいけないでしょ?手間だよね?」
「僕がしてあげるから構わない」

 和樹は不思議そうに小首をかしげる。くそ!

「そうじゃなくて!ベッドもあんまり汚れないし、俺にも優しいだろ?」
「シーツは代えればいいし……僕が手間になる。ゴム付けてる間に僕の頭おかしくなるだろ」
「ッ……はい」

 付けるだけならそんなに時間かからんだろうよ。ちょっとフキフキしてコロコロって付けるだけなのに。ブツブツ言ってたら、僕は余裕そうな顔してるけど、がっついてるからその短い時間すら嫌だとさ。む~ん。

「あのさ智也。僕がイッてからの復活の早さ気づいてる?」
「うん……」
「し始めるとそれしか考えてない。自分が多少おかしいのは理解わかってるけど、愛しい人を求めるのはおかしくないよね?」
「はい……」

 セックスに関してなにか言うのはもう諦めよう。いつか年取ってしたくなるまでか、もしくは俺が付いていけなくなるまでかな。俺は疲れがドッと来た気がして気持ちが「スン」としてしまった。

「智そんな顔しないで。僕の愛情でもあるんだよ。智が大好きな気持ちが溢れるからなんだから」
「知ってる。でもたまに……たまに思うんだ。和樹の元を去った恋人はこれが原因なんじゃないの?と」

 和樹はうん?と考えて始めた。絶対これだろ!

「そればっかりじゃないけど……言われたことはある」
「ほら見ろ!」
「睡眠時間が減ると文句は言われたかなあ。セックス自体に文句は言われてはいないよ?」
「同じだろ!」
「そう?」

 でもここまで相手してくれる人は智が初めてで僕は嬉しいって。いつも足りなくてねえって。

「だろうね。って言うか今日出かけるんだろ?なのにこんな……」
「僕はこれから少し寝れば平気だから」
「グッ……そうでした」

 ちょっと冷たいけど寝るぞって。俺この問題に関して書類でも作るかな。不満事項を箇条書きにした質問状とかをよお!ブツブツ頭で質問内容を考えてしまった。

「智おいで」
「うん」

 その声にバカな俺はすぐに考えるのをやめて胸に擦りついた。くわ~ふっあくびが出る。

「僕はセックス大好き、智も大好き。だから変わらないよ」
「うん」

 俺も和樹大好き過ぎて仕方ねえなとか思っちゃう。この裸で抱き合うのも好きだし。あはは……だめじゃん俺。







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