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三章 和樹しか見えない

2 帰って来ない

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 引っ越して二ヶ月が過ぎ、負んぶに抱っこで可愛がられてる。だけど、和樹は一緒に住み始めてからどこかおかしい。どことは言えないんだけど、なんか変なんだ。

「もう少しで終わるからね」
「うん」

 いつものように膝枕で俺は転がっている。下から見上げる和樹に変化はない。セックスも俺を悦ばせて楽しんでいるし、デートも今までと変わらず。この間はチケット貰ったからと一日歌舞伎を観に行ったし、外でもおかしくはない。
 でも……不安が募る。やっぱり俺との同棲は失敗だと思ってるかも?それならなんか……哀しくなる。もう俺は和樹いないとダメなんだ。いないのなんか考えられなくなっているから。

「うー……っ」
「なんだ?あはは」

 俺は涙が出そうになり、太ももに腕を回して顔を擦り付けた。ヤダ……ここは俺の場所なんだ。

「眠いのか?」
「違う」

 まあいいと俺の頭をワシャワシャ。この手がなくなるとか……やだぁ!仕事が終わるまでそのままでいた。

「はあ、終わり。智?」

 背中を叩かれて顔を上げた。

「んあ……寝るところだった」
「ふふっさて何しようか。特に予定は考えてなかったんだ」
「ふーん……」

 なら不安で過ごすのも嫌だから聞くか。俺は起き上がりきちんと座った。

「なあ、聞いていいか」
「なに?」
「和樹このところ変だ。聞きたくはないけど、俺との同棲は失敗だったと感じてるんじゃないのか?」
「はあ?」

 本気で驚いていた。違うのか?

「そんなこと思ったこともない。智はいうほどだらしなくないし、ご飯作れないだけで問題ないし。なんで?」
「そう……でも俺はどんどん不安になる。なんかおかしいんだ。そう感じるんだよ」

 ふうとため息をひとつ。

「……ちょっと待ってて」

 モバイルや書類を部屋に下げに行ってすぐに戻った。

「智は今いくつ?」
「俺?二十七」
「僕は三十五、来月には六になる」
「うん。それが?」

 和樹は指を組んで肘を脚に付いた。ん?

「なんでもない。ちょっと聞いただけ」
「なあ、やっぱり変だよ、言ってくれよ。ダメなところは直すからさ」
「直すところなんてないよ。智の気のせいだ。んふふっ」

 俺に向ける笑顔は会社の時と同じだ。これは言いたくないんだな。ふん。

「言いたくないか。俺が飽きたとか、いらないって話しでなければもういい」
「智、それだけは断じて違う」

 そこは断言するように力がこもった言葉だった。なら前に怒らせた時にしゃぶれってっていわれたし、なら俺も。

「ならもういい。抱っこしてキスして。勃っても入れるなよ」
「ああ……頑張る」

 俺は膝に乗りチュッチュッとキスして、舌絡めて……んふっ……ふっ…ンッ……気持ちいい。和樹に手を回して体を擦り付けて……んふぅ…堪んねえ。そのうち和樹の手が乳首摘んで……うっ…んんっ……久しぶりの俺の趣味……嬉しくて震える。

「乳首はダメ……ハァハァ……出ちゃう」
「智、これ拷問だよ。これくらい許して」
「うっ……仕方ないな」

 するとキスしながら俺のを出して、自分のも出して合わせて擦りだした。

「んうっ…か、かずき!」
「ハァハァ無理だよ。ちんこ痛くなる」
「言わないんだから俺の要望聞けよ!」
「え~……ハァ…ムリ」

 お前も手をとふたりでちんこ握ってドクドク。これ違うんだよぉ!ハチ切れそうな痛みと疼くお尻を我慢して悶えるのが好きなんだよ!……変態と言われればそうだけどさ。

「ハァハァ……お前……これ許してくれた人いるの?」
「ん?ハァハァ……いた。イクのがすごく遅い人が昔いたんだ。それでこれを覚えた」

 あはは。その人が特殊なんだよ。僕はたぶん平均くらいで、なおかつしたがりなんだよ?ムリだよって。手を拭きながら呆れてた。

「標準よりヤりたがりの僕に求めちゃダメなヤツだね」
「え~……和樹お願い。俺これたまにしたくなるんだ。……限界まで我慢して…出したい」

 俺は精一杯かわいくおねだり。上目遣いでチュッてした。

「あははかわいい!反則だよそれ!でもねぇ……僕の頭がおかしくなりそう」
「それを楽しむんだよ」
「え……マジ?」

 いやあ……と困り顔。

「智が満足したら突っ込んでいい?」
「……ヤダ。そのあとビクビク震えてるのが好きなの」
「智ヘンタイ……」
「知ってる……俺少しМ入ってるから……」

 そっかあって目が光った。あ?なんか思いついたっぽい?

「ならさ、智がその趣味をしなくてもいいように代替えを僕は提案する」
「へ?」
「楽しみにしてな」

 いやだぁなんか悪い顔になってるよ。何されるんだろ?少し怖くて、バカだから期待もしてる。そんな土曜の午後。
 新しい部屋にも馴染んで、和樹の変をなんとか聞き出したかっただけなのに!なんでこんな流れなんだよ、もう。

 すると和樹の電話が鳴った。

「ごめん。ちょっと出掛けてくる。夜には帰るから」
「うん」

 慌ただしく和樹は出て行った。ふう……寝る。俺は和樹の部屋に向って布団に入った。
 和樹の枕に顔を埋めた。おっさん臭くない和樹すげぇないい匂いする。少し香水の匂いもするかな。たまに木村さんはおっさん臭いのにね。和樹好きだ全部好き……俺は和樹の匂いに包まれながら眠った。

「ん……あれ?暗いけど和樹……まだか?」

 俺は手元のスマホを見たけど連絡は入ってはいない。時間はすでに夜八時、寝すぎたな。布団から出てリビングに出た。真っ暗で窓からの明かりだけで、静まり返った部屋。
 ピッと明かりを点けて、冷蔵庫からお茶のペットを出してソファに座る。ギシッと静かな部屋に鳴り響く。

「腹減った……週末だから作り置きないはず。和樹は週末全部使い切って日曜に新たに詰め込むからなあ」

 そう、ムダがないんだ。腐らすなんてほとんどない。ということは、だ。冷蔵庫、冷凍庫共にカラで、ストックの引き出しには調味料関係しかないはず。
 仕方なくテレビをつけて眺める。うん、つまんない。スマホでダラダラと動物の動画を眺めてるが、連絡はなし。こりゃあ食べて帰って来るな。ボチボチと文章を打ち込んで、さて飯に行くか。

 週末のオフィス街は開いている店は少ない。駅に近いチェーン店でとんかつ食べて、ミニスーパーによっておやつなんかを買い込んで帰宅。

「未読か……珍しいな。用事聞いておけばよかった」

 つまんない。この部屋は広いから余計にね。「お前はひとりぽっちだよ」と部屋に言われてる気までして来た。

「あ、そうだ。猫とか飼えないのかな?いたら寂しさが紛れるもの」

 いやいや、ここ分譲賃貸だよ。規約も把握してないし、持ち主に怒られるかもしれない。ならケージに入ってればいいか?ハムスターとか、うさぎ……フェレットとか。少し大きければ猫の代わりになるかも。
 実家は猫飼ってたんだ。俺によく懐いてた茶トラがいてよく一緒に寝てて。家出た時本気で寂しかったのを覚えている。動物がいない生活を俺は知らなかったからな。母さんが猫好きで常に何匹かいるんだ。

「今や俺がチーコだよ。あはは……」

 ゴロゴロしてたらソファで眠ったようで、目を開けたら少し明るい。

「はあ~へプシッ!うーさむ!トイレ!」

 バタバタとトイレに向かい用を足してスマホを見ると、昼までには帰るよって。送信時間は夜中に三時ごろだ。何してたんだろ。とりあえずまだ眠いからベッドに向かった。連絡が入ったことに安心して、速攻ぐぅ。






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