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一章 お、おれ?
8 とうとう捕まった
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月曜日。
普通に出勤して俺は何事なく仕事をする。和樹も何もなかったようにしている。が、俺は必要最小限しか話しかけず、出来るだけ木村さんに頼んだ。少し不審がられたけどさ。
「課長、俺これから工場と打ち合わせに行きます。その後直帰予定です」
「ああ、分かった。頼むね」
「はい。行ってきます」
みんなにも行ってらっしゃいと見送られて外に出た。和樹はさすがだ、いつもとなにも変わらないとはね。俺は自分で別れたくせに、顔に出さないようにするだけでいっぱいいっぱい。付き合いは短かったくせに未練かなのだろうか。強く揉めず自分から別れを告げたからからか。よくわかんないけど……
やめろ俺!こんなじゃダメだろ。この会社の商品が好きでやっと入った会社だろ?希望の開発部には行けなかったけど、営業も楽しいじゃないか!
自分を鼓舞しながらひと月あまり。和樹からの連絡は無視、会社ではひとりきりにならないようにした。声をかけられそうなら逃げる、隠れるを徹底しなんとか逃げ切っていた。嫌なら連絡先を消せばいいんだけど、会社携帯なる存在がございまして。まあね、個人のを消しても無駄だ。
そしてそんな日々にも慣れて意識もしなくなったある日の金曜日。思いの外仕事は順調で、週末なのに定時少しで上がれた。
いつもの定食屋で食べて帰るかなあなんて鼻歌交じりに向っていると、道端でガシッと肩を掴まれた。ヒッ!なんだ怖い!とゆっくり振り向いたら和樹!外面の笑顔を貼り付けていた。俺違う恐怖にシフト。
マジかあ、とうとう捕まったか。俺はなに食わぬ顔を装い、
「お、お疲れさまです。なにか御用が?」
「なにかじゃねえよ。来い」
見上げる俺を先程の笑顔がなくなり、みるみる……鬼がおる。
「いや…あの……」
「いいから。飯これからだろ」
「そうですが待って!俺たちは別れたんですよ!」
「僕は認めてない!」
人目もはばからずに腕を引かれて居酒屋へ連れ込まれた。そう、あの告白された居酒屋だ。個室に案内されて和樹は適当に注文、店員さんが扉を閉めると、すうっと和樹は鬼になった……ヒィッ!
「なんで連絡を無視するんだ!」
「あ、あの……別れたんですからもう話すことなんてないですよね……」
「僕は分かったなんて言ってない!」
その剣幕にビクッと怯えた。そうだったこの人は人前では余裕かましてるけど、恋人の前だと感情を出してくるんだったよ。特に俺を抱く時はそれはもうね。優しいけど乱れる俺を楽しんでる感じなんだよね。ふたりの時も愛情を隠しもしなくて……
だから、だから俺はなにも言えなかったんだんだ。和樹が好きだったから。
「なぜ俺ですか。他探せばいいでしょう?あなたならいくらでもでしょう?」
お~ほほほ……ギロって睨まれる迫力がすげぇ。リアル鬼の面のようだ。
「なぜ?好きに意味なんてない。改めて言うが、前の人とのことを聞いて同情したのは確かだ。僕のところに来たのも偶然に近いし」
「はい」
運ばれてきたビールを掴んでゴクゴクと半分飲み干してドンッと、ジョッキをテーブルに置いた。
「一緒に働くうちに智が気になって目が離せなくなった。そのうち僕のものにしたくなった。かわいい笑顔を僕に向けて欲しくなったんだ。そして手に入れて僕は幸せだったんだ!」
「はい……」
何度も僕って……大切にされてるのは感じてた。和樹が同じものを見て同じように感じたいと思っているのも分かってた。俺が出来なかっただけなんだ。
部屋に遊びに行けば俺には手を出させず、食事もお茶の用意も全部してくれた。愛されてるのは分かっていたんだ。
でもね、気が引けた。俺はこの人に大切にされる価値があるのかなって。
「この前も言いましたが、俺はあなたの隣は相応しくない。それは俺が一番分かってるんです」
「ああ?」
ドスの効いた低い声が怖い。品のいい和樹はどこ行ったんだ。そのおっかねぇ顔はどこにしまってたんだよ。見たことねぇぞ!
俺は黙ってビールを飲んだ。あはは、視線を合わせるの怖い。
「僕のなにがダメなんだ」
「全部」
俺はつまみを口に運んだ。お腹減ってるし和樹の話しは聞く気はない。
「はあ?」
「全部です。俺の持ってない感性で生きてるあなたが無理なんですよ」
ワナワナしたかと思うとビールを飲んでつまみをむしゃむしゃ。残りのビールを飲んでおかわりを即注文。
「僕は告白の前に脈がなければ今すぐ断れと言ったよな?」
「…はい。あの時はなんとかなるかなって思いました。あなたは素敵でしたから」
「フン」
鼻で返事するとお店の人から奪うようにお代わりをグビグビまた飲んで、その場でおかわり頼んでいる。怖い。
「僕は同じになれとは言ってない」
「確かに言ってませんね」
少ししておかわりが来るとまたすぐにグビグビ。酒強いんだよね、この人。
「僕は智の素直さが好きなんだ」
「それはありがとうございます。でもちょっと違うんですけどね」
「うるせえ」
ドスの効いた声でギロリと睨まれた。マジ怖い。もう怖いしかねぇ。でも、身がすくんだりはしなかった。もう戻る気もなかったから。
「僕は、僕に染まれとは言ってない」
「はい」
彼は自分が楽しいと思うことを俺に見せていただけだと言う。特に深い意味はなくて、俺にもそういった面を出して欲しかったそうだ。
だけどなあ……和樹のを見た後で、自分をさらけ出すほど俺も気持ちが大きくはなかった。
キラキラしたものをこれでもかと見せられた後、俺は和樹に跨って抱かれてるだけで完結、とは言い切れなかった。最初にこうするのが好きとは言ったけどね。
俺は腕の中にいられればそれでよかった。俺はこんななんだよと…なぜか言えなかった。あまりに違うと言葉を失うんだよ。
「僕は違って当たり前だと思うんだ。育ちも違うんだからね。でもそれをすり合わせたり楽しんだりしたいと思ってた」
それはそう。普段なら俺もしてたよ。
「そうですね。俺は何をしても気後れして楽しみきれませんでした」
「なぜ?」
なぜ?そう言った彼の目は怖いまんま、直視出来ないだろ。もうイヤだこの人。
「あなたは八つも上で、すでに会社で結果も出してて尊敬してました。俺は気後れを……いや、どうせこんなにはなれないと諦めて、その……卑屈になったんです」
ああそうだ、俺妬んだんだな。こんな人になりたかったんだ俺は。でもどう転んでも無理なのが理解出来て、尊敬と妬みで腰が引けたんだ。俺の好きな会社で成功してるこの人が羨ましかったんだ。自分が努力してもこうはなれないと感じて。それが好きを上回ったんだ。
なんかスッキリした。ストンと腑に落ちた気がした。ならば俺が別れたいと言った気持ちを伝えないのは不誠実だよね。
「俺はあなたに追いつけないと予測して、それが思ったより心を蝕んで卑屈になった。簡単に言えばあなたを妬んだんです」
言葉にすると嫌だね。自分の小ささを披露してるだけだからさ。
「あなたが羨ましかった。自分はきっとこんなふうにはなれないって妬んだんだ。恋人が自慢だとは思えず妬んだんです。その気持ちが好きを上回って無理になりました」
だから別れた哀しみが少なかったんだ。少しでも一緒にいられたからもういいだろって。本当にバカだな、いま気がつくとは。遅せぇ。
あ~あ、視界が滲む……俺和樹みたいになりたいってどこか思ってたんだ。こんなふうに会社で活躍出来る人になりたかったんだ。
気がついて実感すればもうね。もう前を見てらんなくてテーブルにポトポトと涙が落ちた。自分が情けなくて、ちっさくて。俺はなんてバカなんだと思った。好きだったのにそんな感情に振り回されてバカ過ぎ。
「智……泣かないでよ」
クソッ!情けな過ぎて自分が嫌いだ。大嫌いだ!
「グスッごめんなさい……俺、あなたみたいになりたかったんです。出来ないと分かってるけど……」
やっぱり初めから断ればよかったんだ。気を持たせて自分から潰れて迷惑かけるくらいなら初めら。そうすれば和樹は今頃素敵な人と付き合ってただろうに。
俺がこんなだからたくさん迷惑かけてしまった。自分が情けなくて泣いていると、和樹は隣に来て腕を回してくれた。
俺はこんな小っぽけな嫉妬であなたを傷つけたのに抱いてくれるのか?と顔を上げた。智って微笑んでチュッと唇が触れた。
「ごめん。そんな気持ちにさせてたなんて気が付かなかった」
見上げた和樹はいつもの俺を愛してるって顔で涙は余計に溢れた。
「かずき…ごめ…んなさ……い…俺」
いいんだ、気持ちを話してくれてありがとうって頭を撫でて俺の頭を抱いた。
「僕たちは本当の気持ちを相手に伝えていない、伝わってはいなかったんだ。気遣うところが間違ってたんだ」
「うん……ごめんなさい」
情けなさと和樹の優しさで涙が止まらない。どうしよう。
「とりあえず食べて帰ろう。部屋でちゃんと話そうよ」
「え?グスッ」
「別れ話は取り消してくれるんでしょ?」
俺を見つめて嬉しそうに微笑む。え?
「あの……許してくれるの?」
「うん。いいから早く食べろよ」
こんな仕打ちをした俺を許すって……ブワッと涙が溢れた。嘘でしょ?俺和樹のところに帰れるの?
「また泣く……お前はもう。僕ちんこ破裂するだろ」
「は?」
「あれからずっとしてないんだよ。かわいいお前が目の前にいて、僕が好きって泣いてるのは反則。興奮するだろ」
「ええ?」
こんな時までエロかよ!でも和樹らしいか。なんだろこの人、あはは。
「泣き笑いか。お前は本当にかわいいな」
「ふふっどんな時も和樹は変わらないよね」
「ひと月じゃ変わらねえよ」
そんな言葉に気持ちも緩んでしまい、俺も急にお腹が空いて食べなくちゃと頑張った。鼻が詰まって呼吸困難になりながらも頑張って食べた。
あはは……俺はなんて人を好きになったんだろう。かっこよすぎだろ!
普通に出勤して俺は何事なく仕事をする。和樹も何もなかったようにしている。が、俺は必要最小限しか話しかけず、出来るだけ木村さんに頼んだ。少し不審がられたけどさ。
「課長、俺これから工場と打ち合わせに行きます。その後直帰予定です」
「ああ、分かった。頼むね」
「はい。行ってきます」
みんなにも行ってらっしゃいと見送られて外に出た。和樹はさすがだ、いつもとなにも変わらないとはね。俺は自分で別れたくせに、顔に出さないようにするだけでいっぱいいっぱい。付き合いは短かったくせに未練かなのだろうか。強く揉めず自分から別れを告げたからからか。よくわかんないけど……
やめろ俺!こんなじゃダメだろ。この会社の商品が好きでやっと入った会社だろ?希望の開発部には行けなかったけど、営業も楽しいじゃないか!
自分を鼓舞しながらひと月あまり。和樹からの連絡は無視、会社ではひとりきりにならないようにした。声をかけられそうなら逃げる、隠れるを徹底しなんとか逃げ切っていた。嫌なら連絡先を消せばいいんだけど、会社携帯なる存在がございまして。まあね、個人のを消しても無駄だ。
そしてそんな日々にも慣れて意識もしなくなったある日の金曜日。思いの外仕事は順調で、週末なのに定時少しで上がれた。
いつもの定食屋で食べて帰るかなあなんて鼻歌交じりに向っていると、道端でガシッと肩を掴まれた。ヒッ!なんだ怖い!とゆっくり振り向いたら和樹!外面の笑顔を貼り付けていた。俺違う恐怖にシフト。
マジかあ、とうとう捕まったか。俺はなに食わぬ顔を装い、
「お、お疲れさまです。なにか御用が?」
「なにかじゃねえよ。来い」
見上げる俺を先程の笑顔がなくなり、みるみる……鬼がおる。
「いや…あの……」
「いいから。飯これからだろ」
「そうですが待って!俺たちは別れたんですよ!」
「僕は認めてない!」
人目もはばからずに腕を引かれて居酒屋へ連れ込まれた。そう、あの告白された居酒屋だ。個室に案内されて和樹は適当に注文、店員さんが扉を閉めると、すうっと和樹は鬼になった……ヒィッ!
「なんで連絡を無視するんだ!」
「あ、あの……別れたんですからもう話すことなんてないですよね……」
「僕は分かったなんて言ってない!」
その剣幕にビクッと怯えた。そうだったこの人は人前では余裕かましてるけど、恋人の前だと感情を出してくるんだったよ。特に俺を抱く時はそれはもうね。優しいけど乱れる俺を楽しんでる感じなんだよね。ふたりの時も愛情を隠しもしなくて……
だから、だから俺はなにも言えなかったんだんだ。和樹が好きだったから。
「なぜ俺ですか。他探せばいいでしょう?あなたならいくらでもでしょう?」
お~ほほほ……ギロって睨まれる迫力がすげぇ。リアル鬼の面のようだ。
「なぜ?好きに意味なんてない。改めて言うが、前の人とのことを聞いて同情したのは確かだ。僕のところに来たのも偶然に近いし」
「はい」
運ばれてきたビールを掴んでゴクゴクと半分飲み干してドンッと、ジョッキをテーブルに置いた。
「一緒に働くうちに智が気になって目が離せなくなった。そのうち僕のものにしたくなった。かわいい笑顔を僕に向けて欲しくなったんだ。そして手に入れて僕は幸せだったんだ!」
「はい……」
何度も僕って……大切にされてるのは感じてた。和樹が同じものを見て同じように感じたいと思っているのも分かってた。俺が出来なかっただけなんだ。
部屋に遊びに行けば俺には手を出させず、食事もお茶の用意も全部してくれた。愛されてるのは分かっていたんだ。
でもね、気が引けた。俺はこの人に大切にされる価値があるのかなって。
「この前も言いましたが、俺はあなたの隣は相応しくない。それは俺が一番分かってるんです」
「ああ?」
ドスの効いた低い声が怖い。品のいい和樹はどこ行ったんだ。そのおっかねぇ顔はどこにしまってたんだよ。見たことねぇぞ!
俺は黙ってビールを飲んだ。あはは、視線を合わせるの怖い。
「僕のなにがダメなんだ」
「全部」
俺はつまみを口に運んだ。お腹減ってるし和樹の話しは聞く気はない。
「はあ?」
「全部です。俺の持ってない感性で生きてるあなたが無理なんですよ」
ワナワナしたかと思うとビールを飲んでつまみをむしゃむしゃ。残りのビールを飲んでおかわりを即注文。
「僕は告白の前に脈がなければ今すぐ断れと言ったよな?」
「…はい。あの時はなんとかなるかなって思いました。あなたは素敵でしたから」
「フン」
鼻で返事するとお店の人から奪うようにお代わりをグビグビまた飲んで、その場でおかわり頼んでいる。怖い。
「僕は同じになれとは言ってない」
「確かに言ってませんね」
少ししておかわりが来るとまたすぐにグビグビ。酒強いんだよね、この人。
「僕は智の素直さが好きなんだ」
「それはありがとうございます。でもちょっと違うんですけどね」
「うるせえ」
ドスの効いた声でギロリと睨まれた。マジ怖い。もう怖いしかねぇ。でも、身がすくんだりはしなかった。もう戻る気もなかったから。
「僕は、僕に染まれとは言ってない」
「はい」
彼は自分が楽しいと思うことを俺に見せていただけだと言う。特に深い意味はなくて、俺にもそういった面を出して欲しかったそうだ。
だけどなあ……和樹のを見た後で、自分をさらけ出すほど俺も気持ちが大きくはなかった。
キラキラしたものをこれでもかと見せられた後、俺は和樹に跨って抱かれてるだけで完結、とは言い切れなかった。最初にこうするのが好きとは言ったけどね。
俺は腕の中にいられればそれでよかった。俺はこんななんだよと…なぜか言えなかった。あまりに違うと言葉を失うんだよ。
「僕は違って当たり前だと思うんだ。育ちも違うんだからね。でもそれをすり合わせたり楽しんだりしたいと思ってた」
それはそう。普段なら俺もしてたよ。
「そうですね。俺は何をしても気後れして楽しみきれませんでした」
「なぜ?」
なぜ?そう言った彼の目は怖いまんま、直視出来ないだろ。もうイヤだこの人。
「あなたは八つも上で、すでに会社で結果も出してて尊敬してました。俺は気後れを……いや、どうせこんなにはなれないと諦めて、その……卑屈になったんです」
ああそうだ、俺妬んだんだな。こんな人になりたかったんだ俺は。でもどう転んでも無理なのが理解出来て、尊敬と妬みで腰が引けたんだ。俺の好きな会社で成功してるこの人が羨ましかったんだ。自分が努力してもこうはなれないと感じて。それが好きを上回ったんだ。
なんかスッキリした。ストンと腑に落ちた気がした。ならば俺が別れたいと言った気持ちを伝えないのは不誠実だよね。
「俺はあなたに追いつけないと予測して、それが思ったより心を蝕んで卑屈になった。簡単に言えばあなたを妬んだんです」
言葉にすると嫌だね。自分の小ささを披露してるだけだからさ。
「あなたが羨ましかった。自分はきっとこんなふうにはなれないって妬んだんだ。恋人が自慢だとは思えず妬んだんです。その気持ちが好きを上回って無理になりました」
だから別れた哀しみが少なかったんだ。少しでも一緒にいられたからもういいだろって。本当にバカだな、いま気がつくとは。遅せぇ。
あ~あ、視界が滲む……俺和樹みたいになりたいってどこか思ってたんだ。こんなふうに会社で活躍出来る人になりたかったんだ。
気がついて実感すればもうね。もう前を見てらんなくてテーブルにポトポトと涙が落ちた。自分が情けなくて、ちっさくて。俺はなんてバカなんだと思った。好きだったのにそんな感情に振り回されてバカ過ぎ。
「智……泣かないでよ」
クソッ!情けな過ぎて自分が嫌いだ。大嫌いだ!
「グスッごめんなさい……俺、あなたみたいになりたかったんです。出来ないと分かってるけど……」
やっぱり初めから断ればよかったんだ。気を持たせて自分から潰れて迷惑かけるくらいなら初めら。そうすれば和樹は今頃素敵な人と付き合ってただろうに。
俺がこんなだからたくさん迷惑かけてしまった。自分が情けなくて泣いていると、和樹は隣に来て腕を回してくれた。
俺はこんな小っぽけな嫉妬であなたを傷つけたのに抱いてくれるのか?と顔を上げた。智って微笑んでチュッと唇が触れた。
「ごめん。そんな気持ちにさせてたなんて気が付かなかった」
見上げた和樹はいつもの俺を愛してるって顔で涙は余計に溢れた。
「かずき…ごめ…んなさ……い…俺」
いいんだ、気持ちを話してくれてありがとうって頭を撫でて俺の頭を抱いた。
「僕たちは本当の気持ちを相手に伝えていない、伝わってはいなかったんだ。気遣うところが間違ってたんだ」
「うん……ごめんなさい」
情けなさと和樹の優しさで涙が止まらない。どうしよう。
「とりあえず食べて帰ろう。部屋でちゃんと話そうよ」
「え?グスッ」
「別れ話は取り消してくれるんでしょ?」
俺を見つめて嬉しそうに微笑む。え?
「あの……許してくれるの?」
「うん。いいから早く食べろよ」
こんな仕打ちをした俺を許すって……ブワッと涙が溢れた。嘘でしょ?俺和樹のところに帰れるの?
「また泣く……お前はもう。僕ちんこ破裂するだろ」
「は?」
「あれからずっとしてないんだよ。かわいいお前が目の前にいて、僕が好きって泣いてるのは反則。興奮するだろ」
「ええ?」
こんな時までエロかよ!でも和樹らしいか。なんだろこの人、あはは。
「泣き笑いか。お前は本当にかわいいな」
「ふふっどんな時も和樹は変わらないよね」
「ひと月じゃ変わらねえよ」
そんな言葉に気持ちも緩んでしまい、俺も急にお腹が空いて食べなくちゃと頑張った。鼻が詰まって呼吸困難になりながらも頑張って食べた。
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