俺の伴侶はどこにいる〜ゼロから始める領地改革 家臣なしとか意味分からん〜

琴音

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六章 遅いけど新婚旅行

7.ロドリグ様のお兄様

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 とうとう帰る日が近づいた。まあ、期間が決まってる訳ではないけど、任せっきりはさすがに心苦しいからな。

「お土産は買って大使館から送ってもらったし、要らない服とかも。身軽に帰れるね」
「ああ。騎獣に括り付けなくてもいいな」
「うん」

 朝のまったり時間。抱き合ってお茶をすする。なんだろか。帰ったら仕事しようって気にもなってきてるし、体調はいい感じだ。
 ウジウジ考えることもなくなったし、魔石で魔力を測ってもいつも通りで変化なし。身体も軽い。

「よかった。エリオス元気になって」
「うん。ロドリグ様の供給でなんとかしてたから、もうそれも要らないと思う」
「うん。エリオス大好き」
「俺も」

 なーんてうふふって楽しんでいるとラインハルトがやって来た。

「おはようございます」

 なんかどんより来たな。なんだ?

「あの……ロドリグ様の兄上様の手紙を持ってきました」
「ブフッ!」

 お茶を吹いた。はあ?

「なんで今頃?もう帰る頃なのに」
「はあ。先日ロドリグ様の手紙が兄上様の所に届いたそうで。それで会いたいって」

 俺は手紙を受け取り中を確認。

「うっ……明後日来いって」
「マジで?」
「うん」

 余計なことを……誰にも気兼ねなくと思って、ギリギリまで大使館にも近づかなかったのに。

「あのですね。国替えまでして入れ込んだ、エリオスなる者を見てみたいと申しておりました」
「うっあのさ。仕方ないな。なあ、どんな方?」

 うーんと考えて、

「ロドリグ様より明るくさっぱりした方ですね。奥様も似た感じの方です」
「ふーん。セリオ、断れないからさ」
「うん。分かってます」

 むーんと重苦しい気持ちになったが、致し方ない。頑張って行くか。

 そして当日。仕方なく大使館に馬車を借りてお屋敷に向かった。足取りは重く、不安はたっぷり。城下町から貴族街に入り……着かない。門から遠いなあ。四家の屋敷は城に近い場所だよな。段々屋敷が立派になっていく。

「ああ、見えましたね」

 ラインハルトの声に窓から外に顔を出した。

「うお!でかいね。ここ」
「ええ。四家のひとつの本家ですので」

 俺の二の腕をギュッとセリオは掴んだ。

「エリオス僕、あの粗相とかしたら……」
「あは。俺の方がやりそうだよ」

 カポカポと足音を鳴らし、馬は門に入って行って玄関前に到着。筆頭執事であろうお仕着せのおじ樣が会釈していた。俺たちは馬車を降りて玄関の階段を上がった。

「ようこそ。エリオス様。急なお呼びだてにも関わらず、ありがとう存じます。私は筆頭執事のオシリスと申します。こちらへどうぞ」
「はい」

 中に入るとロドリグ様の屋敷によく似ていた。が、更に広い。二階に上がる階段の壁には歴代のご当主や家族だろう。絵が掛かっていた。

「美人だね。みんな」
「うん。ロドリグ様があれだもの。ここの一族はみんな美しいんだよ」

 オシリスに付いて歩く。古いがよく手入れされていて重厚な建物だ。代々使っているんだろう。

「こちらへ」
「はい」

 扉が開くと広いお茶会の部屋。ソファセットと離れて木のテーブルと椅子とか。大勢で使うお茶会の部屋のようだ。壁にも椅子やサイドテーブルなんかある。

「こちらでしばしお待ちを」
「はい」

 オシリスが下がるとメイドがお茶の用意をしてくれた。んふふっもうさ、驚かないつもりだったけど、この食器老舗の物だ。それも年代物。……割ったらどうしよう。ブルッとした。

「エリオスもうね。格が違いすぎる。同じ公爵家とは思えない」
「この大陸の筆頭国で、それも四家と比べる方が野暮だよ」
「そうだね。僕らの国の小ささをより感じるね」
「うん」

 無言で部屋を二人で眺めた。アンセルム様かな?壁に美しい白金の髪の方の絵が掛けてあった。四家でも特別な方らしいからなぁ。病的に美しくロドリグ様によく似ている。
 
 棚の調度品も古今東西って感じだけど、無造作に置かれてはいなくて……センスがいい。歴史の長い国は洗練されてるんだなあ。ぼんやり眺めていると、扉がガチャリと開いた。

「待たせたな」

 俺たちは立ち上がり頭を下げた。

「いらんよ。座ってくれ」
「はい」

 彼が座るのを待って座り、俺はあいさつした。

「お初にお目に掛かります。エリオスと申します。隣はセリオ。私の番でございます」
「セリオと申します。お招きありがとう存じます」

 うんと微笑んで……くわっ!ロドリグ様より鍛えているような精悍な方だった。笑うとなんて……吸い込まれそうな美貌。

「ロドリグが世話になっている。私はランドールだ。よろしくな」
「はい」

 メイドが彼にお茶を淹れて後ろに下がった。

「ふーんかわいいなふたりとも。ロドリグが入れ上げる訳だ」

 ロドリグ様を奪ったのは確かだから、俺は言い訳でしかないけど、

「彼がドナシアンの大臣を抜けてしまったのは、お困りになられたと存じます。ですが私どもは大変助かっております。ロドリグ様には感謝しかありません」

 品定めをするように俺たちを見続けていた。

「うん。あれは優秀だからね。ドナシアンは私の子が赴任したから心配はないさ。あいつも優秀だから問題はない」
「ありがとう存じます」

 優雅にカップを持ちお茶を飲んだ。ロドリグ様に引けを取らない美形。神様は俺に恨みでもあるのか?ってくらいの造形の違いに、目眩がした。

「あれは役に立っているのか?お世辞ではなく」
「はい。私の至らなさを補助してくれて助かっております」
「ふーん。優しい?」

 ん?なんだその質問は。

「ええ。親身に相談にも乗ってくれますし、ダメなところも指摘して、改善策も提案してくれます」
「ふふっそうか。あいつ相当エリオスが好きなんだな」

 あん?なんだか含みのある返事だな。セリオも変な感じがしているようで、目が泳いでいる。ふむと俺たちを眺めた。それこそ舐めるようにと言うのが正しい感じで、品定めの目は強くなった。

「エリオスは番になってるよな」
「は?あ……はい」
「セリオも番だろ」
「うっはい」

 なんの魔法だ?そんなの分かるのか。本人以外が。

「子供は作ったのか?」
「は?いいえ!それは私はノルンですので望めませんし、セリオは……」
「私は夜伽の様なもので……子供は……」

 セリオは俯いて返事をした。

「それは違うな。あれが配慮したんだろう。二人が愛し合ってるのが分かるから」
「はあ。そうですかね」
「うん」

 その予想の自信はどこから?確かに愛し合ってはいるけどさ。

 それにしてもなあ。大家たいけの当主とはこんなに威圧感があるんだな。緊張感がすごい。美しさを堪能してる場合ではない。ラインハルト嘘つき!怖いだろ!

「はあ。面倒くさ。あれの番なら気を使わんでいいな。なあ俺コーヒーがいい。替えてよ」

 ランドール様の顔つきが弛み、ふうっと息をついた。うん?

「はい。ただいまご用意をいたします」

 部屋にあった緊張感がスッとなくなった。メイドも微笑んでコーヒーを淹れ始めた。

「んふふっかわいいなあ、お前らは。ロドリグが入れ上げるのはわかる」
「はい?」

 人好きのする優しい笑顔になった。その笑顔に俺は一瞬で腰の力が抜ける気がした。破壊力がすげぇ。

「敬語もいらん。面倒臭いからな」
「はい」

 人が変わったように砕けた感じになった。

「ねえ。ロドリグ毎日なにしてんの?」

 によによしながら聞いてくる。
 
「はい。魔力研究とか、俺の依頼とか受けてくれてます」
「ふーん。あいつが優しくしてるか。エリオス、お前相当愛されてるな」
「ふえ?」

 あれはなあって。ランドール様は楽しそうに話してくれた。

「ロドリグは自分の気に入った者にしか、手を貸さない。抱きもしないんだ。お召も嫌なら断るんだよ」
「え?」

 セリオは驚いて声が漏れた。

「白黒はっきりしてるんだ。ドナシアンでも扱い辛い奴だと評判で、実務面以外の事には中々うんって言わなくてさ」

 そうなの?あれほど猫族食う!とウキウキしてたけどなあ。

「彼はいつも街で物色してましたよ。猫族大好きって……え?」

 んふふっと笑った。うわーなんてきれいな笑顔だろう。見惚れてると股間に響くような……

「お前ら俺を誘惑してる?」
「「は?」」

 ナニイッテンノ?

「白と銀色の猫。いい匂いもするし。ロドリグの番でなければ攫うのになあ。勝手に食ったらなに言われるか。残念だ」
「ああ……?」

 まあ我慢するかって話し出した。

「あれは思ったより食う人を選んでるんだ。王も食ったらしいな」
「ええ。父は番の本能弱めで。俺の母とかあんまりだったらしいんですが、ロドリグ様はそれを……」
「うん。お前の一族が好みなんだろう。俺とロドリグは仲良くてな。魔石でよく話すんだ」
「はい。そうですか」

 こりゃあ筒抜けだな。それでなと。動きも軽やかで笑顔も魅力的。常に微笑んでる方だなあ。

「思いの外食えなくてって。猫族身持ち固くて困るってさ」
「あはは。番持つと本能が強いですね」
「だろう?実はたくさん食ってないんだよ。オリヴィエもな」
「ほほう」

 今はお前がかわいい。愛しいしか聞かないな。オリヴィエが大切だし、かわいいと思っている。だがお前はなんともかわいくてってよく言っているぞ。子供はちょっとアレな生まれ方はしたが、かわいがっていたそう。

「とても優秀なお子様だと聞いてます」
「うん。ロドリグと合わないだろうなあってくらい明るく元気でな。父方の性格だろう」
「へえ……そこら辺は何も話して下さらないから」

 なあとセリオに。うんうんと頷く。

「どちらかと言えば俺に似てるくらいの子だよ。俺は来る者拒まずでな。伴侶も同じ」
「はい」

 イアサントやドナシアンは少し他国に言えないモノがある。それ由来の子なんだ。

「ああ。大国ならではの、何かですよね。ひとつやふたつどこの国にもありますね」

 顎を擦りながら視線を上に上げた。

「うーん。そういったことではないんだが、まあ似たようなもんか。そんな由来の子は結構いるんだ。王家、四家には特にな」
「そうなんですか」
「うん。国内では誰も気にもしないんだ。いい子だねって」

 そっか。幸せにしているんだロドリグ様のお子様は。よかった。

「まあどこの国もあるだろ」
「はい」

 それから子供の頃の話しや、オリヴィエ様の話などたくさん聞いた。うん。ロドリグ様はロドリグ様でしかなかった。変わんないね。あの人は。

「ロドリグあんなだけどいいやつなんだ。クセがちょっと強いだけで。仲良くしてくれ」
「はい」

 クセはちょっとじゃないけど、いい人ではある。

「国にはいつ帰るんだ?」
「はい。急ぎではないでしが、後一週間くらいで帰るつもりでいます」
「ふーん」

 パンパンと手を叩くと箱をたくさん持ったメイドが入ってきた。

「お土産だ。大使館から送ればよかろう」

 ものすごい数の……貰っていいの?

「こんなにたくさん。俺は何もお返し出来ません」
「いらん。ロドリグかわいがってよ。それでいい」

 それでいいなら。ていうか、俺がかわいがってもらってるけど。

「なら、遠慮なく頂戴いたします」
「うん。またおいで」
「はい」

 馬車にお土産をメイドが詰め込んでいる間に抱きしめられた。

「美味そうな匂い。ここも大きい」

 股間をギュッと握られた。

「ひゃう!」
「俺、閨は上手いんだ。いつかな」
「い……いや…あの……」

 耳に囁く。この兄弟はエロ過ぎた。それに負けそうなくらいのいい匂いもする。俺たちは逃げるようにあいさつして宿屋に帰宅。お土産の箱を確かめようと開けた。

「うそー!服がたくさんだ。保存箱にはおお!見たことない食材と料理。こっちは……」

 二人で十個以上あった大きな箱を開けた。

「見てエリオス。この上着ステキ!刺繍が細かくて……ほう……」

 手に持ち眺めて感嘆のため息。

「その箱のシャツと合わせてみろよ」
「うん!」

 楽しいのか着てる服を脱ぎ捨てて、いそいそと着替える。

「どう?ステキでしょう」
「ああ。よく似合うよ」

 大体の背丈や体つきをロドリグ様が報告していたのか、大して狂いはない。全部しつけ糸で縫ってあるようだ。
 銀色の髪によく映える深緑の上着と、フリルいっぱいのシャツ。ズボンともとてもよく似合っていた。

「あれ?もう一着少し大きめだ!お揃いのだよ!うわぁ舞踏会とかに着れるように作ってくれたんだ!うわあ」

 ゴソゴソと取り出しては嬉しそうにしている。

「よかったな」
「うん!」

 俺にはこんな上等な物をたくさん仕立ててあげられないから、マジでありがたい。お金はだいぶ増えては来たけど、俺たち二人に回せるお金は未だ少ないから。

「おお~こっちはつぼ?へぇ……」
「あ~見たことない建物とか人が描かれてるね」
「うん。どこのたろうね。でも嬉しい」

 茶器のセットとか緻密に編まれたレースとか。城でしか見なかったような物がふんだんに詰め込まれていた。

「最後の箱を開けたら上にコレ」
「うん?手紙か」

 なんだろうとセリオから受け取りソファに座った。封ろうを剥いで紙を取り出した。

「親愛なるエリオスへ。ロドリグが世話になっている礼だ。少なくて悪いが受け取ってくれ。ランドール」

 ほほう。これで少ないと言われるか。んふふっお金持ちは違うね。

「なんだったの?」
「ん?ロドリグ様が世話になってるからお礼だって。少なくて悪いなってさ」

 はあ?とセリオ。

「これで少ないの?……さすが大国の貴族だね」
「うん」

 服以外の食べ物も保存箱にはそれこそ何日分?ってくらい調理済みの料理が入っていて、うちにはない果物も野菜も。
 別の箱には種もあった。植えただけでは時間は掛かるが、ロドリグに頼めとメモも付いていた。

「どんな果物や野菜だろうなあ。コレ」
「うん。カキって書いてあるけどなんだろう」

 種の袋をひとつ箱から取り出してメモを読んでいる。俺も知らないなあ。ナシ?キモモ?普通の桃が黄色いのか?……知らん名前のものばかり。美味いのかなあ。

「馴染みのない名前の種ばっかだね」
「うん。植えてみれば分かるか。食べ方はロドリグ様のところの料理長に聞くかな」
「そうだね。それとその麻袋の中にゴミみたいな……海藻と書いてあるけど……あっさすがに説明書付いてた。ほら」
「ああ」

 受け取って読むとゼリーの元だそう。ゼリーと違って、もっとさっぱりしていると書いてある。植物だからだって。

「ババロアみたいな感じに作ると美味いらしい。おっ?レシピ付いてる。んふふっならうちの料理長に作ってもらおうぜ」
「うん!楽しみだね」

 とりあえず開けたのはみんな元通りに仕舞って明日大使館に運んで送ってもらおう。
 あと数日あるから楽しんで帰りたいからな。

 窓から夕日が見えなくなった頃、ラインハルトが夕食ですよと部屋に迎えに来て食堂に。
 セリオはお土産が嬉しくてラインハルトにずっと話していた。
 緊張もしたけどロドリグ様のお兄様にも会えて楽しかった。あのエロさはどうにかして欲しいが。



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