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六章 遅いけど新婚旅行
2.猫族の国
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「わあ!猫だらけ!国に帰ったみたいだ」
「ああ。そんな気分にさせるな。だが、猫顔の者が多い気がする」
「うん。そうだね。うちは顔は人に近い者が多いからね」
この国にうちの大使館はない。ということはダダの馬車もない。徒歩で街を散歩した。
町並みは古い時代のものと今が混じってる感じ。ていうか壁が色んな色だ。屋根も。
「カラフルだね。魚屋は多いし、少し見たことない魚も置いてあったね」
「ああ。なんか黒っぽい魚が多いな」
「うん。美味しいんだけど見る分には寂しい」
物見遊山丸出しで歩いた。後ろからはラインハルトが護衛でついて来てくれる。騎士の服ではなくて、俺たちの服装に合わせてくれ、目立たないようにな。
「貴族ってわからないほうが楽しいかと思いましてね」
「気遣いありがとう」
「いいえ。ここは私にも他国ですから」
レストランや宿屋の食事も魚が中心のメニューが多かった。もちろん肉もあるが、海が近い国だからな。
「それにしても冒険者が目立つな」
腰に剣を差していたり、大きな荷物を担いでいたり。いつも思うんだが、魔法使いのあの杖いるか?俺はあれ使うように習ってないからなあ。荷物にならねぇか?
なんて、思いながらあたりを見ていた。
「ここからベトナージュに向かう船が出てるんですよ。週に一往復ですけどね。あそこは不思議なダンジョンがあって、魔物や魔獣を倒すと魔石が取れるんです。ですから腕を磨いたり稼ぎにね」
「ふーん」
今この大陸にたくさん出回っている大きな魔石は、ほとんどベトナージュ産。それをギルドが買い取って武具屋なんかが魔法で加工してるんですと、ラインハルトは説明してくれた。
「基本魔物からは魔石は取れないのですが、ダンジョンの中は別です。レベルに合わせた魔石が取れるんですよ。だからね」
「へえ不思議だな。でも危険だろ?」
ふふっと微笑んだ。
「それをわかった上の職業ですよ。ランクを上げれば護衛の仕事も増えます。強ければ貴族のお抱えにもなる道も出来ますから」
「そっか」
うちは魔力が少いのが当たり前で、騎士や衛兵は武術の良し悪しで選ぶ事が多い。
「そこに魔力がこの辺りでは必要になります。獣や魔獣、盗賊も輩も多大な魔力持ちが多いですから」
「そうなんだね。見た目はこの国も僕らの国に似てるけど、やっばり他国なんだと思い知るね。ねえエリオス」
「ああ。そうだな。俺たちの国はそう考えると安全で輩と言っても弱くてさ。何もないのも悪くないなんて思ったり」
「あはは。そうだね」
見ることの少ない野菜や果物。アクセサリーの屋台とか、目の前で魚や肉を焼いたりの店が増えだした。
「この辺はこの国のマルシェだね」
「うん。いい匂いがあっちこっちから」
普通の庶民が買い物に来る場所だ。こういった所はどこの国も変わらないな。賑やかでなあ。
「エリオス!あれ食べたい!」
「ん?」
果物の屋台か。串に刺した色んな物がある。何でかきゅうりも混ざってるけど。店の前に来ると、
「いらっしゃい!何にしやすか」
「うんとねぇ」
屋台の台にたくさん並んでる果物をセリオは見て悩んでいる。
「これ下さい」
「へい。旦那さんはいいのかい?」
「俺か?あ~なら同じのをもうふたつ」
「はい」
三本パイナップルを買ってひとつラインハルトに。
「私の分はいらないのですが。仕事中ですし」
「まあいいじゃないか。食べろよ」
「はい。ありがとうございます」
三人でパイナップル食べながら歩く。自分の領地でこんなふうに食べ歩く客は見るが。うん、楽しい。
「エリオス楽しいね」
「うん」
街の中心部になるのだろう。広場の中央にある噴水の近くのベンチにみんなで腰掛けた。
「いい季節に来たね。雨も降らなくて」
「ああ。出発したばっかだけどここまで雨には当たらなかったな」
家族連れやカップル、行商人や冒険者が行き交う。小国と聞いていたが色んな種族の者たちがいる。俺が考えていたよりも人は多いな。
「ラインハルト。この国はこんなに元々人が多いのか?」
「いえ。ここ数十年の事ですね。港は元々人は多いですが、それ以外に人が増えたのは戦の後からのようです。大陸が安全になり、街道の整備が出来てです。国同士の横のつながりなんか昔は少なかったですから」
「ふーん。ならうちもいつかこんなになるのかな」
なるでしょうねとラインハルトは微笑んだ。
「あなたが交易を増やし、人の流れを作った。他国との交流の道筋を作ったんですからね」
「うん」
俺は国を変えるつもりはなかった。ただ楽しく稼げて安定した領地にしたかっただけ。領地をもらったんだからそれなりにはしたかっただけだけどな。
「後先考えないで目先だけで動いていたんだ。どうせ国内だけの事だからって。なのに国を巻き込んだ形になって兄様にも……城も変わらなくちゃになってさ」
「うん。僕らは何にもない、分からないで始めたからね。でもさ、結果は国もお金増えたし、人の流れも増えた。失敗ではないよ。僕はそう思う」
「うん。上手く行ったけど失敗してたらと思わなくもないんだ」
エリオスと顔を両手で挟まれてグリッと横を向かされた。
「この後何かでつまずくかもしれない。でもねそんな事ばかり考えてても辛くなるばっかだよ。つまずいた時の心構えは大切だけど、それ以上は要らない。みんないるんだ。何とかなるよ」
「うん」
エリオスの良さがなくなってるのは僕は辛いよ。明るく元気で周りを巻き込んで動いてるあなたはステキだからって。
「ありがとう」
「うん」
前を向いてブツブツ。ロドリグ様魔力ケチったのか?僕は嫌だけど我慢してるのに何なんだあの人はと。小声でね。
「ケチってないよ。俺が自分の気持ちに折り合いが付かないだけだ。ごめんね」
俺はセリオに腕を回し引き寄せた。
「そう?まだ旅は始まったばかりだ。楽しもうね」
「ああ」
明日はイアサント方向の船に乗りランベールに行く。ここからが本番だ!楽しまなくちゃな。
「ああ。そんな気分にさせるな。だが、猫顔の者が多い気がする」
「うん。そうだね。うちは顔は人に近い者が多いからね」
この国にうちの大使館はない。ということはダダの馬車もない。徒歩で街を散歩した。
町並みは古い時代のものと今が混じってる感じ。ていうか壁が色んな色だ。屋根も。
「カラフルだね。魚屋は多いし、少し見たことない魚も置いてあったね」
「ああ。なんか黒っぽい魚が多いな」
「うん。美味しいんだけど見る分には寂しい」
物見遊山丸出しで歩いた。後ろからはラインハルトが護衛でついて来てくれる。騎士の服ではなくて、俺たちの服装に合わせてくれ、目立たないようにな。
「貴族ってわからないほうが楽しいかと思いましてね」
「気遣いありがとう」
「いいえ。ここは私にも他国ですから」
レストランや宿屋の食事も魚が中心のメニューが多かった。もちろん肉もあるが、海が近い国だからな。
「それにしても冒険者が目立つな」
腰に剣を差していたり、大きな荷物を担いでいたり。いつも思うんだが、魔法使いのあの杖いるか?俺はあれ使うように習ってないからなあ。荷物にならねぇか?
なんて、思いながらあたりを見ていた。
「ここからベトナージュに向かう船が出てるんですよ。週に一往復ですけどね。あそこは不思議なダンジョンがあって、魔物や魔獣を倒すと魔石が取れるんです。ですから腕を磨いたり稼ぎにね」
「ふーん」
今この大陸にたくさん出回っている大きな魔石は、ほとんどベトナージュ産。それをギルドが買い取って武具屋なんかが魔法で加工してるんですと、ラインハルトは説明してくれた。
「基本魔物からは魔石は取れないのですが、ダンジョンの中は別です。レベルに合わせた魔石が取れるんですよ。だからね」
「へえ不思議だな。でも危険だろ?」
ふふっと微笑んだ。
「それをわかった上の職業ですよ。ランクを上げれば護衛の仕事も増えます。強ければ貴族のお抱えにもなる道も出来ますから」
「そっか」
うちは魔力が少いのが当たり前で、騎士や衛兵は武術の良し悪しで選ぶ事が多い。
「そこに魔力がこの辺りでは必要になります。獣や魔獣、盗賊も輩も多大な魔力持ちが多いですから」
「そうなんだね。見た目はこの国も僕らの国に似てるけど、やっばり他国なんだと思い知るね。ねえエリオス」
「ああ。そうだな。俺たちの国はそう考えると安全で輩と言っても弱くてさ。何もないのも悪くないなんて思ったり」
「あはは。そうだね」
見ることの少ない野菜や果物。アクセサリーの屋台とか、目の前で魚や肉を焼いたりの店が増えだした。
「この辺はこの国のマルシェだね」
「うん。いい匂いがあっちこっちから」
普通の庶民が買い物に来る場所だ。こういった所はどこの国も変わらないな。賑やかでなあ。
「エリオス!あれ食べたい!」
「ん?」
果物の屋台か。串に刺した色んな物がある。何でかきゅうりも混ざってるけど。店の前に来ると、
「いらっしゃい!何にしやすか」
「うんとねぇ」
屋台の台にたくさん並んでる果物をセリオは見て悩んでいる。
「これ下さい」
「へい。旦那さんはいいのかい?」
「俺か?あ~なら同じのをもうふたつ」
「はい」
三本パイナップルを買ってひとつラインハルトに。
「私の分はいらないのですが。仕事中ですし」
「まあいいじゃないか。食べろよ」
「はい。ありがとうございます」
三人でパイナップル食べながら歩く。自分の領地でこんなふうに食べ歩く客は見るが。うん、楽しい。
「エリオス楽しいね」
「うん」
街の中心部になるのだろう。広場の中央にある噴水の近くのベンチにみんなで腰掛けた。
「いい季節に来たね。雨も降らなくて」
「ああ。出発したばっかだけどここまで雨には当たらなかったな」
家族連れやカップル、行商人や冒険者が行き交う。小国と聞いていたが色んな種族の者たちがいる。俺が考えていたよりも人は多いな。
「ラインハルト。この国はこんなに元々人が多いのか?」
「いえ。ここ数十年の事ですね。港は元々人は多いですが、それ以外に人が増えたのは戦の後からのようです。大陸が安全になり、街道の整備が出来てです。国同士の横のつながりなんか昔は少なかったですから」
「ふーん。ならうちもいつかこんなになるのかな」
なるでしょうねとラインハルトは微笑んだ。
「あなたが交易を増やし、人の流れを作った。他国との交流の道筋を作ったんですからね」
「うん」
俺は国を変えるつもりはなかった。ただ楽しく稼げて安定した領地にしたかっただけ。領地をもらったんだからそれなりにはしたかっただけだけどな。
「後先考えないで目先だけで動いていたんだ。どうせ国内だけの事だからって。なのに国を巻き込んだ形になって兄様にも……城も変わらなくちゃになってさ」
「うん。僕らは何にもない、分からないで始めたからね。でもさ、結果は国もお金増えたし、人の流れも増えた。失敗ではないよ。僕はそう思う」
「うん。上手く行ったけど失敗してたらと思わなくもないんだ」
エリオスと顔を両手で挟まれてグリッと横を向かされた。
「この後何かでつまずくかもしれない。でもねそんな事ばかり考えてても辛くなるばっかだよ。つまずいた時の心構えは大切だけど、それ以上は要らない。みんないるんだ。何とかなるよ」
「うん」
エリオスの良さがなくなってるのは僕は辛いよ。明るく元気で周りを巻き込んで動いてるあなたはステキだからって。
「ありがとう」
「うん」
前を向いてブツブツ。ロドリグ様魔力ケチったのか?僕は嫌だけど我慢してるのに何なんだあの人はと。小声でね。
「ケチってないよ。俺が自分の気持ちに折り合いが付かないだけだ。ごめんね」
俺はセリオに腕を回し引き寄せた。
「そう?まだ旅は始まったばかりだ。楽しもうね」
「ああ」
明日はイアサント方向の船に乗りランベールに行く。ここからが本番だ!楽しまなくちゃな。
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