俺の伴侶はどこにいる〜ゼロから始める領地改革 家臣なしとか意味分からん〜

琴音

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五章 未来を考えた領地運営とは

9.疲れたのかな?

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 ひと月の新婚旅行からディエゴ、フィトの二人が帰って来て順調に過ごし、かれこれ半年。
 俺の執務室には茶トラのおっさん。

「ごきげんよう。エリオス樣」
「何の用だ。ダリオ」
「うふふっヤダなあとぼけて」

 手を揉みながら満面の笑み。ふう……とうとう来たか。

「言え」
「はーい。街道から西は山とこの屋敷中心に発展して閑散期ですら九割の稼働率。素晴らしいですね」
「ああ」

 いやーな企んでいるように目尻を下げてにやり。

「あの東の森何とかしませんか?」
「はあ」

 はあではない!とやる気のない俺の態度が気に入らないのか怒鳴られた。

「今の勢いで開発をしましょう!でも半分は触らないでくださいませ。染料の沼がありますゆえ」
「はあ」

 まだやりたくなーい。もう少し静かな時間をくれぇ。俺の頭の中は拒否でいっぱい。

「まだよくない?」
「いいえ!こういったものは流れや勢いも大切です。人が来ているうちにした方がいいのです!」

 ドンとテーブルに手を付いた。あうぅ。

「まさか……なんの案も考えていない?」
「ゔっ」

 考えてはいるよ。いるけどさあとゴニョゴニョ。

「どんなものをお考えですか?」
「あーそれ話すの?」
「はい。楽しみですねぇ。私はこんなやり甲斐のある土地に来たのは、支部長になってから初めですから。街の発展を見るのが楽しいんですよ」
「そう……」

 そうね。忙しく稼ぐのが好きな人もいるよね。うん。

「エリオス樣。どんなものですか?異国ふう?国内華やかふう?」
「……もう少し待たない?」

 クワッとダリオは目を剥いてはあ?って。

「俺ね子供欲しいの。まだひとりでしょ?」

 顔を歪ませこの領主は何を言っているという顔をした。

「なぜこの暇な時にお作りにならなかったんですか?」
「ゔっ……それは……」
「それは?」
「あう」

 この茶トラ嫌い。俺はその問いに答えず、ここは一生掛けて領地改革出来ればいいの!分かってよと言ってみた。

「ふん。お子様に素敵な領地を譲るんでしょ?ならば頑張らなくてはね?」

 ふてぶてしく言われた。そうだけど、そうなんだけれども。

「なんでお前はそんなにやりたいんだよ。息子はフェンリルの街で独り立ちしてるだろう」

 むふふとイヤな笑みを浮かべた。腹黒さに磨きがかかってるぞ!

「イヤですよ。お金はいくらあっても邪魔になりません。稼げる時に稼ぐのが商人です。蓄えはいくらあってもいい」
「そう……ね」

 結局俺が折れて半年後を目安に事を進めると話した。

「まあ、後は野菜の名産地となってますから、残りは農地で構いません。そこが出来れば買い付けの商人も楽でしょう」
「うん。ならさ簡単な地方都市って感じでいいのか?」

 ボケェ!と叫ばれた。俺はその声にビクッとした。

「きちんとした街にして下さいませ!遊べる街にね!観光領地に普通のなんの変哲もない街などいらぬ!」
「はい」

 プンスカしながらちゃんと作ってよね!と捨て台詞を残し、俺の執務室を出て行った。なんで俺、毎回茶トラに怒鳴られてんだよ。

「あはは。商人とはそんなもんだよ」
「フィト」

 ソファから立ち上がる気になれず、どっかり座っている俺の向かいにフィトは座った。

「大金持ちになりたいばかりじゃないんだ。仕事が楽しいの先にお金が付いてくる、なんて考えている人もいるんだよ」
「そうか」

 納得してないねとフィト。

「エリオス樣は王族で、やりたい事はなんでも出来る資金も土地もあった。でもね、庶民はひとつに絞って成し遂げようとする。元の資金が少ないからね」
「うん」

 フィトはまあ聞けと話した。
 庶民は人生を掛けて挑戦するんだ。農民もこの地に来て、生活を安定させようと思って来ている。それはね、子孫のためもあるけど自分のためだ。穏やかにや楽しく、やり甲斐のため、何かを極める。そんな事にねって。

「ふーん。俺はやるからにはきちんとやりたいと思ってるよ。領民が安心して生活出来るようにってさ」
「うん。それがエリオス樣や僕らの仕事だ。領地にお金があれば奥の草原もいくらでも土地はあるからね」

 嫌な事言うね。そこはまだ手を付けたくない。

「あ~……まだ考えたくない」
「それは僕もね」

 ディエゴもフィトの隣に座った。

「エリオス。この土地はさ、一度野に還ったんだ。それをここまでにして国まで動かすものにした。凄いことだよ」
「うん」
「この領地の責任はお前にあるんだ。好きにしていいんだよ」
「うん」

 だからなあって笑った。

「お前と一緒に領地を大きくしたいとギルド以外も思ってるんだ。ここをいい土地にしたいってな」
「それは分かっているよ」

 みんなのやる気に満ちた街を見ればさ。

「だからお前たちが子供が欲しかったら作ればいい。俺たちは頑張るよ。ノウハウはロドリグ様が教えてくれた。これからはそれほど困らんだろ?」
「うん」

 俺はここに来て何年だ?五年以上過ぎている。歳も二十五になりセリオも二十七だ。走り続けて来て、なんだろうな。少し立ち止まって考えたい気分なんだ。

 俺自身の生活の安定のためもあって頑張って来たし、新しい街の案もある。だけど腰が上がらない。

「ふむ。お前疲れてるんだろ。気持ちが切れたって言うかさ」
「そうかもね」

 うーんとディエゴは考えていた。何考えてんの?フィトとヒソヒソ話してうんうん。

「少し休め。俺たちで仕事はするから。セリオと子供とゆっくりしろよ」
「でもさ。俺は……」

 被せるようにディエゴは、

「いいから!やる気になるまで休め。お前は俺たち家臣に気を使いすぎだ。新婚旅行もみんなには行かせて自分たちは行かない。こちらが恐縮してたんだ。だから!」

 セリオが後ろでクスクス。お言葉に甘えようよ。エリオスは今はらしくないよって。

「そう?」
「そうだよ。僕から見てもやる気に満ちていた初めの頃より勢いがない。年取ったって年齢でもないし、環境が変わって頑張リ過ぎて疲れたんだよ」

 ディエゴもそうだなあと頷いた。

「お前は俺たちとは責任の重さが違う。見た目より責任感強いのも隣にいてよく分かっているからな。新しい街のことも忘れて旅行でも子作りでも半年くらいなら好きにしろよ」
「うん。それくらいなら僕らでやれるしね」

 俺の隣にセリオは座り、これからのために休んでと。俺は大きく息をついた。

「ありがとう。なら少し休ませてもらうよ」
「そうしてくれ」

 俺たちは翌日から休みの期間に入ることにした。





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