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四章 領主として俺
6.街づくりスタート
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今日から街づくりが始まった。
「オスバルド様お願い致します」
「はい、エリオス様。私以外の者はサムエル、ベラコス、ビダルが中心になってやります。他二名は補佐です」
「かしこまりました。この図面でお願いします。資材はここを切り倒した木材、あちらに見える崖から石材はお願いします。足りない分は言ってください」
「はい」
オスバルド他はみんなでまずは整地だと一斉に木を切り倒していった。うん、手を振って歩いてるだけだけどね。スパーンスパーンと木は倒れ、補佐の人が集めて積み上げてく。連携が取れててすごい。
「街道からここまでの道も整備が必要ですね。それと山に向かう道も」
「ええ。お願いします」
小一時間で何もなくなって広場が現れた。うちの魔法使いは全部の整備に二ヶ月かかったけど……
「あはは。そこまでかかりませんよ。材料集めにどれだけ時間が掛かるかですね。ここは森の中ですから木は充分かと。あとは石ですかね」
「そうですね。道から建物までだから」
近場だけで足りるか?
「地面も探します。ですがあまりやると地盤によろしくないので、領地境の山脈にでも探しに行きますよ」
「すみません。お手数ですがお願いします」
これだけ大規模な造成だが、お金はいつもの給金だけでいいそうだ。ロドリグ様ありがとう。
「すごいね」
「ああ。これが魔力量の違いなんかな」
「後は長年の経験でしょ」
「そうだな」
セリオと鮮やかに景色が変わっていくのを見ていた。
ドナシアンは百年前の戦の後、数ヶ月で街を作り変えたと聞く。どれだけの魔法使いがいたのやら。人族は計り知れない。
「上手く行ってるか」
「あっロドリグ様。はい」
「そうか。俺の魔法使いは優秀だから早く出来るはずだ。ギルドにすぐに来れるよう手配しておけよ」
「はい」
「それと魚もこっちでも売るんだろ?」
「ええ」
ならエゼキエーレにもちゃんと連絡しろ。あちらは人が少ないんだから、漁師を増やして運搬の人足も増やせって。
うん。そこは抜かりない。俺は出向いてお願いしている。が、王様は俺の話にみるみる顔色が悪くなり……
「街を増やすのですか……ほほう……」
「魚をそちらにもお願いしたいのです」
うふふっと微笑み、完全に青くなった。ごめん。
「ですので、運搬はこちらで人族を雇いました。馬車の騎獣を出せる者を何人か」
「ほう……ならばなんとか。漁はどうにかなりそうなんですが、運ぶ者がいませんので」
変な汗をかいてたけど気を取り直したようだ。
「我が領で運送業の給金を出せるようになり、他国からも働きに来る者が増えたんです」
「そうですか。ようございますね」
うちの国は元々魅力がなく人族はあまりどころか来なかった。特殊な魔法使いが必要だとたまに大店が雇うくらいでさ。最近は外を知ったドミンクスの人が少し来てるんだ。
あそこはうちと変わらない貧乏国。鎖国をやめたと言ってもそれほど人は外に出ないし、入っても行かない。長い鎖国で民は変化を嫌うようになってたんだ。でも外に憧れを持つ者もいる。
「あそこは仕方ないと思います。入れば二度と出れない政策の期間もありましたからね」
「俺も中が全てになってしまう気持ちは分かります」
うちもここも鎖国しなくても似たようなもんだから。
「ふふっそうですね」
マンセル様は苦笑い。あなたのお陰で人が動くようになって、くま族以外も見かけるようになりました。魚好きなイタチとかカワウソとか。
「そうですか。賑やかになってきたんですね」
「はい。あなたの魚がここからの魚だって気になる方が観光にも来てくれて……本当になんとお礼を……グスッ」
目頭をマンセル様は抑えて。
「マンセル……」
「うん。すまないジレール。こんな日が来るなんて思ってなかったんだ。質素が当たり前のこの国に……エリオス様のところの赤い服を着てるくまが……そんなお金が民に……」
「ええ……」
ジレール様も涙ぐんでよかったねって。
俺の知らんうちにロドリグ様の魔法使いも来てて、街を整備したり、農家の家を立て直したり。家の隙間風が!なんてこともなくなり冬暖かく過ごせているそう。
「こちらは冬寒くなるんですよ。雪が降るなんてところまでは寒くはないのですが、海風が強く山に吹きつけるんです」
「それは大変ですね」
「はい。その強い風が建物を壊してしまい王宮では中々直してあげられず」
魔法使いがいないに等しかったそうだ。くま族は王様でも魔力量十万ない。庶民はもうね……
「自国の魔法使いがいなくともロドリグ様が派遣してくれています。病もケガも心配は少なくなりました」
「ほほう……」
ひとり城付きで出向だそう。当番制で何ヶ月かに一回交代しているそうだ。
「よかったですね」
「ええ、いつか自分の国で雇えればと考えています」
「きっとすぐですよ」
「はい。エリオス様が頑張ってくれればですかね?」
「あはは。頑張ります」
なんてことがあったのを報告した。
「ならばよい」
「はい」
こんな僅かな時間で地面は整地され平らになって行った。
「はや……」
「だろう?ふっ」
エリオスって不安そうな声。
「こんなに凄いとなんか見返りって言われたらどうしよう」
「ああ。俺たちは捧げたくはない」
「猫族の夜伽探しとく?」
「そうだな……父上に見繕って貰うか?」
「うん。一応相談を……」
俺たちはヒソヒソと不安を消す話し合い。
「聞こえてるぞ。んなことは言わん。適当に自分で物色する。まあお前らの気が変わるのであれば嬉しいがな」
「ゔっ。変わりません。俺はセリオがいれば」
「僕も!」
フンと鼻を鳴らし、
「気長に待つよ」
「……待たなくていいです」
街の開拓は始まった。
「オスバルド様お願い致します」
「はい、エリオス様。私以外の者はサムエル、ベラコス、ビダルが中心になってやります。他二名は補佐です」
「かしこまりました。この図面でお願いします。資材はここを切り倒した木材、あちらに見える崖から石材はお願いします。足りない分は言ってください」
「はい」
オスバルド他はみんなでまずは整地だと一斉に木を切り倒していった。うん、手を振って歩いてるだけだけどね。スパーンスパーンと木は倒れ、補佐の人が集めて積み上げてく。連携が取れててすごい。
「街道からここまでの道も整備が必要ですね。それと山に向かう道も」
「ええ。お願いします」
小一時間で何もなくなって広場が現れた。うちの魔法使いは全部の整備に二ヶ月かかったけど……
「あはは。そこまでかかりませんよ。材料集めにどれだけ時間が掛かるかですね。ここは森の中ですから木は充分かと。あとは石ですかね」
「そうですね。道から建物までだから」
近場だけで足りるか?
「地面も探します。ですがあまりやると地盤によろしくないので、領地境の山脈にでも探しに行きますよ」
「すみません。お手数ですがお願いします」
これだけ大規模な造成だが、お金はいつもの給金だけでいいそうだ。ロドリグ様ありがとう。
「すごいね」
「ああ。これが魔力量の違いなんかな」
「後は長年の経験でしょ」
「そうだな」
セリオと鮮やかに景色が変わっていくのを見ていた。
ドナシアンは百年前の戦の後、数ヶ月で街を作り変えたと聞く。どれだけの魔法使いがいたのやら。人族は計り知れない。
「上手く行ってるか」
「あっロドリグ様。はい」
「そうか。俺の魔法使いは優秀だから早く出来るはずだ。ギルドにすぐに来れるよう手配しておけよ」
「はい」
「それと魚もこっちでも売るんだろ?」
「ええ」
ならエゼキエーレにもちゃんと連絡しろ。あちらは人が少ないんだから、漁師を増やして運搬の人足も増やせって。
うん。そこは抜かりない。俺は出向いてお願いしている。が、王様は俺の話にみるみる顔色が悪くなり……
「街を増やすのですか……ほほう……」
「魚をそちらにもお願いしたいのです」
うふふっと微笑み、完全に青くなった。ごめん。
「ですので、運搬はこちらで人族を雇いました。馬車の騎獣を出せる者を何人か」
「ほう……ならばなんとか。漁はどうにかなりそうなんですが、運ぶ者がいませんので」
変な汗をかいてたけど気を取り直したようだ。
「我が領で運送業の給金を出せるようになり、他国からも働きに来る者が増えたんです」
「そうですか。ようございますね」
うちの国は元々魅力がなく人族はあまりどころか来なかった。特殊な魔法使いが必要だとたまに大店が雇うくらいでさ。最近は外を知ったドミンクスの人が少し来てるんだ。
あそこはうちと変わらない貧乏国。鎖国をやめたと言ってもそれほど人は外に出ないし、入っても行かない。長い鎖国で民は変化を嫌うようになってたんだ。でも外に憧れを持つ者もいる。
「あそこは仕方ないと思います。入れば二度と出れない政策の期間もありましたからね」
「俺も中が全てになってしまう気持ちは分かります」
うちもここも鎖国しなくても似たようなもんだから。
「ふふっそうですね」
マンセル様は苦笑い。あなたのお陰で人が動くようになって、くま族以外も見かけるようになりました。魚好きなイタチとかカワウソとか。
「そうですか。賑やかになってきたんですね」
「はい。あなたの魚がここからの魚だって気になる方が観光にも来てくれて……本当になんとお礼を……グスッ」
目頭をマンセル様は抑えて。
「マンセル……」
「うん。すまないジレール。こんな日が来るなんて思ってなかったんだ。質素が当たり前のこの国に……エリオス様のところの赤い服を着てるくまが……そんなお金が民に……」
「ええ……」
ジレール様も涙ぐんでよかったねって。
俺の知らんうちにロドリグ様の魔法使いも来てて、街を整備したり、農家の家を立て直したり。家の隙間風が!なんてこともなくなり冬暖かく過ごせているそう。
「こちらは冬寒くなるんですよ。雪が降るなんてところまでは寒くはないのですが、海風が強く山に吹きつけるんです」
「それは大変ですね」
「はい。その強い風が建物を壊してしまい王宮では中々直してあげられず」
魔法使いがいないに等しかったそうだ。くま族は王様でも魔力量十万ない。庶民はもうね……
「自国の魔法使いがいなくともロドリグ様が派遣してくれています。病もケガも心配は少なくなりました」
「ほほう……」
ひとり城付きで出向だそう。当番制で何ヶ月かに一回交代しているそうだ。
「よかったですね」
「ええ、いつか自分の国で雇えればと考えています」
「きっとすぐですよ」
「はい。エリオス様が頑張ってくれればですかね?」
「あはは。頑張ります」
なんてことがあったのを報告した。
「ならばよい」
「はい」
こんな僅かな時間で地面は整地され平らになって行った。
「はや……」
「だろう?ふっ」
エリオスって不安そうな声。
「こんなに凄いとなんか見返りって言われたらどうしよう」
「ああ。俺たちは捧げたくはない」
「猫族の夜伽探しとく?」
「そうだな……父上に見繕って貰うか?」
「うん。一応相談を……」
俺たちはヒソヒソと不安を消す話し合い。
「聞こえてるぞ。んなことは言わん。適当に自分で物色する。まあお前らの気が変わるのであれば嬉しいがな」
「ゔっ。変わりません。俺はセリオがいれば」
「僕も!」
フンと鼻を鳴らし、
「気長に待つよ」
「……待たなくていいです」
街の開拓は始まった。
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