俺の伴侶はどこにいる〜ゼロから始める領地改革 家臣なしとか意味分からん〜

琴音

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四章 領主として俺

3.久しぶりのきちんとした視察

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 俺は視察に来ている。
 やっと出来るようになったんだ。セリオの出産からのラッシュも落ち着いてさ。

「ダリオ、魚市場はどうだ?」
「はい。エリオス様」

 まずは城壁付近の魚市場から。
 いやあ人が多い。国内の猫族はもとより、人族、他種族が目に入る。犬、うさぎ、リザードン……?おお……なんと美しいんだエルフは……


「エリオス……見惚れないの!」
「ごめん。ほとんど見たことなかったから」

 目が追ってたよとセリオは呆れている。

「あはは。そうですな。我が国にエルフやドワーフはまず見かけません。城にはドワーフはおりますでしょうが、そのくらいでしょう?」
「ああ、武器のメンテナンスや制作にな」

 その者たちですらほとんど見かけないんだ。たくさんいないから。

「市場自体は繁盛しております。このように保存箱に細工をしまして中はよく見えますから」
「そうだな」

 川魚と違い、色鮮やかだ。赤や、青、緑。大きさもぜんぜん違う。鮭はでかいなあ……あ~魔獣の魚も混じってる?凶悪な顔が……

「ええ。見た目はなんですが味はいい。色も毒々しく見えますが、白身で脂も多く猫族は好きな味です」
「ほほう」

 市場をゆっくり歩きながら視察。人々も見たことない魚に楽しそうだ。近くには魚メインのレストランもあって、国内の者なら騎獣での日帰りで遊べるだろう。

「うお!あれはなんだ?」
「ふふっ水槽です」

 ガラス?の中に魚が泳いでいる!下の方にはエビや貝がくっついて。

「少しですが動いているものもいいかと工房に頼んで作りました。いいでしょう」

 すげぇドヤ顔だな。確かにいい。

「いけすで泳がせているのとは違っていいな」
「はい。横から魚が見えるので大人気です」

 セリオもすごいと感嘆の声。

「こんなふうに泳いでるんだね」
「ああ、横から見るのもいいな」

 商業ギルド長ダリオの案内で見て回った。広場も立ち食いの屋台にバザールが開かれていて賑やか。異国の雰囲気が強い。

「他国からの者が多いな」
「今やフェンリルと並び魚が評判ですからね」

 見たことない装飾品や食べ物も売っている。うちの赤い生地で作った異国のデザインのシャツとか服や小物なんかもある。

「服屋だけじゃないんだな。あの赤い生地」
「ええ、他領に生地を売ってますので服や小物の生産がが始まっていましてね。ドナシアンなんかのデザインを取り込んでます」

 ザクロジュースのような強烈な赤が虹色に光る生地……目を引く強い真紅。

「本当に美しい赤だ」
「ええ、今も改良がされています。薄く染めれば優しい色が出ます。同じ染料でたくさんの色が出て、絹以外の生地も人気です」
「そうか」

 俺たちは市場を離れ街の中心街に。

「久しぶりに来たが、相変わらず人が多い」
「ええ。ここは買い物、食事が中心ですからね」

 掃除も上手く行っているのかそこまで散らかってはおらずいい感じ。

「あん?噴水が俺のデザインじゃない」
「ふふっ市場に合わせてフェンリルにしました」
「また勝手に……俺気に入ってたのに」

 ロドリグ様の魔法使いに頼んで変えたそうだ。フェンリルの領地を強く打ち出すためにだそうだ。あいつを山に行けば必ず見られる訳じゃないからな。

「エリオスのも良かったけど、これもいいと思うよ。フェンリルのふかふかでカッコいい感じがよく分かるし」
「うん。確かに」

 躍動感のあるフェンリルだ。白い石で作ってるから見た目の色も近くていいな。

「あ!エリオス様」
「おう!繁盛してるか?」

 宿屋の店主が声を掛けてきた。

「もちろん!魚も評判ですよ」
「そうか。困った事はあるか?」

 う~んと考えて、

「あ~俺が休みを取りづらいくらいですかね。うはは」
「無理するなよ」
「はい。身体壊さない程度に頑張りますよ」
「そうしてくれ。頼むな」
「はい」

 歩いていると街の店主が声を掛けてくれる。また来て下さいってな。ある程度見て次に草原の宿場町に移動。

「エリオスこれは……」
「ああ。もう街と変わらんな」

 街よりお値段安めの宿屋が多いから、人も庶民的な者が多い。レストランとは言い難い食堂や飲み屋が目立つ。

「こちらは庶民的ですね。町の外れの宿屋は今も行商人の安宿です」
「そう。足りてる?」
「なんとか。町が大きくなって来てましてね。農家や街の者の家も多いですから普通に生活する場になっています」

 メインの街の発展で仕事をする者の家がこちらに移ったそうだ。

「家賃の問題もありましてね。住み込みだけでは対応出来なくなって」
「ああ」

 あたりに農家も増えて、普段の買い物が出来る所が必要になり肉屋や魚屋もある。香辛料や台所で使うような物とか、日常で使う店が増えた。

「働きに来るものが増えましたからね。町も少しずつ大きくなっています」
「……治安は?」

 人が増えるということはどうしてもな。

「ふふっメインの街ほど警備はありませんからね。それなりです」
「そう。増やして欲しい?」

 いいえって。

「どこもこのような町は同じです。今は領内にも小さな町が出来ていますがこんなものですね。ここが最大なだけで」

 農家が増えれば近くに商店が出来て村になる。あちらこちら……俺の屋敷の周りのみではない。他の領地と変わらない雰囲気になって来ている。

「エリオス様は農地の視察は行かれますか?」
「ああ、明日以降にな。山とか」
「見てくるといいですよ。ここ一年で随分と変わりましたから」
「おう。報告だけで見れてなかったしな」

 それがいいですよって。そうか、ダリオが見ても変わったか。楽しみだ。
 俺たちは近隣のみだが視察をして歩いた。初期の人がいなくて寂しい世界はどこにもなく、完全な観光領地になっている。

「エリオス頑張ったよ。僕らはさ」
「うん。みんなも付いてきてくれてな」

 ほんの数年前のことだけど随分前に感じる。

「初め三軒の農家が頑張ってくれて、それからも勧誘して十軒になって野菜が評判になってさ」

 感謝しかないね。
 フェンリルが現れなければ彼らが主力になっていたはずだ。細々とだけどいつかはそれで食べていけただろう。

「フェンリルがいなければ、こんな早さで整いはしなかっただろうけど、彼らの力が加速させた」

 ダリオもうんうんと。

「野菜の美味さは大きかったですね。フェンリルだけでは、ここまでになるのは難しかったのではないでしょうか。この領地は飯が美味いのも有名なんですよ」
「ああ。みんなのおかげだ。ありがたいよ」
「はい。私はこれからも頑張りますよ。この領地は稼げますから」
「おう!頼むな」

 任せてくださいと胸を叩いた。

「それでですね。この領地広いですよね?」
「ああ。このあたりだけで他はまだまだ空いて……え?」

 むふふってダリオは悪い顔になった。

「あのですね?この領地は山が真ん中にある地ですよね」
「……なんだよ」

 手を揉んでニヤニヤ。

「山の反対側にも小さくていいんですけど、観光地を作りませんか?まだ農地にもなってない森がございますから」
「ゲフッ……」

 俺は少ないけどお金は困ってないよ。ダリオ?

「何を仰る!他の領地に比べたら少ないはずです!」

 そうだけどな。

「いやなダリオ。マリオン侯爵とか温泉地に比べれば確かに鼻くそしか儲かってはいないが、俺はその……」

 黙らっしゃい!

「ひゃう!」
「これだから王族はもう!他の公爵様もそうですが欲が足りない!」

 茶トラ怖いよ。目を血走らせるな!

「あ~……俺はマイナスでなければいいかなって」
「ボケェ!あっゲフンッ……失礼、言葉が過ぎました。この領地は畑と大量の森と林、草地なんですよ?分かってますか!」
「うん……」

 道の真ん中で怒鳴られているから通りすがりの人の目が痛い。
 まあ、あれだ。お店に入ってお茶しながら話そうと茶トラに引きずられて軽食のお店の中に。ずずぅ……お茶美味い。

「はあ。エリオス様。ここはこれで終わりではありませんからね。見て下さい」

 ダリオは地図を出した。用意がいいな。

「ここが山、手前が湖と屋敷、街と畑。分かりますか?」
「うん……」

 返事がぬるい!と叱れれる。

「農地、観光地、フェンリルの山。それを抜いた大量の場所は?」
「森と草原だな」

 ほほう。現状の理解はされていますね?と睨まれた。

「ああ。猟師の狩り場も必要だしこのくらいでいい……」
「ボケェ!そんなに猟場いらねえんだよ!他領との境に低い山脈もあるから!」
「うっはい……」

 俺の言葉に被って怒鳴られた。

「ダリオ。もう少し言葉を……ね?」
「セリオ様もだ!あなたも上級貴族だから甘い!」
「ひゃう!ごめん」

 セリオの注意も火に油を注いだだけで、茶トラはテーブルをドンと叩いた。

「稼げるのになぜやらない!今この領地は勢いがある!この波に乗って拡大でしょう!」
「あのなダリオ……」

 今は稼げているがなにかあった時ダメージは少ないほうが……な?と俺は冷や汗をかきながら。ね?

「そんな事は今考えることではありません。細々とやるならありでしょうが、この国一番にするには足りません!」
「はあ」

 ドナシアン、イアサントを見て下さい。あの国は辺境ですら裕福です。温泉地以外もそこの特産品を全面に打ち出し、買い物を他国に行かなくても出来て遊べる地にしています。我が領地は更に猫族のかわいさを打ち出してもっと!

「あ?猫族はそんなに魅力あるか?」
「あります!」
「グッ」

 人に近い姿の猫族ばかりではありませんから!と力強い。

「カルデロン王国も猫族……」
「遠いでしょ!付き合いあるんですか?」
「あんまり……」

 俺にとってマズい流れになっている。

「この近くは猫族の国はないです!くま、犬、げっ歯類のデグーやカピバラ、リスでしょ!」
「イタチとかトラとかも……」

 キッと睨まれて……怖いよお前。

「カルデロンは魚と猫族。上手くアピールしてます!うちも!」
「うん……」

 では反対側にも観光地をと言うとダリオはお茶を飲んだ。やだぁ……お金がマイナスになるぅ暇もなくなるぅ……シクシク。

「お金は回収出来ます。暇は……まあ数年我慢すれば……?いちからではないですしね」
「グフッ」

 俺とセリオは変な声が出た。
 こちらをと更に地図を出して来る。

「こちらが街のイメージ図です。今の街にドナシアンやイアサントの雰囲気を入れて南国の……」

 拒否権はないようだ。ダリオの声が遠くに感じて……い~や~だ~




 
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