俺の伴侶はどこにいる〜ゼロから始める領地改革 家臣なしとか意味分からん〜

琴音

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三章 課題と改善

12.父上とロドリグ様 そして俺たち

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 どうにか魚市場が俺たち執務室の手を離れ始めた。領主になって早三年。怒涛の三年だった。

「父上?」
「ああ、なんだ」
「雰囲気変わりました?」

 父上はビクッとして、そして額から汗が一筋流れた。

「そうか?そんな事ないぞ?うん」
「怪しい」

 俺の視線にフグッと息を飲み、項垂れて簡単に白状した。

「誰にも言わないでくれよ」
「今までも言ってません」
「うん……」

 どうしようかなってう~んと唸り、上向いたり下向いたり。ポッと赤くなった。え?

「私はロドリグ様と歳が近くてな」
「ああはい、そうですね」
「……ふう」

 ふう……?モジモジしてるような?まさかッ!食われたのか!

「父上……もしかして」
「うん……幸せだった。あんな香りは始めてで、そのな……すまん!」

 うわ~ロドリグ様最近見かけないと思っていたら。父上食ってたのか。

「まあ、父上がよかったならいいですよ」
「……人族はすごくてな」

 嬉しいのか話したそうだ。
 だが、親の情事を聞きたい子はいない。

「甘い強い香りに……酔うんだ。獣人では感じない強い香り。頭が痺れるような……」
「ほう……」

 おう、話すのか。父上の執務室のソファでお茶をしながらだぞ?何の話だよ!ぶっちゃけるのも大概にしてくれ!

「それでな」
「はい」
「……いや、やめておく」
「はい」

 よかった、正気になってくれて。
 
 親の下半身事情なと興味はない。良い番がいればいいくらいだ。

「ゲフン。何用だ」
「だから言いました。魚が上手く行きました。お金も返せそうですって」
「ああ、いらん」

 右手を上げてひらひら。

「いや、でも。あのお金は父上の私費では」
「だからいい。もうそんなに使わんし」

 ん~……なんで?

「でも愛妾と旅行とか温泉は……」
「もういいんだ」
「え?」

 モジモジしてもういいって。

「父上?」
「彼が来てくれればもう……その……」

 ははあ、そういうことね。

「……はい。ではありがたく頂戴いたします」
「そうしてくれ。私はお前に感謝している」

 ったくよう。

 どれだけうちの父をたらし込んだんだ。ロドリグ様は!こんな父上見たことないぞ!これじゃあ思春期の青年だ!

 やってらんねぇな。帰る。

「では、俺はここで失礼いたします、また伺いますね」
「ああ。彼によろしく伝えてくれ」
「うっはい」


「なんてことがありました。ロドリグ様」
「ふ~ん。美味かったな」
「ゲフン。人族とはなんだよ……」

 ふんと俺を見た。
 目の前に美味そうな匂いのする、自分好みの者がいれば食うだろ?と。食わねえよ。

「父上がよろしく伝えてくれって」
「おう!」

 おう?い~や~だ~この人。

「お前らが食わせてくれないからも、ある。俺は猫族に飢えている」
「俺は食われたくありません」

 俺は猫族食うの好き。マジで美味いとニヤニヤ。何しにうちにいるんだ!

「そうですか。程々にして下さいませ」
「う~ん。善処はする」

 する気はねぇな。

「話とはなんだ?」

 おっと。要件忘れるところだった。ったく。

「はい。新たに作った魚市場が手狭になったので、増設のお願いに来ました」
「あ~分かった。手配する」
「よろしくお願いいたします」

 あん。なんで立つ。そして近づく?俺の目の前に立ち見下ろしている。なに?俺は見上げた。

「あの?」
「うん」

 え~っと。フワッと抱かれた。

「なにを!」

 耳元でささやく。

「お前もいい匂いだ……猫臭くて甘いいい匂いだ」
「こわっ!離れて下さい!」

 俺は震えながら両手で押し戻した。

「なんでそんなに嫌なんだよ。王はかわいかったぞ?」
「ハァハァ……父上は番の本能が弱いんですよ!だから!あっ……言っちゃった」

 口止めされてたような気がするのに……つい。

「ふふん。そうか、だからあんな反応か」
「父上ごめん!」

 俺は小声で謝った。

「まあいい。お前がその気になるように俺も頑張るさ」
「頑張らなくていいです!」

 久しぶりに屋敷に来てもらったらこれだよ。もう!父上も結構な時間隠してたんだろう。いつからそういう関係か分からん。
 俺は忙しくて城に半年は顔出してなかったから、知るよしもなかったけど。

 俺は少しでも危険を減らすべく!

「あの!オリヴィエ様は嫌がらないのですか?」

 ああ?と不思議そうにして、ニヤついた。

「あれは元王族だぞ。嫌がる訳なかろう。あれもそこらで食ってるかもな」
「ゲッ」
「あれも無類の猫族好きだ。俺は気にしない」

 イヤだ。んふふっんふふっ……
 二人の中身が嫌い。やはり、人族は見るだけに限る。

 視線を上げるとロドリグ様のどアップ。

「味見していい?」
「嫌です」
「ケチ」
「ケチ?」

 ネロっと舐められるようなキスをされた。は?一瞬の隙に!

「うまっお前美味いな……いちごみたいな味がする」
「うっ……」

 俺は真っ青になった。側近をつけるなと言われた意味が今分かった。急に匂い強くなった。

「やめて下さい。本当に」

 恐怖で声が震える。匂いに負けそうなんだ。

「俺はどうだ?」
「ふえ?」

 ……確かに甘くてはちみつみたいな。イヤイヤ……やめろ俺。

「うまいだろ?」
「………」

 視線を外して黙った。

「無言はだ」

 全身が震える。目を強く閉じて……甘い匂いに頭が……手が頬に触れてエリオスって……うう……やだ……匂いに酔う。欲しい……もう俺落ちる………

 コンコン

「失礼しま……す?」
「セリオ……」

 俺はきっと涙目になっていたはずだ。

「何をしている!ロドリグ!離れろ!」
「チッ邪魔が入ったか」
「エリオスに何をした!」
「キス」

 ぎゃあああ!とセリオは叫び、俺を抱いているロドリグ様に殴りかかろうとした。が、片手で止められた。

「こんなもんは当たらん」
「フーフー……触るな。僕のだ。僕だけのものだ!」
「ならばお前は?」

 セリオの腕を強く引きねろって舌が!俺失神しそう。

「ふふっお前も美味いな。花の蜜のようだ」
「な、なに……を」

 何されたのかと……セリオは動揺している。

「ん~お前でもいいな」
「あ……の……」

 怒りが頂点に達したのか、ふらっと意識がなくなってセリオはバタって倒れた。

「セリオ!」

 俺はロドリグ様の腕から抜けて抱き起こし、ロドリグ様を睨んだ。

「お前らを食いたかっただけなんだ。本当にお前らいい匂いなんだよ。なのにキスひとつでこんなになるとは。はあ、番の本能がこんなにも強いとは残念だ。市場は分かった。帰る」

 呆れたような残念そうな感じで、スタスタと部屋から出て行った。俺は呆然と見送って、扉から視線が動かせなかった。

「う、う~ん」
「セリオ!」
「エリオス……ロドリグどこだ!」
「大丈夫。帰ったよ」

 あっ……そうと呟くと、みるみる目に涙が溜まり泣き出し俺にしがみついた。

「エリオス……愛してる。本当に愛してるんだ。僕だけを見て。僕だけを抱いて……うわ~ん」

 よしよしと頭を撫でて抱きしめた。

 俺もセリオを愛してる。とても愛しているんだ。キレイな人を見るのは好き。でも触りたいとも、抱かれたり抱いたりしたいとは思わない。

「俺も愛してるよ」
「うん」

 セリオはロドリグ様の香りを消すように強い匂いを出している。俺はその匂いに……

 その夜、俺は避妊の媚薬を使わずセリオを抱いた。





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