俺の伴侶はどこにいる〜ゼロから始める領地改革 家臣なしとか意味分からん〜

琴音

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二章 領地の特産品開発と拡張

11.晩餐会と商売

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 案内されて会場に到着。扉を衛兵が開けてくれた。

「うっ……」

 豪華絢爛とはこのことだ。うちの晩餐会の広間とは全く違うな。

 天井の明かりがもう違う。ガラスのシャンデリアが華やかで美しい。食器もカラトリーも装飾がもう……シクシク。貧乏を実感するな。

 セリオが俺の袖をツンツン。

「エリオス……僕食事の味分かるかな?」
「俺も不安だ」

 真顔になった。

 会場を眺めると、中央にはすでに王の番とおぼしき、なんともかわいらしい方が座っていた。その周りには多分公爵に下がったっぽいご兄弟。恐ろしいほどの美形揃いだ。
 それと先程のロドリグ様。他多数の大臣らしき貴族たち。きっと執務で城にいた人たちなのだろう。

 王は立ち上がり、

「堅苦しい事は抜きで楽しもう。公式の訪問ではないからな」
「はい」

 皆、口々に返事を返した。

「アルムニアとは付き合いは薄いが、せっかくの機会だ。皆もエリオス公爵と交流を持ってくれ。それに私の先祖は猫族だ。縁があるといえばあるだろう?」
「そうですな。レオナール様」

 そんな声がした。

 二人を見てみろ。可愛らしい猫族だ。ここの者たちは猫族好きだろと微笑んだ。
 何の話しだ?ああ?と考えていると、

「「乾杯!」」

 俺たちは内輪のノリも分からず、完全に雰囲気に飲まれた。
 華やかな人族しかいないこの会場はうちとは違い過ぎたんだ。

 初めまして私はユーリ伯爵。農業省大臣ですと、隣の貴族があいさつしてくれた。

「エリオス様、ドナシアンからそちらまで徒歩で何日くらいかかりますかね?」

 金髪のマッチョで人好きのする笑顔。なんだかかわいい感じのする人だ。

「ええっと。ひと月弱でしょうか」
「ふむ。間に宿屋など宿場町はごさいますか?」

 俺は緊張で余裕がなくなっていた。
 こんな盛大な晩餐会は二年近くしていない。結婚式ですら内輪でだったから、ここまで人は来なかったんだ。背中に嫌な汗が流れた。

「は、はい。二つ国がありますが、その国の間が広大な草原や山だけになっていまして……なにもありません。途中は野宿となります」

 あ~……と俺に話しかけてくれた大臣は考え込んだ。

「そちらの野菜が他よりも美味しいと聞いたのだが……」

 ああ、噂はここまで届いていたのか。

「ええ、我が領の野菜は味が濃く風味も強い。国内だけではなく、近隣の国にも評判はいいです」
「そうか……う~む」

 野菜はいいんだ。時を止める保存箱も大きい物があるから。だが人はなあとブツブツと彼は思案を始めた。

 そうなんだ。うちの国が発展しない原因のひとつ。どの国に行くにも遠い。
 騎獣があろうと獣人の魔力量では魔力切れを起こす距離。そうそう長くは飛べないし、ポーション代もかかる。
 俺たちもここまで来るのに、ポーションをどれだけ飲んだか分からないくらい飲んだ。
 それに騎獣に馬車一つ分なんて、俺たちは積めない。

「レオナール様。彼の国までの、国と国の間の空き地はどこかの国の所有でしたかね?」

 あれえ?何だっけって顎に指を指した。

「イヴオン。確か空き地だったよね?」
「ええ、誰の所有でもないですね。滅びたまんま放置のはずです」

 王とユーリはニヤリと悪い顔をした。

「ユーリは宿場町が欲しいの?」
「ええ、出来れば整備された街道もね」

 仕方ないなあと王はニコニコ。

 なら予算を出して提案書をとユーリに。え?これだけの話で?

「不思議そうですね?」
「え?ええ、こんな簡単なやり取りで決めていい事なんですか?」

 いいんですと彼は笑った。
 
 ドナシアンもイアサントも交易の国。ここの土地から出るものは山からの金属の鉱石、ルビーなどの宝石、温泉地とか観光地のみ。
 畑はあるが、まあ普通の野菜や肉。珍しくも特別美味しくもない普通の物。
 だが、我が国は他国にはない調理法や香辛料が輸入されている。
 素材が美味ければ、それだけで観光客が呼べるんだよと。

「ほほう」
「まずは我が領地から試して、国中に販路を設ける。きっと儲かるぞ?」

 楽しそうなユーリの笑顔と反して、俺は不安になった。我が国からの支出は難しいし、俺は論外。恥ずかしい話だかと前置きして、金銭的には我が国、領は厳しいと話した。

「んなもんはいらん。こちらが勝手に始めるから。宿屋や商売をしたい商人をよこせばよろしい」
「え?こちらからも行ってもいいのですか?」
「ああ、店を出せばいい。人が多ければそれだけ商売は多岐に渡りますからな。うはは」

 マジかぁ金がある国は違うな。
 確かに料理は特別美味い。鬼牛は別モンかと思うほどだ。ユーリは酔ってきて言葉が砕けてきた。

「俺は出来ない事は言わぬ。期待してろよ?」
「はい!」

 そんな話をユーリや他の貴族たちとしながら、晩餐会を楽しく過ごした。最初の緊張も嘘のようにな。
 なんだろうな。ここの貴族たちは腹黒いのにどこか素直な感じがした。裏表を隠さないというかな。そんなもんだから俺も緊張がなくなり、歳の近い方たちとも楽しく話し、セリオも楽しそうだった。

 そんな晩餐会も夜遅くにお開きになり、俺たちは城を後にした。


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