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二章 領地の特産品開発と拡張
12.ロドリグ様、色々怖い
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「エリオス……おはよ」
「うんセリオおはよう」
ベッドで抱き合い目が覚めた。もう国に帰る日になってしまったな。
来る前はもう少し滞在できるかと思っていたんだけど。
「仕方ないよ。起きよ?」
「うん」
軽くキスして二人でお風呂入って、騎獣服に着替えた。結局、昨日の一日しか自由時間はなくて、城下町の散策で終わった。新婚旅行とは言えない寂しいものに。
「でもね、エリオスと色んなお店みたり、食事したり楽しかったよ?お城も緊張したけど、王様も優しくて楽しかったもの」
俺の頬を撫でながら微笑む。俺の番優しいね。
「そう?ありがとね。いつかきちんと旅行に行こうな」
「うん!いつかイアサントに行ってみたい。五国全部見て回るの!よくない?」
そうだなあ。たくさん稼いで長期で行こうなと言うと、それかベトナージュ!獣人の大国だよ?楽しそうじゃない?と。
「あ~ベトナージュかぁ遠いね。イアサント経由か、大回りで船を使わないとかな」
そっか……と考えて、
「行くだけでかなり時間が掛かるぞ?」
「う~ん。ならイアサントでいい」
ごめんな。じじいになったら行けるかもだけど、そんな歳になったら行きたくなくなるかもしれない。
「そうだね。いつかの楽しみにするよ」
「ああ」
俺にふらっと抱きついた。
「エリオス大好き」
「うん、俺も好き」
こんなちょっとした時間が幸せだ。短かったけど二人の時間も持てて嬉しかったねって。
それから軽くどうぞと朝食をメイドが持ってきてくれて、もぐもぐ。日も明け切らない玄関に行くと、ライムンドがすでにいた。
「今度はゆっくりと遊びに来て下さいませ。あの感じだと、きっとあなたの領地は国一番の発展をなさるはずですから」
そうかな。過大評価じゃないのかと俺は思った、
「ああ、夢を見すぎない程度に期待してるよ」
ふふっとライムンドは微笑み俺を見据えた。
「この国を甘く見てはいけませんよ。本気になったら強いのです。魔力ばかりではありません。商売も上手いのですよ」
ドヤ顔で胸を張る。私もお手伝いしますから楽しみにしてますって嬉しそうだ。
「そうか、ならば期待しよう」
「ええ!ではまたお待ちしております」
「おう!元気でな!」
護衛騎士とセリオ、六人で城に向かった。騎獣で数分で着いたが……あはは。ロドリグ様の護衛、なんでそんなに少ないの?危なくない?
不安に思いながら彼らに近づいた。
「おはようございます。ロドリグ様」
「おう、おはよう。すぐに出るぞ」
「「はい!」」
なんも聞かないのが正解なのではと俺の本能は囁いた。だけど、ロドリグ様と護衛騎士三人とか本気で意味は分からん。
今すぐ増やせ!と喚きたいが、彼を怖く感じる。俺と対極にいるタイプに感じるんだ。
「出発!」
彼の掛け声でみな浮き上がり、俺の領地に向かった。
一時間もすると空は明るくなり太陽が眩しい。隣のロドリグ様は……病的に美しく、風よけのゴーグルから覗く目が凛々しい。
「エリオス!マズいかも!」
「セリオ?」
スーッとセリオが近づいて来た。
ものすごいスピードに着いて行くのが精一杯で、セリオは魔力切れを起こしそうだと言う。
俺はロドリグ様に並走して、
「ロドリグ様!セリオがもう無理です!」
俺をチラッと見ると、
「あ?あ~ほれ」
スーッと減速して腰からポーションを出して、
「飲ませろ」
え?降りないの?……反論は止めよう。目が怖い。
「はい」
俺はセリオに近づき、飲めと渡した。セリオはフラフラしながら受け取り、グビグビ。
「がっはあ!なにこれ?」
クスクスとロドリグ様が笑った。
「効いただろ?」
「ええ!エリオスすごいの!魔力も体力も普段よりある気がする!ありがとうございます!」
フン、気にするな。獣人は魔力が少ないのだろう?お前も飲めと渡されてグビグビ。ぐはっ身体が熱いぞ。俺の騎士にもくれて、
「グワッ!」
「ウグッ!」
変な声を出した。まあ出るよね。
「更に飛ばす!ついてこい!」
「「はい!」」
騎士たちも本気のスピードに付いて来ている。
ぐああ!耳元が風切り音でゴーゴーいっててなんも聞こえん!前しか見えん!人族はこんな速さで飛ぶのか!いやあああ!
周りなどなんも見えん!風がうるさい!やだああ!セリオは!?
はあ、なんとかついて来てるな。ポーション飲んだけどそれでもキツいな。ハァハァと必死に食らいついていると、
「休むぞ!」
「「はい!」」
減速してスーッと下降して草原に降りた。
ゼェゼェ……死ぬ。俺たちの騎士もゼェゼェ……死にかけちゃんだね。
それなのにあちらの騎士は余裕。息も切れておらず、ロドリグ様も平然と水筒の水を飲んでいる……化け物か?
「ポーション効いたろ?」
「はい。うちにはない物ですね」
ふふっ。俺の試作品だとニヤッとした。
「え?試作品?」
「おう!今試験中でな。騎士とかに飲ませて試してるんだ。獣人にも効くと……ふむ」
ゲッ!い~や~だ~この人俺たちで実験してるよぉ。
「ふん、心配するな。それにここらへんで効果が切れるかと予想している」
「へえ……うおっ!」
膝がガクッと折れた。
おおおぅ……膝が笑う!というか全身が震える!
「やはりな。ほれ、もう一本飲め」
「「はい……」」
膝をついて震えている俺たちは受け取り、でもと眺めた。
俺は後ろ姿のロドリグ様に目をやると、腰に付けた革バッグに山程のポーションが見える。
あちらの騎士も自分の腰のを取り出して飲んでるか……ふ~ん。まあ。グビグビ……かはあ!つえぇ薬だな、おい!
「お前の屋敷まで後どのくらいだ?」
飄々とあたりを眺めながら俺に聞く。あ~このあたりなら。
「我らの速さで二時間強です」
「ふ~ん。もう一本飲め」
「え?」
俺の騎士には二本、俺たちは一本どうぞと、あちらの騎士が瓶をくれた。
おお……こんなに飲んで大丈夫なのか?手元の瓶を睨んでう~ん。知ってる色とよく見ると違い赤が濃い。
横目にロドリグ様が見え……うっ。睨まれてるよ!俺は焦って小声で飲め!とセリオたちに声を掛けた。
騎士たちも目が泳いでいたが、うんと全員で頷きゴクゴク。
ぐわあ!身体がマジで熱い!汗が吹き出し、腕の被毛がビチョビチョなのか、袖が濡れてきた。声無き叫び声を上げ、もがきながらハァハァ……
うつろな目のセリオが、
「エリオス、汗だくだ」
「お前もな」
全員風呂上がりか、雨に濡れたような有り様で顎からも汗が滴る。
横を見るとあちらの騎士も飲んでいるが平然としていた。種族の違いか!
「ふ~ん。獣人は魔力を無理やり引き上げる事になるから、多少負担があるようだ」
なに?
「負担?」
彼は無表情で、
「ああ、我ら人族は元々魔力が百から三百万くらいだから補充にしかならんが、お前らは平均どのくらいだ?」
あ~……俺が二十万くらいで、セリオは十万ない。騎士は十万ちょっとですと答えた。
「ふむ、倍にはなってるはずだ。ほれ手を出せ」
まあと、手を差し出すとポンと渡された。
「計測魔石……」
「測れ」
もう反抗する気持ちは捨てる。
グッと握り込んで手を広げた。おお!四十万ちょっと?全員測ると倍近くになっていた、
「それなら俺たちに付いて来れる。頑張れ」
「「はい」」
「行くぞ!」
彼の掛け声で先程よりも更にスピードがあああ!いやああ!!こわいぃぃ~
一時間で草原の宿屋町が見えた。嘘だろ?
「減速!」
「「はっ!」」
全員普通の速さでふよふよ……
「この先か?」
「ハァハァ……はい」
少しスピードを上げて屋敷の庭に到着した。
なんの拷問だよ!何なんだ人族は!マジで化け物だよお前らは!心の中で罵詈雑言。
はあ……辛かった。あのスピードは無理。
よろよろと騎獣から降りていると、セリオはいきなり騎獣が消えて落ちた。俺は焦って駆け寄り抱き起こした。
「セリオ!!」
「ハァハァ……大丈夫だよ……ハァハァ……」
「ごめんね……セリオ……無理させたな」
「ううん。気にしないで」
そう言うと立ち上がろうとしたが、膝が笑って立てない。
「俺の肩に腕回せ」
「うん……ごめん」
「いいよ。ほら頑張れ」
なんとか立ち上がり屋敷の方を見ると、ディエゴたちは俺たちを呆然と見ていた。
こちらの者はヘロヘロで、あちらの者は……余裕綽々。
そんな様子に口はポカンで、目は点。
言葉がなくなっているようだった。
「うんセリオおはよう」
ベッドで抱き合い目が覚めた。もう国に帰る日になってしまったな。
来る前はもう少し滞在できるかと思っていたんだけど。
「仕方ないよ。起きよ?」
「うん」
軽くキスして二人でお風呂入って、騎獣服に着替えた。結局、昨日の一日しか自由時間はなくて、城下町の散策で終わった。新婚旅行とは言えない寂しいものに。
「でもね、エリオスと色んなお店みたり、食事したり楽しかったよ?お城も緊張したけど、王様も優しくて楽しかったもの」
俺の頬を撫でながら微笑む。俺の番優しいね。
「そう?ありがとね。いつかきちんと旅行に行こうな」
「うん!いつかイアサントに行ってみたい。五国全部見て回るの!よくない?」
そうだなあ。たくさん稼いで長期で行こうなと言うと、それかベトナージュ!獣人の大国だよ?楽しそうじゃない?と。
「あ~ベトナージュかぁ遠いね。イアサント経由か、大回りで船を使わないとかな」
そっか……と考えて、
「行くだけでかなり時間が掛かるぞ?」
「う~ん。ならイアサントでいい」
ごめんな。じじいになったら行けるかもだけど、そんな歳になったら行きたくなくなるかもしれない。
「そうだね。いつかの楽しみにするよ」
「ああ」
俺にふらっと抱きついた。
「エリオス大好き」
「うん、俺も好き」
こんなちょっとした時間が幸せだ。短かったけど二人の時間も持てて嬉しかったねって。
それから軽くどうぞと朝食をメイドが持ってきてくれて、もぐもぐ。日も明け切らない玄関に行くと、ライムンドがすでにいた。
「今度はゆっくりと遊びに来て下さいませ。あの感じだと、きっとあなたの領地は国一番の発展をなさるはずですから」
そうかな。過大評価じゃないのかと俺は思った、
「ああ、夢を見すぎない程度に期待してるよ」
ふふっとライムンドは微笑み俺を見据えた。
「この国を甘く見てはいけませんよ。本気になったら強いのです。魔力ばかりではありません。商売も上手いのですよ」
ドヤ顔で胸を張る。私もお手伝いしますから楽しみにしてますって嬉しそうだ。
「そうか、ならば期待しよう」
「ええ!ではまたお待ちしております」
「おう!元気でな!」
護衛騎士とセリオ、六人で城に向かった。騎獣で数分で着いたが……あはは。ロドリグ様の護衛、なんでそんなに少ないの?危なくない?
不安に思いながら彼らに近づいた。
「おはようございます。ロドリグ様」
「おう、おはよう。すぐに出るぞ」
「「はい!」」
なんも聞かないのが正解なのではと俺の本能は囁いた。だけど、ロドリグ様と護衛騎士三人とか本気で意味は分からん。
今すぐ増やせ!と喚きたいが、彼を怖く感じる。俺と対極にいるタイプに感じるんだ。
「出発!」
彼の掛け声でみな浮き上がり、俺の領地に向かった。
一時間もすると空は明るくなり太陽が眩しい。隣のロドリグ様は……病的に美しく、風よけのゴーグルから覗く目が凛々しい。
「エリオス!マズいかも!」
「セリオ?」
スーッとセリオが近づいて来た。
ものすごいスピードに着いて行くのが精一杯で、セリオは魔力切れを起こしそうだと言う。
俺はロドリグ様に並走して、
「ロドリグ様!セリオがもう無理です!」
俺をチラッと見ると、
「あ?あ~ほれ」
スーッと減速して腰からポーションを出して、
「飲ませろ」
え?降りないの?……反論は止めよう。目が怖い。
「はい」
俺はセリオに近づき、飲めと渡した。セリオはフラフラしながら受け取り、グビグビ。
「がっはあ!なにこれ?」
クスクスとロドリグ様が笑った。
「効いただろ?」
「ええ!エリオスすごいの!魔力も体力も普段よりある気がする!ありがとうございます!」
フン、気にするな。獣人は魔力が少ないのだろう?お前も飲めと渡されてグビグビ。ぐはっ身体が熱いぞ。俺の騎士にもくれて、
「グワッ!」
「ウグッ!」
変な声を出した。まあ出るよね。
「更に飛ばす!ついてこい!」
「「はい!」」
騎士たちも本気のスピードに付いて来ている。
ぐああ!耳元が風切り音でゴーゴーいっててなんも聞こえん!前しか見えん!人族はこんな速さで飛ぶのか!いやあああ!
周りなどなんも見えん!風がうるさい!やだああ!セリオは!?
はあ、なんとかついて来てるな。ポーション飲んだけどそれでもキツいな。ハァハァと必死に食らいついていると、
「休むぞ!」
「「はい!」」
減速してスーッと下降して草原に降りた。
ゼェゼェ……死ぬ。俺たちの騎士もゼェゼェ……死にかけちゃんだね。
それなのにあちらの騎士は余裕。息も切れておらず、ロドリグ様も平然と水筒の水を飲んでいる……化け物か?
「ポーション効いたろ?」
「はい。うちにはない物ですね」
ふふっ。俺の試作品だとニヤッとした。
「え?試作品?」
「おう!今試験中でな。騎士とかに飲ませて試してるんだ。獣人にも効くと……ふむ」
ゲッ!い~や~だ~この人俺たちで実験してるよぉ。
「ふん、心配するな。それにここらへんで効果が切れるかと予想している」
「へえ……うおっ!」
膝がガクッと折れた。
おおおぅ……膝が笑う!というか全身が震える!
「やはりな。ほれ、もう一本飲め」
「「はい……」」
膝をついて震えている俺たちは受け取り、でもと眺めた。
俺は後ろ姿のロドリグ様に目をやると、腰に付けた革バッグに山程のポーションが見える。
あちらの騎士も自分の腰のを取り出して飲んでるか……ふ~ん。まあ。グビグビ……かはあ!つえぇ薬だな、おい!
「お前の屋敷まで後どのくらいだ?」
飄々とあたりを眺めながら俺に聞く。あ~このあたりなら。
「我らの速さで二時間強です」
「ふ~ん。もう一本飲め」
「え?」
俺の騎士には二本、俺たちは一本どうぞと、あちらの騎士が瓶をくれた。
おお……こんなに飲んで大丈夫なのか?手元の瓶を睨んでう~ん。知ってる色とよく見ると違い赤が濃い。
横目にロドリグ様が見え……うっ。睨まれてるよ!俺は焦って小声で飲め!とセリオたちに声を掛けた。
騎士たちも目が泳いでいたが、うんと全員で頷きゴクゴク。
ぐわあ!身体がマジで熱い!汗が吹き出し、腕の被毛がビチョビチョなのか、袖が濡れてきた。声無き叫び声を上げ、もがきながらハァハァ……
うつろな目のセリオが、
「エリオス、汗だくだ」
「お前もな」
全員風呂上がりか、雨に濡れたような有り様で顎からも汗が滴る。
横を見るとあちらの騎士も飲んでいるが平然としていた。種族の違いか!
「ふ~ん。獣人は魔力を無理やり引き上げる事になるから、多少負担があるようだ」
なに?
「負担?」
彼は無表情で、
「ああ、我ら人族は元々魔力が百から三百万くらいだから補充にしかならんが、お前らは平均どのくらいだ?」
あ~……俺が二十万くらいで、セリオは十万ない。騎士は十万ちょっとですと答えた。
「ふむ、倍にはなってるはずだ。ほれ手を出せ」
まあと、手を差し出すとポンと渡された。
「計測魔石……」
「測れ」
もう反抗する気持ちは捨てる。
グッと握り込んで手を広げた。おお!四十万ちょっと?全員測ると倍近くになっていた、
「それなら俺たちに付いて来れる。頑張れ」
「「はい」」
「行くぞ!」
彼の掛け声で先程よりも更にスピードがあああ!いやああ!!こわいぃぃ~
一時間で草原の宿屋町が見えた。嘘だろ?
「減速!」
「「はっ!」」
全員普通の速さでふよふよ……
「この先か?」
「ハァハァ……はい」
少しスピードを上げて屋敷の庭に到着した。
なんの拷問だよ!何なんだ人族は!マジで化け物だよお前らは!心の中で罵詈雑言。
はあ……辛かった。あのスピードは無理。
よろよろと騎獣から降りていると、セリオはいきなり騎獣が消えて落ちた。俺は焦って駆け寄り抱き起こした。
「セリオ!!」
「ハァハァ……大丈夫だよ……ハァハァ……」
「ごめんね……セリオ……無理させたな」
「ううん。気にしないで」
そう言うと立ち上がろうとしたが、膝が笑って立てない。
「俺の肩に腕回せ」
「うん……ごめん」
「いいよ。ほら頑張れ」
なんとか立ち上がり屋敷の方を見ると、ディエゴたちは俺たちを呆然と見ていた。
こちらの者はヘロヘロで、あちらの者は……余裕綽々。
そんな様子に口はポカンで、目は点。
言葉がなくなっているようだった。
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