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二章 領地の特産品開発と拡張
6.父上にお願い
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城に着くと、クレメンテに父上に面会を願い出た。
「改めて、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとう」
孫でも見るみたいに微笑んで、
「本当にようございました。あなたは番を持ちたくないのかと、不安に思っていましたから」
廊下を歩きながらクレメンテは、そんな事を言った。
「忙しいのに来てくれてありがとう」
「ふふっあなたの晴れ姿を見られて、嬉しゅうございました」
王が城を離れる時は、クレメンテは付いて来ない事が多いんだ。そう、父上の仕事を丸かぶりするからな。だから珍しい事なんだ。
「セリオ様も良かったですね」
「ええ、ありがとうございます」
様付け?
「そりゃあ、あなたの伴侶ですもの。もう同僚ではありません。公爵の伴侶とは同じ爵位です。それにセリオ様とは、元々同じ爵位の侯爵家ですしね」
「そうだったな」
二人は二家あるうちの別々の侯爵家の出身だ。なんて言っているうちに、父上の執務室に到着。
「フェリシアノ様。エリオス様がいらっしゃいました」
「入れ」
「失礼します」
うん、相変わらず美しいな。年取った美しさが堪らん。
「急な面会を受けて下さり、ありがとう存じます」
「堅苦しいあいさつはいらぬ。ドナシアンと面会したいということだな?」
「はい」
父上に、城下町の壁の向こうに作った安めの宿屋の街に、輩と呼んで差し支えない冒険者がたむろしている。ランクもかなり上の者たちであろう姿だ。サントスに相談した所、フェンリル狙いではないのかと疑っていたと話した。
「うむ……お前の領地にそぐわない冒険者か。疑いは濃厚……か」
「父上もそうお思いですか?」
ああ、それしかないだろうと。
「なんもないお前の領地に、武装をした冒険者なのだろう。それしか思いつかん」
やはり……俺も薄々思ってはいたんだ。
元々このあたりには、危険な魔物は生息していなくて、高ランク冒険者には用はない地域。魔力の源の「龍脈」が、国土の上から逸れてて、湧きようがない。安全で快適だが、デメリットとして、人々の魔力が少なくなる。
父上は俺の説明に、
「人族が混じっているなら危険だな。ふん、ひと月後に面会出来るようにしてやる」
「ありがとうございます」
そう言うと、側近として横に立たなくていい。エリオスの隣に座れとセリオを促した。
「でも、本日は仕事で参りましたので」
「いいから座れ」
「はい」
身分の上の者に何度も反論など出来ない。セリオは大人しくすわった。
それに合わせ、父上の側仕えが、お茶とお菓子を用意して下がる。
「お前はもうエリオスの伴侶なんだ。なあ、エリオス。お前は新しい側仕えを用意しろ」
とうとう言われたか。う~ん。
「はあ……それなんですが」
セリオを見ると断われと目が言っている。
「彼が俺を他の人に触らせたくないと、拒否しておりまして……その……」
え?っと父上は驚き、
「セリオ、お前にも側仕えはいただろう?」
「はい。身の回りを手伝ってくれるメイドはおりました」
「ならば同じであろう?」
セリオは父上をキッと睨み、
「今、私専属のメイドはおりません。二人のメイドがふたりいるのみです。……わがままなのですが、エリオスは私がお世話したいのです」
はあそうと、父上。そんなにもエリオスが好きか。誰かが少しでも触るのさえ嫌なのか。
へぇ……とセリオを、不思議な生き物を見るような目つきで眺める。
「エリオスが羨ましい。そんなに好きになってもらえるなんてな」
「はい。エリオスは私の全てなんです。ですからどうか」
まあよい。本気で手が回らなくなるまではそれでよかろう。ただし!エリオスに手を掛け過ぎて、執務が疎かになるようなら、新たな者をと父上は強く言った。
「領主とは一つの国みたいなもんなんだ。特に大臣なりの職を持たない公爵領はな。だから王族としての体裁が取れない事態は避けろ。それは理解しているか?」
「はい」
「ならばよい。無理が来るまでは楽しめ」
ホッとした顔をして、
「ありがとう存じます」
「まあいいが。エリオスが本気で羨ましい。やはり愛し合っての番は違うな」
父上の目は遠くを見ているよう。ごめん……父上。
「私もセリオを愛しております。ですから多少のわがままは聞いてやりたいのです」
そうだろうなと力なく微笑んだ。
「歴代の伴侶が嫌いだったわけではないんだ。それなりにみんな好きだったよ。だけどこんなにも、求め求められる関係にはならなかったんだ。私たちはな」
「そうですか……」
知ってるよ。父上は母上たちを見る目は、どこか冷めていたから。
ああ、そうか。だから俺は番を自分で探したかったんだ。父上のどこか寂しそうな感じが嫌だったんだ。
「今日は泊まって行くのか?」
「いえ、この後すぐに帰ります。フェンリルの対策を、なけなしの金でやらねばなりませんから」
ふむと父上。
「なら短期間だが近衛を貸してやる。何人いる?」
また軽く言うし。
「え?給金を払えませんが?」
「いらん。私がなんとかするというか、出張扱いだな」
それでいいの?
「いいさ、その代わりお前は城に顔を出せ」
ホントにそれでいいの?まあ、いいなら甘えるか。
「はい。ありがとう存じます。出来れば十人ほど。そして騎士寮が手狭ですので、増設に魔術士をお借りしたいです」
「ああ、分かった。連れて行くがいい」
それから父上の愚痴をたんまり聞いてお暇した。
「あはは、フェリシアノ様はストレス大きいですね」
「だろう?俺毎回聞いてるんだよ」
「でも、言えるのはエリオスくらいなんでしょう」
廊下を歩きながら話していた。
「そうだろうが、俺は父上の伴侶じゃないんだ」
「うん……伴侶があまり好きではないから、仕方ないんじゃないですか。普通はうなじを噛めば愛しさは増します。ですが、それが少なかったんですから」
確かにな。俺はセリオのうなじを噛んだ時の幸せは忘れられない。愛しさでおかしくなるくらいに求めたんだから。
「愛しているよ」
「ふえ?突然なにを!」
「こっち向け」
立ち止まらせて、口にチュッ
「愛してる」
「あ……はあ……僕も愛してます……やだ……エリオス」
真っ赤になって頬に手を当てプルプル。か~わいい。
「ゴボンッ城ではおやめ下さい。王様が可愛そうです」
「へい」
後ろから付いて来ていたクレメンテに叱られた。お父上はこんな幸せはなかったのですから、見せびらかさないように!と。
「王様は大変だな」
「ええ、あなたも他のご兄弟も、お父上が辛かったから好きな相手をと、特段の反対もされずに伴侶を娶りました。まあ、あなたの場合同じになる可能性もありましたがね」
「あはは。そうだな」
セリオの愛情のお陰だ。知らないうちに好きになっていたんだろう。気がついたらキレイでかわいいって思ってたからなあ。だが、領地に行ってから気がついたけど。
「全く鈍感で……」
クレメンテの呆れた声。
「うるせえよ。あんまり近くにい過ぎて当たり前になって……その……甘えるのも当たり前になってて……好きって気が付かなくて……そのな」
クスクスとセリオは笑う。
「いいの。今は僕を見てくれるから」
「ああ、隅々まで見てるさ。夜もな」
ブワッと真っ赤になった。
「や、やめて……夜の話は!」
「あ~んなにかわいいのに?」
「うっそれはエリオスの心にしまっておいて!」
いいですなあ、若いってとクレメンテは、がははと盛大に笑う頃には正門の庭についた。
「また、フェリシアノ様に会いに来て下さいませ。あなたが来る日は仕事であろうと嬉しそうなんです」
「分かっている。今度はゆっくり遊びに来るからさ」
「ええ、お待ちしております」
俺は真っ白な獅子の騎獣を出して、セリオを乗せると彼の後ろに跨り、
「クレメンテまたな!」
「はい!お気をつけて!」
深々と頭を下げるクレメンテに手を振り、護衛の騎士たちと屋敷に向かった。
「改めて、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとう」
孫でも見るみたいに微笑んで、
「本当にようございました。あなたは番を持ちたくないのかと、不安に思っていましたから」
廊下を歩きながらクレメンテは、そんな事を言った。
「忙しいのに来てくれてありがとう」
「ふふっあなたの晴れ姿を見られて、嬉しゅうございました」
王が城を離れる時は、クレメンテは付いて来ない事が多いんだ。そう、父上の仕事を丸かぶりするからな。だから珍しい事なんだ。
「セリオ様も良かったですね」
「ええ、ありがとうございます」
様付け?
「そりゃあ、あなたの伴侶ですもの。もう同僚ではありません。公爵の伴侶とは同じ爵位です。それにセリオ様とは、元々同じ爵位の侯爵家ですしね」
「そうだったな」
二人は二家あるうちの別々の侯爵家の出身だ。なんて言っているうちに、父上の執務室に到着。
「フェリシアノ様。エリオス様がいらっしゃいました」
「入れ」
「失礼します」
うん、相変わらず美しいな。年取った美しさが堪らん。
「急な面会を受けて下さり、ありがとう存じます」
「堅苦しいあいさつはいらぬ。ドナシアンと面会したいということだな?」
「はい」
父上に、城下町の壁の向こうに作った安めの宿屋の街に、輩と呼んで差し支えない冒険者がたむろしている。ランクもかなり上の者たちであろう姿だ。サントスに相談した所、フェンリル狙いではないのかと疑っていたと話した。
「うむ……お前の領地にそぐわない冒険者か。疑いは濃厚……か」
「父上もそうお思いですか?」
ああ、それしかないだろうと。
「なんもないお前の領地に、武装をした冒険者なのだろう。それしか思いつかん」
やはり……俺も薄々思ってはいたんだ。
元々このあたりには、危険な魔物は生息していなくて、高ランク冒険者には用はない地域。魔力の源の「龍脈」が、国土の上から逸れてて、湧きようがない。安全で快適だが、デメリットとして、人々の魔力が少なくなる。
父上は俺の説明に、
「人族が混じっているなら危険だな。ふん、ひと月後に面会出来るようにしてやる」
「ありがとうございます」
そう言うと、側近として横に立たなくていい。エリオスの隣に座れとセリオを促した。
「でも、本日は仕事で参りましたので」
「いいから座れ」
「はい」
身分の上の者に何度も反論など出来ない。セリオは大人しくすわった。
それに合わせ、父上の側仕えが、お茶とお菓子を用意して下がる。
「お前はもうエリオスの伴侶なんだ。なあ、エリオス。お前は新しい側仕えを用意しろ」
とうとう言われたか。う~ん。
「はあ……それなんですが」
セリオを見ると断われと目が言っている。
「彼が俺を他の人に触らせたくないと、拒否しておりまして……その……」
え?っと父上は驚き、
「セリオ、お前にも側仕えはいただろう?」
「はい。身の回りを手伝ってくれるメイドはおりました」
「ならば同じであろう?」
セリオは父上をキッと睨み、
「今、私専属のメイドはおりません。二人のメイドがふたりいるのみです。……わがままなのですが、エリオスは私がお世話したいのです」
はあそうと、父上。そんなにもエリオスが好きか。誰かが少しでも触るのさえ嫌なのか。
へぇ……とセリオを、不思議な生き物を見るような目つきで眺める。
「エリオスが羨ましい。そんなに好きになってもらえるなんてな」
「はい。エリオスは私の全てなんです。ですからどうか」
まあよい。本気で手が回らなくなるまではそれでよかろう。ただし!エリオスに手を掛け過ぎて、執務が疎かになるようなら、新たな者をと父上は強く言った。
「領主とは一つの国みたいなもんなんだ。特に大臣なりの職を持たない公爵領はな。だから王族としての体裁が取れない事態は避けろ。それは理解しているか?」
「はい」
「ならばよい。無理が来るまでは楽しめ」
ホッとした顔をして、
「ありがとう存じます」
「まあいいが。エリオスが本気で羨ましい。やはり愛し合っての番は違うな」
父上の目は遠くを見ているよう。ごめん……父上。
「私もセリオを愛しております。ですから多少のわがままは聞いてやりたいのです」
そうだろうなと力なく微笑んだ。
「歴代の伴侶が嫌いだったわけではないんだ。それなりにみんな好きだったよ。だけどこんなにも、求め求められる関係にはならなかったんだ。私たちはな」
「そうですか……」
知ってるよ。父上は母上たちを見る目は、どこか冷めていたから。
ああ、そうか。だから俺は番を自分で探したかったんだ。父上のどこか寂しそうな感じが嫌だったんだ。
「今日は泊まって行くのか?」
「いえ、この後すぐに帰ります。フェンリルの対策を、なけなしの金でやらねばなりませんから」
ふむと父上。
「なら短期間だが近衛を貸してやる。何人いる?」
また軽く言うし。
「え?給金を払えませんが?」
「いらん。私がなんとかするというか、出張扱いだな」
それでいいの?
「いいさ、その代わりお前は城に顔を出せ」
ホントにそれでいいの?まあ、いいなら甘えるか。
「はい。ありがとう存じます。出来れば十人ほど。そして騎士寮が手狭ですので、増設に魔術士をお借りしたいです」
「ああ、分かった。連れて行くがいい」
それから父上の愚痴をたんまり聞いてお暇した。
「あはは、フェリシアノ様はストレス大きいですね」
「だろう?俺毎回聞いてるんだよ」
「でも、言えるのはエリオスくらいなんでしょう」
廊下を歩きながら話していた。
「そうだろうが、俺は父上の伴侶じゃないんだ」
「うん……伴侶があまり好きではないから、仕方ないんじゃないですか。普通はうなじを噛めば愛しさは増します。ですが、それが少なかったんですから」
確かにな。俺はセリオのうなじを噛んだ時の幸せは忘れられない。愛しさでおかしくなるくらいに求めたんだから。
「愛しているよ」
「ふえ?突然なにを!」
「こっち向け」
立ち止まらせて、口にチュッ
「愛してる」
「あ……はあ……僕も愛してます……やだ……エリオス」
真っ赤になって頬に手を当てプルプル。か~わいい。
「ゴボンッ城ではおやめ下さい。王様が可愛そうです」
「へい」
後ろから付いて来ていたクレメンテに叱られた。お父上はこんな幸せはなかったのですから、見せびらかさないように!と。
「王様は大変だな」
「ええ、あなたも他のご兄弟も、お父上が辛かったから好きな相手をと、特段の反対もされずに伴侶を娶りました。まあ、あなたの場合同じになる可能性もありましたがね」
「あはは。そうだな」
セリオの愛情のお陰だ。知らないうちに好きになっていたんだろう。気がついたらキレイでかわいいって思ってたからなあ。だが、領地に行ってから気がついたけど。
「全く鈍感で……」
クレメンテの呆れた声。
「うるせえよ。あんまり近くにい過ぎて当たり前になって……その……甘えるのも当たり前になってて……好きって気が付かなくて……そのな」
クスクスとセリオは笑う。
「いいの。今は僕を見てくれるから」
「ああ、隅々まで見てるさ。夜もな」
ブワッと真っ赤になった。
「や、やめて……夜の話は!」
「あ~んなにかわいいのに?」
「うっそれはエリオスの心にしまっておいて!」
いいですなあ、若いってとクレメンテは、がははと盛大に笑う頃には正門の庭についた。
「また、フェリシアノ様に会いに来て下さいませ。あなたが来る日は仕事であろうと嬉しそうなんです」
「分かっている。今度はゆっくり遊びに来るからさ」
「ええ、お待ちしております」
俺は真っ白な獅子の騎獣を出して、セリオを乗せると彼の後ろに跨り、
「クレメンテまたな!」
「はい!お気をつけて!」
深々と頭を下げるクレメンテに手を振り、護衛の騎士たちと屋敷に向かった。
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