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一章 多分見放された
7.伝説発見!
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翌日セリオと騎士三人で山の方に探検に来た。フィトも連れてきたかったんだが、あいつ魔力なかったんだよ。よく働くし、みんなに馴染んでてさ、元からの家臣みたいな気分になってたんだ。あいつはここで捕まえて俺が貴族にしたんだった。
「あはは、ですがエリオス様がそう思うのも仕方ありませんよ。私もそんな気がしてましたから」
「だよなあ、あれの口の上手さと周りに馴染む速さは半端ねぇもんな」
「ええ、付き合いのない貴族だったのかと錯覚しますね」
騎士たちも荒れ地の時に会った者とは思えませんね。身のこなしも早くに身に着け、生まれつきの貴族のようですなと。ドナシアンの庶民ってみんなああなんかな?
「多分違います。あれが優秀なだけですよ」
「だよな」
眼下に畑が見え始め、農夫がエリオス様だと手を振ってくれる。ふふっ彼らも野菜が高値で売れるから感謝してくれてんだ。ここの土地はマジで野菜がよく育ち、更に美味い。最近城下でも話題になり、移住者が増えてきているんだ。そう!農地が半分埋まったんだ!俺の功績ではなく、不安の中来てくれた初期の者のお陰だけどな。俺を信じた最初の十軒には頭が上がらない。マジ感謝だ。
その調子で街にもと思ったんだが、世の中そう甘くない。宿屋は二軒のままだ。だからたまに俺が街に行って、魔力で掃除をしている。お花とか花壇はフィトたちが手入れしてくれていた。むふふ、貴族のお手入れの街として売り出せないかな。よくね?……独り言が聞こえたのか顔をしかめたセリオがスーッと俺の騎獣近づき、
「バカ言わないで下さい。今は人がいなくて暇だから出来るだけでしょう。それなりになったら無理ですよ」
「分かってるよ。お前はなんでそんなに俺に冷たいんだか」
そうなんだよな。なんだろうなここ来てからセリオの言葉が刺さる。なんでも「うん」って言って欲しくなる。はあ……甘えてんのかな。
「そんな事はありません。いつも通りですよ」
「そうかよ。俺はさ、お前にだけは肯定して欲しくてな」
え?っと驚き動きが止まった。は?
「どうした?」
「ひゃう!なんでもありません!」
スーッと離れていった。なんだろ?たまにセリオがおかしい。ん~?何だろな、俺なんかしたのかな?分からんが。とか、ぼんやり考えながら飛んでると、着きますよと騎士たち。山に登る獣道らしきあたりに降り立った。
「うん、山」
「はい、何の変哲もないこの国の山です」
よし!歩こう!と騎獣を消して歩き出した。低山だから険しさはなく、冒険者が入っているのか踏み固めた道が出来ている。あたりを見回せば薬草を採った跡もある。
ふ~ん。いい薬草が取れると魔法省の大臣には聞いていたけど、本当に人が来てるんだな。俺は枯れ草を踏み鳴らし……ゼィゼィ……ハァハァ……山キツい。
「セリオ、キツいよ」
「私も……ハァハァ……文官に山登りは……ハァハァ……休みましょう」
もう?って顔の騎士は無視して大きな倒木に座り、みずぅ水筒……んくんく……ぷはあ、うまっ!
「はあ……鍛錬もしてたんだが、身体の使い方が違うのかな」
「ええ……私はもう……ぐったりです」
高々一時間しか歩いてないのにな。上りだからかな。
「セリオちゃんと飲めよ」
「はい」
あはは、本当に疲れた顔してるな。俺は休憩中なんかないかと森の中を見ていた。木の上を渡るリスや鳥はみえる。たまにスライム。昔父上のお供で狩り行った山と変らない景色だ。何もねぇ。
「さてと、行くぞセリオ」
「え?もう?」
「もう少し頑張ってくれよ」
肩をポンと叩くと仕方ないと立ち上がった。それから山頂に向かい、半刻ほどで到着!木々の隙間から平地が見えた。
「おお!俺の街が見えるな!」
「あ~疲れた。でもここから見れば栄えているふうに見えますね」
そうだな、遠目には街があるとしか分からない。白い石が眩しい俺設計の俺の街だ。手前は畑が広がりいい眺めだよ、本当にな。
「なあ、こうやって見るといい領地だと思わないか?セリオ」
「ええ、元々領地としてあった場所ですからさすがの眺めです」
空からとは違うこの眺めはいい。
「美しい眺めですが、何もなかったですね」
「セリオ……現実に引き戻さないでくれ」
「はい……」
そう、ただの山登りで終わった。どーすんだ本当に何にもない。ふん、そもそも論だが、他の領地も実はこんなもんなんだよ。直轄地はそりゃあ国が手を入れてるから賑やかだよ。繁華街もバンバン作ってさ。温泉がある領地もな。ふっ当たり前だ。
ん?ガサガサと藪から音が?
「なんか音がする!」
俺の声に騎士はサッと剣を構えた。大型の獣や魔獣だとやばいな。
「セリオ、俺の後ろに付け」
「はい!」
文官にこの状況は怖かろう。俺の腰に掴まる手が震えている。俺もゆっくり剣を構え、片手でセリオの手を握った。
「大丈夫だ、落ち着け」
「はい……」
藪のガサガサは近づいてくる。ガサガサ……ガサガサ……ズホッと何かが飛び出て来て、俺は剣を振り上げた。え?フェンリル?珍しい犬型の魔獣だ!
「やめろ!攻撃するな!」
「はっ!」
真っ白な子犬が数匹出て来た。ふかふかな被毛で目がクリクリで……かわいい。が!この大型犬サイズで子犬とか。やべぇ……
「親が近くにいるはずだ。油断するな」
「はっ!」
俺たちは目の前でキャンキャンと遊んでいるフェンリルの子供を見つめていた。親が近づく音を見逃さないと、剣を構え耳を澄ませた。
ゴウッと風が!後ろか!一斉に振り返ると見事な、俺が縦に二つ分はあるだろう体高の親が子供の側に降り立った。子供を見つけて舐めながら目は俺たちを追っている。これ本物のフェンリルだろ?
「何者だ」
ふえ?頭に直接響いだぞ!念話か!
「俺はこの麓からこの辺りまでを領地とするエリオス公爵だ。最近越してた」
フンと言わんばかりの目をこちらに向けた。
「お前はパルメロの子か」
おお……この念話キツいな!頭が締め付けられるようだ。
「いや、俺は元王族、今の王の第二王子で……ぐうっ王位継承にも関係ないから貴族に降りてここにいる」
「ほほう……また街を作ったのはお前か」
おえぇぇ……めまいがしてきた。気持ち悪い……が、フェンリルから目を逸らす訳にはいかない。
「そうだ……領地に人を呼び寄せる手段がなくて、山になにかないかと……おえぇぇ……」
もう無理……ぎもぢわるい……
「ほう、お前念話に慣れていないな?」
「はい……初めてで……おろろろ……」
マジで吐いた。
「エリオス様!」
あまりの気持ち悪さに膝を付いた俺の背中を、セリオは擦ってくれた。この声、みんなには聞こえていないのか。
「そうか……もう魔獣と話す者はいないのか」
「ゲホッ……魔獣が喋るなんて、ゲホゲホッ初めて知っ……た……」
私は長い年月を生きている。そのうち人の言葉を覚えて、一部の魔法使いと話したりもした。そうか、魔獣を使役する者はおらぬかとなぜか残念そうに聞こえた。
「ハァハァ、お前はなぜこの山に?」
「ああ、ここは人がいなくて快適でな、子育てにここに来た。普段は人の来ぬ、火山の麓の森に住んでいる」
フェンリルは伝説の魔獣だ。人では追いつけない速さで空を駆け、敵は口から吐く冷気で氷漬けにする。そのくせ温かい土地を好むと何かで読んだ。普段そこらで見かける小さなフェンリルは、実はフェンリルじゃあない。似た別の魔獣なんだが、誰も本当の名前を知らなくて「フェンリル」と呼んでいる。
だが、こいつは本物のフェンリル……
「ここに移住しない?」
「……あ?」
不思議そうに俺を見る。
「エサはあるか?」
「あ、ああ。まあそれなりに魔獣はいるからな」
なに言ってんですか!バカですかあなた!と小声でセリオが叫ぶ。
「お前、人を食うか?」
「いや、食い応えないモノは食わない。驚けば間違うこともあるやもしれぬが、人に危害を加えるつもりはない」
んふふっこれはいい。目玉が見つかった。
「なら、お前この山に住んで普段通り生活してくれ。そんでたまに人に姿を見せてさ。神獣が住む山として保護するから、どうだ?」
何を言ってるんだ?とフェンリルは俺の顔をじっと見つめていたが、先程の俺の言葉を思い出したようだ。
「人を呼び寄せるためか」
「ああ。ぜひお願いしたい」
フェンリルの足元では、仔が楽しそうに戯れている。
「ふむ、私になんの得がある?」
確かにな。火山にいるであろう仲間とも会えないし、一時的に来たからこのままでは環境も変わる。こいつにとってメリットはないか。
「あのさ、たまには俺が遊びに来て話し相手になる。昔のように人と話すのも楽しいかもしれないじゃん」
黙って考えているようだ。
「人の生は短い。お前の治世くらいは、いてやっても面白いか」
「ほんとか!ありがと!」
私にとっては短い時間だ。ただし、こちらに手を出そうとする者が現れたら立ち去るが良いか?と。
「構わん。伝説のフェンリルが住まう山だ、箔が付く。その間に俺が街を発展させればいいかなって」
「ならばよい。私の額に手を当てろ」
うん?
「なんで?」
「契約だよ。お前が約束を破らぬようにな」
ふん、用心深いな。人なんぞ一捻りだろうに。俺がフェンリルに近づくと頭を下げて触れるようにして目を閉じた。
「コレでいいか?」
「うむ」
すると、ブワ~っと手と額の間から光が溢れ、俺の手の甲と、彼の額に金色の魔法陣が浮かんだ。見たことのない魔法陣で……すぅーっと光が消えると共に陣も消えた。
「これはお前が私の主となった印だ。ふふっ人との契約は久しぶりだな」
「え?俺がお前の主?」
「そうだ、これを持って契約は完了し、お前が死ぬまで有効だ」
魔力を手に集めてみろと言われて集めてみた。
「おお!魔法陣が浮かんだ!」
「私が万が一死ぬとそれは消える、そして私の額の陣も同じ、どちらかの死をもって契約は終わる」
「ほうほう……」
この魔法陣があることによって、離れていても念話が出来るから来る時は知らせろと。それと、間違って人を殺しても苦情は受け付けぬ。ではなと、フェンリルは仔を背中に乗せると飛び立って行った。
「あはは、ですがエリオス様がそう思うのも仕方ありませんよ。私もそんな気がしてましたから」
「だよなあ、あれの口の上手さと周りに馴染む速さは半端ねぇもんな」
「ええ、付き合いのない貴族だったのかと錯覚しますね」
騎士たちも荒れ地の時に会った者とは思えませんね。身のこなしも早くに身に着け、生まれつきの貴族のようですなと。ドナシアンの庶民ってみんなああなんかな?
「多分違います。あれが優秀なだけですよ」
「だよな」
眼下に畑が見え始め、農夫がエリオス様だと手を振ってくれる。ふふっ彼らも野菜が高値で売れるから感謝してくれてんだ。ここの土地はマジで野菜がよく育ち、更に美味い。最近城下でも話題になり、移住者が増えてきているんだ。そう!農地が半分埋まったんだ!俺の功績ではなく、不安の中来てくれた初期の者のお陰だけどな。俺を信じた最初の十軒には頭が上がらない。マジ感謝だ。
その調子で街にもと思ったんだが、世の中そう甘くない。宿屋は二軒のままだ。だからたまに俺が街に行って、魔力で掃除をしている。お花とか花壇はフィトたちが手入れしてくれていた。むふふ、貴族のお手入れの街として売り出せないかな。よくね?……独り言が聞こえたのか顔をしかめたセリオがスーッと俺の騎獣近づき、
「バカ言わないで下さい。今は人がいなくて暇だから出来るだけでしょう。それなりになったら無理ですよ」
「分かってるよ。お前はなんでそんなに俺に冷たいんだか」
そうなんだよな。なんだろうなここ来てからセリオの言葉が刺さる。なんでも「うん」って言って欲しくなる。はあ……甘えてんのかな。
「そんな事はありません。いつも通りですよ」
「そうかよ。俺はさ、お前にだけは肯定して欲しくてな」
え?っと驚き動きが止まった。は?
「どうした?」
「ひゃう!なんでもありません!」
スーッと離れていった。なんだろ?たまにセリオがおかしい。ん~?何だろな、俺なんかしたのかな?分からんが。とか、ぼんやり考えながら飛んでると、着きますよと騎士たち。山に登る獣道らしきあたりに降り立った。
「うん、山」
「はい、何の変哲もないこの国の山です」
よし!歩こう!と騎獣を消して歩き出した。低山だから険しさはなく、冒険者が入っているのか踏み固めた道が出来ている。あたりを見回せば薬草を採った跡もある。
ふ~ん。いい薬草が取れると魔法省の大臣には聞いていたけど、本当に人が来てるんだな。俺は枯れ草を踏み鳴らし……ゼィゼィ……ハァハァ……山キツい。
「セリオ、キツいよ」
「私も……ハァハァ……文官に山登りは……ハァハァ……休みましょう」
もう?って顔の騎士は無視して大きな倒木に座り、みずぅ水筒……んくんく……ぷはあ、うまっ!
「はあ……鍛錬もしてたんだが、身体の使い方が違うのかな」
「ええ……私はもう……ぐったりです」
高々一時間しか歩いてないのにな。上りだからかな。
「セリオちゃんと飲めよ」
「はい」
あはは、本当に疲れた顔してるな。俺は休憩中なんかないかと森の中を見ていた。木の上を渡るリスや鳥はみえる。たまにスライム。昔父上のお供で狩り行った山と変らない景色だ。何もねぇ。
「さてと、行くぞセリオ」
「え?もう?」
「もう少し頑張ってくれよ」
肩をポンと叩くと仕方ないと立ち上がった。それから山頂に向かい、半刻ほどで到着!木々の隙間から平地が見えた。
「おお!俺の街が見えるな!」
「あ~疲れた。でもここから見れば栄えているふうに見えますね」
そうだな、遠目には街があるとしか分からない。白い石が眩しい俺設計の俺の街だ。手前は畑が広がりいい眺めだよ、本当にな。
「なあ、こうやって見るといい領地だと思わないか?セリオ」
「ええ、元々領地としてあった場所ですからさすがの眺めです」
空からとは違うこの眺めはいい。
「美しい眺めですが、何もなかったですね」
「セリオ……現実に引き戻さないでくれ」
「はい……」
そう、ただの山登りで終わった。どーすんだ本当に何にもない。ふん、そもそも論だが、他の領地も実はこんなもんなんだよ。直轄地はそりゃあ国が手を入れてるから賑やかだよ。繁華街もバンバン作ってさ。温泉がある領地もな。ふっ当たり前だ。
ん?ガサガサと藪から音が?
「なんか音がする!」
俺の声に騎士はサッと剣を構えた。大型の獣や魔獣だとやばいな。
「セリオ、俺の後ろに付け」
「はい!」
文官にこの状況は怖かろう。俺の腰に掴まる手が震えている。俺もゆっくり剣を構え、片手でセリオの手を握った。
「大丈夫だ、落ち着け」
「はい……」
藪のガサガサは近づいてくる。ガサガサ……ガサガサ……ズホッと何かが飛び出て来て、俺は剣を振り上げた。え?フェンリル?珍しい犬型の魔獣だ!
「やめろ!攻撃するな!」
「はっ!」
真っ白な子犬が数匹出て来た。ふかふかな被毛で目がクリクリで……かわいい。が!この大型犬サイズで子犬とか。やべぇ……
「親が近くにいるはずだ。油断するな」
「はっ!」
俺たちは目の前でキャンキャンと遊んでいるフェンリルの子供を見つめていた。親が近づく音を見逃さないと、剣を構え耳を澄ませた。
ゴウッと風が!後ろか!一斉に振り返ると見事な、俺が縦に二つ分はあるだろう体高の親が子供の側に降り立った。子供を見つけて舐めながら目は俺たちを追っている。これ本物のフェンリルだろ?
「何者だ」
ふえ?頭に直接響いだぞ!念話か!
「俺はこの麓からこの辺りまでを領地とするエリオス公爵だ。最近越してた」
フンと言わんばかりの目をこちらに向けた。
「お前はパルメロの子か」
おお……この念話キツいな!頭が締め付けられるようだ。
「いや、俺は元王族、今の王の第二王子で……ぐうっ王位継承にも関係ないから貴族に降りてここにいる」
「ほほう……また街を作ったのはお前か」
おえぇぇ……めまいがしてきた。気持ち悪い……が、フェンリルから目を逸らす訳にはいかない。
「そうだ……領地に人を呼び寄せる手段がなくて、山になにかないかと……おえぇぇ……」
もう無理……ぎもぢわるい……
「ほう、お前念話に慣れていないな?」
「はい……初めてで……おろろろ……」
マジで吐いた。
「エリオス様!」
あまりの気持ち悪さに膝を付いた俺の背中を、セリオは擦ってくれた。この声、みんなには聞こえていないのか。
「そうか……もう魔獣と話す者はいないのか」
「ゲホッ……魔獣が喋るなんて、ゲホゲホッ初めて知っ……た……」
私は長い年月を生きている。そのうち人の言葉を覚えて、一部の魔法使いと話したりもした。そうか、魔獣を使役する者はおらぬかとなぜか残念そうに聞こえた。
「ハァハァ、お前はなぜこの山に?」
「ああ、ここは人がいなくて快適でな、子育てにここに来た。普段は人の来ぬ、火山の麓の森に住んでいる」
フェンリルは伝説の魔獣だ。人では追いつけない速さで空を駆け、敵は口から吐く冷気で氷漬けにする。そのくせ温かい土地を好むと何かで読んだ。普段そこらで見かける小さなフェンリルは、実はフェンリルじゃあない。似た別の魔獣なんだが、誰も本当の名前を知らなくて「フェンリル」と呼んでいる。
だが、こいつは本物のフェンリル……
「ここに移住しない?」
「……あ?」
不思議そうに俺を見る。
「エサはあるか?」
「あ、ああ。まあそれなりに魔獣はいるからな」
なに言ってんですか!バカですかあなた!と小声でセリオが叫ぶ。
「お前、人を食うか?」
「いや、食い応えないモノは食わない。驚けば間違うこともあるやもしれぬが、人に危害を加えるつもりはない」
んふふっこれはいい。目玉が見つかった。
「なら、お前この山に住んで普段通り生活してくれ。そんでたまに人に姿を見せてさ。神獣が住む山として保護するから、どうだ?」
何を言ってるんだ?とフェンリルは俺の顔をじっと見つめていたが、先程の俺の言葉を思い出したようだ。
「人を呼び寄せるためか」
「ああ。ぜひお願いしたい」
フェンリルの足元では、仔が楽しそうに戯れている。
「ふむ、私になんの得がある?」
確かにな。火山にいるであろう仲間とも会えないし、一時的に来たからこのままでは環境も変わる。こいつにとってメリットはないか。
「あのさ、たまには俺が遊びに来て話し相手になる。昔のように人と話すのも楽しいかもしれないじゃん」
黙って考えているようだ。
「人の生は短い。お前の治世くらいは、いてやっても面白いか」
「ほんとか!ありがと!」
私にとっては短い時間だ。ただし、こちらに手を出そうとする者が現れたら立ち去るが良いか?と。
「構わん。伝説のフェンリルが住まう山だ、箔が付く。その間に俺が街を発展させればいいかなって」
「ならばよい。私の額に手を当てろ」
うん?
「なんで?」
「契約だよ。お前が約束を破らぬようにな」
ふん、用心深いな。人なんぞ一捻りだろうに。俺がフェンリルに近づくと頭を下げて触れるようにして目を閉じた。
「コレでいいか?」
「うむ」
すると、ブワ~っと手と額の間から光が溢れ、俺の手の甲と、彼の額に金色の魔法陣が浮かんだ。見たことのない魔法陣で……すぅーっと光が消えると共に陣も消えた。
「これはお前が私の主となった印だ。ふふっ人との契約は久しぶりだな」
「え?俺がお前の主?」
「そうだ、これを持って契約は完了し、お前が死ぬまで有効だ」
魔力を手に集めてみろと言われて集めてみた。
「おお!魔法陣が浮かんだ!」
「私が万が一死ぬとそれは消える、そして私の額の陣も同じ、どちらかの死をもって契約は終わる」
「ほうほう……」
この魔法陣があることによって、離れていても念話が出来るから来る時は知らせろと。それと、間違って人を殺しても苦情は受け付けぬ。ではなと、フェンリルは仔を背中に乗せると飛び立って行った。
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