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四章 どうしてこなるんだ

10 宣伝とお披露目の準備

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「なにあの石」
「ステキね。でもピジョンブラッドにしては色が……」

 などなど奥様やお嬢様から聞こえる。よし!出足は好調だ。人の目を集めなきゃ意味はない。もらった石は手のひらくらいの大きさで、胸にデカデカと分かるようにカットしてブローチにした。残りは髪のリボンの真ん中にもこれでもかと付けた。ボタンにもズボンの紐の先にも、付けられそうなところ全部真っ赤っか。ついでに初夏だけど腰の飾りにヌーマリムの毛皮を猫のしっぽ風にして何本もあしらう。どこまでも東の宣伝。踊ると毛皮も揺れて、魔石は照明の光でキラキラと輝く。

「かわいいよリシャール」
「ロベールこれさ。見本市のようだよね?」
「いいだろ?武器や穀物以外も東にはあるんだって宣伝なんだから」
「そうだけどさ」

 僕は踊り終わると出来るだけ会場をウロウロした。みなの目に入るようにね。そして聞いてくる人には明日の昼、客間で説明会をするから来てねって宣伝。キツネに劣らない品質で格安。たくさんの防寒着を手にすることが出来ますよって。冬のデートの服装に合わせた色に変更出来て、オシャレですと笑顔で売り込む。

「さわっても?」
「どうぞ!」

 腰から外して皆さんに触らせる。ふかふかでキツネやタヌキと比べられても見劣りはしない。この毛足の長いのもヌーマリム?と聞かれたから、そうですよって。

「ステキ。騎士の防寒くらいにか思ってませんでしたが、色も色々なんですね」
「ええ。染色で変えられますが、あの茶色のねずみ色ばかりではないんですよ。全部クリーム色のとか、グレーのも牧場にはいます」
「へえ」
「染めなくてもいいように今研究中です。どうしても薬使うと劣化が早くなりますから」

 僕は王族とは思えない商人になっていた。その宝石は?と聞く方もいらっしゃって、簡単に説明。

「まあ……ルビーのようなのに付与がそこまで。汎用性の高い魔石ですね」
「ええ。愛する方にお守りとして、私兵の増強にもうってつけです。普通の高品質魔石よりちょっと高いだけなのに付与は多く出来る。使い勝手はいいですよ」
「よさそうですね。父上にお願いしようかな」

 品質も様々、使用目的で選べますからぜひと、もう顔がるのでは?ってくらいの笑顔で頑張った。オリバー様ともお話ししたかったけど、彼も人だかりが怖いのか近づかない。そりゃそうか。向こうが見えないほど姫様や奥様に囲まれてるからなあ。

「うー……疲れた」
「ご苦労さま」

 僕は舞踏会の後部屋に戻りソファにもたれた。もう座るじゃなくてもたれた。

「体力じゃなくて、精神が擦り切れた」
「うんうん。どこの商人かと思ったもん。素晴らしかったよ」
「ありがとう」

 ミレーユが明日もあるからお風呂入って早く寝たほうがいいって。

「明日はデザインを変えますから、シャツもキュロットズボンも、昼間に赤が映えるようになってます。お顔がやつれててはなりません」
「はーい」

 夜会ではないから連れて来た商人が説明するんだけど、僕は見本品として隣に立つ。キラキラした表情は大切なんだ。けど、

「若い方にお願いした方が昼間はいいんじゃないかな?デートするお嬢様や買い物の奥様に売りつけるんだから」
「あん?お前で十分だ。見た目だけなら二十五くらいに見える」
「あ?僕余裕で三十超えてますが?そんなふうに周りに見えてるの?」
「うん」

 ハイネがボソッと精霊の力せいだね。百まで余裕でってのは、そこまで自分の足で歩いて六十くらいの老人にしか見えないって意味だって。はい?ロベール死んでるよね?と問えば、うんって。

「ハイネそれ寂しい。ロベールも長生きを」
「ムリ。そういったいじりは出来ない。魔力を上げるなら出来るけど」
「そう……」

 早々とひとりぼっち確定、寂しい……余計疲れが増した。

「リーンハルトとかいるじゃない。孫も増えるし、寂しくないよ」
「そっかな」
「そうそう。アンはひとりになっても生き生きしてる人族は多いじゃない」
「まあ」

 眠いのかと聞かれた。いや、ハイネと話してたと言うとそうかと。なに話してたの?と。

「あなたが僕の見た目が若いって言うから、ハイネが精霊の力のせいだよって。百で普通の老人と言われた」
「あーそれ、俺死んでるな」
「うん。寂しい」

 よっこいしょと僕を抱き上げて、膝に乗せる。

「俺は百まではムリ。でも長生き出来るようにする。健康に気をつけて深酒しないように、運動もしてね」
「そうして。今から粗食で一緒に死のう?」
「アハハッそれはムリ。でも出来るだけな」
「うん」

 どんなに長生きしても八十くらいだろ?そこを目指すよって。

「なあ、これなんの話だ?」
「あなたが見本市に僕をそのまま使おうとしたから」
「ああ、そうだったな」

 明日もあるし、風呂入って寝ようってなって慌ただしく支度してベッドへもぐり込む。

「俺はお前に看取られて死ねるのか。幸せだな」
「僕は?」
「リーンハルトたちがいるだろ?」
「そっか」

 孫もいるしたくさんの人に見送られるよ。嫌われなきゃねと。

「嫌なこと言うね」
「たまにいるのよ王族でもな。性格悪くてなんてのがさ」
「ふーん。見たことも聞いたこともないけど?」
「隠すからな」
「そっか」

 まあずっと先の話だしなあって、ガウンの紐を解く。なにしてんだよ。

「しよ?」
「明日も忙しいのに?あなたも魔石の売り込みと鉱山の投資の引き出しのはずでしょう?」
「うん」

 いいからと唇が重なる。ん…はあ…キスは気持ちよくて、触られればその気になる。ハァハァとロベールに僕は腕を回した。

「したくなるだろ?」
「うん…ロベールとは嫌と思ったことない……」
「だろ?俺も」

 優しく触る手も重なる唇も好き。うっ

「忙しかったからしてなくて少し硬いな」
「ハァハァ……仕方ないもん。ヌーマリムとか…ああっ」
「だな」

 中を捏ねる指も…いい。慣れた手つきで僕のいいところを擦るのも。

「イクのはこれでな」

 柔らかくなって気持ちよさも増す。ふわふわとされるがままになっていると、ズブズブと奥に……っううっんっ

「キス好き?」
「好き」

 僕はロベールに…っうぅんっあっ……っ欲しくて唇を押し付けた。それに応えるように舌が絡む。腰は止まらず、気持ちよさに意識がいく。

「ロ、ロベール……も…ダメ……」
「ならゆっくりな」

 ゆっくり動かされたら快感が少し引いてくる。物足りないような感じがしてしまう。気持ちよくない訳じゃないけど、

「ロベール足りない」
「ならば」

 腰を止めて体を責めてくる。最近は股間の快感ばかりになってたよなあって乳首を……あっクッ

「俺を締め上げる」
「うっいい……っ」

 手を絡め握ってくれて……んっ…耳はっ長い愛撫をすることが減ってたな。ごめんなと耳をさすり乳首に吸い付き……くうっ

「動かなくてもヒクヒクしてるぞ?」
「入ってるから……ハァハァ…」

 ならそろそろ中をなあって腰をアアッあっ待っやっ…くうっ

「やめ……ああっ…んんっうっ…あっ」
「いいだろ?」

 ボーっとする。気持ちいいに意識がいって、しびれるような快感に身を任せた。こうなるとそれしか考えられなくなる。

「リシャール?」
「あっう…ん……はあっ」
「かわいいなあ。俺の手をこんなに握って」

 ほらイキなと、奥に押し込みグリグリ。そこダメッアーッ

「俺もな。クッッ」

 あー……いい。気持ちいい。ロベールも少しでもこうして繋がりたい。してなかったから余計触れていたくなると、朦朧とする僕の頬を撫でる。かわいい俺のリシャール。俺を見てと。

「ロベールもかわいいよ」
「当たり前だ」
「んふふっ」

 萎えたのかぬるっと抜いて横に降りた。あースッキリしたって。忙しくても最低週一で繋がりたい。リシャール成分が足りなくなるとイライラすると笑った。

「なにそれ」
「抱くと幸せなんだ。それが完全になくなるのが一週間くらい。お前の愛が欲しくなる」
「いえ、繋がらなくても愛してますが?」
「違うんだよ。俺が欲しいと蕩けてねだるお前が必要」
「はあ」

 分からなくてもいい。淫らな求めを味わいたくなるんだ。ノルンだからかもなと。支配欲かもなって。ふーん。

「ノルンは持ってる感情だろう。妻を守りたいんだが、支配もしたい。俺のものなのだから逆らうなって気持ちかな。悪い感情だが持っているものだろう」
「僕も守りたいし、僕のだけでいてほしいよ?」
「アンのは心をだろ?ノルンは全てをと考える」
「そう?」
「性差だな。どんなに強いアンでも分かり合えない部分かもな」

 まあなんでもいい。俺がお前を愛してて、その愛を受け入れ返してくれればそれでと。それはもちろん。

「アンと見た目も能力も同じでも、子を産むという事実は変わらない。そこで考え方が違ってくる。ノルンはどうしても攻撃性が高くなりがちでな」

 ノルンは子を産めない。だからどうしてもノルンの方がキレやすく暴力的な人が目立ち。精神面などのフォローはアンの方が得意な人が多く、どんなに見た目が似ていようとも性差が生まれる。まあ、違う人も当然いるけど傾向としてかな。

「俺にお前を守らせてくれ」
「うん」

 僕は元々個人としては強くはない。アンらしいといえばそうだけどね。でもオリバー様には負ける。あの方ほどアンらしい方を僕は知らないし、かわいくて優しくて理想だもの。穏やかで声を荒げてるのすら見たことはなかった。とてもかわいらしい方なんだと話すと、

「お前……まあいい」
「なによ。オリバー様は本当にかわいいんだよ?」
「うん……かわいいね……」
「なんで棒読みのセリフみたいになってるの?」

 だってあの人見た目は全くのノルンだろ。俺はそのな……好みから外れてるんだ。中身は確かにアンらしいけどさあって。俺はアンには繊細さを見た目に求めたい。世の支流からは外れているけど、王族は自分より大きい人を選ばない人が多いよって。

「中身はかわいくても俺は外見もだな。総合的に見て……リシャールがマッチョに育ってれば……中身重視で求婚したはずだ」
「そうですか。ふーん」
「もう俺はお前ならなんでもよかったんだよ」

 おやすみとキスしてくれて、寝るぞと胸に。恥ずかしそうに照れている姿もかわいい。それに頬をつけると気持ちいい。いくつになっても肌にくっつくの好き。ロベールの少ない胸毛……とか触ってたらブツっと爪に引っ掛けてぬけた。

「イッやめろ」
「ごめんなさい」

 もそもそと触っているうちに眠り、翌日朝は準備してたらあっという間に午後になった。慌ててる時間ほど過ぎるのが早いのはなんでなの?と毎回思うが、後は僕の気持ちを作るんだ。ヌーマリムの餌代くらいは稼がねばただのペットになる。

 もう少しかわいければ……そんな気にもなるけどあれはふてぶてし過ぎる。さて行くぞ!


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