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二章 緑の精霊竜として

7 竜の印の結果

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 秋の空気が漂い始め、アルフレッド様の側室の方のお子様がふたりとも産まれた。そして見分が行われ、皇太子妃のお子様に印が現れた。

「よかった……心底よかったと胸を撫で下ろしているんだ」
「兄様このところ死にそうな顔してたもんね。うはは」

 アルフレッド様はひと月前あたりから目の下にクマがガッツリで、朦朧とされていた。仕事が特に忙しかった理由わけではない。ラウリル様を説き伏せ側室を迎え、ロベールたちに負担をかけないようにと決めたまではよかったがと、ぐったり。

「ラウリルが怖かったんだ。もし側室の方に印が出たら、こちらに迎えることになる。どうぞぉとラウリルはかわいがるから大丈夫てすぅと笑顔で言ってたけど、目がマジで怖かったんだ」
「だろうね」

 ルーカス様は僕は側室はパスね。妻のオリバーがかわいくて無理だもーんって。

「オリバーかわいいか?」

 ロベールが渋い顔でルーカス様を見つめる。

「そこは好みの問題だよ。オリバーは剣術だけではなく、手先も器用で編み物も刺繍も得意。僕のハンカチは全部オリバーの刺繍入りだよ?かわいいでしょう」

 ほら見て見てと渡されたハンカチは、国の花のモクレンと彼の名前が刺繍されていた。

「素敵です。職人のような出来栄えですね」
「でしょう?オリバーはなんでも出来るし、ベッドの中も素晴らしい。かわいくて毎日幸せなんだ」
「「ふーん」」

 兄弟ふたりは目に生気がない感じで答えた。クラウス様も僕と似たような体型で、マッチョとは程遠い。

「俺はあそこまでのマッチョは正直好みじゃない」
「俺も……」

 ルーカス様はふたりとも嫌だなあ。世の大半はオリバーが美人なんだよ?そりゃあふたりの奥様は鳥族みたいな綺麗さだけど、それとこれは違う。やはり体が求める美人はマッチョでしょう!と力説する。

「うん。俺たちが少数の部類なのは分かってるんだ。だがな……マッチョは暑苦しい」
「俺も……」

 あのさ、オリバーそろそろ発情期なんだ。今度こそ子どもが出来るのを楽しみにしてるんだと、楽しそうなルーカス様。ちなみに僕は終わったばかりでお尻ガバガバな気がする。

「ロベールお前、結婚から一年過ぎたろ。そろそろいいんじゃないのか?」

 アルフレッド様の言葉にロベールはうーんと唸る。

「俺はリシャールを待ち望んで奇跡的に手に入れられたんだ。もう少しふたりを楽しみたい」
「はあ……子育ては乳母に任せれば今までと変わらんぞ?」
「そうだよ兄様。僕は二人目狙ってるけど、一人目の時もあんまり生活は変わらなかったよ?」

 そうなんだが、リシャールは子どもにつきっきりになりそうで不安なんだ。公務以外は子ども部屋から出て来ない気がしてるとため息。

「リシャール?そうなの?」

 と、二人に見つめられた。ゔっ……やりそうですと口にした。

「そう言えばリシャールは子ども好きって言ってたな」
「ええ。自分の子なら余計ですね。僕地元の孤児院のお手伝いとかもしてたんですよ。みんなかわいくて」

 楽しかった孤児院での話をしていたら、アルフレッド様はうんうんと頷き、

「そりゃあ……頑張れロベール」
「はい……」

 でな、真面目な話俺はこれから今の側室二人にもう一人ずつ産んでもらうつもりである。その後は別の側室を迎え、十人くらいは子を作るつもりだと言う。ヤバ目の領地がそんくらいあるそうだ。

「お前らが拒否するからだぞ」
「はい。兄上には感謝しております。なにかお困りのことがあればなんなりと」

 ふたりは神妙に頭を下げた。さすが長兄、こんな年になっても弟はかわいいんだね。僕も感謝を伝えた。

「まあリシャールは分かるんだよ。あんな小さな頃から、お兄様大好きお嫁にしてねってよく言ってて、ロベールもうん来てねって」
「うわー本当ですか兄様、なんてラブロマンス。物語の中のようですね」

 僕とロベールは恥ずかしくて赤くなった。

「俺は嘘は言ってない。ロベールは少ないチャンスを物にしたんだ。近づいても来ないリシャールを、アルフォンスの怒りを買ってまで成し遂げたんだ。まあそこはいいさ」
「ありがとうございます」

 だが、ルーカスお前はいいだろ?ひとりかふたりは持てよと。

「父上が持たなかったから男爵家関連が国に陳情に来てるんだ。毎年の災害の復興金を貸付ではなくくれって」
「ああ、仕えるお家が出さないのか」
「出さないんじゃない。出せないんだよ」

 その上の者たちも同じく被災してるんだ。今年は夏の嵐が多すぎて畑が壊滅。リシャールが多少の力で復興したが、作物は来年以降だ。落ちた実や水に浸かった麦は駄目になる。実が黒く変色して毒になるからなって。
 そうなんだ、あの黒い実を食べると食中毒で高熱と下痢にはなるわ、ついでに幻覚を起こすんだ。それを精製して悪いお薬にしている、後ろ暗い集団もいる。

「税は免除で復興金まで出したら国庫の負担が大きい。まあ、今までは側室がいないからそこまで困らないが、この先はわからない。自力で何とかしてもらうべくだよ」
「分かりますがね。我らの子を外国に嫁がせれば見返りも大きい。金の目処は立ちますからね」

 そう。ここの王族の子はマジで魔力量が多い。それだけ価値があるんだよ。魔力量が少なめの国は、喉から手が出るほど竜の血を欲しがる。

「王家の血は少ない者と交わってもそこそこある。お前も考えろ」
「ええー……オリバー並の姫?そんな人いるの?」
「いるだろ!釣書にいっぱい!」

 好みじゃないんだよねえ、オリバー完璧だからさあ。それにあの釣書を見たオリバー泣いたんだよ?僕のルーカスを他の人に触られたくないって。……うん気持ちはよく分かる。

「それは俺も一緒だよ。どれだけ説得したと思ってるんだ」
「ならロベール兄様も!」
「ゔっ……俺弱いいから無理。みんな知ってるだろ?誰か抱いたら首括る自信がある。つか勃起しない」
「兄様言い訳がズルい!遊び人だったくせに!」

 それは結婚前で諦めてたからだ。愛しい人を手に入れたらもう他人はどうでもよくて、誰かに迫られても勃たないだと叫ぶ。へえ

「ルーカスは勃つだろ」
「あー……それはまあ。マッチョ大好きだから迫られれば。まあね」

 へえ勃つんだ。僕も無理。ステキと思っても股間の反応はない。さすが王族。

「まあ考えてくれ。ラウリルには叱られなくなったが気分はよくないんだ。みんなで分散をしたいんだよ。俺ばっかは本当は嫌なんだ」

 アルフレッド様は、お前らしかいないから言うが、子も……本音ではかわいくない。自分の子と感情が理解しないそうだ。姫も愛してないし、特別好きでもないしって。仕事のように感じてたそうだ。

「あー……兄様。僕らその部分は父上に似てますからね。そういった心の場所って言うの?枠が一個しかないんですよね。妻を入れたら終わりでさ」
「ああ。今回で俺はそれを強く感じた。枠増えない」
「……俺ムリ」

 僕はいつか割り切れたらと思うけど、まずは自分の子を育ててみてからだな。僕の中で許容というピースが出来れば……いや、僕じゃないよ。ロベールが枠作るんだよね。この死にそうな顔は簡単ではないだろうけど。

「アルフレッド様、僕は自分の子を育て、気持ちが割り切れたらロベールを提供いたします。今はお返事出来ません」
「おお、リシャールありがとう。だそうだロベール」

 ニコニコとアルフレッド様はロベールに話しかけたけれど、

「俺は嫌だよ。でも……本当に困ったら考えます」
「おう!兄弟は助け合わんとな」

 王の印の報告会のはずだったんだけどなあ。まあ、アルフレッド様ばっかは確かにな。みんな奥様大好きだから側室自体持ちたくないのは分かるけど、外交にも使われる子どもたちなんだよね。お嫁や婿に出せば、我が国の仕事が楽になるのは確かなんだ。共和国での発言の通りも強くなるし。
 はあ、貴族の結婚は愛し合うだけでは済まないのも昔から。アンの姫は道具になりがちなんだよね。それでもいいお家にと親は頑張るけど、上手くいくのは少ない。意に染まぬ結婚も実は多いんだ。

 部屋に戻りなぜか襲われてる。

「ロベールなんで?」
「お前が俺を売ったから」
「売ってなんか……くーッソコッ」
「いいだろ?これを他の人が味わうんだぞ。俺はこんなふうに誰かを抱くんだ。お前は知ってるのになにも出来ずに部屋にいるんだぞ」

 ふっ……あっ……ロベール意地悪だ。僕は仕事として…国のために王族は国のことも考えないとで、自分たちの代に困らないようにしたかった……うわーん!いやだあ!やーッ

 僕はロベールから逃げて窓のソファに丸くなった。やだあ……ロベールがそんなの嫌だと、僕はうわーんと子どものように泣いた。想像したらとても辛かったんだ。頭では理解してたけど、感情は無理だった。この部屋で誰かをかわいがって帰ってくるのを待つとかどんな拷問だよ。ラウリル様どんだけ強いんだ!うわーん!

「リシャールごめん。言い過ぎた」
「イヤーッ僕のなの!ロベールはぼくの……ぼくの……うわーん!」

 何ごととクオールが部屋に入った音がした。

「なんですか?」
「うん。ちょっと言い過ぎたんだ」
「はあ」

 泣きわめく僕の横で説明していて、ロベール様はバカだとクオールは怒鳴った。

「リシャール様はあなたの治世を案じて言ったことを否定するなんて!子どもを育てたらとリシャール様は言ったのでしょう?今すぐじゃない!なのに今すぐみたいな言い方すれば傷つくのは当たり前です!謝りなさい!」
「う、うん」

 ごめんねリシャール。先の話のつもりだったけど、俺が嫌な気持ちを分かってもらいたくてつい。ごめんねと背中を撫でてくれる。

「グスッロベール」
「俺は嫌なんだ。お前にそこを我慢させたくない」
「うん。でも本当に追い詰められたら言ってね。僕母様のところで我慢するから」
「ああ、約束する」

 それに夕食前にエッチは控えてくださいね!と叱られた。これは俺が悪かったんだ。リシャールは叱るなと言っていた。

「叱りませんよ。殴るならあなたを殴ります」
「それもやめて」

 クオールはローブを僕に掛けて洗浄の魔法を唱えた。新しい服ですよとミレーユが置いてくれいた服に着替えさせてくれる。

「私はどれだけあなたがロベール様を愛しているか知ってます。それも結婚一年目に側室の話などするべきじゃないんです。御兄弟もデリカシーがなさすぎる」
「うん。ありがとう」
「こちらでお茶にしましょう」

 居間に移動すると、ミレーユがお茶を用意していた。可哀想なリシャール様。あなたのお好きな紅茶ですどうぞと。

「ありがとう」

 温かいお茶を口にしたら落ち着いてきた。はあ、ちと激しく反応し過ぎたと反省もした。

「ロベールごめんなさい」
「いいや、俺がお前の言葉に反応し過ぎただけだ。ごめんな」

 僕はカップをもったまま首を横に振った。こんな感情のコントロールが出来ないのは問題なんだ。泣き叫ぶなどあってはならない。はあ、一年経っても妃殿下として仕上がらないなあ。本当にダメダメだ。

「さて、これではふたりともストレスでおかしくなります。次の発情期に子どもを作りましょう!」
「「え?」」

 なにを言うクオール、でも子どもかあ。二十四だしちょうどいいよね。ふたりは欲しいかなうふふっ

「クオール、リシャールがその気になったろ」
「いいではありませんか。子を産んだ妻は色っぽくなって格別ですよ」
「ゔっ……ならまあ」

 赤ちゃん……孤児院の赤ちゃんは本当にかわいかったんだ。僕の赤ちゃんかあ。んふふっんふふっ



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